2010/06/27

LEGOに見るユーザーイノベーション

デンマーク語で「よく遊べ」を意味する"leg godt"。この言葉がもとになる社名の玩具メーカーがあります。世界130ヶ国以上で販売を展開しているLEGO。デンマークに本社を置くレゴは、世界に4億人ものレゴブロックユーザーを持つそうです。

日経ビジネス2010.5.24号に「4億人が遊ぶ最強玩具『レゴ』 ヒット商品は素人(ユーザー)に学ぶ」という特集が組まれていました。この記事の中で、「ユーザーイノベーション」というレゴが考えるマーケティングが取り上げられています。



■ユーザーイノベーションのきっかけ

日経ビジネスの記事では、レゴの商品開発について書かれていました。商品のアイデアを外部、つまり顧客であるユーザーにも求めており、同社のクヌッドストープ社長は「レゴのニーズは誰よりもファンが知っている」と言います。個人的に注目したのは、顧客から欲しい商品のアイデアを聞くだけではなく、一部の商品では実際の開発まで顧客に関わらせている点です。

ですが、もともと同社は積極的に顧客の声を活用しているわけではなかったようです。分岐点になったのは、98年に発売された「マインドストーム」。マインドストームとは、レゴでロボットを組み立てられる商品セットで、ロボットを制御するソフトウェアが組み込まれています。レゴはプログラムを内蔵させ、実際にロボットを動かす仕組みを用意していました。

同社にとって予想外だったのは、一部のファンがこのブログラムを解析し自分の好きなように書き換え、さらにはそのコードがネット上に公開されたことでした。こうなるとコード情報は瞬く間に広まり、次々にオリジナルな動きをするロボットがユーザーの間で開発されます。当初、この状況にレゴ経営陣は激怒し訴訟も辞さない構えまで見せたそうです。

しかし、この流れに逆らえないと見るや、レゴはある決断をします。ひとまず様子見をし、さらにはソフト改良を奨励する姿勢までとったのです。今では、レゴが開設するネットサイト「LEGO CUUSO(レゴ空想)」にユーザーが自分の欲しいレゴ製品を提案し、他の会員からの一定の支持が得られればレゴが商品化を検討するというビジネスモデルに取り組んでいます。このように、レゴが認定したファンを開発メンバーに迎えるような関係を築いているのです。これについてクヌッドストープ社長は「我々は顧客の欲しいレゴを提供する。それを、レゴが作ったか、顧客が作ったかということにこだわりはない」と言っています。



■ユーザーイノベーションとは

上記はレゴの例ですが、ここではユーザーイノベーションをもう少し一般化してみます。日経ビジネス記事には以下のような「レゴが考えるマーケティングの3ステップ」が記載されていました(図1)。


前述のマインドストームの開発者であるソレン・ルンド氏は、企業のマーケティングには顧客との関わり度合により、3段階があると解説します。

(1)マスマーケティング
*定量・定性調査により消費者データを集め、それらを基に商品を開発
*今でも主流のマーケティング手法

(2)コミュニティマーケティング
*商品やサービスの固定ファンの声を拾い上げ、商品開発につなげる

(3)ユーザーイノベーション
*企業と顧客が一体となって商品開発を行なう
*顧客との距離を縮めるのに重要なのは、双方向のやりとりを繰り返すこと



■ユーザーイノベーションの実践

記事にもあり個人的にも同意なのは、「ユーザーイノベーションは新商品を開発する上でのあくまで1つの手法にすぎない」という点です。これは例えばアップルの事例を考えると、その企業内に確固たる哲学があり圧倒的な使いやすさやサービス提供などの商品力があれば、不要ですらあるように思えます。

一方で、企業だけでは顧客の求めているニーズに必ずしも沿った商品開発ができるとは限らないこともあり、この場合にはレゴのようなユーザーを商品開発に巻き込むことも有効なのではないでしょうか。

無論、言うが易しで実践するにはリスクも当然存在します。このような中、リスク以上のリターンをを得るために重要なこととして、記事では次のように書かれています。
・ 中には苦情の声もあるが、真摯に対応すること
・ 企業として顧客に何を提供したいかのメッセージを明確にする
(世界観をしっかりと顧客に提示する)

