#マーケティング #新しい使い方 #価値提案
「こんな使い方もできるんです」
そんな新しい提案をすることで、商品の売上は伸びるのでしょうか?
ただ単に新しい使い方を提案するだけでは、お客さんの心に響くとは限りません。大切なのは、その使い方によって得られる価値が、お客さんの暮らしをどう豊かにするのか、ビジネスをより良くするのかを明確に示すことです。
では、お客さんの心に響く 「新しい使い方」 とは、どのように見出し、いかに提案すれば良いのでしょうか?
今回は、使い方提案による顧客拡大の可能性と、顧客価値を提案することでの効果的なマーケティングのポイントについて、具体例を交えながら解説します。ぜひ一緒に学びを深めていきましょう。
緑茶を 「丸ごと飲む」
従来の緑茶の飲み方と言えば、急須に茶葉を入れてお湯を注ぎ、抽出して飲む方法が一般的でした。
ただしこの方法では、茶葉の有効成分の一部しか摂取できず、茶殻 (ちゃがら) に多くの栄養が残ってしまいます。
従来の飲み方と新しい提案
一方の 「ALL GREEN」 というブランドが提案しているのは、茶葉を丸ごと粉末にして摂取する新しい楽しみ方です。
茶葉を丸ごと摂取することによって、従来の抽出して飲むという方法からひと味違う体験を提供しています。
緑茶は丸ごと飲むと、野菜の王様と言われる 「ケール」 と同等以上の健康効果があるそうです。しかし、急須を使って抽出する一般的な緑茶の飲み方では、栄養の多くは茶殻といっしょに捨てられてしまいます。
もし茶葉を丸ごと飲めば、茶葉に含まれる栄養素を余すことなく取り入れることができます。さらに健康のためだけにとどまらず、リラックス効果や日々の楽しみとしての嗜好性の側面も持ち合わせています。また、粉末化することにより緑茶を様々なレシピにも使えます。スムージーやデザート、料理など、これまでにない形で緑茶を楽しめます。
ALL GREEN は公式インスタグラムで、レシピから飲み方のバリエーションまでさまざまな楽しみ方を紹介しています。
緑茶文化の進化
ALL GREEN がやっているのは、新しい健康習慣を提案することで、緑茶文化そのものを次のステージに進める試みです。飲み方を変えるだけではなく、緑茶の顧客価値そのものを再定義し、新たな魅力をつくり出そうとしているのです。
緑茶に対する人々の認識を変え、より多くの人にその恩恵をもたらすことによって、緑茶の需要を喚起し、文化的な意義も広められることが期待できます。
このように、新しい利用シーンの提案が緑茶の新しい価値を生み出し、マーケティングにも影響を与えるわけです。
新しい利用シーンの提案がもたらす効果
では、ALL GREEN の事例から、学べることを掘り下げていきましょう。
新しい使い方提案による顧客拡大
マーケティングの視点で見ると、商品やサービスの今までにはない 「新しい使い方」 をお客さんに提案することは、効果的な戦略です。
既存のお客さんの利用頻度が増えるだけにとどまらず、その使い方がまだお客さんではなかった未顧客の人にとっても魅力的に映れば、新規顧客の獲得にもつながります。
ALL GREEN が提案する 「緑茶を丸ごと食べる」 という新しい緑茶の食べ方は、すでに今まで緑茶を飲んでいた人に対しては 「もっと健康になれる」 「より多くの栄養を摂取できる」 という新たな価値をもたらします。
一方で、これまで緑茶に興味がなかったり飲んでいなかった人でも、健康や美容への意識が高い人には、新たな魅力を訴求することができます。緑茶の新しい楽しみ方を知ることで、緑茶に対する興味が湧き、結果として新しい顧客層の拡大に貢献します。
顧客価値を起点にした提案
新しい利用シーンや用途の提案で重要なのは、その提案がお客さんにとってどれだけの価値を持つかという点です。
例えば、忙しいビジネスパーソンにとって、栄養を手軽に摂取できる新しい飲み方は、日々の健康維持をより楽にできるという価値があります。お客さんは健康維持の手間が少なくなると感じ、商品や生活への満足度が高まることでしょう。
