投稿日 2024/09/09

13歳から鍛える具体と抽象。マーケティング力も高める思考法

#マーケティング #具体と抽象 #本

普段の日常生活や仕事で 「具体と抽象」 を意識することはあるでしょうか?

今回は、具体と抽象を行き来する思考法を解説します。うまく使いこなせば生活やお仕事で、さらには人生全般が変わる力を持っています。



こちらの本、「13歳から鍛える具体と抽象 (細谷功) 」 を補助線に、具体と抽象のおもしろさを一緒に見ていきましょう。

本書の概要



13歳からとタイトルに入っているように、中学生や高校生くらいの10代を読み手に想定し、「具体 (たとえば) 」 と 「抽象 (まとめ) 」 を柔軟に行き来する思考方法の大切さ、実践方法を解説する本です。

本の帯には、一生役立つ 「頭の使い方」 とありますが、この言葉は大げさではなく、まさにその通りです。私は大人になってから 「具体と抽象」 の考え方を意識するようになりましたが、もっと早く知っておきたかったことです。

具体と抽象の重要性と方法について、本書では次のような身近な話から解説しています。

  • なぜ勉強をする必要があるのか
  • 算数での具体と抽象
  • 歴史を学ぶ意味合い
  • 友だちとのコミュニケーション
  • なぜ話がかみ合わないか


具体と抽象とは



この本のはじめに、具体と抽象は、私たちが毎日生活をするときの 「空気のようなもの」 と書かれています。空気がなければ人間の生活が成り立たず、生きていけなくなるわけですが、私たちが普段から空気のことを意識することはないでしょう。

 「具体と抽象」 は空気のようで、一方で空気と違う点は、うまく活用できるかどうかで日常生活、仕事、そして人生にも大きく影響するということです。

具体に比べて抽象がわかりにくいかもしれませんが、抽象とは 「具体をまとめたもの」 と捉えるとイメージしやすいです。

身近な例に当てはめれば、

  • 具体: 犬, 猫, ライオン, トラ, サル, ハト, イルカ, クジラ, 鮭, マグロ
  • 抽象 (まとめ) : 動物

  • 具体: 算数, 理科, 社会, 国語, 英語, 体育
  • 抽象: 科目


具体と抽象の違いを比較すると、次のように整理できます。

出典: DreamArts

具体と抽象のグラデーション

 「具体と抽象」 は大きく分ければ上下に二階層になりますが、実際のところは 「高層ビル」 です。

具体と抽象のピラミッドは一階、二階、三階と複数の階層があり、考え方次第で変わります。

たとえば、先ほどの例で動物の具体と抽象がありましたが、各動物という具体の上にいきなり 「動物」 というまとめた項目がくることもあれば、もっと分けると、1つ上に 「魚類」 「鳥類」 「哺乳類」 などの少しまとめた項目を入れられます。

具体と抽象の関係は、完全な白か黒かというよりはグレーで、どちらがより濃いグレーまたは薄いグレーなのかという関係です。

具体と抽象からの横展開

 「具体と抽象」 の思考プロセスが威力を発揮するのは、抽象化した (具体を一言にまとめた) 先の "横展開" にあります

いろいろな具体をまとめるという抽象化とは、複数の具体に共通する本質を見出すことです。目に見えない奥にある本質を抽出すること自体も大事ですが、ここではまだ道半ばです。

大切なのは、見出した本質や法則を使って、何か他のものに応用し横展開することです。

下の図で示すように、具体を抽象化し、別のことに横展開し具体化する、さらにアクションアイデアまで落とし込むといいです (仕事では特に) 。


マーケティングへの応用

では、具体と抽象の思考法をマーケティングに応用してみましょう。

たとえば、人気になっている商品、流行やトレンドを知ったときです (具体的な事例の発見) 。

知っただけで終わらず、他のヒット商品との共通点を探ってみたり、マーケティングの法則や理論のどれに該当するかを考えてみるわけです (具体からの抽象化 (まとめ) ) 。

