#マーケティング #ユーザーインタビュー #質問
ユーザーインタビューで 「あまり深い話を聞けなかった」 と感じたことはないでしょうか?
インタビューでは質問の仕方次第で、得られる洞察の質は大きく変わります。特に相手の潜在ニーズや本音を引き出すためには、質問の技術が重要です。
今回は、心理学にもとづく質問技術を活用して、ユーザーインタビューで深い洞察を引き出す具体的な手法をご紹介します。ユーザーリサーチを行うあなたに、日々の業務にすぐに活かせる質問のテクニックを、具体的な例を使って解説します。
ぜひ一緒に学びを深めていきましょう。
ユーザーインタビューで示唆を得る質問方法
書籍 「心理学に基づく質問の技術 (大谷佳子) 」 で紹介されていた質問方法は、マーケティングリサーチにも活用できます。
順番に見ていきましょう。
[チャンクダウン] 抽象的な発言の具体化
ユーザーが 「操作が分かりにくい」 といった抽象的な不満を述べた場合、そのままでは具体的な課題を特定するのは難しいです。
そこで具体化を促すために 「具体的にどの場面でそう感じますか?」 と質問することによって、問題の詳細を掘り下げていきます。ユーザーが困惑する具体的な場面を特定していくわけです。
- インタビュアー 「操作が分かりにくいということですが、具体的にどの画面でそう感じましたか?」
- ユーザー 「特に設定画面ですね。項目が多くて、どれをどうすればいいかが分かりにくいです。」
- インタビュアー 「例えば、設定画面の中のどの項目が特に分かりにくいですか?」
このように抽象的だったことを具体化する問いを続けることで、ユーザーにとって不便なところの根本原因に迫ることができます。
[スケーリング質問] 程度の確認に有効な質問
ユーザーがあるプロダクトや機能の使用経験について 「だいたい満足している」 と回答した場合、その言葉だけでは満足度の具体的なレベルを把握することできないでしょう。
このような曖昧な答えには、「10点満点で評価すると今の満足度はどのあたりですか?」 とスケーリング質問を使えば、満足度のニュアンスを数値から把握できます。数値化を促す問いによって、時間が経過しての変化などの比較もしやすくなります。
- インタビュアー 「プロダクトの今回のアップデートについて、使ってみての満足度を10点満点で評価すると何点くらいですか?」
- ユーザー 「そうですね、6点くらいでしょうか。」
- インタビュアー 「10点の残りの4点は、どこが足りていないからですか?」
- ユーザー 「理想的には、この機能が改善され、今まで時間がかかっていたことを一瞬でできるようになるといいかなと思います。」
- インタビュアー 「なるほど、ありがとうございます。ちなみに、アップデート前の評価は4点とおっしゃっていましたが、今回の6点と比べると2点分の改善された部分はどのあたりでしたか?」
このように数字で使いやすさや体験を具体化することによって、ユーザー体験の改善点、今後に対処すべき課題の方向性への示唆が得られます。
[仮定の質問] アイデア発想を促す質問
新機能やサービス改善のアイデアをユーザーに求めるとき、「もっと良いアイデアはありませんか?」 と漠然と尋ねても、ユーザーが 「良いアイデアであること」 を意識しすぎて発言を躊躇したり、結局は 「特にないです」 と言われてしまうことがあります。
そこで、「もし、何の制限もなく改善できるとしたら、どんな機能やデザインにしたいですか?」 と仮定の質問を使い、発想の枠を広げてみるといいです。
- インタビュアー 「もし技術の制限がなかったら、どんな新しい機能があればもっと便利に感じると思いますか?」
- ユーザー 「制限がないなら、自動的にタグ付けを一瞬で勝手にしてくれると嬉しいですね。」
制約をなくす前提で自由な発想を促すことで、ユーザーの潜在的なニーズを引き出せます。
[例外を探す質問] 失敗とは逆の成功要因を探る質問
ユーザーが特定の操作でエラーを頻発してしまっている場合、成功した例に焦点を当てることで改善のヒントを得ることができます。
具体的には 「エラーにならずスムーズに操作できた時は、なぜうまくいったと思いますか?何か思い当たることはありますか?」 と尋ね、エラーの発生しなかった成功する条件を特定でき、再現性を高めるための情報を得ます。