企業としての顧客への提供価値。これがぶれることなく顧客との双方向の対話ができて、初めてユーザーイノベーションが実践されるのではないでしょうか。


2010/06/26

政府の役割と成長戦略とは



「断絶の時代」という著書において、ドラッカーは政府の役割を次のように言及しています。
The purpose of government is to make fundamental decisions, and to make them effectively. The purpose of government is to focus the political energies of society. It is to dramatize issues. It is to present fundamental choices. 
政府の仕事は、意思決定を行うこと、しかも意味ある正しい意思決定を行うことである。社会における政治的なエネルギーを結集させることである。問題を浮かび上がらせることである。選択を提示することである。  
「断絶の時代」p.252から引用

日経新聞の10年6月24日付の朝刊の「経済教室」は、「新成長戦略 ~方向性を問う~」という企画で、早稲田大学・谷内満教授の投稿でした。タイトルは「『供給サイド』こそ重視を」。サブタイトルは「カギ握る規制緩和 法人減税は財源が必要」でした。

記事内容はとてもわかりやすく、かつ簡潔にまとまっていたように思いました。記事内容を参考にしつつ、状況整理をしてみます。

■日本の課題 (低成長・低生産性国)

1990年代の日本経済について、「失われた10年」と評してきましたが、最近では00年代も合わせて「失われた20年」という表現を目にします。

このように過去20年の間、日本は長期的な低成長国に陥っています。一方で、「経済教室」記事では、日本は欧米諸国と比べ、低生産性国である指摘しています(図1)。


従って、谷内教授は「高齢化が急速に進む日本では、生産性を高めて経済成長を引き上げることが、極めて重要な課題」であると述べています。

■政府の役割

○民主党の「成長戦略」

では、日本が経済成長を図るうえで、政府の役割はどのようなものなのでしょうか。6月18日に閣議決定された「新成長戦略」が公表されました。その中で、「強みを活かす成長分野」として以下の7分野を挙げています。
  1. グリーン・イノベーションによる環境・エネルギー大国戦略
  2. ライフ・イノベーションによる健康大国戦略
  3. アジア経済戦略
  4. 観光立国・地域活性化戦略
  5. 科学・技術・情報通信立国戦略
  6. 雇用・人材戦略
  7. 金融戦略

○政府には成長産業は選べない

上記の各分野の専門家ではないので、中身の詳細の是非は省略しますが、そもそもの論点として「政府が今後の成長産業を選定できるのか」という議論があります。

正直なところ、個人的にはこれは難しいと思っています。というのも、成長産業はわざわざ政府が選ばなくても、市場原理に任せておけば自然と投資資金が回ってくるはずで、それを政府がやるということは税金が使われることにもなり、リスクをとって失敗した場合も結局は国民が負担することになります。

ちなみに、「経済教室」で谷内教授も以下のように主張をしています。
  • 政府が将来の成長産業を選び出す政策(ピック・ザ・ウィナー政策)には限界がある
  • すべての産業、すべての企業・個人事業者が、経済全体の成長を支える可能性を持っているという視点が重要

○政府の役割

そこで、政府の役割です。記事では、「政府がとるべき政策は、そうした民間の創意工夫と競争を促進することである」と書かれていましたが、その通りだと思います。

その理由は記事に書かれている以下の通りだと思うからです。
  • 経済活動の中核を担っているのは民間企業
  • 民間企業の創意工夫と競争が、生産性向上と、活発な投資による資本の量・質の向上を通じて、成長を高める
  • 成長政策は経済の供給サイドに働きかけるべき

■成長促進政策

記事では、現在の日本に求められる成長促進政策として、規制緩和、法人税引き下げ、労働政策が取り上げられています。以下、簡単ですが、書いておきます。

規制緩和
  • 成長促進政策として、規制緩和は重要
  • あらゆる分野で不要な規制を撤廃・縮小することが重要だが、中でも農業、医療、介護といった分野は規制が特に厳しい
  • 規制緩和によって民間の活力を引き出す余地が大きい

