2011/05/28

トヨタがSNSで目指す「クルマが人の生活において友だちとなること」は実現できるのか?

先日の5月23日に、トヨタ自動車と米セールスフォース・ドットコムがクルマ向けのソーシャルネットワーク「トヨタフレンド」の構築に向けて提携することで基本合意したと発表しています。「トヨタフレンド」は、2012年に市販される予定のEV(電気自動車)およびPHV(プラグインハイブリッド車)で開始するサービスで、自動車を購入する人とクルマ、販売店、メーカーをソーシャルネットワークサービスで結びつけるようです。
セールスフォース・ドットコムとトヨタ、クルマ向けソーシャルネットワーク「トヨタフレンド」の構築に向けた戦略的提携に基本合意|TOYOTA

セールスフォースとトヨタが業務提携--Chatterを基盤に「クルマがつぶやく」SNS|CNET Japanから引用

■トヨタフレンドとは

トヨタフレンドの内容をもう少し見てみます。ソーシャルネットワークという表現を使っているので、何と何がどうつながるかが重要になってくると思いますが、上記のトヨタの発表内容では、「トヨタフレンド」は、人とクルマ、販売店、メーカーを繋ぐソーシャルネットワークサービスである、としています。

これらの中でどういった情報のやりとりがされるのかというと、「カーライフに必要な様々な商品・サービス情報などをお客様に提供」とあり、例えば、EV及びPHVの電池残量が少ない場合、充電を促す情報をあたかもクルマの「つぶやき」としてお客様に発信するとあります。あるいは、走行距離によって定期点検を促してくれたり、点検の予約をトヨタフレンドを通じて販売店と行うことも可能だそうです。右の画像では、ユーザーと販売店のつぶやき内容が表示されており、車が点検のアナウンスをし、ユーザーが販売店に予約するという流れになっています。(イメージ画像はセールスフォースとトヨタが業務提携--Chatterを基盤に「クルマがつぶやく」SNS|CNET Japanから引用)

■SNSとクルマの主従関係

このニュースを報じた記事はいくつかありましたが、それらの中でおもしろいと思ったのは日経にあった「(セールスフォース社CEOの)Benioff氏からクルマがSNSに入るというアイデアの話を聞いて感銘を受けた」というトヨタの豊田章男社長のコメントでした。車とSNSという両者において、「車がSNSに入る」ということは、SNSを中心にし車がその上に乗るという関係だと思います。ここがなぜおもしろいかと思ったかというと、この主従関係を自動車会社の社長である豊田氏がコメントをしている点です。

逆の発想として、車の中にSNSを組み込むということも考えられますが、トヨタがこのサービスで目指すのはあくまでソーシャルネットワークをベースに、その上で車の価値を上げていこうという取組みだという印象を受けました。実際に、豊田氏は「トヨタフレンドは、SNSにクルマそのものが参加するという構想。これにより、クルマが人の生活において友だちとなることを願っている。近年、人と人とのつながり方やコミュニケーションスタイルが大きく変化している。クルマもそれに合わせて変化していくことで、若者のクルマ離れや、魅力の低下を食い止められるのではないかと考えている。従来の“走る”“止まる”“曲がる”に、“つながる”というバリューを付加することで、より魅力のあるクルマを作るためのひとつの試みとなる」と、今回のセールスフォースとの提携意図を説明しています(上記、CNET Japanの記事から引用)。

■トヨタフレンドは「ソーシャルネットワーク」になれるか

さて、あらためてソーシャルネットワークの魅力を考えた時に、SNS内でのソーシャルグラフ(人間関係)があると思います。友達の友達を伝って、昔の知り合いを発見することもあり、ソーシャルグラフがあたかも網目のように展開しており、そこではコミュニケーションが活性化している世界です。

このようなにSNSを捉えた時に、今回のトヨタフレンドはどう評価できるのでしょうか。トヨタフレンドでのソーシャルグラフは人だけではなく、車と人がつながります。自分の車と会話とつながるというのは、既存のSNSと比べると比較優位の要素として挙げられそうです。