- インタビュアー 「屋外でアプリを使っているときにエラーが出ることが多いとのことですが、逆にスムーズに操作ができたときは、どういう使い方をされましたか?」
- ユーザー 「そうですね、そう言われると自宅で使っている時はエラーになったことはないです。」
- インタビュアー 「なるほど、屋外か自宅かの違いですね。他には何か思い当たる点はありませんか?」
成功したときの状況を探ることにより、失敗が起こる場合での問題の究明につながる仮説を見つけやすくなります。
[コーピング・クエスチョン] 困難を乗り越えた際の行動を探る質問
ユーザーが使いづらいと思う状況において、ユーザーが自分なりの創意工夫をしている場合、その工夫には商品・サービスの改善へのヒントが隠されています。
例えば 「使いやすくするために、何か工夫をしていることはありますか?ぜひ教えてください」 と訊くことで、ユーザーの対処方法や工夫ポイントを知ることができ、改善の示唆が得られるでしょう。
- インタビュアー 「設定画面が使いづらいとおっしゃっていましたが、どのように工夫して使っていますか?」
- ユーザー 「頻繁に使う設定はスクリーンショットを撮って、その画像を見ながら探しています。」
- インタビュアー 「なるほど、スクリーンショットで補っているんですね。参考になります。ありがとうございます。」
ユーザーの工夫から、機能改善に役立つ着想につながる示唆を引き出せます。
[視点転換の質問] 多角的な視点での発想を促す質問
特定の課題に対してユーザーが自分ではどうすればいいかをインタビューの場ではすぐに思いつかない場合、「もし、他の人の立場になったとしたら、どのように感じると思いますか?」 と質問をしてみましょう。
インタビュー相手に 「自分ではない第三者の視点」 で考えてもらうことで、新たな視点からの発想を引き出します。
- インタビュアー 「もし、あなたの母親がこのアプリを使っていたら、どの部分を使いやすいと思い、どの部分を改善してほしいと思うでしょうか?」
- ユーザー 「そうですね、もし母なら、たぶん検索機能がもっとスムーズだとうれしいと思うはずです。毎回同じ項目を探すのが手間なので。」
- インタビュアー 「ありがとうございます。お母さんの視点から見ると、検索方法に改善の余地があると感じられるのですね。」
異なる視点を提供することによって、ユーザーの気づきや新たなや着想が得られることが期待できます。
ここまで見てきた質問手法を活用することで、ユーザーの心の奥に隠れた本音や具体的な改善のヒントを引き出し、プロダクト開発やサービス改善に活かすことができるでしょう。
ユーザーインタビューの質を上げることは、顧客理解を深めるための重要なプロセスです。
次回のインタビューの機会があればこれらの質問を試し、マーケティング活動にぜひ活かしてみてください!
まとめ
今回は、ユーザーインタビューで相手のことを掘り下げるために、効果的な質問方法を考えました。
最後にポイントをまとめておきます。
- チャンクダウン (抽象的な内容の具体化) : 抽象的な回答を具体化するために 「具体的にどういった場面でしたか?」 などと詳細を掘り下げる
- スケーリング質問: 主観的な満足度などを数値で評価してもらうことで、ともすると曖昧になりがちな感想を具体的に把握する
- 仮定の質問 (アイデア発想の促進) : 「もし何も制約がなければどうしたいですか?」 という仮定の質問 (What if) から、相手から自由な発想を引き出す
- 例外探しの質問: うまくいかなかったりエラーが起こらなかった時の成功例に焦点を当て、失敗ではなく成功する条件を見極める
- コーピング・クエスチョン (問題解決をしたとき工夫) : ユーザーが不便なところを独自にどのように工夫しているかを訊き、ユーザー体験への改善のヒントを得る
- 視点転換の質問: 「もし他の人ならどう感じると思いますか?」 と質問し、第三者の視点から新たな捉え直してもらう
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