法人税
  • 法人税率を引き下げるべきだと主張
  • ただし、法人税減税で財政がさらに悪化することになれば、成長促進とはならない。なぜなら、すでに先進国で最悪の日本の財政をさらに悪化させれば、いずれ長期金利の上昇につながり、民間の投資が抑制されて、低成長に追い込まれるから
  • 従って、法人税率引き下げは、消費税率引き上げと、歳出削減とのセットでの抜本的な見直しが必要になる

労働政策
  • 派遣労働者などに対するセーフティーネットの拡充は必要
  • だが、正社員が正しい働き方で、非正規は望ましくないから規制するという考え方は問題
  • 多様な働き方と、企業や産業の浮き沈みに対応できる弾力的な労働移動が、今の日本に求められている
  • 解雇時の金銭補償のルール化などにより正社員の解雇規制を緩和して、正規と非正規の不当な格差を縮めることが求められる

★  ★  ★

冒頭で記載したドラッカーが言うように、政府の仕事は、「意思決定を行うこと、しかも意味ある正しい意思決定を行うこと」だとすると、実行は競争環境に身を置いている民間企業だと思います。

政府の役割は民間企業が正しく競争できる環境を用意することまでで、成長分野までを政府が選ぶことは不要ではないでしょうか。

今回の日経「経済教室」は、そんなことをあらためて考えさせてくれるものでした。


※参考資料

「新成長戦略」についてPDF (6/18閣議決定内容)
http://www.npu.go.jp/policy/policy04/pdf/04/06/20100618_shinseityousenryaku_honbun.pdf



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2010/06/19

マーケティングとイノベーション(と超サイヤ人)

■マーケティング

マーケティングについて、P.F.ドラッカーは次のように述べています。

The aim of marketing is to make selling superfluous. The aim of marketing is to know and understand the customer so well that the product or service fits her and sells itself.
(マーケティングの目指すものは販売を不要にすることである。つまり、顧客を理解し、製品やサービスを顧客に合わせることで自ら売れるようにすることである。)

補足ですが、ドラッカーの著書である「断絶の時代」には次のように書かれており(p.51)、上記の「マーケティングは販売を不要にする」というのは、おそらくこの状況も念頭に入れてのことではないかと思います。
「ほとんどの企業は、マーケティングのことを、製品を売り、引き渡すことによって報酬を得るための体系的な活動としか理解していない。」

書籍「断絶の時代」には、二つの意味でのマーケティングが必要であると説きます(p.51)。すなわち、(1)顧客の観点からのマーケティング、(2)イノベーションとしてのマーケティング。それぞれポイントを引用すると以下のようになります。

(1)顧客の観点からのマーケティング
わが社の製品のための顧客という考え方をしてはならない。「わが社の製品」を考えているかぎり、マーケティングではなく販売について考えているにすぎない。重要なことは、顧客の期待・行動・価値観である。
顧客は、求めているもの・必要としているもの・期待しているものにしか関心をもたない。顧客の関心は常に、この製品あるいはこの企業が自分に何をしてくれるかだけである。

(2)イノベーションとしてのマーケティング
真に新しいものには出来合いの市場はない。新製品は期待を生み、満足をもたらす。したがって、市場を創造するためのイノベーションがマーケティングには必要である。
新技術は新市場を必要とする。しかし、それがいかなる市場となるかは、実際に需要が生まれるまでは見当がつかない。



■イノベーション

このようにドラッカーが言うマーケティングには二種類があり、後者にはイノベーションが必要であるとしています。ではイノベーションとは何でしょうか。

「ゴールは偶然の産物ではない FCバルセロナ流 世界最強マネジメント」(フェラン・ソリアーノ アチーブメント出版)という本にはイノベーションについて興味深い言及があります。この書籍には、イノベーションについて以下のような表が記載されています(p.237)。



■最後に (ネタ)

