#マーケティング #コーチング #存在承認
お客さんは自社のビジネスやブランドにとってどれほど重要な存在なのか――。
日々のマーケティング活動で、お客さん一人ひとりの存在を十分に尊重できているかどうか、立ち止まって見直すことは大切です。
今回取り上げるのは、マーケティングにコーチングの要素を取り入れる 「コーチングマーケティング」 です。
マーケティングが商品やサービスを通じてお客さんに価値を伝える手法だとすると、「コーチングマーケティング」 は、その価値の伝え方をコーチングの視点を入れるものです。お客さん自身が心から 「これを使いたい」 や 「このブランドを持っていたい」 と思えるような関係を築くためのアプローチです。
今回は、コーチングのエッセンスである 「承認」 という概念をもとに、マーケティングで活用できる具体的な考え方と実践方法を探っていきます。特に、「存在承認」 を重視したアプローチに焦点を当て、お客さんの心に寄り添うことがどのようにビジネスの成功に寄与するのかを紐解きます。
コーチングマーケティングについて、ぜひ一緒に学びを深めていきましょう。
コーチングとは?
コーチングは、対話を通じて相手の目標や可能性を引き出し、自己成長をサポートする技法です。
相手の潜在能力を引き出す
コーチングはスポーツ、企業のマネジメントから教育に至るまで多くの分野で活用されています。
共通するポイントは 「相手の潜在力を引き出すこと」 です。
コーチは、相手に対して直接的な答えを示すのではなく、質問や承認をすることで自ら気づきを得られるように支援します。相手が自己への信頼感を高め、自発的に行動する力を引き出します。
コーチングにおける承認 (アクノレッジメント)
コーチングの手法のひとつに 「アクノレッジメント (承認) 」 があります。こちらの 「承認 (アクノレッジ) 」 が人を動かす - コーチングのプロが教える相手を認め、行動変容をもたらす技術 (鈴木義幸) という本に詳しく書かれています。
アクノレッジメントは、相手の行動などに価値を見出し、積極的に認めることによって、相手の自己肯定感を高め、意欲を引き出すアプローチです。承認は単なる褒め言葉とは異なり、相手が 「自分がここにいることに意味がある」 と実感できるような意味づけをします。
コーチングにおける承認は、次の4つの対象に分けられます。
- 相手が取った具体的な行動や努力を認め、評価する
- たとえば 「一歩を踏み出した行動がすばらしい」 と、行動自体を賞賛する
✓ 成果承認
- 相手が達成した結果やゴールに対しての承認
- 相手は自分の努力が成果に結びついたことを実感でき、他人に認めれらたことでより大きな達成感を得られる
✓ 感情承認
- 相手が抱いている感情を理解し、受け入れる
- 「その状況で不安を感じるのは自然なことです」 などと、相手の気持ちに理解を示したり共感する
✓ 存在承認
- 相手がいること自体を尊重し、存在自体に価値があると伝える
- 行動や結果が出ていなくても、その人が 「そこにいること」 に意味を見出す
コーチングマーケティング
ここからは、コーチングをマーケティングにどう活用できるかの考察です。
コーチングの4つの承認をマーケティングに応用するのが、「コーチングマーケティング」 です。
コーチングマーケティングでは、行動から存在までの4つの承認をマーケティングに当てはめることにより、お客さんが自らの選択で 「この商品を買いたい」 、「このブランドを使い続けたい」 と思えるように促します。
では、「存在承認」 を重視したコーチングマーケティングに焦点を当て、具体的な実践方法を見ていきましょう。
パーソナライズされたメッセージでの存在承認
存在承認は、パーソナライズされたメッセージを活用することによって、お客さん一人ひとりを大切にする姿勢を伝えるというアプローチです。
たとえば、お客さんの誕生日や初めての購入の記念日に 「いつもありがとうございます。あなたがいることで私たちはこれからも商品を扱っていくことができます」 のようなメッセージを添えると、特別感を感じてもらえる効果があるでしょう。
ブランドの成長が、お客さんの支援によって成り立っていることをストーリーとして伝えるのも効果的です。「あなたがいることで、私たちは前進できています」 という言葉をブランドが発信することにより、お客さんは自分がブランドの一部であると感じやすくなり、存在承認の効果を得やすくなります。
