#マーケティング #戦略 #ビジネスキャリア
ビジネスの世界では 「いかに戦うかの戦略」 がよく語られます。しかし、実は 「戦わない戦略」 のほうが、持続的な成功につながることが少なくありません。
なぜなら、正面からの競争はリソースを消費し、たとえ勝利しても大きなコストを払うことになるからです。
では、どうすれば戦わずして勝つことができるのでしょうか?
今回は、ビジネスにおける 「戦わない3つの戦略」 をご紹介し、それを個人のビジネスキャリアにも応用する方法について掘り下げます。
戦わないための3つの戦略
戦略の漢字は 「戦いを略す」 と書きますが、戦わないためには次の3つのアプローチが考えられます。
- ニッチ戦略
- 不協和 (ジレンマ) 戦略
- 協調戦略
それぞれについて順番に見ていきましょう。
[戦わない戦略 1] ニッチ戦略
ニッチ戦略というと差異化と同じことに見えるかもしれませんが、差異化とニッチは必ずしもイコールではありません。差異化はリーダーや大手プレイヤーと戦うこと、ニッチ戦略は戦わない戦略と捉えることができるからです。
前者の差異化は市場でのリーダープレイヤーと同じ土俵に立ち、違いを強調することによって戦います。
一方のニッチ戦略は、戦力が豊富な大手プレイヤーが気づかない、入ろうと思わないところで生きる道を見出します。限られた市場で利益を上げることを狙います。
[戦わない戦略 2] 不協和 (ジレンマ) 戦略
2つ目の戦わない戦略は、不協和戦略です。
不協和戦略は、相手が持っている資源や強みを無効にする、さらには強みを弱みに転換することを目指します。
大手プレイヤーにとっては市場に入りたくても、もし参入するとジレンマが起こり入ってこられない状況をつくり出します。
ジレンマとは例えば、多くの店舗や営業人員を抱えることは高い営業力の源泉になっていたことを、人やお店を介在しないビジネスモデルが成功パターンになれば、店舗や人員という資源が負債になってしまうことです。人・実店舗を介さない新しいビジネスモデルに転換しようとしても、そう簡単には人やお店を捨てることはできないでしょう。
不協和戦略での勝ち筋になるのは、大手プレイヤーよりも先手をうち、対応される前にジレンマとなる状況を実現することです。
[戦わない戦略 3] 協調戦略
3つ目の戦わないための戦略は、協調戦略です。
ここまでの2つを見てきたニッチ戦略と不協和戦略に共通するのが 「棲み分け」 でした。それに対し、協調戦略は 「共生」 の道を選びます。
協調戦略は、相手のバリューチェーンに入り込んだり、あるいは自分たちのバリューチェーンに他社を組み込むこともあります。
バリューチェーンや業務プロセスの一部を引き受け、共生できる領域と方法を探り、バリューチェーンという生態系の中で自分たちが必要不可欠な存在になるわけです。
バリューチェーンに入り込むためには、自分たちがそこで他よりもうまくできる強みを発揮できるかが問われます。
協調戦略で成功のカギを握るのは、自分たちのコアコンピタンス (強みにつながる源泉) を見極め、それを活かしてバリューチェーンをより良いものにすることです。
会社でサバイブするための 「戦わない3つの戦略」
では、後半のパートでは戦わない戦略を個人のビジネスキャリアに当てはめて見ていきます。
会社でのビジネスキャリアを築く上で、競争を勝ち抜くことが必ずしも最良の道ではありません。特に、まだ経験や機会が限られた若手ビジネスパーソンの方にとっては、大きな競争に巻き込まれることなく、自分の道を切り拓くことが重要です。
では、戦わないための3つの戦略を個人のレベルに応用し、会社内でのサバイブする (生き残る) 方法について考えてみましょう。
[ニッチ戦略] 自分だけができる仕事を見つける
他のメンバーが見落としがちな仕事領域を見つけ、その分野で専門性を築くことがニッチ戦略への当てはめです。
会社の中には、多くの人がやりたがらなかったり、誰も注目しなかったりするものの、実は重要な業務があります。そのような埋もれた仕事を積極的に引き受け、存在感を示すことで、自分の価値を周囲にアピールできます。