ただし、それには前提があります。車と人のコミュニケーションが活性化していないと、ユーザーにとっては魅力的ではなくなります。発表や関連記事で説明されていたコミュニケーション例では、電池残量が少ない場合の充電督促情報、走行距離からの定期点検を促してくれるなどを、車が「つぶやき」として発信するとありました。個人的に思うのが、これらの話題はそう毎日発生するものではなく、また、発生したとしてもコミュニケーションの発展性があまり期待できないように思います。ツイッターやフェイスブックを使っていて感じるのは、他愛のない出来事でも、SNS上でやりとりが発生し、1対1ではなく、時として多対多のコミュニケーションに発展するおもしろさがあります。これがトヨタフレンド上でどこまでできるか、トヨタフレンドをソーシャルネットワークと定義するからには、また、ユーザーに飽きられずに使い続けてもらうためには、ここがカギだと思います。車からのユーザーへの充電督促や定期点検のお知らせ、ユーザーから販売店などへの点検の予約、といったものはどれも1対1のコミュニケーションであり、これだけのためであればSNSとして活用する必要性が小さいのではないでしょうか。トヨタフレンドでは、TwitterやFacebook等の外部のソーシャルネットワークサービスとも連携し家族や友人とのコミュニケーションツールと位置づけるとありますが、単に連携するだけでなく、ここに優位性のある車とのつながりをどこまでユーザーに魅力を提示できるかが重要になると思います。実際に使ってみないと何とも言えませんが。

「クルマが人の生活において友だちとなること」を目指すトヨタの取り組みは、期待感もあり一方では課題もある印象です。

※参考情報

セールスフォース・ドットコムとトヨタ、クルマ向けソーシャルネットワーク「トヨタフレンド」の構築に向けた戦略的提携に基本合意|TOYOTA
セールスフォースとトヨタが業務提携--Chatterを基盤に「クルマがつぶやく」SNS|CNET Japan
トヨタとセールスフォース、クルマ向けSNS開発 2012年に車両の充電推奨時刻などを自動ツイートするサービス|日本経済新聞


2011/05/22

Bing+Facebook検索から考える情報入手のこれからの棲み分け

マイクロソフトが5月16日(現地時間)、同社提供の検索サービス「Bing」に対してFacebookと連携させた新機能を追加したと発表しました。Facebookの"Like"(いいね!)情報を活用し、友人やFacebookユーザーのオススメ情報などが検索結果に表示されるようになっているようです。
Facebook Friends Now Fueling Faster Decisions on Bing|bing

■bing+facebookで検索するとこうなる

新機能は、大きくTrusted Friends、Collective IQ、Conversational Searchの3種類。Trusted Friendsでは、キーワード検索の結果にFacebook上の友人が"Like"登録したページがあれば、その情報が表示されます(友人の顔写真が最大3名まで)。以下のイメージ画像では検索結果の3番目に友人の顔写真が表示される。

Facebook Friends Now Fueling Faster Decisions on Bing|bingより引用

Collective IQでは、友人に限らず、Likeをたくさん集めたサイトが検索結果の上位に表示されるようです。

Facebook Friends Now Fueling Faster Decisions on Bing|bingより引用

Conversational Searchでは、人名による検索結果にFacebookのユーザー情報が表示されたり、下のイメージのように地名を検索すると、そこに住んでいる(あるいは住んでいた経験のある)友人が表示されます。

 Facebook Friends Now Fueling Faster Decisions on Bing|bingより引用

このサービスを利用するためには、フェイスブックにログインした状態で、bingから検索する必要があります。また、現在はアメリカだけでのリリースのようです。

少し古いデータですが、ニールセンが2009年4月に、50か国で25,000人のネットユーザーを対象に調査を行ったところ、各国のネットユーザーの9割が「友人からのおすすめ」を信用していると回答しています。

<広告形態別の信頼度 2009年4月>

Nielsen Global Online Consumer Survey (PDF)|Nielsenから引用

今回のマイクロソフトとフェイスブックの取り組みは検索結果に友人のおすすめが出るということで、まさにこの信頼度を検索結果というアウトプットの(その人への)精度に活用するものです。Googleなどの従来の検索とは異なる「人と人とのつながり」という条件で結果が表示されるのです。

■インプットとしての検索の向上余地は?

