投稿日 2026/02/16

セブンカフェティーに学ぶ、客数を増やす5つの打ち手

#マーケティング #新規顧客の獲得 #既存顧客の維持

売上を伸ばすためには、客数を増やすか、客単価を上げるかです。

今回は、セブン-イレブンの 「セブンカフェティー」 の事例から、戦略的に客数を増やすヒントを考えます。

セブンカフェティー



セブンカフェティーは、セブン-イレブンが実証実験を進める淹れ立ての紅茶サービスです。

ティーバッグや粉末ではなく、専用マシンで茶葉から1杯ずつ抽出する本格派。ストレートティーとミルクティーの2種類があり、ダージリンブレンド、アールグレイ、アッサムブレンドなど複数の茶葉から選べます。

価格はストレートティーが120円から、ミルクティーが190円からです。サイズはレギュラーとラージ、それぞれホットとアイスがあります。

セブン-イレブンがセブンカフェティーを投入した背景には、セブンカフェに次ぐ収益の柱を育てたいという狙いがあります。特に、従来のコーヒーでは取り込みきれなかった女性層を新たなターゲットとして明確に据え、コンビニの顧客層そのものを広げようとしています。

* * *

では、セブンカフェティーの事例から学べることを掘り下げていきましょう。

セブンカフェティーのことを、セブン-イレブンが売上を増やすためのひとつのアプローチと捉えると、汎用的な示唆が得られます。

客数を増やす方法


売上を分解すると、基本的には 「客数」 と 「客単価」 に分けることができます。

これはビジネスをされている方にはすでにおなじみのことかと思います。「売上 = 客数 × 客単価」 というシンプルな式で、売上がどのように構成されているかを表すものです。

多くの経営者や販売責任者の方々は、日々この二つの数字を念頭に置いて戦略を立てていらっしゃることでしょう。

では、さらに 「客数」 を分解してみます。 顧客数は売上を構成する重要な要素であり、お客さんを増やすことが売上向上のカギを握ります。

では、具体的にどのようなアプローチで客数を増やすことができるのでしょうか?

結論から言うと、客数を増やすアプローチは次の5つに分けられます。

  • 新しいお客さんを増やす [新規顧客の獲得]
  • 一度買ってくれたお客さんに二度目・三度目と買ってもらう [新規顧客の継続顧客化]
  • 長くずっとお客さんでいてもらう [継続顧客の維持]
  • お客さんが離れていかないようにする [離反顧客の最小化]
  • 一度離れていたお客さんにまた買ってもらう [離反顧客の復帰]


以上が、売上の客数を増やす、あるいは減らさないための5つの方法です。

セブンカフェティーへの当てはめ


では、客数を増やすための5つについて、セブンカフェティーの事例に順に当てはめて詳しく見ていきましょう。

新規顧客の獲得

セブンカフェティーは、これまでセブン-イレブンが十分に取り込めていなかった顧客層の開拓を狙っています。

すなわち、紅茶愛好者という新市場の開拓です。

 「コーヒーは苦手」 、「カフェインは摂りたくないけど、何か温かい飲み物が欲しい」 、「専門店のような本格的な紅茶が飲みたい」 。セブンカフェティーは、こうした、これまでコンビニのコーヒーなどのドリンクメニューでは満たせなかったニーズに応えようとしています。

実証実験の結果、ミルクティー購入者の約 70% が女性であることが判明しました。従来のセブンカフェは 40 ~ 60 代の男性が中心でしたが、ティーは 10 ~ 60 代の女性に幅広く支持されているようです。

新規顧客の継続顧客化

新しいお客さんを獲得したら、その関係を一度きりで終わらせないことが重要です。

そのためには、初回の購入体験で 「期待以上の価値」 を提供し、再び利用したいと思ってもらう必要があります。

セブンカフェティーの武器は、本格的な品質です。専用マシンが茶葉から一杯ずつ抽出するので、専門店さながらの紅茶を味わえます。手軽なティーバッグや粉末では決して味わえない豊かな香りと深み。コンビニでこの味わいが味わえるのかというポジティブな驚きが、リピート購入へとつなげます。

セブンカフェティーのフレーバーは、ストレートティーが 3 種類、ミルクティー 2 種類という選択肢があります。その日の気分や好みに合わせて選べる楽しさが、再来店の動機となりえることでしょう。

他には、120 円からという手頃な価格設定により、セブンカフェティーの試し買いから継続購入へのハードルを下げ、気軽にリピートできる商品にしています。

継続顧客の維持

ビジネスを安定させるには、既存のお客さんをつなぎ留めることが大事です。

セブンカフェティーは、既存顧客に対して新たな価値を提案し、お客さんを飽きさせず来店頻度を高める役割も担います。

例えば、来店価値を高める買い合わせ提案です。

セブン-イレブンが事前に行った実証実験では、セブンカフェティーは時間帯ごとに特徴的な買い合わせパターンが見られました。

朝はおにぎりと一緒に、昼は揚げ物などのカウンターフードと、夜はデザートと買われるというふうにです。このように、既存の商品とティーを組み合わせることで、お客さん一人ひとりの利用シーンにおける満足度を高めつつ、お店に行く目的をつくります。

