#マーケティング #価値創出 #商品名
自社の商品やサービスには、改善したい 「弱み」 がありますか?
その弱みを隠したり否定したりするのではなく、新しい視点で捉え直せば、むしろ大きな魅力や顧客価値に変えられるかもしれません。
今回は、一見すると弱みに見える特徴を強みとして打ち出し、成功を収めた 「闇落ちとまと」 というユニークなトマトの事例から、学びを紐解きます。
闇落ちとまと
「闇落ちとまと」 は、フルーツトマトを展開する SOGA FARM が生み出したユニークなトマトです。
通常のトマトとは異なり、黒い模様が表皮に現れています。その見た目から 「闇落ちとまと」 という特徴的な名前がつけられました。
ネガティブの印象の尻腐れをポジティブに変換
「闇落ちとまと」 の黒い模様は、トマトを甘くするために水やりを意図的に控えることで発生する 「尻腐れ」 という現象によるものです。
普通であれば、こうした見た目の不完全さは規格外品となり、市場への出荷対象からは除外されてしまう可能性が高いです。
しかし、闇討ちとまとは黒くなった見た目をネガティブなものとして隠そうとするのではなく、ユニークな特徴としてポジティブに打ち出し、商品名に反映し消費者に伝えることでアピールできる要素に変えました。
商品名に入っている 「闇落ち」 という言葉は、一見すると商品が持つ 「弱み (選ぶのを避けられる直接的な要因) 」 とも捉えられる部分を、消費者にとって魅力的な 「強み (他ではなく選びたくなる理由) 」 へと転換したのです。
プレミアム価格でも完売の人気ぶり
もともとは規格外品だったトマトですが、「闇討ちとまと」 というブランドにすることによって、価格は通常のトマトよりも高い 250g 1500円で販売され、しかも即座に売り切れるという人気を得ました。
人気の要因は、ユニークな商品名だけではなく、トマトとしての品質の高さ、甘みの凝縮されたフルーツトマトとしての基本的な価値があったからこそでしょう。
良いネーミングの要素分解
では 「闇落ちとまと」 の成功において重要な役割を果たしたネーミングについて、具体的にどこが良いのかを分解して掘り下げていきましょう。
独自性
1つ目は独自性です。
「闇落ちとまと」 という名前は、スター・ウォーズのダークヒーローであるダース・ベイダーから着想を得たとのことです (参考記事) 。
「闇落ち」 という表現は、トマトに表れた黒い模様と、正義の騎士が悪の道へと堕ちていくという物語を連想させ、トマトとスター・ウォーズが絶妙に結びつけられています。
商品名がトマトの見た目を表現することに加え、スター・ウォーズの世界観を取り入れていることで、単なる奇抜なネーミングの商品名ではなく独自性を発揮しているわけです。
強みの訴求
2つ目の要素は、商品名に強みを入れ込んでいることです。
「闇落ちとまと」 というネーミングは、見た目の特徴を 「闇落ち」 と表現することにより、敬遠されがちなトマトが黒くなっていることを肯定的に捉え直し、尻腐れはむしろそれだけ甘いトマトであることを訴求しています。
黒い模様はトマトの甘さを追求する過程で生じたものであり、それが 「闇落ち」 という名でポジティブな形に再解釈されているため、「このトマトは普通ではない特別なものだ」 という認識を消費者にもたらすができます。
インパクト
3つ目の 「闇討ちとまと」 のネーミングの要素はインパクトにあります。
「闇落ち」 という言葉には独特のインパクトがあり、一度聞くと忘れにくい商品名です。
ユーモアなニュアンスも含まれており、自虐的な笑いも誘うような親しみやすさを与えます。一般的には避けられがちなトマトの尻腐れという特徴をあえて前面に出し、むしろ堂々と商品名に取り入れることでインパクトを発揮しています。
弱みを強みに変えるプロセス
「闇落ちとまと」 から学べるのは、強みのつくり方です。
では、一見すると 「弱み」 となる商品特徴を 「強み」 に変えるためには、どうすればいいのでしょうか?
