投稿日 2024/08/11

結婚式場ノバレーゼの挑戦。既存資産の有効活用と提供価値の再定義

#マーケティング #顧客設定と提供価値 #役割分担と相乗効果

新しいビジネスへの拡張を考えたとき、いかに既存の資産を有効活用できるかは新規事業の成功のカギを握ります。

今回は、結婚式場を運営するノバレーゼの事例を取り上げます。

保有する施設や企画力という有形・無形資産を最大限に利用するサービス開発から、ぜひ一緒にビジネスやマーケティングへの学びを深めていきましょう。

ノバレーゼが挙式場をレストランに



ノバレーゼは、国内大手の結婚式場運営企業です。

結婚式が減少する平日の稼働率を上げる打ち手として、訪日外国人客をターゲットとした新しいサービスを展開しています。具体的には、ノバレーゼが運営する全国の婚礼施設37か所のうち34か所を、訪日客向けのレストランとして活用するというものです (リリースより) 。

サービス内容

挙式場を活用するレストランでは、訪日外国人に人気の高いお寿司を中心としたビュッフェ形式の食事を提供したり、外国人旅行者に魅力的な催しも行われます。

たとえば、日本独特の文化である鏡開き、餅つき、ほかには鯛を目の前でさばくパフォーマンスなどが目玉です。これらは、特に米欧からの富裕層旅行者にアピールすることを狙います。

独自資産の活用

ノバレーゼは他のレストランにはない食事体験になるよう、結婚式の事業で培った高い企画力を活かしたい考えです。

ノバレーゼはこれまで5万組以上の結婚式を手掛けてきた実績があり、訪日外国人の人たちの様々な嗜好、宗教的・食物 (しょくもつ) アレルギーなどの制約にも柔軟に対応できると見込んでいます。

外部パートナーの集客力も活用

挙式場をレストランにする新しい事業展開にあたって、ノバレーゼは、BOJ という企業と業務提携から連携します。BOJ は欧米の富裕層を中心に年間約2万人の訪日客を日本に誘致しています。

企業が優秀な社員を対象に催す報奨旅行 (インセンティブツアー) や、団体旅行などを多く手掛ける BOJ は 「訪日客の報奨旅行では、ユニークな会場への需要が高い」 と見て、ノバレーゼの挙式用の施設が訪日外国人には魅力になると期待しています。

学べること


ではノバレーゼの事例から、学べることを掘り下げていきましょう。

誰に、何を、どう売るかという Who, What, How に一貫性があることの重要性を教えてくれる事例です。

マーケットニーズに合わせたサービス開発、ターゲット顧客の特定、そして効果的な集客・販売の三要素をいかに連携させるかに示唆があります。

[What] 顧客への提供価値

先に What である 「何を」 から見ていくと、ノバレーゼは結婚式場の運営という既存のビジネスから、訪日外国人向けの飲食および文化体験サービスへと拡張しています。

ノバレーゼは結婚式場の豊富な運営経験と企画力を生かし、無形資産も含めた資産の有効活用による新サービスとする狙いがあります。既存資産の再利用は、新たな市場ニーズに応えるための効率の良いやり方です。

[Who] ターゲット顧客

次に 「誰に売るか (Who) 」 に関しては、挙式場レストランのお客さんをノバレーゼは日本人カップルではなく、増加傾向にあるインバウンドの訪日外国人観光客を新たな顧客層として選定しました。

特に、欧米からの富裕層観光客をターゲット顧客に設定しており、訪日富裕層が求める独特な体験や高品質なサービスを提供します。

[How] 集客とサービス開発の役割分担

そして 「どう売るか (How) 」 では、ノバレーゼ自身が全てを内製化するのではなく、訪日旅行を手掛ける専門企業 BOJ との協力関係を築いています。

このパートナーシップにより、BOJ の集客力とノバレーゼのサービス提供能力が結びつき、相乗効果が発揮されます。

ノバレーゼは BOJ という外部パートナーの集客力があることで、ノバレーゼはレストランサービス開発に集中し、自分たちの強みである企画力や食材の調達、料理メニューや催しの考案などの 「売りもの」 に注力できるわけです。

BOJ にとっても、自社で案内する旅行プランの中にノバレーゼの食事コースを組み込め、他社にはない魅力的な旅行体験を訪日旅行者に提供できます。

強みを掛け合わせる

このようにノバレーゼの事例は、特定の顧客層に向けた独自の顧客価値をつくり、ターゲットとするお客さんに効果的に提供するための戦略をどのように設計するかを教えてくれます。

企業が自身の強み (例: 企画力や商品開発力) を最大限に活かしつつ、外部パートナーの力を効果的に取り入れることで、新しいビジネスチャンスを捉える方法を示しています。

まとめ


今回は、ノバレーゼが挙式場をレストランに活用するという事例を取り上げ、学べることを見てきました。

最後にポイントをまとめておきます。

✓ 何を (What) : 提供価値の創出
  • ノバレーゼは結婚式場の運営という既存ビジネスから、挙式場を使ったレストラン事業に拡張し、訪日外国人向けの飲食及び文化体験サービスへと広げている
  • 保有する施設や企画力などの有形・無形資産を活かす

✓ 誰に (Who) : ターゲット顧客設定
  • ノバレーゼは新しい顧客層として、増加傾向にある訪日外国人観光客、特に欧米からの富裕層をターゲット顧客に選定
  • 富裕層が求める体験や高品質なサービスを提供することに注力していく

✓ どうやって (How) : 役割分担と相乗効果
  • ノバレーゼは、訪日旅行専門企業 BOJ とのパートナーシップから、BOJ の集客力を活用する
  • 協力関係により、ノバレーゼはレストランサービスの開発に専念し、企画力や食材の調達、料理メニューやイベントの考案にリソースを集中できる
  • BOJ は、ノバレーゼの提供する独自の食事コースを自社の旅行プランに組み込むことで、訪日旅行者に他にはない魅力的な旅行体験を提供できる


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多田 翼 (運営者)

書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。マーケティングおよびマーケティングリサーチのプロフェッショナル。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

前職の Google ではシニアマネージャーとしてユーザーインサイトや広告効果測定、リサーチ開発に注力し、複数のグローバルのプロジェクトに参画。Google 以前はマーケティングリサーチ会社にて、クライアントのマーケティング支援に取り組むとともに、新規事業の立ち上げや消費者パネルの刷新をリードした。独立後も培った経験と洞察力で、クライアントにソリューションを提供している。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。