#マーケティング #直観 #インサイト
日常のふとした気づきや違和感から、いかにして本質的な洞察を得るか――。今回は、そのための具体的な思考法を2つご紹介します。
天才ではない普通の人が、自分のいる環境でも人と違う結果を出すための考え方を、ぜひ一緒に深めていきましょう。
なぜ 「本質」 を見抜く力が必要なのか
私たちは日々、多くの情報に囲まれて生活しています。その中で、他の人と同じ情報に触れ、同じような考え方をしていては、新しい価値を生み出すことは難しいでしょう。
ビジネスにおいても、プライベートにおいても、表面的な事象に惑わされず、その裏側にある 「本質」 を見抜く力は、独自の視点やアイデアを生み出す源泉となります。
人と違う結果を出すためには、人と違うものの見方、考え方が不可欠なのです。
今回ご紹介する2つの思考法は、いずれも日常に潜む小さな 「ん?」 という感覚を起点に、物事の本質を探求していく方法です。
本質直観
ひとつめは 「本質直観」 です。
本質直観とは、自分が何かを思ったことについて、その根拠や理由を自分自身に問い直す思考方法です。
直観を起点に掘り下げる
直観的に感じたことの根っこにある答えを、他者に頼るのではなく、なぜ自分の中で生じたのかを自問するアプローチが本質直観です。
詳しくは、こちらの本 「本質直観」 のすすめ。- 普通の人が、平凡な環境で、人と違う結果を出す (水越康介) に書かれています。
本質直観は、自分の中で 「本質を捉えた」 と確信していることについて、それをゴールではなくきっかけとなるスタートにして、その根拠を疑い、問い直していきます。自分の確信がどのようにして成り立っているのかを確認していく思考プロセスです。
本質直観の 「ちょっかん」 には直観という字が用いられていますが、日常的な言葉である直感 (instinct) ではなく、直観 (intuition) を使います。
ちなみに、本質直観と逆のやり方は、自分が思ったことが正しいかどうかを、他人も同じように思うかを確認することです。これに対して本質直観では、自分が何かを思ったことについて、そう思った理由や背景への掘り下げを、自分自身に対して行います。
本質直観の方法
本質直観の方法を整理すると、具体的には次のステップで進めていきます。
- 直観に気づく: 取り扱うテーマや課題に対して自分がふと感じたこと、ちょっとした違和感や気付きを見逃さず言語化する
- その直観を問い直す: 自分はなぜそのように感じたのか、その感覚はどこから来たのかを自問自答する。思考や感情の背後にある潜在意識や価値観、ものの見方や思考 (メンタルモデル, バイアス) を探っていく
- 新たな視点を見つける: 最初の直観を入り口に自分の感覚・思考を深く掘り下げることで、新たな視点やアイデアを見つける
本質直観では自分が驚いたり違和感を感じたことに対して、その原因や意味を自分自身の中から答えを見出していきます。
出世魚モデル
ご紹介したいもうひとつの思考法が 「出世魚モデル」 です。
詳しくは、センスのよい考えには、「型」 がある (佐藤真木, 阿佐見綾香) という本で解説されています。
違和感をインサイトに昇華させる
出世魚モデルは、インサイトを発掘するための具体的な手法です。
特にビジネスやマーケティングの文脈で、消費者や顧客の隠れた本音 (インサイト) を発見するための方法です。
日常の中でふと感じた違和感を起点に、表面的な常識とその裏側に隠れた本音を結びつけるプロセスですが、小さな気づきを、価値あるインサイトへと育てていくためのフレームワークです。
ちなみに、「出世魚モデル」 という名前ですが、出世魚は、成長とともに名前が変わる魚のことです。ブリが有名で、稚魚から成魚になるまでに何度も名前が変わります (関東では 「ワカシ → イナダ → ワラサ → ブリ」 、関西では 「ツバス → ハマチ → メジロ → ブリ」 ) 。
出世魚モデルも同じように、最初の小さな気づきが段階を経て大きなインサイトに成長していく様子を表現しています。
出世魚モデルの5つのステップ
次の5つのステップに分けて進めます。
日常の中の違和感に目を向ける [気づき・違和感]
なんとなく 「ん?」 と感じるモヤモヤや疑問を見逃さないことが始まり。小さな違和感がインサイトの種になる違和感を抱いた常識に疑問を向ける [常識・定説]
自分や世間が当たり前だと思っている前提、常識を洗い出す。そこに潜む問題点や矛盾を捉えることによって、裏側にある本音 (インサイト) に近づいていく常識の裏に隠れている本音を捉える [発想・問い]
「本当にそうなの?」 と、常識を疑い新しい問いを立てる。ここで切り込む視点や切り口が新しい発想の起点になる隠れた本音を自分の納得いく言葉にする [言語化]
探り当てた隠れた本音を、短いフレーズに落とし込む。言語化が曖昧だとほかの人にも伝わりにくいので、ここでしっかり磨き込むのがポイント言語化したインサイトを共有する [確認・検証]
せっかく見つけたインサイトも周囲に伝わらなければ価値を生まない。データや事例も交えて検証し、インサイトへの共感や納得感を高める
ノンアルコール飲料への当てはめ
出世魚モデルを使ったイメージとして、ノンアルコール飲料や、アルコールを飲みたいのに体質的に飲めない人のインサイト発掘では、次のように出世魚モデルが使われました。
- 気づき・違和感: 飲めない人って、飲める人からなんか決めつけられてない?
- 常識・定説: 「飲めない人は飲み会がキライ」 と思われがち
- 発想・問い: 飲めない人は、実は飲み会そのものがキライなわけではないのでは?
- インサイトの言語化: 飲める人ばかり楽しんで、ずるい!