コミュニティ形成での存在承認
存在承認を表現する場として、コミュニティの形成も有効です。
ブランドのファンやお客さんが集まるコミュニティをつくり、「皆さんがこうしていてくれるからこそ、私たちもがんばれます」 といったメッセージを発信することで、お客さん同士がつながりを感じ、さらにブランドへの親しみが深まります。
実店舗やイベントでのリアルな存在承認
リアルな場でも、お客さんの存在を認め、感謝を伝えることが可能です。
実店舗での呼びかけやイベントで 「皆さんが来てくださったことに本当に感謝しています」 と伝えることによって、参加者は自分の存在が尊重されているという実感を持てます。
コーチングマーケティング導入のポイント
コーチングマーケティングを成功させるためには、いくつかの重要なポイントがあります。これらを意識することで、お客さんとの信頼関係を深め、長期的なブランドロイヤルティを築くことができます。
お客さんの 「存在」 に焦点を当てる
ブランドが発信するストーリーの中で、お客さんの存在がどれほど重要かを示すことがポイントです。
「あなたがいるから、この商品は成功しました」 「お客さまの支えが、私たちの成長を後押ししています」 のようなメッセージを、具体的な事例も交えて伝えるといいでしょう。お客さん一人ひとりがブランドとの一体感を感じられ、自然とブランドへの愛着が高まることが期待できます。
双方向のコミュニケーション
コーチングが一方通行ではなく対話で成り立つように、コーチングマーケティングでもお客さんとの双方向のコミュニケーションを重視するといいでしょう。
SNS での交流、イベントでの直接の対話などを通じて、「あなたの声を聞きたい」 「その意見が商品やプランドをより良くする」 としっかりと伝えることによって、存在承認がさらに強調されます。
定期的な 「感謝」 の発信
感謝の言葉は存在承認を表す直接的な方法です。例えば、購入後に 「あなたのおかげで、私たちはこれからも続けることができます」 といった内容の感謝の意を伝えることによってです。
ただし、それを形式的な内容にするのではなく、継続的かつ具体的なメッセージで発信することが重要です。「おかげさまで、私たちは設立5周年を迎えることができました」 というメッセージや、特定のキャンペーン期間中の参加者への感謝カードなど、適切なタイミングで感謝を伝えます。
会社全体で 「お客さんの存在を認める文化」 を育成
ここまで見てきたコーチングマーケティングを導入する際には、顧客接点を持つ社員一人ひとりが 「お客さんの存在を承認する」 という文化のような暗黙知を共有することが大事になります。
例えば、チームでの会議や研修の場などでお客さんとの実際のリアルなエピソードを共有し、自分たちのビジネスは 「お客さんあってこそ存続できる」 というマインドを育てる取り組みが効果的です。
コーチングマーケティングは、お客さん一人ひとりのことを特別な存在であると捉え、いてくれること自体に価値があると認めることが大切です。「存在承認」 に焦点を当ててマーケティングを実践していくことを目指します。
まとめ
今回は、コーチングの 「承認」 をマーケティングに応用する 「コーチングマーケティング」 について考えました。
最後にポイントをまとめておきます。
- コーチングマーケティングは、お客さんの行動、成果、感情、存在そのものを承認することによって、お客さんのことを尊重すべき存在として捉える
- コーチングの 「存在承認」 をマーケティングに当てはめれば、お客さんの存在そのものが自社ビジネスにとって大切であり、お客さんの存在そのものに感謝を伝えていく
- コーチングマーケティングではお客さんとの双方向のコミュニケーションを重視し、お客さんの声を積極的に取り入れる。お客さんはブランドの共同パートナーと位置づける
- コーチングマーケティングを実践するには、組織全体でお客さんの存在を尊重する文化を醸成することを目指す。お客さんへの感謝と承認を大切にするることを組織の価値観として組み込むことで、顧客中心のマーケティングを実現できる
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