#マーケティング #カテゴリーエントリーポイント #想起
人は何かを欲しいと思ったり、買おうとしたとき、特定の選択肢を頭に浮かべます。このメカニズムの背景には、お客さんが購買行動を起こす 「入口 (カテゴリーエントリーポイント) 」 が関わっています。
カテゴリーエントリーポイントを理解することによって、お客さんから商品が選ばれる理由が明確になり、効果的なマーケティングを展開することができます。
今回は、カテゴリーエントリーポイントの概念を深掘りし、どのように活用すれば自社商品・サービスがお客さんから選ばれる存在になれるかを解説します。
カテゴリーエントリーポイント (CEPs)
マーケティングにおいて、お客さんが商品やサービスにたどり着くきっかけ、別の表現をすれば 「商品への入口」 を捉えることが大事です。
こうした商品・サービスの利用や購買に至る入口のことを、マーケティングでは 「カテゴリーエントリーポイント (CEPs)」 と言います。
平日のランチの CEPs
例えば、平日のランチに何を食べようかと考えているとしましょう。
このとき 「今日は忙しいから、会社の近くで、予算は1000円以内、ひとりでサッと済ませたい」 という考えが浮かんだとしたら、これが CEPs です。
そこで頭の中のランチの選択肢には、コンビニ、お弁当屋さん、定食店、ファストフード店、あるいはデリバリーサービスなどが候補として浮かぶことでしょう。その中からファストフードを選べば、より具体的にハンバーガーを思い浮かべ、次にマクドナルドやモスバーガー、バーガーキングといったブランドを想起することになります。
結果的にバーガーキングを選びお店に足を運べば、以上が CEPs からの購入決定プロセスとなります。
ガッツリ食べたい CEPs
同じ平日のランチでも、別の気持ちである 「今日はいつもより時間に余裕があり、お腹も減っているからガッツリ食べたい」 と思った場合はどうなるでしょうか?
同じ平日のランチでも、その入口の向こうに想起される選択肢は先ほどの 「サッと済ませたいランチ」 とは異なります。例えば、ボリュームのあるメニューを持たない店舗は選択肢から除外され、想起する候補は変わります。
このように、CEPs はその人が置かれた状況やニーズなどの 「顧客文脈」 によって違ってくるのです。
CEPs を活用するためのポイント
では、CEPs を活用し、マーケティングの成功につなげるためにはどうすればいいのでしょうか?
ここからの後半のパートでは、CEPs を効果的にマーケティングに取り入れるポイントを見ていきましょう。
- CEPs 内は異種格闘技戦である
- お客さんの想起に入っていなければ勝負の土俵にすら上がれない
- CEPs は売り手が勝手に定めない
[ポイント 1] CEPs 内は異種格闘技戦である
CEPs において想起される選択肢は、必ずしも同じ業態だけとはかぎりません。
先ほどの例を続ければ 「サッと済ませたいランチ」 という CEPs では、コンビニ、弁当店、牛丼店、カレー店、ラーメン店など、さらにはデリバリーサービスも含めれば様々な業態が選ばれる候補となります。CEPs 内での競争は異なる業態間の戦い、いわば異種格闘技戦なのです。
成熟した市場においては、競合のいない市場はほとんど存在しません。例えば、飲料業界では炭酸飲料やエナジードリンク、コーヒー、お茶やミネラルウォーターなど、さまざまな選択肢が競合し合い、お客さんのニーズに応じて異なるカテゴリーが競争しています。
ひとつのカテゴリー内のシェアや市場ポジションを分析することは重要ですが、CEPs というレンズを通し、異なる業態間での競争環境や優位性を把握する視点を持つことが必要になります。
[ポイント 2] お客さんの想起に入っていなければ勝負の土俵にすら上がれない
CEPs でお客さんがどんな順番に何を想起していくかは、自分たちが選ばれるかどうかに直結します。
通常、想起の競争は複数の段階で起こります。
ランチの場合、一段階目は、弁当にするか、コンビニにするか、飲食店へ行くか、デリバリーサービスで注文するかという異なる業態レベルの想起競争です。
