投稿日 2025/03/26

任天堂の宮本茂さんの 「ゲーム発想術」 に学ぶ、日常を "マーケティングの種" に変える方法

#マーケティング #ビジネスキャリア

マーケティングは難しい…。そうなふうに感じることはないでしょうか?

マーケティングへの着想やアイデアは、私たちの身の回りにあふれる身近な出来事に隠れていたりします。

スーパーマリオの生みの親でもある任天堂の宮本茂さんは、そんな日常の中に秘められたヒントを見出すことの大切さを説いています。ゲームづくりの現場で培った宮本さんの発想は、マーケティング活動にも活かせます。

今回お伝えしたい内容は、マーケティングが身近に感じられ、仕事に生かせる糸口が見つかるかもしれないということです。ぜひ一緒に学びを深めていきませんか?

任天堂の宮本茂さんの教え


スーパーマリオの生みの親としても知られる任天堂の宮本茂さんは、驚きと楽しさを与える数々の名作ゲームを生み出してきました。

最近の決算会見 (2024年11月開催の 「2025年3月期 第2四半期 決算説明会」 ) でも、宮本さんの独特な視点が感じられる興味深いコメントがありました。

ゲームづくりの本質とは?

会見の質疑応答で、宮本さんが新入社員向けの講義について語った場面がありました (質疑応答の4つ目) 。

質問者からの 「宮本さんは天才だからヒットを生み出し続けているように見える。ゲームづくりの本質的な部分は伝えるのが難しいのでは?」 という質問に対し、宮本さんは次のように答えています。

 「『宮本さんはどんな人かと思っていたら、意外と普通の人で安心した』という感想をよく聞くので、私は結構普通な人なのだと思う」 と笑顔も交えながら質問者に返答しました。

そして、仕事に対する考え方についてこのように言いました。「できれば楽しく過ごしたいけど、仕事をするなら効率よく、さらにヒットさせたいと考えています。普段からどうやってもっとヒットを生み出せるかを考えている」 と、効率と成果を重視した姿勢を述べています。

日常の事象にヒントがある

新入社員向けの講義では、宮本さんは任天堂の歴史や強み、ゲームデザインについても語るそうです。

特に印象的だったのは、「よくゲームを遊んでいる人は、前に遊んだゲームをより豪華にしようとする。しかし、重要なのは、日常のさまざまな事象から面白い要素を見つけ出し、それをどうゲームにするかを考えることだ」 と同じ質疑応答の中で話していたことです。

また 「どんなハードウェアや開発環境でも、処理能力を踏まえた上で、実現可能な方法を試行錯誤して設計する。それがゲームデザインだ」 とも語り、新人たちにものづくりの本質を教えているとのことです。

宮本さんのこの考え方は、ゲームづくりに限らず、広くビジネスやマーケティングにも応用できます。

日常の事象からマーケティング活動のヒントを得る


宮本さんの言葉から学べるのは、日常の何気ない出来事から、新しい発想が得られるということです。

では、マーケティングに当てはめてみましょう。マーケティング活動を考えるときも、私たちの日常にあるさまざまな事象や自分の体験に目を向けることによって、マーケティングに活かすことができます。

ここでは、いくつか具体的に当てはめてみましょう。

料理のレシピ動画を見ていて

料理のレシピ動画には、料理の手順の説明にとどまらず、食材選びや料理することの楽しさ、その料理が完成する達成感まで含まれています。

 「プロセスを楽しむ」 という視点は、広告キャンペーンに応用できます。例えば、「商品を使うプロセスそのものが楽しい」 というメッセージを中心にしたキャンペーンを企画することで、商品紹介にとどまらず、体験を共有する広告になります。

また、会員に定期的に配信するメルマガの内容に応用すると、「商品やサービスのちょっとした使い方の工夫で生活が変わる」 というアイデアを紹介することにより、会員ユーザーに商品の新たな価値を感じてもらうことができます。

子どものスポーツの習い事に付き添って

次の応用例は、子どもの習い事への付き添いという日常の一コマからです。

子どものスポーツの習い事では、「上達」 や 「成長」 が目的のひとつであり、コーチや一緒に習っている他の生徒との関わりが役割を果たします。成長や生徒同士での関わりという要素は、新商品のコンセプトづくりやユーザー参加型イベントに活かせます。

