投稿日 2024/09/26

ライオン新ブランド 「オクチューン」 のライフスタイル訴求。スタンスを明確にし顧客を惹きつけるマーケティング

#マーケティング #ライフスタイル #価値訴求

自社のビジネスは、ターゲットを明確に設定できているでしょうか?

ターゲットがあいまいだと、顧客ニーズにきちんと応えられず、商品やサービスの魅力が適切に伝わらない可能性があります。

今回は、ターゲット設定の重要性と、分け方を事例から解説します。効果的な切り口で商品・サービスを展開すれば、お客さんから 「これは自分向けの商品」 と思ってもらえ、認知から興味喚起、利用意向、そして購入に至る好循環が生まれます。

ぜひ一緒に学んでいきましょう。

ライオンの歯ブラシブランド 「オクチューン」 


出典: ライオン

大手日用品メーカーのライオンが2024年4月に歯ブラシの新ブランド 「OCH-TUNE (オクチューン) 」 を発売しました。歯磨き粉、歯ブラシ、マウスウォッシュの3つがあります。

ユニークなのは、生活者のライフスタイルに合わせた打ち出し方をしていることです。

 「ファスト」 と 「スロー」 の2つのスタイルから選べる

オクチューンは、ライフスタイルに合わせて 「ファスト」 と 「スロー」 の2つのシリーズから選べます。

✓ ファスト
  • テキパキ効率派
  • 爽やかな柑橘系の香りで、朝や忙しい時にサッと磨きたい方に
  • ペン型の持ちやすいグリップ

✓ スロー
  • じっくり丁寧派
  • 穏やかなラベンダーやラフランスの香りで、ゆっくりと丁寧に磨きたい方
  • 四角くゴシゴシ磨けるグリップ


商品開発のきっかけは、消費者アンケートから

商品開発のきっかけとなったのはライオンが数千人に聞いたアンケートでした。

アンケートによると、お口の中に何かしらの不満を抱え、商品選択の際に一定の基準がある層が 55% 、価格を重視する層が 20% でした。一方で、特段の基準がない層も 25% いました。

ライオンはこの調査結果を受け、症状別ではなく、ライフスタイルに合わせた商品展開を決定しオクチューンが生まれました。

オクチューンに学べること


ライオンの新しい歯ブラシブランドの 「オクチューン」 がおもしろいのは、ライフスタイルという切り口で1つのブランドの中で、2つに分けていることです。

ビジネスにおいて、ターゲット層を明確に分けて商品やサービスを展開することは、マーケティングの観点では効果的なアプローチとなります。

オクチューンは、口内や歯のケアを 「ファスト」 と 「スロー」 の2つのスタイルに分け、それぞれに合わせた商品を用意しています。では、このようなアプローチには、どんな狙いがあるのでしょうか?

スタイルを示すことでの自分ごと化

まず、消費者自身が 「自分はこちらのスタイルに当てはまる」 と感じやすくなります。

ライフスタイルとして2つの違いを前面に出すことで、消費者は自分の価値観や生活スタイルと商品のイメージを重ね合わせ、 「こっちのほうが自分に合いそう」 と思いやすくなります。自分向けと思ってもらえるわけです。

このように消費者自身が商品を自分ごと化できれば、ブランドの存在を知ったときに、認知から興味、利用意向、そして購入へとつながる可能性が高まります。

ニーズに応えての満足度向上

さらに、ターゲット顧客をスタイルで分けることで、それぞれの利用ニーズやシチュエーションにきめ細かく対応しやすくなります。

オクチューンでは 「ファスト」 と 「スロー」 で商品の色使いや香り、形状が異なり、消費者のライフスタイルに合わせてこだわりを持って設計されています。

ターゲット別にスタイルやこだわり、価値観に最適化された商品を用意することで、保有をしたり使用するときのユーザー満足度を高めることができます。

学びの応用


オクチューンのライフスタイルを明確にするアプローチは、さまざまな業界や商品・サービスに広く応用できます。

応用例

たとえば、化粧品ブランドでは 「モード」 と 「ナチュラル」 、飲食店では 「タイパ (タイムパフォーマンス (時間的効率) ) 」 と 「ゆったり」 といった具合です。

アパレルの衣料品でも同様で、「アクティブ」 と 「エレガント」 といったイメージを分け、それぞれのラインナップを用意するなどの展開が可能でしょう。

このように、ターゲット層を明確にし、ライフスタイルのイメージに合わせて商品やサービスを分けることで、ライフスタイルや優先する価値観の違いを前面に出したコンセプトとなります。2つのライフスタイルにもとづいた商品・サービスを別々に展開することで、お客さんのニーズに幅広く対応することができます。

注意点

ただし、1つのブランドの中に異なるスタイルを打ち出す場合に、分け方次第では対立する構図が強くなりすぎないように注意が必要です。

たとえば、「高級」 と 「リーズナブル (安価) 」 のようなケースでは、ブランドイメージがよくわからなくなるリスクもあるため、適度な線引きが重要となります。もしやる場合はブランドを分けるほうがいいでしょう。

ライフスタイルという切り口で、分け方の工夫しライフスタンスを明確にし、顧客ニーズへのきめ細かい配慮が大事になります。

まとめ


今回はライオンの歯ブラシブランド 「オクチューン」 の事例から、学べることを見てきました。

最後にポイントをまとめておきます。

  • オクチューンは 「ファスト」 と 「スロー」 の2つのライフスタイルに分けて商品展開し、色使いや香り、形状を変えている。ターゲットを明確に分けることで、それぞれの利用ニーズやシチュエーションに合わせた最適化している

  • 消費者の価値観や生活スタイルとリンクするコンセプトを示すことで、「自分に合うのはこっちかも」 と思ってもらえ、商品認知から興味、利用意向、購入へとつながりやすくなる

  • ライフスタイル別アプローチは様々な業界で応用できる。たとえば化粧品の 「モード / ナチュラル」 、アパレルの 「アクティブ / エレガント」 など、業界に合わせた切り口で当てはめられる

  • ただし、1つのブランド内での分け方が 「高級 / リーズナブル (安価) 」 のような対立構図になりすぎるとブランドイメージをあいまいになるリスクもあり、適度な線引きが必要。あるいはブランドそのものを分ける


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多田 翼 (運営者)

書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。マーケティングおよびマーケティングリサーチのプロフェッショナル。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

前職の Google ではシニアマネージャーとしてユーザーインサイトや広告効果測定、リサーチ開発に注力し、複数のグローバルのプロジェクトに参画。Google 以前はマーケティングリサーチ会社にて、クライアントのマーケティング支援に取り組むとともに、新規事業の立ち上げや消費者パネルの刷新をリードした。独立後も培った経験と洞察力で、クライアントにソリューションを提供している。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。