#マーケティング #問題設定 #ダブルダイヤモンド
今回のテーマは 「問題解決」 です。
ある例として、ターゲット顧客の "困りごと" は理解していたものの、解決策がお客さんのニーズに合わなかった話を通じて、問題設定と解決策の進め方を解説します。
自動調理家電の開発の話
これは架空のビジネスケースですが、ある家電メーカーの話です。
スマート調理家電の開発
アルファエレクトロニクス社は、新しいキッチン家電の市場導入に向けて新製品開発を進めていました。
想定するターゲット顧客の主な困りごととして、「特に平日の晩は調理をする時間がとれない。ありもので済ますことが多く、晩ごはんがいつも似たりよったりになる」 ととらえていました。そこで 「バラエティに富んだ本格的な味の料理を時短でつくりたい」 という欲求 (ジョブ) に応えることを目指しました。
こうした課題に対して、アルファエレクトロニクスは多機能なスマート調理家電 「スマートクック」 を開発しました。
期待を反した 「これじゃない」
スマートクックは、簡単な下ごしらえをした食材入れ、味の好みや温度設定などを細かく自分好みにできるのを特徴に打ち出しました。
味覚の嗜好は人それぞれなので、薄味を好む人、濃い味付けが好きな人にも、どんな人にも合うように味のメーター調整ができます。まるでプロの料理人が作ったような料理を、自分の好きなようにカスタマイズでき、かつ時短で作れるというコンセプトでした。
しかし、満を持して発売されると、消費者からの評価はアルファエレクトロニクスにとって予想外のものでした。「 (自分たちが求めていたのは) これじゃない」 との声が多く上がったのです。
ジョブを解決しなかった
アルファエレクトロニクスは、スマートクックを買ってくれたお客さんにインタビューをしました。
インタビューで深掘りをすると、多くの人たちは確かに 「調理時間を短縮したい」 というジョブ (ある特定の状況下で人が遂げたい “進歩” ) を持っていました。この理解は間違っていませんでしたが、スマートクックがジョブを解決する役目を果たしておらず、むしろ状況を悪くしている例までありました。
スマートクックは多機能をほこり、メニューの設定をすればあとは自動で調理されるので、ここについては時間を節約できます。しかし、スタートボタンを押す前の工程が利用者にとって複雑でした。
具体的には、最初の初期設定がまず煩雑でした。味の調整や自分に合う料理にするためには調整項目が多く、使うことへのハードルを高くしていました。ユーザーにとって、毎日の使用で設定や調整にあまりにも多くの手間がかかる調理家電となっていたのです。
学べること
架空のケースではあるものの、この話からは問題解決において学びが得られます。
解決策のズレ
要するにどんな話だったかというと、想定するお客さんの困りごとは把握できていたが、その困りごとを解決する商品が顧客ニーズに合わなかったということです。
汎用化してとらえれば、問題設定は良かったが解決策が適切ではなかった、つまり、問題設定と解決方法への接続において、解決策がズレていたわけです。
問題設定から解決への全体像
では、問題設定から問題解決につなげるために、あらためて全体像を整理してみましょう。
- 何が起きているのかの事象を把握する
- 発生した事象からどこが問題なのかについて、広く可能性を探る
- その中から掘り下げるべき問題箇所を特定する
- なぜその問題が起こっているかの原因を究明する
- 解決すべき問題は要するに何かをまとめて抽象化する
✓ 解決方法の策定
- 解決するためにはどんな方法がありえるのかを幅広く出す
- その中でよりよい方法を精査し、優先度の高いものを選定する (解決策のまとめ)
- 解決策の対処の中身を具体的を詰め、実行する
先ほどの事例にこのステップを当てはめると、課題設定の 1 から 5 まではできていたが、解決方法の1つ目と2つ目を省略してしまい、いきなり3つ目に一足飛びに行ってしまったことです。
ダブルダイヤモンドでの問題設定と問題解決
問題設定から解決策への落とし込みは、次の図のようなダブルダイヤモンドのプロセスをとるといいです。
ダブルダイヤモンドの特徴は、問題設定と解決策立案において、「発散」 と 「収束」 をそれぞれ行うところにあります。
解くべき問題を見極めるために発散と収束 (まとめ化) から的確な問題設定をする、その後の解決策においても発散と収束をすることで解決策を磨きます。
まとめ
今回は問題解決についてでした。
最後に問題設定から解決へのポイントをまとめておきます。
- 何が起きているのかの事象を把握する
- 発生した事象からどこが問題なのかについて、広く可能性を探る (発散)
- その中から掘り下げるべき問題箇所を特定する
- なぜその問題が起こっているかの原因を究明する
- 解決すべき問題は要するに何かをまとめて抽象化する (収束)
✓ 解決方法の策定
- 解決するためにはどんな方法がありえるのかを幅広く出す (発散)
- その中でよりよい方法を精査し、優先度の高いものを選定する (解決策のまとめ (収束) )
- 解決策の対処の中身を具体的を詰め、実行する
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