具体的には新商品のコンセプトとして、「ユーザーが成長できる機能」 や 「使うたびに新しい発見がある」 といった成長を感じられる要素を組み込むというふうにです。

他には、ユーザー参加型イベントでは、スポーツの習い事のように 「共に学び、共に競う体験」 を入れることで、ユーザー間のつながりを強化し、結果として自社商品や会社へのエンゲージメント (親近感や愛着) を高めることができるでしょう。

庭に落ち葉がたくさんあって掃除をした

家の庭や玄関先の落ち葉の掃除は、一見すると面倒な家事です。一方で良い面に目を向ければ、自然や季節の変化に気づくことができたり、掃除に少し取り掛かると心がなんとなく穏やかになり、手間をかけて整えることによる達成感や満足感が得られます。

こうした 「手入れやケアをしたことでの満足感」 は、広告キャンペーンやメルマガに応用できます。

広告キャンペーンでは、「小さなケアで日々の生活が豊かになる」 というメッセージを打ち出し、商品を 「生活のパートナー」 として位置づけることで共感を引き出します。例えば、掃除ロボットや自動調理家電など、日々の負担を軽減し、生活をより快適にするアイテムを具体例として挙げると、お客さんにとってより具体的にイメージしやすくなります。

メルマガからのコミュニケーションにおいても、「簡単なメンテナンスで得られる快適さ」 や 「日常の中でできるちょっとした工夫」 を提案し、お客さんにとっての価値を再認識してもらえる内容を発信できます。

具体的には、製品の定期的なメンテナンス方法の中に短時間でできるコツや、ゲーム感覚を感じられる遊びの要素を取り入れてみるといいでしょう。面倒だと思ったメンテナンスを楽しくできる方法を紹介し、お客さんからの製品への愛着が高まるような工夫です。

旅行先でのプチハプニング

旅行先での小さなトラブルが起こったことは、誰にも一度や二度はあることでしょう。

旅行中に発生する予期せぬ出来事は、そのときは焦ったり、困ってしまうことでも、ハプニングも旅行ならではの思い出に変えられる側面もあります。

この 「柔軟に対応する力」 や 「ハプニングを楽しむ姿勢」 は、マーケティング活動にも横展開ができそうです。例えば、新商品のコンセプトやユーザー参加型イベントへの応用です。新商品のコンセプトとして、「どんな状況でも楽しめる柔軟なアイテム」 や 「予想外のシーンでも対応できる便利さ」 をアピールすることで、ユーザーにとっての安心感や楽しさももたらします。

また、ユーザー参加型イベントでは、ユーザーが体験した 「思いがけない使い方」 や 「ハプニングの解決方法」 をシェアする企画を通じて、コミュニティ内での交流を促進し、ユーザー同士のつながりを深められるでしょう。

宮本茂さんの発想を活かす

ここまで見てきた宮本さんの 「日常の出来事からアイデアを得る」 という考え方は、広告キャンペーン、新商品の企画、メルマガの内容、ユーザー参加型イベントなど、さまざまなマーケティング活動にも活かせる方法です。

日常の体験の意味合いを掘り下げ、洞察した本質から得られるヒントを具体的な施策に落とし込むことによって、共感を得られるマーケティングにつなげられるのです。

ぜひ、あなたの日常の中にある 「ヒント」 を見つけて、マーケティング活動に取り入れてみてはいかがでしょうか?

まとめ


今回は、任天堂の宮本茂さんの教えから、マーケティングへの示唆を考えました。

最後にポイントをまとめておきます。

  • ゲームづくりで大事なのは、普通の人の目線で日常の事象からヒントを得ること。専門家の視点ではなく、ユーザー目線で考え、驚きや楽しさを生み出す

  • 日常の小さな出来事にマーケティングのヒントも隠されている。料理レシピ動画でのプロセスそのものを楽しませる要素、子どものスポーツの習い事への付き添い、掃除への達成感、旅行中のハプニングへの対応など、日常の体験から示唆を得られる

  • お客さんの立場になり、日常の小さな体験から共感を呼ぶアイデアを引き出し、広告、新商品企画、コミュニケーション施策などに活かすことで、楽しさや価値を感じてもらえるマーケティングや商品開発につながる


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多田 翼 (運営者)

書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。マーケティングおよびマーケティングリサーチのプロフェッショナル。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

前職の Google ではシニアマネージャーとしてユーザーインサイトや広告効果測定、リサーチ開発に注力し、複数のグローバルのプロジェクトに参画。Google 以前はマーケティングリサーチ会社にて、クライアントのマーケティング支援に取り組むとともに、新規事業の立ち上げや消費者パネルの刷新をリードした。独立後も培った経験と洞察力で、クライアントにソリューションを提供している。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。