2012/12/16

Apple地図問題の本質とスマホ位置情報の可能性

iOS6がリリースされて最も話題を集めたことはアップルの独自地図でした。パチンコガンダムという名前の駅、羽田空港が大王製紙に、東京都公文書館が海上にある、などなど。iOS純正なのに、地図完成度の低さが話題になりました。

この問題について、Appleやスマートフォンの事情に詳しいジャーナリストの西田宗千佳氏と、Yahoo! JAPANで「ルートラボ」など位置情報サービスの開発にあたる地図のスペシャリスト河合太郎氏の対談記事が示唆に富み、おもしろかったです。今回のエントリーではこの対談から、アップルの地図問題について考えてみます。
「パチンコガンダム駅」はなぜ生まれたか? Apple地図騒動の本質とは|INTERNET Watch
地図アプリは“スマホの金脈”だった、AppleがGoogleに対抗した理由を探る|INTERNET Watch

■Apple地図アプリは何が問題だったのか?

iOS6になり新しくデフォルト地図になったアップルの地図アプリ。それまでのグーグルマップに比べると情報量が圧倒的に少ないという印象でした。スカスカな地図という感じ。この原因は地図情報データの情報量と地図上で適切にデータが処理されていないことです。

アップル地図アプリを使ってみて感じたのは、二次元⇔三次元切り替えがあったりソフトウェアの仕組み自体は悪くない、むしろうまく考えられているなと感じました。ただし、その仕組みの上に載っている地図情報の密度が小さい・間違っているなどで、それまでのグーグルマップのほうがよかったというのが感想でした。

上のインタビューでは西田氏が指摘しているのは、特に地図情報が問題になりユーザーから批判されたのは、日本やイギリスだったという点。アメリカではそれなりに使えるものとのこと。この違いは、それぞれの国でどれだけローカライズされているかで、その国のユーザーが地図アプリに求めるニーズにまだ応えられているのがアメリカ、適応できていないのが日本やイギリスだということです。

結局のところローカルニーズの汲み取りと、地図データの処理・統合(マージ)に問題があったのです。アップルとグーグルの地図アプリ状況をレストランに例えて整理してみます。レストラン運営を、
  1. 食材の調達
  2. 厨房・調理
  3. 提供する料理・接客サービス
の3層で考えた時に、アップル地図アプリで問題があったのが2の厨房・調理、すなわち地図データという食材を調理する部分。

せっかく手に入れた食材(地図データ)をうまく扱う厨房システムに問題があり、おいしい料理に仕上げられなかった。これではお客に提供する料理がおいしいわけはありません。レストランの接客サービスをどれだけ良いものでも、料理そのものが悪ければお客さんからクレームが出る。お客さんがレストランに求めているのは何よりおいしい料理だからです。

厨房・調理は、アメリカ本店ではまだアメリカのお客さんの好み・ニーズを捉えられていましたが、日本店やイギリス店ではできなかった。日本の山の幸や海の幸などのその国ならではの食材を手に入れても、調理しきれなかった。これがアップル地図アプリの状況と理解しています。一方のグーグルが経営するレストランでは各国の支店で、その国ごとで1~3の対応をうまくやっていたのです。

■スマホ時代に求められる地図情報

先のインタビュー記事では、前篇ではアップル地図アプリのどこが問題だったか、後編ではスマホ時代に求められる地図とこれからの展望について語られています。

ネットで提供する地図サービスはPC時代とスマホ時代になり、求められるものが変わったと言います。一言でいうと、PC:静的な地図、スマホ:動的な地図。スマホはモバイルデバイスなので、外に持ち歩くもの。地図アプリを使うシーンは出発前の自宅で現地の地図を確認するところはPCの地図と同じですが、スマホでは現地に行っての道案内としても使います。その場で移動しながら地図を使用する。時々刻々でユーザーの位置が変わり、地図アプリでの表示もリアルタイム性が求められるのです。これが「動的」の意味するところ。

スマホは持ち歩くことが前提なので、自分のいる場所が重要になります。そのために、GPSや重力加速度センサーで位置情報や動き/変化の「把握」と、地図アプリで位置情報/動きの「表示」の2つがリアルタイムで求められるのです。この2つを適切に実行できて、モバイル×位置情報の価値が生まれます。例えば、ユーザーをその場所にナビゲートする。初めて訪れた場所でもエスコートしてくれ、時にはレストランなどの店情報をレコメンドしてくれる、そこで広告費だったりのお金も発生する。

■アップルの戦略は正しい。誤ったのは戦術

今回のアップルの地図問題で思うのは、アップルの戦略は正しいということ。間違ったのはそのための戦術レベル。アップルが地図アプリを純正に変更してまでやりたいのは、位置情報と様々な機能を連動させること、位置情報をベースにiPhoneなどの自社プロダクトの価値をより高めることでしょう。

一例としては音声ナビツールのSiri(シリ)。日本ではまだ使えない機能ですが、アメリカではSiriがユーザーのいる場所を把握し、ユーザーは自分がいる場所で自分が欲しているサービスを教えてもらえます。「近くにお茶するところない?」「お腹すいたけどおすすめは?」「ATMでお金おろしたい」などは位置情報がないと適切に案内できないわけで。

アップルは自分たちが思い描くサービスやユーザー体験を実現するためにはグーグルマップではできない、自分たちで独自に地図アプリをつくって連動させたほうがよい、そうした方針がるはず。この戦略は正しい。でも、地図情報のデータの扱い、ローカルごとのコントロール・運用ができていない。何より問題だったのはローカルニーズに沿うレベルには全然達していない段階で独自地図アプリをリリースしたことでしょう。これはユーザー体験を何より重視するジョブズ時代ではあり得なかったはず。

■Google map vs Apple map

先週、グーグルマップのアプリが満を持してiOS向けにリリースされました。私自身もその日のうちにインストールしましたが、現時点ではグーグルの地図情報に分があり、あらためてグーグルマップはすごいと実感しました。

当面、多くのユーザーはiPhoneでの地図アプリはグーグルマップを使うでしょう。これはアップルにとっては悩ましい話です。ユーザー体験を考えればグーグルマップのほうが使いやすい、しかし、位置情報と各種機能を連携させ、そのためにはアップル純正地図アプリを、という戦略にはフィットしないジレンマ。

それでもアップルは独自地図の改善を続けるし、戦略は正しいのだからそれを実現する戦術は見直されるはず。というかすでに取組みはしているだろうし、地図単体のアップデートとともに、どうすればiPhoneやiPadトータルとしてさらにユーザー体験が向上するかを考えているのでしょう。

スマホ×位置情報という組み合わせは多くの可能性を秘めたものです。行きたい場所に案内してくれるナビとして、旅行先でおいしいレストランだったり自分の好みも考えたうえで提示してくれるお店、地震などの緊急時も今いる場所からどこに行けばいいのか、リアルタイムで変わる状況も反映されての災害情報提供、などなど。

グーグルマップという地図情報の王様のリリースを許したアップルは今後どうするのか。当面はグーグルマップをメインで使うことになりそうですが、たまにはアップル純正地図も使いながら注目しておきたいと思っています。


※参考情報
「パチンコガンダム駅」はなぜ生まれたか? Apple地図騒動の本質とは|INTERNET Watch
地図アプリは“スマホの金脈”だった、AppleがGoogleに対抗した理由を探る|INTERNET Watch

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