#マーケティング #顧客設定 #BtoB
BtoB (法人向け) のビジネスで 「ターゲット顧客は ○○ 業界の企業」 とすれば、それで顧客設定は終わりになるでしょうか?
お客さんのことを 「企業」 という大きなくくりの単位で捉えず、人単位でさらに細かくターゲットを設定することで、初めて自社のビジネスの本質が見えてきます。
ビジネスの成否は、「自分たちの顧客は誰か」 を明確に定義できるかどうかにかかっています。そこで今回は、BtoB のビジネスでの顧客設定の大切さと具体的なアプローチを解説します。
顧客不在の事業活動が行き着くところ
ビジネスで起点になるのは、今回のテーマである 「顧客は誰か?」 です。お客さんを中心に据えて、マーケティングなどのビジネス活動を展開していくことが理想です。
しかし、その逆であるお客さんのことを見ない、お客さんではなく単に自社都合のビジネス活動になると、どのような状況に陥るのでしょうか? 「顧客不在のビジネス活動」 について、反面教師として見ておきましょう。
結論として、次のような流れが起こります。
- 自分たちのお客さんは誰かが明確ではない (顧客設定がされていない)
- 設定されていないので、お客さんのことを理解できない
- お客さんに響く価値が何かわからず、他にはない魅力的な価値を提案できない
- お客さんの 「欲しい」 「買いたい」 という気持ちをつくれない
- お客さんに買ってもらえず、売れない
逆からたどれば、自社商品やサービスが売れないという結果として起こる事象は、根っこにある顧客定義と顧客理解の問題に行き着くわけです。売上停滞の要因はもちろん他にもありますが、「顧客は誰か」 が明確ではない状況では遅かれ早かれビジネスは衰退していくでしょう。
BtoB での顧客設定の解像度
ではここからは 「顧客は誰か」 というテーマを、BtoB (法人向け) のビジネスに当てはめて考えていきましょう。
BtoB のターゲット顧客設定
議論のために、こんなケースを想定してみます。
BtoB 企業のマーケティング担当者に、「ターゲットとする顧客は?」 と尋ねると、担当者からは次のような答えが返ってきました。
- 年商300億円以上の ◯◯ 業界のメーカー
- 従業員は 500 ~ 1000名ほどの中堅企業
- 業界において三番手より下のポジション
このような粒度で想定する顧客企業の情報を伝えてくれました。
顧客企業情報からは見えないもの
ターゲット顧客の情報において、先ほどの情報からは顧客企業がどういう会社かは目星がつきます。しかし、わからないのは、自社が売っているプロダクトを使う人が 「どういう人なのか」 ということです。
その企業の中でどの部門のどういった職種や職能の人が、何のために、いつ、どこで、誰と使うかなどの、具体的な製品・サービスの 「利用者」 についての顧客情報がないわけです。
企業像とユーザー像
この話は BtoB 企業における顧客設定において示唆がある話です。
BtoB 企業では対象とする顧客は企業なので、ターゲット顧客と聞くと先ほどのような企業に対する詳細な情報が出てくることが一般的でしょう。
ただし、これでは企業のイメージはわかっても、自社製品やサービスのユーザーの理解は深まりません。
BtoC との比較
この状況を BtoC (一般消費者向け) のビジネスを展開する場合に当てはめてみましょう。
ターゲット顧客はファミリー世帯であったり、2人暮らしの世帯と、"世帯単位" でターゲットを設定しているようなものです。
その世帯の中でも、自社商品を使うユーザーは母親なのか、それとも父親なのか、あるいは子どもかによって、ターゲット顧客へのコミュニケーションや提供価値は変わってきます。
BtoB 企業においてターゲット顧客の理解が企業という粒度では、ユーザーがわからず今の BtoC の話と同じことが BtoB のマーケティングにおいても起こるのです。
企業像からユーザー像へ
お客さんは誰かという問いには、BtoB 企業であっても顧客設定を 「企業単位」 で終わらせないことが大事です。
その企業にいるどういった 「人」 がお客さんなのか、たとえば 「従業員が300人以上500名以下の食品メーカー会社で、事業部長またはマーケティング責任者を務めマーケティング活動を統括している人」 のように、ここまで顧客解像度を人単位で高めた顧客設定を言語化しておくのです。
「顧客は誰か?」
もうひとつ、BtoB の顧客設定で忘れてはいけないのは、自社製品・サービスを 「買う人」 と 「使う人」 が同じではないのが通常だということです。
買う人と使う人
大抵の場合、両者は2人以上に分かれます。買う人は予算を持っていて決裁権限を持っている人、使う人は実際に自社商品を日々の業務において使用する人です。
商品を売っていくためには、買う人と使う人を分けて想定し、いずれもターゲット顧客として、こちらも解像度高く顧客像を明確にするといいでしょう。
具体的には、買う人には、どういった判断基準で決済への承認をするのかの買う人の 「購入文脈」 を理解します。一方の使う人は現場の担当者やマネージャークラスが一般的ですが、どういった課題感や業務内容において、どこで・いつ・どのように使うのかの 「利用文脈」 を理解することが必要になります。
顧客は誰かについて、企業単位でなく人単位に粒度を細かくし、買う人と使う人に分けて、それぞれの顧客像を描くことが大事です。
ここまでは BtoB を想定した話でしたが、一般消費者向けの BtoC のビジネスでも、買う人と使う人が分かれているケースがあります。
たとえば、親が子どもにおもちゃを買う場合は、買う人は親、使う人は子どもです。学習サービスも同じ構図ですし、小学校入学時のランドセルでは買う人が祖父母、使う人が子どもというパターンもあります。プレゼントを買ったりギフト商品も買う人と使う人が別です。
お客さんを定める
お客さんをひとくくりにせず、自社のお客さんの解像度を高めるほど、それはすなわち自社のビジネスの特徴を知ることにつながります。
お客さんが誰なのかを決めることはマーケティングの一丁目一番地です。
マーケティングの目的があり、その目的を達成するための戦略を立て、戦略から施策を実行し展開していくにあたって、最初にはっきりさせるべきなのは 「自分たちのお客さんは誰か」 なのです。
まとめ
今回は BtoB での顧客設定について考察しました。
最後にポイントをまとめておきます。
- ビジネスでは 「顧客は誰か」 を明確にすることが大事。BtoB ビジネスでは、顧客設定を 「企業」 (BtoC なら 「世帯」 ) といった大きいくくりにするのではなく、人単位でさらに細かく設定する
- BtoB では一般的に製品を購入する 「買う人 (予算権限を持つ人) 」 と実際に現場で使用する 「使う人」 が異なることが多い。この両者を分け、それぞれの顧客像を明確化する。買う人については購買判断の 「購入文脈」 を、使う人は利用シーンの 「利用文脈」 を理解する
- マーケティングの成功は 「自分たちの顧客は誰か」 を明確にできるかどうかにかかっている。顧客理解の解像度を上げることが、マーケティング活動の出発点
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