それでは、検索のインプットのほうはどうでしょうか?あらためてネット検索でのインプットのプロセスを考えると、こちらのほうはまだまだ進化の余地があるように思います。検索をするには、まず自分が知りたいことを検索用語として打ち込みます。すなわち、具体的な単語にまで知りたいことを落とし込まないと検索自体ができないということ。「こないだのあれ、何だっけ」みたいなあいまいな状態では検索は有効に活用できません。もちろん、インプットとしての検索機能の向上例として、Googleでは、画像・動画・ニュース・リアルタイム、などとカテゴリーに絞って検索ができますが、これも入力する検索ワード、あるいはその組み合わせがうまくいっていないと、効果が薄れてしまいます。

上記で取り上げたbingのソーシャル検索ではアウトプットでの進化でしたが、インプットにおける検索についても検索のインプットでも新しい考え方・仕組みを期待したいところです。ユーザーに検索ワードを考えさせる、検索を色々と工夫しても、欲しい・必要な情報がなかなか上位に表示されない、など、よくよく考えるとネットでの検索は非常に便利とはいえ、まだまだ使い勝手がいいとは言えないように思います。ネットでの検索は検索連動型広告のおかげで無料サービスとして提供されていますが、もし今よりももっと早く・正確に必要な情報が手に入るのであれば、効率的な検索から時間を有効に使える有料サービスもあってもいいような気もします(実際に利用するかは価格と精度によりそうですが)。

■AISASで情報入手プロセスを考える

ここまで、マイクロソフトとフェイスブックの新しい検索機能の話から、検索のアウトプットとインプットについて考えました。情報を入手する手段としてはネット検索は便利ですが、一方で検索だけに頼る必要もないと思っています。検索というのはワードを指定して自分から情報を探しにいきますが、ツイッターやフェイスブックなどのソーシャルメディアを使っていると、「必要な情報が向こうからやってくる」という感覚を持ちます。前提として、そのような情報を発信してくれる人(ニュースメディアやBotも含む)をフォローしておく必要がありますが、国内外問わず、大きなニュースなどは最近ではツイッターなどを経由して第一報を知ることが多くなっています。最近の例で言えば、ビンラディン殺害がそうでした。その後、気になったのでネットで調べてみると(検索)、CNNでのニュースとして大きく報じられていたり、オバマ大統領の発表演説が見つかり、これはデマではなく本当に起こったことのようだと実感するようになりました。ツイッターで知り、詳細を検索から、というプロセスでした。

ところで、AISASという消費者の購買行動モデルがあります。AISASとは、Attention(注意)=>Interest(興味・関心)=>Search(検索)=>Action(行動)=>Share(共有)の頭文字をとったもので、電通が考案したマーケティングにおける消費行動プロセスを表す考え方です。具体的には、消費者がある商品を知ってから購入に至るまでは、注意が喚起され、興味;関心が生まれ、関連する情報を検索し、その商品やサービス購入し、そのことを共有する、というプロセスのこと。


AISASはもともとは購買行動モデルですが、4番目のActionを、情報接触という行動と見なせば、情報接触・探索のモデルとしても当てはめられるように思います。AISASというプロセスでは、検索は真ん中のSにあたり、上流には注意、興味・関心がありますが、ソーシャルメディアで興味・関心が湧き、Googleで検索をするということです。

■情報入手をマトリクスで整理

先ほど、「情報入手は検索だけに頼る必要もない」と書きましたが、今後、マイクロソフト+フェイスブックのように検索にソーシャル性が加われば、自分にとっての情報入手は次のようなマッピングができそうです。