また、自分用だけではなく、家族などの他の人にも買うという新たな需要の創出もあります。

セブンカフェティーの買い合わせで最も多かったのが、意外にもセブンカフェのコーヒーだったそうです。一度にコーヒーと紅茶を一人で飲むというよりも、自分用にコーヒー、紅茶好きの家族のためにティーをといった購買パターンが生まれたことを示唆します。

セブンカフェティーにより、顧客一人あたりの来店価値 (客単価) を高められることが期待できます。

離反顧客の最小化

どれだけ良いサービスでも、お客さんが離れてしまう可能性は常に存在します。

セブンカフェティーは、お客さんが競合他社へ流出しないための防波堤としても機能します。

セブンカフェティーは、ファミリーマートやローソンにはないセブン-イレブンの差異化要素です。茶葉から淹れる本格的な紅茶は、セブンカフェティーの紅茶が飲みたいからセブン-イレブンのコンビニに行く理由を生み出します。

多様なニーズへの対応も離反防止に貢献します。コーヒーが苦手な消費者やカップルでの来店時なども、レジ付近の店内に手軽に買える紅茶も用意されていることで、これまで対応できなかった消費者ニーズに応えるでしょう。

待ち時間の改善努力も重要です。セブンカフェティーでは紅茶の抽出に約 1 分半かかるという待ち時間の問題に対し、サイネージでの動画表示による体感待ち時間の短縮、リテールメディア化による空き時間の有効活用など、継続的な改善を進めています。

セブンカフェティーを 2027 年までに 1 万店舗展開という計画も、「どのセブンのお店でもセブンカフェティーが買える」 という安心感をもたらし、利便性の面からも他のコンビニチェーンへの流出を防ぐ効果があります。

離反顧客の復帰

最後に、一度お店から足が遠のいてしまったお客さんを呼び戻すアプローチです。セブンカフェティーは、そのためのフックとなります。

セブン-イレブンのコンビニで、茶葉から淹れる本格的な淹れ立ての紅茶が飲めるらしいというニュースは、しばらくセブン-イレブンを利用していなかった人たちの耳にも届く可能性があります。

コンビニのインスタントの飲み物に、安かろう悪かろうというイメージを持っていた人や、特に来店する理由がなかった人にとって、紅茶が新しく出たのなら一度行ってみようと思わせる、再来店のきっかけ (トリガー) になります。

女性顧客が感じていた商品ラインナップへの不満を解消することも、復帰を促す要因です。セブンカフェティーは、これまでセブン-イレブンから離れていた女性層に、新たな来店理由を提供します。

5つの全てに目を向けバランスをとる


ここまで見てきた客数を増やす5つのアプローチは、それぞれが独立したものではなく、相互に関連し合います。

新規顧客の獲得に成功しても、継続顧客化や維持に失敗すれば、すぐに離反顧客になってしまいます。継続顧客の維持に成功すれば、そのお客さんからの紹介で新しいお客さんの獲得にもつながるでしょう。

セブンカフェティーの事例は、5つすべてのアプローチに貢献する商品として機能している点です。紅茶はコーヒーとのカニバリ (顧客の奪い合い) がなく純粋な売上増加を実現し、客単価向上と客数増加を同時に達成します。

戦略を立てる際は、5つのアプローチを組み合わせることが効果的です。自社の事業特性や顧客の特徴に合わせて、どのアプローチに重点を置くべきかを見極めることも大切です。

新しく市場に参入したばかりの企業であれば、新規顧客の獲得に重点を置きつつも、継続顧客化にも目を配る必要があります。一方、成熟市場であれば、継続顧客の維持と離反顧客の最小化により力を入れることになります。

セブンカフェティーの事例は、客数増加の5つの要点を総合的に実践する好例です。

自社のビジネス状況に応じた戦略をとり、お客さん一人ひとりのニーズに応じたマーケティングを展開することが、ビジネスの成長にとって重要であることを示しています。

まとめ


今回は、セブンカフェティーの事例を取り上げ、学べることを見てきました。

最後にポイントとして、客数を増やす5つのアプローチです。

  • 新しいお客さんを増やす [新規顧客の獲得]
  • 一度買ってくれたお客さんに二度目・三度目と買ってもらう [新規顧客の継続顧客化]
  • 長くずっとお客さんでいてもらう [継続顧客の維持]
  • お客さんが離れていかないようにする [離反顧客の最小化]
  • 一度離れていたお客さんにまた買ってもらう [離反顧客の復帰]


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多田 翼 (運営者)

書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。マーケティングおよびマーケティングリサーチのプロフェッショナル。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

前職の Google ではシニアマネージャーとしてユーザーインサイトや広告効果測定、リサーチ開発に注力し、複数のグローバルのプロジェクトに参画。Google 以前はマーケティングリサーチ会社にて、クライアントのマーケティング支援に取り組むとともに、新規事業の立ち上げや消費者パネルの刷新をリードした。独立後も培った経験と洞察力で、クライアントにソリューションを提供している。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。