イノベーションについてちょっと考えていたのですが、ふと超サイヤ人ってイノベーションではなかったかと思いました。超サイヤ人が登場した場面を少し振り返ってみると、超サイヤ人が登場したのはフリーザ編でした。フリーザの圧倒的な強さの前に次々の悟空の仲間がやられていきましたが、親友のクリリンがフリーザに殺されたことで、ついに悟空が伝説の超サイヤ人となります。ちなみにWikipediaによると、超サイヤ人になると戦闘能力が50倍になるそうです。

超サイヤ人は上記のイノベーションの表で言うところの、例えば「2.新しい見方」が当てはまる気がします。超サイヤ人が登場する前の「変身」は、満月時の大猿化であったりフリーザやザーボンの変身がありましたが、超サイヤ人の登場以降、セル編の超サイヤ人が第三段階まで変化したり、魔人ブウ編では「超サイヤ人3」まで発展しており、これらの変身に伴い戦闘能力は飛躍的に増加しています。ちなみにベジータが地球に襲来した時の戦闘力は1万8000、フリーザ第一形態は53万でしたが、超サイヤ人になってからは戦闘能力は何百億レベルとかになっているはずです。

悟空が超サイヤ人となったのはコミックス27巻でした。その後、42巻まで続きましたが、超サイヤ人がなければここまで長い作品にならなかったかもしれません。こう考えると、クリリンがフリーザによって爆発させられた死は、大きな分岐点だったのではないでしょうか。

・ 超サイヤ人登場以降、戦闘能力は飛躍的に増加
・ ストーリーに厚みが増し、長期連載を可能にした(?)
・ 超サイヤ人はイノベーションではないか


※参考情報
超サイヤ人 (Wikipedia)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B5%E3%82%A4%E3%83%A4%E4%BA%BA#.E8.B6.85.E3.82.B5.E3.82.A4.E3.83.A4.E4.BA.BA


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2010/06/13

ブログとツイッターは異なるベクトルを持つ

まとめ


今回の記事のまとめです。

  • ブログとツイッターの位置づけは異なる
  • 現時点での情報発信は二次元なイメージ
  • では第三の軸は?

ブログ「投資十八番」より


投資十八番の「ブログとツイッターは競合しない(個人的に)」という記事を読みました。記事内容のポイントは以下の通りです。

  • 「ツイッターをはじめるとブログの更新頻度が落ちる」と言われるが、著者の状況は異なる
  • なぜなら、両者の目的や楽しみは別物だから
  • よって、ブログとツイッターは競合しない(個人的に)

著者の言うブログとツイッターの目的や楽しさを整理すると、下表のようになります(表1)。



この記事内容にはすごく同意で、自分でもブログとツイッターについてあらためて考えてみました。

ブログ


ツイッターを始める前からブログは書いていました。その頃は、記事にするかどうかの基準は(当たり前ですが)ブログに書きたいかどうかでした。この基準を超える気づきだったり考えたことをブログ上で文章にしていました。

ブログを書く目的は以下の通りで、これは今も変わらないものです。

  • 考えを整理するため
  • アウトプットをする場として
  • インプットの強化 (ブログネタとして)

ブログとツイッター


ツイッターの目的は、ブログとは異なるものです。

  • 情報収集として
  • 気づきの気軽な発信
  • コミュニケーション

ブログとツイッターはあくまで相互補完なものであり別物です。ブログ書きたい基準が縦軸だとしたら、ツイッターでの基準は横軸になり、両者は90度違う感じです(図1)。つまり、ブログだけの頃は情報発信欲が一次元しかなかったものが、ツイッターが加わって二次元になったイメージなのです。




このようにブログとツイッターのアップしたい気持ちのベクトルが90度異なるわけですが、もし両者の角度が0度(書きたい気持ち、目的やアップする楽しみが同じ)だった場合は、「ツイッターをはじめるとブログの更新頻度が落ちる」という状況になってしまうのかもしれません。