- 確認・検証: 定量データや定性情報、海外の事例などで、インサイトへの仮説の裏付けを取り、説得力を高める
2つの思考法の共通点
本質直観と出世魚モデルには、いくつかの重要な共通点があります。
スタート地点は 「違和感」 や 「気づき」
両者に共通するひとつめのポイントは、思考のスタート地点が日常に潜む些細な 「違和感」 や 「気づき」 であることです。自分がふと感じたこと、なんとなく感じるモヤモヤが起点になります。
アイデアや深い洞察は、何もないところから突然として生まれるわけではありません。日常の当たり前の中に隠された、小さなノイズや違和感に耳を澄ませる姿勢こそが始まりなのです。
「常識」 を疑い、自分に 「問い」 を立てる
次に、その違和感をただの気のせいで終わらせず、「なぜ?」 と問いを立てるプロセスが共通しています。
本質直観では、「自分はなぜそのように感じたのか」 と、自分の内面にある価値観や思考の癖 (メンタルモデル) を探求します。
出世魚モデルでは、違和感の背景にある 「常識・定説」 を洗い出し、「本当にそうなの?」 と疑いの目を向けます。
どちらも、他人の意見に同調を求めるのではなく、自分自身の感覚や思考を深く掘り下げ、当たり前を疑うという内省的なプロセスを経ています。この 「問いの力」 が、思考を深めるエンジンとなるのです。
新たな視点 (インサイト) を言語化し、見つけ出す
そして最終的に、どちらの思考法も掘り下げた先にある 「新たな視点」 や 「インサイト」 を発見し、それを言葉にすることを目指します。
本質直観は 「新たな視点を見つける」 ことを、出世魚モデルは 「隠れた本音を自分の納得いく言葉にする」 という言語化を重視します。
このプロセスを通じて、最初の漠然とした違和感は、輪郭のはっきりした価値ある独自の視点やアイデアへと昇華されるのです。
相違点
一方で、本質直観と出世魚モデルの違いを挙げるとすれば、出世魚モデルのほうが、インサイトを他者に共有し、客観的なデータで 「確認・検証」 するという、よりビジネス実践的なステップまで体系化されている点です。
それに対して本質直観は、より個人の内面的な探求や、自己のものの見方や価値観などの深層心理を理解することに重きを置いています。
実践するためのヒント
本質直観や出世魚モデルは、特別な才能を必要とするものではありません。
日々の意識とトレーニングによって、誰でも身につけることができます。
日常から 「本質」 を見抜くトレーニング
いくつかのポイントをご紹介します。
■ 違和感のメモをとる
日常で感じた違和感をメモする習慣をつけてみるといいです。スマートフォンのメモ機能でも、小さなノート、紙切れやチラシの裏などでも構いません。
大切なのは、その場で記録すること。後になると、せっかくの気づきも忘れてしまいます。
■ 一人で考える時間をつくる
本質直観も出世魚モデルも、じっくりと考える時間が必要です。通勤時間や入浴時間、就寝前など、一人になれる時間を活用しましょう。
特に 「なぜ?」 を繰り返す作業は、集中できる環境で行うことが大切です。
■ 言語化やアウトプットをする
自分の中で考えがまとまったら、ぜひ言語化をしてみてください。
紙に書いたり、メモアプリに入力する、あるいは、身近な人に話をしてみましょう。他者の視点を得ることで、自分の洞察がより磨かれます。
ただし、最初から他者の意見に頼るのではなく、まず自分で考え抜くことが前提です。
ビジネスでの活用例
本質直観や出世魚モデルは、ビジネスの様々な場面で活用できます。
■ 商品開発での活用
新商品を開発する際、ユーザーの隠れたニーズを発見するのに役立ちます。表面的な要望の裏側にある本音を掘り起こすことにより、今までにはなかった商品が生まれる可能性があります。
■ マーケティングでの活用
消費者の行動の背後にある心理を理解するのにも有効です。
なぜその商品を選ぶのか、なぜ選ばないのか。その本質を捉えることによって、効果的なマーケティングに活かせます。
■ 組織改革での活用
組織の中で感じる違和感も、重要なシグナルです。その違和感を掘り下げることで、組織の本質的な課題が見えてくることがあります。
直観を信じて、掘り下げてみよう
本質直観も出世魚モデルも、私たちが普段見過ごしがちな直観の価値を教えてくれます。
大切なのは、直観を単なる思いつきで終わらせないことです。徹底的に掘り下げ、言語化し、検証することで、誰も気づいていなかった本質にたどり着くことができるのです。
日常の中で感じる小さな違和感。それこそが、大きな発見への第一歩かもしれません。ぜひ、あなた自身の直観に注目してみてください。
まとめ
今回は、「本質直観」 と 「出世魚モデル」 という2つの思考方法を取り上げました。
最後にポイントをまとめておきます。
- 本質直観とは、自分が何かを直観的に感じた時、その理由を他人に求めるのではなく、「なぜ自分はそう感じたのか?」 を徹底的に自己に問いかける思考法。自分の内面にある価値観や思い込みを探求し、新たな視点を見つけ出す
- 出世魚モデルとは、日常の違和感を、ビジネスで価値を持つインサイト (隠れた真実) へと昇華させるフレームワーク。「違和感に気づく → 常識を疑う → 新しい視点を得る → 言語化する → 検証する」 という5つのステップで、気づきを具体的なアイデアに育てる
- どちらも、① 日常の違和感を起点とし、② 常識を疑い自分に問いを立て、③ 新たな視点を言語化するという点が共通する
- 日々のトレーニングで身につくスキル。特別な才能ではなく、違和感をメモしたり、一人で内省する時間を作る、積極的に言語化・アウトプットするという習慣によって、誰でも実践し磨くことができる
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