Googleリーダー、Google検索は今のところソーシャル性よりも、機械的なアルゴリズムにより検索精度の向上させています(Googleのミッションである「世界中の情報を整理し、世界中の人々がアクセスできて使えるようにする」)。ただ、ソーシャルの取り組みがないわけではなく、Googleリーダーでは共有アイテムがあり、検索でも「+1」という新しいソーシャル機能に挑戦しています。IT系の世の中の流れとしてはソーシャル全盛な感じがありますが、個人的には、機械的な結果を提示してくれる(今の)Googleのような存在もあってほしいと思いますし、上記のマトリクスのような棲み分けごとに、それぞれがもっと使いやすくなってくれることを期待したいです。


※参考情報

Facebook Friends Now Fueling Faster Decisions on Bing|bing
Bing、Facebook連携を大幅強化 - 友人のいいね!などを検索結果に表示|マイコミジャーナル
Nielsen Global Online Consumer Survey (PDF)|Nielsen
世界で最も信頼される広告形態は「知り合いからのおすすめ」「ネットのクチコミ」【ニールセン調査】|MarkeZine
Googleは「+1」でソーシャル検索を実現できるのか?|思考の整理日記


2011/05/15

テレビとこれからの視聴率を考えてみる


Free Image on Pixabay


日本でテレビ放送が開始されたのは1953年 (昭和28年) でした。1953年2月1日に NHK が、その後の1953年8月28日に日本テレビ放送網が放送を開始しています。放送開始当初の NHK の受信契約は866件だったようです。

テレビ放送開始|NHK
日本放送協会|Wikipedia
日本テレビ放送網|Wikipedia


テレビのビジネスモデル


テレビのビジネスモデルは50年前も今も基本的には変わっていません。

1953年当初から、NHK は視聴者から受信料を受け取る有料モデル、日本テレビ放送網はスポンサー企業の CM を入れる広告モデル (受信料は無料) でした。ちなみに、日本での初めてのテレビ CM は、日本テレビ放送網の放送初日に流された精工舎の時報だったとのことです。

セイコーホールディングス|Wikipedia


スポンサー企業は50年前も今も、多くの予算を投入しテレビ CM を流しています。スポンサーにとってテレビはそれだけ広告媒体としての価値を見出しています。一つの情報を一度に大量の視聴者に届けることができるという価値です。テレビはこの点で、新聞・雑誌、ラジオ、ネットと比べても優れています。

2011/05/07

決断とリスクはワンセットである

「決断力」 (羽生善治)という本を読みました。

初版が2005年で、羽生善治氏は当時34歳でした。将棋のことが中心に書かれているものの、専門知識がなくても読み進めてしまいました。それだけ書かれている内容が将棋以外にも広く当てはまります。

今回のエントリーでは、書籍「決断力」を読んで考えたことを中心に書いています。

本書の目次です。

第1章 勝機は誰にでもある
第2章 直感の七割は正しい
第3章 勝負に生かす「集中力」
第4章 「選ぶ」情報、「捨てる」情報
第5章 才能とは、継続できる情熱である

■ 決断とはリスクを取ること

「将棋を指すうえで、一番の決め手になるのは何か?」

これに対する羽生さんの答えが「決断力」だそうです(p.56)。決断力はまさに本書のタイトルでもありますが、決断について最も印象に残っているのは、「決断とリスクはワンセットである」という考え方でした(p.71)。

羽生さん曰く、リスクを前にすると正直怖気づくこともあるそうです。それでも勝負をするからには、そのような場面に向き合い、決断を下すと言います。なぜか。これについては以下のように記述しています。

リスクを避けていては、その対戦に勝ったとしてもいい将棋は残すことはできない。次のステップにもならない。それこそ、私にとっては大いなるリスクである。いい結果は生まれない。私は、積極的にリスクを負うことは未来のリスクを最小限にすると、いつも自分に言い聞かせている。(p.72)

これは本書の第2章で言及されていますが、個人的にはこの本での一番のハイライトでした。

特に、(現在の)リスクを積極的に取ることは未来のリスクを最小化する、という指摘です。これは、リスクを取らないことがリスクであるという考え方に近いです。

もちろん、自分にとって許容できないような大きなリスクを負うことは無謀なことですが、リスクを正しく評価し、その上でリスクを取る、そのために羽生さんは自らに上記引用部分を言い聞かせることで、リスクと正対しているのだと感じました。