第三の軸


現時点では自分の情報発信性は二次元ですが、今後はどうなるのでしょうか。ブログやツイッターそれぞれと異なるものが現れるのでしょうか。

1つの可能性として、ユーストリームのような個人による動画配信があるかもしれません。ブログやツイッターはテキストが中心ですが、動画を気軽に発信できるというのは「第三の軸」候補になりそうです。しかし、個人的には今のところ動画を発信したい気持ちはあまりありませんし、おもしろ映像がつくれる・撮れるとは考えにくいです。

ブログでもツイッターでもない存在として、SNSであるFacebookがその可能性を持つような気がしています(図2)。日本ではまだまだ普及はしていませんが、世界中にユーザーがいる点やLikeボタンに興味があります。特にLikeボタンの使い方次第では、これまでにない情報共有ができそうです(詳細は長くなりそうなので省略しますが)。

Facebookはアカウントをとっただけでほとんど使ってはいませんが、情報共有・発信が三次元になるとどうなるのか。楽しみです。




※参考情報
投資十八番:「ブログとツイッターは競合しない(個人的に)」
http://stockkabusiki.blog90.fc2.com/blog-entry-1107.html


2010/06/12

iPhoneアプリ「ショッピッ!」が変える購買行動

■まとめ

今回の記事のまとめです。

・ iPhoneアプリ「ショッピッ!」がおもしろい
・ ショッピッ!と楽天市場端末の比較
・ ショッピッ!は私たちの購買行動に一石を投じると思う



■iPhoneアプリ「ショッピッ!」

最近使ってみておもしろいと思ったiPhoneのアプリに、「ショッピッ!」というサービスがあります。これは、iPhoneのカメラで商品バーコードを読み取り、その場でネットサイトからその商品を買うことができるアプリケーションで、先日10日に無料公開されました。具体的な使い方は、ショッピッ!のサイトに次のように書いてあります。

<ショッピッ!の使い方>
(1) アプリを起動し、商品のバーコードに、iPhoneのカメラをかざす
(2) その商品をいちばんおトクに購入できる店舗が見つかる
(3) 店舗を選んでその場で注文する

そして、ショッピッ!について個人的におもしろいと思った点は以下の通りです。

<ショッピッ!のおもしろい点>
(a) バーコード取得から商品購入までがその場で完結する
(b) 最安値の提供店サイト候補は日本国内約5万店
(楽天市場、アマゾン、ヤフーショッピング。価格.comでも検索可能)
(c) 以上がいつも携帯しているiPhoneでできてしまう



■楽天市場の小型バーコード端末

10年4月30日の日経web版に、楽天市場に関する記事がありました。その中で、「楽天市場での買い物を容易にする小型の端末も独自に開発した」と言及されていました。ポイントは以下の通りです。

<楽天市場の小型バーコード端末の使い方>
(1) 商品のバーコードを小型バーコード端末に読み込んで保存する
(2) パソコンにつなぐと、楽天市場の中で商品を最安値で売る店舗が表示される
(3) 楽天市場から購入する

なお当時(4/30)の時点のことですが、記事には次のようにも書いてありました。
・ 試作品は完成済みで、今年秋にも最大で1千台程度を試験的に配布する
・ 利用者の反応をみて、事業化を判断する。端末は無償提供するか低価格で販売する可能性が高い



■「ショッピッ!」と「楽天端末」の比較

上記に使い方をそれぞれ(1)(2)(3)で挙げましたが、あらためて両者を比較してみます。

○バーコード取得~購入までの流れ
両者を購買フローで並べてみます(図1)。





ショッピッ!がiPhone内でその場で注文までできるのに対して、楽天の端末ではPCに接続させる手間が発生します。これは、PCを立ち上げた状態でパーコードをスキャンするか、端末を接続させるためにPCを立ち上げる必要があるということです。


○両者の優位性を比較
比較項目をいくつか挙げてもう少し比べてみます(表1)。なお、楽天市場の端末については実際に使っていないので、推測内容も含まれます。





<携帯性>
ショッピッ!はiPhoneアプリなのに対し、楽天端末は独自端末です。つまり、ショッピッ!は日頃から携帯するiPhone内にある一方で、楽天端末は持ち運ぶ端末が増えてしまいます(屋外でもバーコードをスキャンしたい場合)。