次のようなプロセスをとるといいでしょう。
- 弱みを 「事実」 として捉える (弱みに正面から向き合う)
- その事実を 「強み」 に変えるために新しい解釈を見つける
- 解釈を価値だと感じる顧客に提案する
では順番に詳しく見ていきましょう。
[Step 1] 弱みを 「事実」 として捉える
闇落ちとまとの場合は 「尻腐れ」 という現象は、トマトを甘くするための栽培技術に起因するものであり、品質の悪さを意味するものではありません。しかし消費者はその知識がないため、黒く変色しているトマトを見ると、傷んでいる、あるいは腐っていると思うかもしれません。
ここで重要なのは、商品が持つ 「弱み」 とされる特徴を感情的に否定するのではなく、客観的な事実として受け入れることです。
[Step 2] 強みに変えるために新しい解釈を見つける
次に、その事実をどう解釈すれば強みとして打ち出せるかを考えます。
闇落ちとまとの事例では、あえて 「闇落ち」 という言葉を用いて、黒い模様を欠点ではなく、ダークな魅力を持った良い特徴として再解釈しました。スター・ウォーズという有名な物語からもヒントを得て、弱みだった黒い模様を商品のユニークさや強み (通常のトマトよりも甘いこと) を証明するものだという意味合いに変えたのです。
[Step 3] 解釈を価値と感じる顧客に提案する
そして、解釈し直した特徴 (強み) を価値として感じてくれる消費者やお客さんに向けて、商品を強みとともに提案します。
「闇落ちとまと」 というユニークなネーミングは、トマトの品質の良さを理解し、かつその特別な見た目に魅力を感じる消費者に響きました。価格が一般的なトマトよりも高いにもかかわらずすぐに完売するのは、まさに強みの提案が適切なお客さんにしっかりと届いたことを示しています。
事例から汎用化できる学び
今回の 「闇落ちとまと」 の事例から学べることは、商品の特性を再解釈し、弱みを強みに転換して顧客価値を創造することの重要性です。この考え方は、他の商品やサービスにも応用可能です。
自分なりの切り口を持つ
闇落ちとまとという商品名は、映画の 「スター・ウォーズ」 という農業とは全く違う世界から着想を得ました。
このように、自分の好きなことや得意分野からユニークな視点を取り入れることによって、商品やサービスに新しい解釈を加えることができます。
商品にオリジナリティを持たせられるだけでなく、お客さんに対しても強いメッセージを伝えることができます。
弱みに向き合い、強みに変える
欠点や弱みと思える部分を、そのままネガティブなものとして捉えず、別の視点から見直することにより強みとして再解釈できないかを考えてみると、新しい発想になれます。
闇落ちとまとは 「尻腐れ」 という普通なら弱みになってしまうことを魅力的な要素に転化し、消費者に新たな意味合いを持たせ価値をつけたことにより、プレミアム価格で販売しても完売するトマトになりました。
闇落ちとまとは、一見すると弱点である特徴を創造的な解釈で強みに変え、ユニークなネーミングによって消費者に強くアピールすることに成功したマーケティング事例です。
基本的価値を大切にする
もうひとつ、学びのポイントは、「闇落ちとまと」 が成功した背景には見た目やネーミングの奇抜さだけではなく、基本的な 「おいしさ」 という価値が土台として確立されていた点があります。
どんなにユニークな商品名であっても、基本的な商品価値が欠けていればお客さんに受け入れられることはありません。たとえば、おいしさや鮮度などの基本的な品質を向上させる努力など、商品の本質的な価値を忘れずに磨き続けることが大切です。
まとめ
今回は、ユニークな商品名のトマトである 「闇落ちとまと」 を取り上げ、学べることを見てきました。
最後にポイントをまとめておきます。
- 弱みを強みに転換する: 商品の欠点や不完全な部分をネガティブなものに捉えるのではなく、新しい視点から再解釈する。独自の魅力や顧客価値に変換する
- 独自の切り口とオリジナリティの追求: 異なる分野や文脈 (今回の事例ではスター・ウォーズ) からインスピレーションを得ることで、ありきたりな視点から脱却し、新しい意味合いを与える。強いメッセージ性と記憶に残る独自性を生み出せる
- 本質的な価値の重要性: ユニークな外見やネーミングは注目を集めるが、それだけでは持続的な成功は得られない。商品の基本的な品質 (おいしさ, 機能性, 信頼性など) を追求し、土台として磨き続けることが大事
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