#マーケティング #想起 #カテゴリーエントリーポイント
アメリカのコストコが、食品や日用品とは全然ちがう商品である 「金の延べ棒」 の取り扱いをはじめました。
今回は、コストコの狙いを掘り下げ、マーケティングの視点でどのような効果があるかを考察します。
ある商品を意図的に 「客寄せパンダ」 としての役割をもたせ、どのようにお客さんの来店や購入のきっかけにしているのか。ぜひ一緒に紐解いていきましょう。
アメリカのコストコが 「金の延べ棒」 を販売
会員制ディスカウントストア大手のアメリカの Costco (コストコ) が、金価格が高騰する昨今、独自の "ミニ・ゴールドラッシュ" を生み出しているようです (参考記事) 。
アメリカのコストコは商品ラインナップに地金を加え、1トロイオンス当たり約2000ドル (約30万円) で販売しています。
コストコで販売されている金塊は、PAMP (パンプ) スイスの Lady Fortuna Veriscan (レディ・フォルトゥナ・ヴェリスキャン) の1オンスバーです。ローマの繁栄の女神像が刻まれています。
コストコは主にオンラインで金塊を販売しており、1人あたり5つまで購入可能です。コストコでの金塊の価格は、スポット価格に比べて約 2% 上乗せされているようですが、それでもコストコから買えるという利便性やコストコへの信頼性があって、この価格でも受け入れられているのでしょう。
FASTCOMPANY の記事によれば、コストコのお客さんの多くがこの商品を気に入ったとのことです。アメリカ銀行大手 Wells Fargo (ウェルズ・ファーゴ) は、コストコは月に1億 ~ 2億ドル (約150億 ~ 300億円)相当のゴールドバー (金の延べ棒) を販売していると試算しました。
金を売る狙い
なぜコストコは、金の延べ棒を売っているのでしょうか?
ひとつの答えは、幅広い品ぞろえと手頃でお値打ちな価格にすることで、消費者にコストコで買いものをするきっかけを増やすことでしょう。
他の競合店との差異化を図り、消費者に対して 「コストコはいつでも新しい驚きがあるお店」 というイメージを強化するためです。
客寄せパンダ
コストコが扱う金の延べ棒は、売りたい商品というよりも "お客さんに知らせる商品" という位置づけとみました。
つまり、客寄せパンダであり、お客さんに自社のことを思い出してもらう 「想起パンダ」 なわけです。
金塊を売っていることでコストコは消費者の関心を引き、実際に Web サイトや、金塊を扱ってはいない店頭にも足を運んでもらうためのひとつのきっかけとして機能することでしょう。
消費者がコストコで金の延べ棒を購入する際、他の多くの商品も同時に目に入る可能性が高くなります。金の延べ棒がトリガー (引き金) となり、消費者が他の商品にも興味を持ってくれます。
さらに、コストコはこの 「金の延べ棒」 という目玉商品を通して、消費者の記憶に強く残るようにすることを狙っているのでしょう。
想起の重要性
マーケティングへの学びにつなげると、想起に示唆がある事例です。
ビジネスでは、お客さんに自社商品やサービスを選んでもらうためには、まずは思い出してもらうきっかけをどれだけ多く持っているかが大事です。
お客さんがさまざまなシチュエーションで自社のことを思い出す機会を増やすことで、ブランドが必要とされるタイミングで選ばれる確率を高めます。
とはいえ、同じフックやトリガーで想起を増やすのには限界があるのも事実です。そこで、今までとちがう切り口で想起のきっかけをつくることが必要になります。
コストコの今回の事例では、金の延べ棒が新しいトリガーとなる役割を果たします。
コストコは食料品をはじめ、日用品や家電など幅広い商品を取り揃えられていますが、ここに金融商品のゴールドという全くちがうカテゴリーの商品が加わるわけです。
コストコで金 (ゴールド) を買おうとした消費者が、そのついでに他の家庭用品や食品も買ってくれることが期待できます。このように、異なる商品カテゴリーへの関心を喚起することができれば、全体的な売上の向上にもつながります。
想起するシチュエーションが多いほど、自分たちのお店や商品がお客さんにとって必要とされるときに選ばれやすくなるのです。
まとめ
今回は、アメリカのコストコが 「金の延べ棒」 を販売しているという話を取り上げ、学べることを見てきました。
最後にポイントをまとめておきます。
- コストコが金の延べ棒を販売する狙いは、幅広い品ぞろえと手頃な価格を提供し、競合他店との差異化を図り、消費者に新しい驚きを提供することでブランドイメージを強化しようとしている
- 金の延べ棒は売りたい商品というより、消費者の注目を引きつけるための 「客寄せパンダ」 としての役割を持つ。消費者の関心を喚起し、サイトに来訪した際にコストコの他の商品も目に入ることで購買機会を増やす狙いがある
- ビジネスではお客さんにどれだけ思い出してもらうきっかけを多く持っているかが重要。今以上の想起のためには、新しい切り口で想起のトリガーを増やすことが必要になる
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