<バーコード読取>
おそらく、iPhoneのカメラでバーコードを読み取るよりも、楽天端末のほうがバーコードをスキャンしやすいのではないかと思います。

<利便性>
ショッピッ!がバーコード読取~購買までiPhone内で行うのに対し、楽天端末はPCに接続する手間が発生します。実際にショッピッ!を使ってみましたが、その場で購買までが完結する仕組みは非常に魅力的です。

<多様性>
前述の通り、ショッピッ!は楽天市場だけではなくアマゾンやヤフーショッピングからも買えます。楽天端末は楽天市場専用です。

<サービス価格>
ショッピッ!は無料でダウンロードできましたが、楽天端末は上記の日経Web記事の通り有料の可能性があります。



■これからの購買行動

店舗で商品を見るが、実際に買うのはネットという購買行動が最近は一般的になってきているように感じます。少なくとも、個人的にはこの購買行動は当たり前のようになりつつあります。

ショッピッ!のようなサービスがスマートフォン以外でも使えるようになれば、ますますこの傾向が強くなるような気がします。そうなると、お店は単なるショーウィンドウの役割でしかなくなるのではないでしょうか。消費者にとっては便利な仕組みですが、小売側にとっては脅威のサービスかもしれません。

暫定的な措置として、店内に「携帯電話のカメラでバーコードを撮らないでください」という貼り紙が表示されることも考えられます。あるいは、抜本的な措置として、次世代のバーコードでは、携帯のカメラでは簡単に読み取れないような仕組みが導入されるかもしれません。

いずれにせよ、ショッピッ!のようなアプリは、私たち消費者の購買行動や小売にとって、一石を投じる役割を果たすのではないでしょうか。


※ショッピッ!のサイト
http://shoppi.jp/


2010/06/05

感情もクラウドに置かれるようになる

■まとめ

今回の記事のまとめです。
・ クラウドについて (文化的考察と自分のクラウド区分)
・ これからのクラウドは、「感情」もネットワーク上に置いておくようになるのではないか
・ 今後はどこが「感情のクラウド」をプラットフォーム化するか



■クラウドの文化的考察

isologe(イソログ)というブログで、「なぜ『クラウド』か?の文化的考察+スキャナの効用第二弾」と題する記事がエントリーされていました。タイトルにもあるクラウドの文化的考察は、以下のような内容が書かれていておもしろかったです。

・ 著者は「クラウド」という表現に違和感を持っていた
・ なぜなら、雲などと「こんなモヤモヤした得体の知れないところに重要なデータを保存するのは、気持ち悪い以外の何物でもない」から
・ 新約聖書に、「富は天に積みなさい。そこでは虫が食うことも、さび付くこともなく、盗まれることもない」という旨の記述がある
・ (キリスト教文化である)欧米人には「クラウド≒天」という図式があり、「クラウドこそ財産を蓄える場所だ」という感覚があるのではないか

日本語には「雲隠れ」という言葉があるように、日本人の雲について「いつか消えてなくなるもの」という意識があるような気がしますが、欧米人のそれとは大きく異なるのかもしれません。

※クラウドコンピューティング
ネットワーク、特にインターネットをベースとしたコンピュータの利用形態である。ユーザーはコンピュータ処理をネットワーク経由で、サービスとして利用する。(Wikipediaより)



■クラウド区分

とは言いつつも、クラウドの各種サービスを使いだすととても便利だと感じます。自宅のPCと会社のPC、そしてiPhoneがクラウド上で同期することで、いろんな情報が1つに集約できます。イメージとしては、iPhoneが自宅と会社のPCのハブの役目を果たしており、この仕組みは非常にありがたいものです。

自分が活用している情報について、クラウドとしてどのような使い方をしているのかをちょっと整理してみました(図1)。クラウドの区分というよりは、自分が利用しているネットワークの区分というイメージです。切り口は以下の2軸で切っています。
・ 公共情報(仕事含む) or プライベート情報
・ ソーシャル(共有)ユース or パーソナルユース





