今回は書評です。
ほんとうの欲求は、ほとんど無自覚 - インサイトのシンプルな見つけ方 という本をご紹介します。
✓ この記事でわかること
- この本に書かれていること
- キーワードは 「無自覚な不満」
- 消費者インサイトの見つけ方 (無自覚な不満から)
- ハーゲンダッツのインサイト
マーケティングで大事なのは顧客理解です。中でも、顧客インサイトまで深くできるかがポイントです。
今回はインサイトについて書かれた本のご紹介です、ぜひ記事も参考にしていただき、よければ本も手に取ってみてください。
この本に書かれていること
この本を一言で言えば、消費者インサイトを学べる本です。キーワードは 「無自覚な不満」 です。
無自覚な不満から、消費者インサイトとは何か、どうやって見い出すかをわかりやすく学べます。
以下は、この本の内容紹介からの引用です。
いま 「ほんとうに欲しいもの」 は、本人も自覚できていません。社会が成熟し、身の回りのことが何でも 「だいたい良いんじゃないですか?」 と思える時代だからです。
著者は、消費者の 「ほんとうに欲しいもの」 は何なのかを探るマーケティング活動のなかで、あることに気づきました。人はネガティブな気持ちに、ポジティブな気持ちと同じか、それ以上に影響を受けている。それが、本書の出発点です。
このネガティブな気持ちは 「不満」 と言い換えられます。クレームや炎上などの 「表面的な不満」 のことではありません。いま重要なのは、「本人も無自覚な不満」 を理解することです。
本書では、この 「無自覚な不満」 を起点にして、「ほんとうに欲しいもの」 を見つけるシンプルなフレームワークを紹介します。このフレームワークは、ビジネスだけでなく、家族や友人などのプライベートな人間関係の悩みから、政治や行政が扱うパブリックな問題まで利用でき、本質的な問題解決の糸口になるはずです。
消費者インサイトとは
この本のテーマは、無自覚な不満を見つけ、そこから消費者インサイトを見い出す方法です。
無自覚な不満を見る前に、消費者インサイトとは何でしょうか?
これは私の一言の定義で、消費者インサイトとは 「人を動かす隠れた気持ち」 です。
普段は本人は意識していませんが、そうだと気づかされれば買うなどの行動につながる奥にある感情です。マーケティングでは 「顧客の琴線に触れる」 と表現するように、顧客インサイトに響けば、顧客の行動や時には習慣すらも変える影響力を持っています。
では、この本のキーワード 「無自覚な不満」 について掘り下げていきましょう。
無自覚な不満
この本のアプローチは、無自覚な不満から入り、不満を掘り下げて奥にある気持ち (インサイト) に行き着きます。
無自覚な不満とは、本人が気づいていない感情です。嫌なこと、足りないという気持ちです。無自覚なという言葉が付いているように、既に顕在化しているものでもなく、表面的な不満でもありません。
また、無自覚だからといって軽い不満とは違います。日常生活では意識されていませんが、不満だと気づけばなんとしても解消したいと思うような奥にある 「不」 です。
では無自覚な不満から、どのようにビジネスアイデアにつなげていけばいいのでしょうか?
「無自覚な不満」 からアイデアをつくる方法
アプローチは一言で言えば、遠回りでやる 「急がば回れ」 です。
具体的には次の4つのステップになります。
✓ 「無自覚な不満」 からアイデアをつくる方法
- お気に入りを聞く
- こだわりや理由を掘り下げる
- その反対に満たされていない・嫌な 「無自覚な不満」 を見つける
- 無自覚な不満を解決するアイデアをつくる
ポイントは、不満を直接聞いていないことです。
最初から 「あなたの不満は何ですか」 と聞いても、出てくる答えは表面的なものです。既に本人が自覚し顕在化している不満しかわかりません。
消費者インサイトにつながるのは、あくまで無自覚な本人も気づいていない奥にある不満です。
直接的に無自覚な不満を掘り下げるのではなく、周辺から探っていきます。お気に入りなことから入り、それに対して満たされていない嫌な気持ち・未充足の不満を深掘りします。
ではもう少し、インサイトを見つける方法を続けます。
インサイトを見つける4つの視点
この本に書かれていて興味深いと思ったのは、インサイトを見つける着眼点です。
✓ インサイトを見つける4つの視点
- バックグラウンド
- シーン
- ドライバー (直接のきっかけ)
- エモーション (感情)
1つ目から3つ目までのバックグラウンド、シーン、ドライバーは、顧客を観察して発見した事実に基づきます。
その上で顧客がどのような感情を抱いているのか、奥にある気持ちのインサイトを見い出します。
それでは、具体例から、この四つの視点を使ってインサイトを見ていきましょう。取り上げるのはハーゲンダッツです。
ハーゲンダッツのインサイト
皆さんは普段、アイスクリームを自宅で食べるでしょうか?
この話は以前に、私がある対象者の女性から聞いた内容です。インタビュー中に出てきたハーゲンダッツを自宅で食べている話です (なので本書に書かれている事例ではないです) 。
インサイトを見つける4つの視点に沿って見てみましょう。
1. バックグラウンド
- 1人暮らしの社会人。平日は夜まで仕事が続く
- 仕事や会社は嫌いではないが、仕事内容や人間関係になんとなく満ち足りていない (明確に意識されていない不)
2. シーン
- 会社から帰宅し、夕食を食べ、お風呂にも入り、その後にハーゲンダッツを食べている
- 冷凍庫の中にはハーゲンダッツが買って置いてある
3. ドライバー
- ハーゲンダッツを一口目に食べた時に、ハーゲンダッツならではの濃厚な味わい
4. エモーション
- 自分自身に 「今日もおつかれさま」 という気持ち。(誰も特別にそうは言ってはくれないが) 今日もがんばったことへのご褒美
- 1人の時間で、ようやく素の自分になれる
以上から、彼女にとってのインサイトは次のようになります。
✓ ハーゲンダッツのインサイト
- 会社の上司や同僚との人間関係は良いが理想的とは言えない。SNS でのつながり、お互いの承認欲求の満たし合いになんとなく気疲れを感じている
- どこか背伸びした自分がいて、素の自分になれていない
- 1日の最後は1人だけの自分の時間が欲しい。誰の目も気にしなくていい、ほっとできる大切な瞬間
- この時間のお供がハーゲンダッツ。自分を飾ることない自分らしい贅沢な時間にできる
まとめ
今回は、消費者インサイトについてでした。
最後にまとめです。
無自覚な不満から
- 消費者インサイトを学べる本
- キーワードは 「無自覚な不満」 。無自覚な不満から、消費者インサイトとは何か、そしてどうやって見い出すかをわかりやすく学べる。
インサイトを見い出すアプローチ
- この本のアプローチは、無自覚な不満から入り、不満を掘り下げて奥にある気持ち (インサイト) を掘り下げる。
- 無自覚な不満とは、本人が気づいていない嫌なこと、足りないという気持ち。日常生活では意識されていない、不満だと気づけばなんとしても解消したいと思う奥にある 「不」 。
「無自覚な不満」 からアイデアをつくる方法
- お気に入りを聞く
- こだわりや理由を掘り下げる
- その反対に満たされていない・嫌な 「無自覚な不満」 を見つける
- 無自覚な不満を解決するアイデアをつくる