もう少し具体的に考えてみましょう。
社内でまだあまり注目されていないスキル、例えば、新しいデジタルツールの使い方、特定の市場についての知識を深め、自分がその分野の 「専門家」 になることで、自然と頼られる存在になります。特定のスキルを磨くというアプローチです。
他には、裏方の仕事を引き受けるというのもそうです。 多くの人が避けがちな地味で泥臭い業務 (例: データ分析, 業務プロセス改善) を担当することによって、会社の中での重要なサポート役として認識されることを狙います。
[不協和 (ジレンマ) 戦略] 競争相手の強みを無効化する状況をつくる
不協和戦略とは、競争相手の強みを無効化するような状況を作り出し、自分の柔軟性を活かして成功するアプローチでした。
他の人が持つ強みが逆に制約となる状況を利用することにより、自分の独自性を際立たせることができます。
会社の中での状況に具体例を考えてみると、他の同僚がオフィス勤務を前提とした働き方をしている中で、リモートワークを活用し、早朝や夜間など他の人が対応しにくい時間帯での業務をこなすことで、迅速で柔軟な対応を実現することが当てはまります。
また、新しいツールや手法の先取りというのも手です。
既存の方法を得意とするがゆえに、新しいやり方を取り入れる足かせになっている他の同僚を横目に、自分は新しいツールや手法を積極的に試し、仕事のやり方を強制的にでも変えていくというふうにです。
もちろん最初は試行錯誤が起こるので、一時的に非効率な状況になります。しかし、新しいことに挑戦していく中で、まわりの強みを無効化するような変化を自分の中で起こすことを目指します。
[協調戦略] コラボレーションで強みを発揮する
協調戦略を会社での働き方に当てはめると、社内で他の人や部門と協力しながら自分の存在を不可欠なものにすることです。
他のチームメンバーと共生することによって、自分の価値を高め、競争ではなく協力を通じて成果を上げるというアプローチです。
例えば、チーム内外の橋渡し役を担います。
部門やチームをまたぐプロジェクトやコミュニケーションのハブとなるような役を積極的に務めることによって、調整役として双方からのありがたがれる存在になり、信用を得ていきます。橋渡しとなる調整役は、一段階上の視座になれ、また相手視点になるためにも有効です。
他の協調戦略からのやり方には、情報や知識共有の場をつくるという方法もあります。
例えば、自分の得意な分野に関する勉強会、あるいは逆の苦手領域のトレーニングとなる場を社内で立ち上げ、旗振り役として推進し、自分の専門性を広めたり、新たに鍛えることで他者との情報・知識共有の機会を提供します。
以上の 「戦わない3つの戦略」 は、会社内での自分の立ち位置を確保し、あなたのビジネスキャリアを長期的に築くための有力な方法です。
競争の激しい環境で目立つ存在になるためには、大きな戦いに挑むよりも、自分の強みを活かしつつ、周囲と適切に協力することも生き残りの道のひとつになります。
戦略的に自分の 「やること」 と 「やらないこと」 を明確にし、戦わずしてサバイブする戦略を取ることによって、自分にしかできないキャリアをつくっていきましょう。
まとめ
今回は、戦わないための戦略をテーマに、個人のレベルへの当てはめとして会社内での働き方やムーブへの応用を考えました。
最後にポイントをまとめておきます。
- ニッチ戦略は、競争を避け他の人が手を出さない分野で専門性を築き、自分の価値を高める。例えば、注目されない業務や裏方の作業を積極的に引き受けることで、自分だけのポジションを確立できる
- 不協和戦略とは、競争相手の強みを無効化すること。他者が得意とする手法を逆手に取って、自分の強みとする
- 協調戦略は、他者と共生することで自分の存在を不可欠なものにする。部門間の調整役や情報・知識共有の場を提供し、組織内での自分の価値を高め、協力を通じた成果を得る
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