投稿日 2024/09/11

カレーうどん用のボンカレー。生活環境の変化が生み出すビジネス機会をつかむ方法

#マーケティング #環境変化 #顧客理解

市場やお客さんの変化を、どれだけ察知できているでしょうか?

変化による市場のギャップにはビジネスチャンスが眠っています。生活者環境や消費者の行動や習慣、価値観などが変わるたびに、新たな機会が生まれます。

今回は、大塚食品の 「ボンカレー」 の事例から、変化をチャンスに変える方法を紐解きます。ビジネスを成功させるヒントを、ぜひ一緒に学んでいきましょう。

ボンカレー 「旨みを味わうカレーうどんの素」 


出典: 大塚食品

ボンカレーは大塚食品が1968年に世界初で販売した市販用レトルトカレーです。

ブランド初のカレーうどんの素を発売

大塚食品が新たにボンカレーから派生商品を発売しました (リリース) 。ボンカレーからはじめてとなる 「カレーうどんの素」 です。

商品名は 「ボンカレー 旨みを味わうカレーうどんの素」 です。味は2種類あり、いずれも電子レンジか湯せんで温め、うどんにかけるだけでカレーうどんができあがります。

開発の背景

この 「旨みを味わうカレーうどんの素」 の開発の背景にあったのは、家庭でのカレーライスの食べ方の変化でした。

かつては子どもがいる家庭を中心に、鍋で固形のカレールウを調理し、複数人でカレーを食べるスタイルが主流でした。しかし現在は世帯の少人数化や料理の時短ニーズを背景に、個々人がレトルトカレーを食べるスタイルが広まってます。

それに伴いカレーうどんの作り方も変わりました。

大塚食品の分析によれば、「以前はカレーうどんは家庭で作ったカレーの残りで作ることが多かったが、カレーのルウを使う機会が減り、カレーうどんのためにレトルトカレーを買う消費者が増えてきた」 とのことです (参考記事) 。

学べること


ではボンカレーの 「旨みを味わうカレーうどんの素」 から、学べることを掘り下げていきましょう。

生活者環境の変化によって生まれた 「ビジネス機会」 をうまく捉えた事例として示唆があります。

ビジネス機会の発見

かつて家庭で食べるカレーうどんは、前日のカレー (ライス) の余りを有効活用するためのものでした。

家でのカレー調理は鍋で固形のルウを使用し、複数人分をまとめて作るスタイルが一般的でした。しかし、現在の生活環境は変化しています。家族構成が少人数になり、いそがしい生活スタイルにより時短料理へのニーズを高めました。

これにより、家族それぞれがレトルトカレーを利用することも普通にされるようになりました。この変化によりカレーが余ることが少なくなり、翌日のカレーうどんをつくる機会も減りました。

とはいえ、カレーうどんを食べたいという消費者のニーズは依然として存在しています。そこで消費者はカレーライス用のレトルトカレーを使ってカレーうどんを作るようになったわけです。

大塚食品はこの市場の変化や歪みを見逃しませんでした。ビジネスチャンスとして捉え、新たに開発されたのが、「ボンカレー 旨みを味わうカレーうどんの素」 だったのです。

市場のギャップとホワイトスペース

今回の事例を汎用化すると、生活者環境が変わり、消費者の行動や心理に影響を及ぼすことによって市場にはギャップやひずみが生じるということです。

その空白地帯をいち早く見つけ、ホワイトスペースとしてビジネス機会と捉えることによって新たな商品やサービスを成功させる種が眠っています

大塚食品は、消費者のカレーうどんへのニーズが依然として強いことを確認しました。

具体的には、消費者のカレーうどんへのニーズを裏付けるデータとして、ボンカレーブランドサイトのアレンジレシピページにヒントがありました。新型コロナウイルス禍で巣ごもり需要が高まり、カレーうどんのレシピが1位をキープしていたのです (参考記事) 。

このデータをもとに消費者調査を行った結果、カレーうどんを作るために既存のレトルトカレーを購入している消費者が多いことがわかりました。

大塚食品は市場の変化を的確に捉え、それに応える形でカレーうどん専用の商品を開発しました。ビジネス機会を調査から実証した開発アプローチも参考になります。

変化への適応

生活者環境や消費者は常に変わり続けます。

それに伴い、売り手やマーケターも変化を察知し、適応していくことが重要です。市場の変化を敏感にキャッチし、消費者の新たなニーズをすばやく捉えることが成功のカギをにぎります。

大塚食品の事例では、カレーうどん用のレトルトカレーに需要があるという 「灯台もと暗し」 的な発見がありました。

このような視点を持つことで、他の企業も市場の変化に対応し、消費者の潜在的なニーズを満たすことができるようになるでしょう。新たな商品やサービスの開発には、消費者の行動変化と心理変化を深く理解し、市場やお客さんへの理解にもとづいての商品の開発、マーケティングを展開していくことが大事です。

まとめ


今回は、ボンカレー 「旨みを味わうカレーうどんの素」 を取り上げ、学べることを見てきました。

最後にポイントをまとめておきます。

  • 市場のギャップやホワイトスペースを見逃さない。生活者環境、生活者の習慣や行動、価値観などの変化により市場にはギャップやひずみが生じる。生活環境の変化が生むビジネス機会を捉えることが大事

  • 変化に適応し続けることがビジネスの成功につながる。生活者環境や消費者の行動・心理は常に変わり続ける。マーケターもその変化を察知し変化をチャンスに変える。市場の変化を理解し、商品開発やマーケティングに活かす


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多田 翼 (運営者)

書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。マーケティングおよびマーケティングリサーチのプロフェッショナル。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

前職の Google ではシニアマネージャーとしてユーザーインサイトや広告効果測定、リサーチ開発に注力し、複数のグローバルのプロジェクトに参画。Google 以前はマーケティングリサーチ会社にて、クライアントのマーケティング支援に取り組むとともに、新規事業の立ち上げや消費者パネルの刷新をリードした。独立後も培った経験と洞察力で、クライアントにソリューションを提供している。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。