右下の象限に仕事の情報とありますが、これは現在使用していません。理由は、社外秘情報もあるため社内に保管するにとどめていることと、クラウドに置いておく必要性がそこまで高くないためです。



■クラウド化できたらいいもの

現状、自分のクラウド区分は上図のイメージですが、身の回りを考えてみるとクラウド化できたらいいのにと思うもの・情報が多数あることに気づきます。主な例として次のようなものがありました。
・ 本、雑誌、新聞記事
・ 各種説明書、契約書、保証書
・ 思い出映像(出演したストリートダンスのショーとか)、CD

あえて上記のものをまとめて表現すると、
(1) 普段は使わないが、イザという時に必要になるもの
(2) 現状は必要になっても見つかるまで時間かかる
の2点で換言できそうです。

特に(2)については、Googleなどの便利な検索技術がある一方で、自分の身の回りの「検索」方法が手当たり次第に探すだけというのは、時に悲しいくらいのアナログな方法です。

なお、契約書等をクラウド上に保管するのはリスクもあるかもしれませんが、自宅での保管にも一定程度にリスクはあるわけで、トータルで考えて個人的にはクラウド上で一括管理ができたらいいなと思っています。



■今後のクラウド

ミック経済研究所の調査によると、2009年度のクラウドコンピューティング市場規模は1941億円(対前年度比138.4%)、今後は年平均29.4%で成長し、2014年度には6570億円の市場規模になる見通しだそうです。

では、今後のクラウドはどのように発展するのでしょうか?1つの方向性として、個人の「感情」がネットワーク上に置かれるようになるのではないかと思っています。

最近、mixiが「mixiフォト」を開始したようです。詳細は確認していないのですが、写真単位で「イイネ!」がつけられるとのことです。この「イイネ!」はmixiのボイスにもある機能です。Facebookには"Like"ボタンがあります。mixiの「イイネ!」はあくまでmixi内でのクローズドですが、FacebookのLikeボタンはあらゆるページで付けることができます。似たものに「はてなブックマーク」があります。

これらの機能は、「おっ」と思った時にポチっと押して、この「おっ」をそのサイトに付けておくものです。すなわち、自分の感情をネットワーク上に置いておくということではないでしょうか。今までは自分の感情を置いておくには例えばブログならコメント欄に記入しましたが、自分の気持ちを文章化してコメントをつけるというのは結構面倒なこともあり、その点"Like"ボタンは気軽にクリックするだけです。

さらに"Like"ボタンはFacebook上で公開されるので、どの人がどのページで付けたのかがわかります。つまり感情をネットワーク上で共有できるのです。

この方向性は結構おもしろいと思っています。例えば、今は「イイネ!」だったり"Like"だったりと感情の種類は1つしかありませんが、これが喜怒哀楽の4つになったら、そのサイトや動画などへのまわりの反応がもっとわかるのではないでしょうか。

そうなると、今後は感情のクラウドをどこがプラットフォーム化するかに興味があります。mixiはmixiという閉じた世界ではプラットフォーム化ができていますが、あらゆるサイトとなると現時点ではFacebookが一歩抜きんでた存在のような気がします。

感情をクラウド上に置くことで「雲隠れ」してしまうのか、あるいは「さび付かない天」に置けるのか。今後の動きに注目しています。



※参考情報
isologe(イソログ):「なぜ『クラウド』か?の文化的考察+スキャナの効用第二弾」
http://www.tez.com/blog/archives/001637.html

クラウドコンピューティング(Wikipedia)
http://ja.wikipedia.org/wiki/

クラウドコンピューティング市場規模
http://journal.mycom.co.jp/news/2010/03/09/033/index.html


最新エントリー

多田 翼 (書いた人)


外資系 IT 会社にてマーケティングリサーチ マネージャー (LinkedIn) 。

1981年 (昭和56年) 生まれ。名古屋出身。学生時代は京都。家族4人で東京23区内に在住、2人の子どもの父親。気分転換は毎朝 8km のランニングとピアノ。

書いている内容は、所属組織や会社の正式見解ではなく個人の見解です。