抽象化ができて終わりにせず、見出したまとめ (抽象) を自分の会社の商品・サービスに転用できないかをいろいろと考察をしてみます。これが抽象から別への具体化です。

そして、自社商品に当てはめたら、今日から明日から何か実践できないか、行動に移してみるという 「アクションアイテム」 まで落とし込むのです。ここまでを 「具体と抽象の横展開」 として意識して心がけ、1つでも実際にやってみるといいです。


思考の重要性


この本を読んで再認識させられるのは、自分の頭で考えることの重要性です。

知識と思考

考えるためには 「知識」 という材料と、それをどう料理をするかという 「思考」 の両方が必要になります。

具体と抽象に当てはめれば、それぞれの 「知識」 は具体で、具体を抽象化したり、抽象を具体化するのが 「思考」 です。知識も細かく見れば、具体的な知識 (例: 経験した出来事) 、抽象度の高い知識 (例: 体験から学んだ教訓) と分けることができます。

勉強が大事な理由

最後に少しだけ、なぜ学校で勉強をするのかという話です (本書を読んで考えさせられたことです) 。

勉強は知識を増やすためと捉えられますが、思考力を鍛えるためという側面もあります。後者の思考力強化は見落としがちな視点ではないでしょうか?

学校の各科目の問題を解くときには、持っている知識や調べた情報を使って加工し (思考) 、そこから新しい知識や情報を生み出していることをやっているわけです。

つまり 「勉強すること = 知識を増やすこと」 に加えて、「勉強すること = 考えること = 思考」 であり、これこそが勉強が大事な理由です。

まとめ


今回は、書籍 「13歳から鍛える具体と抽象 (細谷功) 」 を取り上げ、学べることを見てきました。

最後にポイントをまとめておきます。

  • 「具体と抽象」 は空気のように普段意識されることは少ないが、具体と抽象をうまく活用すれば、日常生活やお仕事、ひいては人生全般が大きく変わる

  • 具体とは目に見える具体例であり 「たとえば」 。抽象とはそれらを統合する 「まとめ」 

  • 具体と抽象の関係は白黒のようなはっきりとした区別ではなく、濃淡のあるグレーの関係にある。具体と抽象の階層を理解することで、ものごとの本質を見極めやすくなる

  • マーケティングへの 「具体と抽象」 の応用は、たとえば人気商品の具体例にある共通点をとらえ、マーケティングの法則を見出す (抽象化) 。自社の商品やサービスに横展開し、さらに、具体化した内容をアクションアイテムに落とし込むといい


思考力が鍛えられる良い本でした。


マーケティングレターのご紹介


マーケティングのニュースレターを配信しています。


気になる商品や新サービスを取り上げ、開発背景やヒット理由を掘り下げることでマーケティングや戦略を学べるレターです。

マーケティングのことがおもしろいと思えて、すぐに活かせる学びを毎週お届けします。レターの文字数はこのブログの 3 ~ 4 倍くらいで、その分だけ深く掘り下げています。

ブログの内容をいいなと思っていただいた方にはレターもきっとおもしろく読めると思います (過去のレターもこちらから見られます) 。

こちらから登録して、ぜひレターも読んでみてください!

最新記事

Podcast

多田 翼 (運営者)

書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。マーケティングおよびマーケティングリサーチのプロフェッショナル。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

前職の Google ではシニアマネージャーとしてユーザーインサイトや広告効果測定、リサーチ開発に注力し、複数のグローバルのプロジェクトに参画。Google 以前はマーケティングリサーチ会社にて、クライアントのマーケティング支援に取り組むとともに、新規事業の立ち上げや消費者パネルの刷新をリードした。独立後も培った経験と洞察力で、クライアントにソリューションを提供している。

ブログ以外にマーケティングレターを毎週1万字で配信中。音声配信は Podcast, Spotify, Amazon music, stand.fm からどうぞ。

名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。