利便性の向上や健康面での有益さといったメリットに加え、情緒的な価値や社会的価値があるかどうかも大事です。具体的には、家族と一緒に健康的なライフスタイルに楽しみながら取り組めるという情緒的な価値や、環境に配慮した製品を選ぶことで社会に貢献するという社会的価値が考えられます。
たとえ新しい使い方を打ち出しても、そこに魅力的な体験や顧客価値が期待できなければ、売り手都合で顧客不在の価値提案になってしまいます。そのため、 「こんな顧客価値があります。こんな方法で使ってみてはいかがですか?」 という形で、顧客価値を起点にした訴求をすることがマーケティングでは大切です。
お客さんは商品を消費するだけでなく、商品を通じて新しい生活体験や顧客価値を得ることができるという期待を持てます。
新しい利用シーンや用途の提案において、その使い方がお客さんにとって顧客価値があるかをしっかりと示せるかが大事です。
消臭芳香剤への当てはめ
新しい利用シーンの提案は、緑茶以外の分野にも応用できます。
従来の使用シーンと新たな提案
例えば、消臭芳香剤で考えてみましょう。
消臭芳香剤は家庭のリビングルームや寝室、トイレ、玄関、クローゼットといった家の中で使われることが一般的です。リビングでは生活でのにおいを和らげるために置かれ、トイレでは消臭、クローゼットでは衣類の保管中のにおいを防ぐために使われます。
家以外にも車の中などの消臭芳香剤もありますが、さらに職場の執務フロアや会議室、来訪者が待機するエントランスホールなど、今まであまり置かれていなかった空間での消臭芳香剤の使用を提案することが、新しい利用用途の訴求の例です。
職場環境での利便性と情緒的価値の向上
提案には、いくつかの具体的な価値を含めることでより魅力的にできます。
職場での消臭芳香剤の使用では 「働く環境をより快適にする」 という価値になります。
消臭芳香剤をオフィス内の執務フロアや会議室の中にも設置することによって、職場全体が自然な香りによって居心地が良くなり、従業員の集中力や生産性の向上が期待できるという実用的なメリットがあります。快適な環境は従業員のエンゲージメントを高め、結果的に職場全体のパフォーマンスが向上するでしょう。
また、来訪者を迎えるエントランスに消臭芳香剤を置けば、「心地よいおもてなしの空間」 を演出し、来訪者には香りにより 「細部まで配慮が行き届いた企業」 という印象を与える効果も期待できます。
香りによって職場環境の快適さを高め、会社のイメージを向上させられれば、従業員の満足度が上がるだけではなく、人材採用のリクルーティングの際のアピールポイントにもなり得ます。
顧客価値を伴っての提案を
新しい利用シーンや用途の提案は、ただ 「新しい使い方」 を打ち出すだけでなく、それがお客さんである相手にとってどのような具体的な価値や体験をもたらすのかをしっかりと示すことが大事です。
先ほどの消臭芳香剤の例では、新たなシーンでの利用用途における快適さやおもてなしなどの価値を共有し、これにより新規の顧客層 (例えば企業や施設管理者) を取り込むことができ、さらには既存のユーザーにも 「職場や公共の場でも使われ信頼されている製品」 としての価値イメージを高めることつながります。
これが実現できるかどうかは、新しい利用シーンや用途の提案において、その使い方がお客さんにとって顧客価値があることです。
まとめ
今回は、ALL GREEN による緑茶を丸ごと食べるという提案事例を取り上げ、学べることを見てきました。
最後にポイントをまとめておきます。
- 新しい使い方を提案することによって、既存顧客の利用頻度が増えるだけでなく、新規顧客の獲得も期待できる
- ただし、新しい使い方を打ち出すだけでは十分とは言えない。顧客価値を明確にし、その価値にもとづく使い方を提案することが大事
- 提案する顧客価値には、利便性や健康面の有益さに加え、情緒的価値や社会的価値も含めるといい
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