決断とリスクについては将棋に限ったことではなく、だからこそ考えさせられる指摘でした。

■「選ぶ」情報と「捨てる」情報

決断することについて、もう一つ印象的だったのはこれです。

私はロジカルに考えて判断を積み上げる力も必要であると思うが、見切りをつけ、捨てることを決断する力も大事だと思っている。(p.169)

捨てるということに対しては、羽生さんは、情報は「選ぶ」より「いかに捨てるか」が重要とも言っています。

個人的な解釈として、「選ぶ」というのは、A と B のうち A を選んだとしても B はそのまま残しておくイメージです。一方で「捨てる」とは A だけ残し、文字通り B は捨ててしまうイメージです。

なぜ捨てるかと言うと、全部を収集し分析していては時間がかかり過ぎるからです。

例えば羽生さんの場合、将棋の局面を想定する場合も、八十通りある指し手の可能性の中から大部分を捨ててしまうそうです。八十手のうち二~三手以外はこれまでの経験から考える必要がないと判断し、候補を絞ると言います。

情報をいくら分類、整理しても、どこが問題かをしっかりとらいないと正しく分析できない。(p.129)

これが羽生さんの情報についての考え方なのです。

■ 物事を簡単に考えること、ベストを尽くせる環境、勉強法、モチベーション

上記では、決断する上でのリスクについての考え方や、時には捨てることの大切さに触れました。これ以外にも、興味深い言及があったので、最後にいくつか引用しておきます。

一般社会で、ごちゃごちゃ考えないということは、固定観念に縛られたり、昔からのやり方やいきさつにとらわれずに、物事を簡単に考えるということだ。(中略) 簡単に、単純に考えるということは、複雑な局面に立ち向かったり、物事を推し進めるときの合い言葉になると思う。そう考えることから可能性が広がるのは、どの世界も同じであろう。(p.24-25)

私は、年齢にかかわらず、常に、その時、その時でベストを尽くせる、そういう環境に身を置いている――それが自分の人生を豊かにする最大のポイントだと思っている。(p.123)

報われないかもしれないところで、同じ情熱、気力、モチベーションをもって継続してやるのは非常に大変なことであり、私は、それこそが才能だと思っている。(p.171-172)

これをすれば絶対に強くなるという方法はわからない。将棋は進化している。技術や社会もそうだろう。取り残されないためには油断は禁物だ。今はこれがいいという勉強法でも、時間とともに通じなくなる。変えていかなければならない。私は、年齢とともに勉強法を変えることは、自分を前に進めるための必須条件だと考えている。(p.190)

どの世界においても、大切なのは実力を持続することである。そのためにモチベーションを持ち続けられる。地位や肩書は、その結果としてあとについてくるものだ。逆に考えてしまうと、どこかで行き詰ったり、いつか迷路にはまり込んでしまうのではないだろうか。(p.195)



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2011/05/03

大人老い易く学成り難し

勉強はやらさせるもの、辛いもの、多くの人がそう思っているかもしれません。

「勉強は楽しいものである」。野口悠紀雄氏は、著書『実力大競争時代の「超」勉強法』の中でこう主張しています。

この本のタイトルには勉強法とあり、具体的な方法も書かれていますが、なぜ勉強をするのかということをあらためて考えさせてくれた本でした。今回のエントリーでは、勉強についてあらためて書いています。

2011/05/01

アイデアをつくるシンプルな原理と方法

「アイデアのつくり方」(ジェームス W.ヤング)という本を読みました。帯には60分で読めると書いてありますが、文庫本サイズで100ページほどで、著者自身の説明はわずか60ページ程度。早い人なら60分もかからないかもしれません。ただ、この本の内容はなかなかに深いことが書いてありました。

■アイデアをつくる原理

著者は、どんな技術を習得する場合でも大切なことが2つあると言います。第一に原理であり、第二に方法です(p.25)。これは本書の主題であるアイデアをつくり出す場合にも当てはまり、本書ではアイデア作成のための原理と方法が記されています。