ここで飲食店が選ばれれば、次は定食屋さん、カフェ、中華、イタリアン、和食、麺類、お寿司、ハンバーガーなどのファストフード、ファミレスといったレベルでの競争になります。もしハンバーガーが選択されれば、マクドナルド、モスバーガー、バーガーキングなどの個別ブランドの単位での争いに入ります。もし牛丼であれば、さらにどの牛丼チェーン店にするかという競争が待っています。
ここから言えるのは、最初の想起段階で自社がいる業態が想起され選ばれなければ、その後の個別ブランド間の勝負の土俵に上がることすらできないということです。
また、ただ想起されればいいというわけではなく、CEPs において 「第一想起」 されるかどうかが大事です。お客さんが想起する頭の中の選択肢の候補や位置において、ポールポジションという先頭位置に自社商品があることが、お客さんからの選ばれる競争の勝利にダイレクトに結びつくのです。
[ポイント 3] CEPs は売り手が勝手に定めない
3つ目のポイントは、CEPs は売り手である企業が勝手に設計するものではなく、お客さんの中に存在するものであるということです。
マーケターの役割は、お客さんがどのような入口から商品・サービスにたどり着くのかを理解することにあります。お客さんの行動と心理にもとづき、お客さんの頭の中にある既存の入口を見つけ出し、整理してまとめることが求められます。
しかし、CEPs を自社の都合で解釈したり無理矢理に勝手につくってしまうと、お客さんの頭の中や思考の実態からかけ離れた、売り手都合の CEPs 設計になってしまうでしょう。恣意的な解釈や希望的憶測で CEPs を設定せず、事実や顧客目線にもとづいたアプローチをとることが大事です。
例えば、旅行業界のケースを考えてみましょう。
ある旅行会社が 「忙しいビジネスパーソン向けの週末リフレッシュ旅行」 を訴求したいとします。ここでもし自社の都合で 「リフレッシュのためには高級な温泉旅館が最適だ」 と考え、豪華な温泉プランを推したとしても、お客さんのニーズに合わない可能性があります。
実際には、ビジネスパーソンがリフレッシュしたいと感じる状況は多様なはずです。人によっては自然に触れられるアクティビティを求めていたり、あるいは豪華な食事とお酒によってストレス発散と気分転換が良い人もいるでしょう。
そこで CEPs をお客さんの立場で理解するためには、顧客インタビューやアンケートなどの調査を行い、どのようなリフレッシュへの入口があるかを顧客目線で知る必要があります。
CEPs は、マーケティングの新しい視点を提供し、お客さんの行動を深く理解するための強力なツールです。各ポイントを踏まえることによって、効果的なマーケティング施策が展開できます。
まとめ
今回は、マーケティングの重要な概念である 「カテゴリーエントリーポイント (CEPS) 」 を取り上げました。
最後に内容をまとめておきます。
- カテゴリーエントリーポイント (CEPs) とは、お客さんが商品やサービスにたどり着き選ぶにあたっての 「商品の入口」
- CEPs は顧客文脈により変わり、状況やニーズに応じて多様に存在する。マーケティングでは CEPs を理解し、どのようにお客さんから選ばれるかを見極めることが大事
- CEPs での競争は異種格闘技戦であり、同業態に限らない。異なる業態間での競争を把握することが必要になる
- 自社商品・サービスがお客さんの想起に入らなければ勝負の土俵に上がれない。最初の想起段階で自社商品がいる業態やカテゴリーが選ばれなければ、その後のブランド間での競争に参加できない。第一想起で自社商品が選ばれるためのカギを握る
- CEPs は売り手が勝手に定めるものではない。顧客目線で CEPs を設定しなければ、お客さんの選び方の実態から乖離する。お客さんの行動や心理を理解し、CEPs を特定することが重要
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