それでは、アイデアをつくるための原理とは何でしょうか。著者によれば、1.アイデアとは既存の要素の新しい組み合わせ以外の何ものでもない、2.既存の要素を新しい一つの組み合わせに導く才能は、事物の関連性をみつけ出す才能に依存するところが大きい、という2点に集約されます(p.28)。要するに、アイデアは組み合わせであり、そのためには関連性を見分ける才能が重要ということです。

■アイデアをつくる方法

次に方法です。著者はアイデアの作成には一定の明確な方法に従うと言います。よって、この技術を意識して修練することでアイデアをつくり出す能力は高められるとしています。アイデア作成の方法をまとめると以下の通りです。
1.資料・データ集め
2.資料・データの咀嚼
3.問題を放棄し、心の外にほうり出してしまう
4.アイデアの誕生
5.アイデアを具体化し、展開させる

■なぜ「ステップ3」で問題を放棄するのか

あらためてこの5段階の方法を見ると、3から4に至る間になぜアイデアが生まれるのかと思ってしまうかもしれません。ここで、もう一度アイデアをつくる原理に立ち返ってみると、アイデアは既存のもの組み合わせからできるということでした。そして組み合わせがどこで発生しているかと言うと、まさに3と4の段階で起こっています。

著者によれば、アイデアが現れるのはその到来を最も期待していない時だと言います。例えばお風呂に入っている時や真夜中に目を覚ました時で、そのためステップ3において、いったん忘れろとしているのです。だから著者が薦めるのは、音楽を聴いたり、劇場や映画に出かけたり、詩や探偵小説を読んだりすることでした。ただ、これも何のためかを考えると、自分の想像力や感情を刺激するためであり、つまりは頭の中で新しい組み合わせが起こりやい状況をつくるためなのでしょう。こう考えれば、ステップ3は組み合わせをする段階とも言えます。

■アイデアは組み合わせである

アイデアは既存の要素の組み合わせであるという著者の主張は、なるほど確かにその通りかもしれません。この視点で身の回りを考えてみると、実はいろいろなものがA+Bに要因分解できることに気づきます。

例えば世界で6億人以上のユーザーがいるFacebookですが、もともとは顔写真入りの紙の学生名鑑をオンラインで実現したという名簿+ネットという組み合わせでした。もちろん、ここまでユーザーが増加した要因は様々あり、戦略的にユーザーを増やしたこと、ユーザー増に耐えうるサーバー増築、フェイスブック上の友達の更新情報が1つに集約されるニュースフィードの公開、広告によるマネタイズなど、上記のアイデア作成の方法のステップ5である、具体化・展開で成果を出した結果なのでしょう。(このあたりは書籍「フェイスブック 若き天才の野望 (5億人をつなぐソーシャルネットワークはこう生まれた)」に詳しく書かれています)

繰り返しになりますが、このアイデア作成の方法は意識することで能力を高められると書かれています。アイデアをつくり出すのは別に1人だけで行なうものではなく、組み合わせを複数人で実施してもいいのです。あるいは、アイデアの具体化や展開もむしろ他人の目を入れることで、より強固なアイデアになるかもしれません。

ステップ3から4の工程は、当然ながら言うほど簡単ではありません。ただ、これは今のところ人間がコンピューターに勝てる領域だと思います。コンピューターはデータの保存は得意でも、忘れることは苦手です。そして、今までにはない組み合わせを試みるのも不得手なのではないでしょうか。

「アイデアは組み合わせである」。深い内容ですね。



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多田 翼 (書いた人)


外資系 IT 会社にてマーケティングリサーチ マネージャー (LinkedIn) 。

1981年 (昭和56年) 生まれ。名古屋出身。学生時代は京都。家族4人で東京23区内に在住、2人の子どもの父親。気分転換は毎朝 8km のランニングとピアノ。

書いている内容は、所属組織や会社の正式見解ではなく個人の見解です。