2011/07/30

マクドナルドの経営戦略がおもしろい




日経ビジネスで短期連載されていた 「日本マクドナルド原田泳幸の経済教室」 は興味深い記事でした。マクドナルドの経営手法について、原田氏 (社長・会長 CEO を兼任) 本人が語るというものでした。


原田経営の土台は QSC


第一回で紹介されたのが原田経営の考え方でした。2004年に原田氏が CEO に就任した当時、マクドナルドは7年連続で既存点売上高が落ち続けるという状態でした。

その後、結果的には7年連続で同売上が上がり続けることになり、10年12月期決算では経常利益が上場以来最高益を更新するのですが、どん底であった CEO 就任当時にまず取り組んだことが、「マクドナルドらしさに立ち返ること」 だったそうです。

2011/07/17

Googleが計画する「ウェブデータ取引所」は、あなたと広告のミスマッチを解消してくれるのか

それにしてもスケールの大きなニュースです。Ad Age DIGITALによれば、グーグルがウェブデータの取引所を創設する構想を持っているとのことです。
Google Readies Ambitious Plan for Web-Data Exchange|Ad Age DIGITAL

■グーグルが計画中のウェブデータ取引所とは

まずは開発中とされるグーグルのこの取り組みについて見てみます。簡単に言うとグーグルがやろうとしているのは、ユーザーデータが売買できる仕組みおよび場(取引所)を提供するということです。ユーザーデータは、ネットでの行動履歴データで例えば訪れたサイトや検索した時に入力した単語(検索ワード)など。このデータが売買されるわけですが、売り手はウェブサイトなど、買い手は広告主となります。

広告主は何のためにデータを買うかというと、広告をどういう人たちに表示をさせるかというターゲット情報を得るためです。広告の基本は、1.人の集まるところに出す(だからTV広告では視聴率が重宝される)、2.広告を見てほしい人に見てもらう、だと思っていますが、この2点を考えるためにターゲット情報が活用されます。ここで言うターゲット情報というのが、上記のウェブサイトなどから提供される「ネットでの行動履歴」に当たりますが、ネットでの行動履歴というのは、言い換えればその人の興味・関心のデータです。というのは、ネットで何かのサイトや動画を見る、検索をするなどは、そこに何かしらの興味があってのことで、上記のAd Ageの記事では「新車を購入しようとしている人」、「旅行を計画中の人」などの例が書かれていますが、行動履歴を積み重ねるとその人が何に興味を持っているのか、さらにはどういう人なのかもある程度はわかるようになります。

グーグルが開発しているこのデータベースが実現すれば、広告主は自分の広告を表示させたいターゲットを抽出することができ、広告を見てもらいやすくなり購入にもつながることが期待できます。ユーザーデータについて需用と供給が成り立つことで、それに対してグーグルの役割は、あらゆるユーザーデータを一つに集約した巨大データベースを構築し、売り手と買い手の間で円滑にデータが売買されるような仲介役なのです。

■あなたにとってどういう意味があるのか

では、仮にグーグルのウェブデータ取引の仕組みが実現されるとして、その場合に私たちに一体何をもたらすのかということを考えてみます。認識としてあらためて考えてみたいのが、自分たちのまわりにはたくさんの広告であふれているものの、それらのうちどれだけの広告に興味・関心を持ち、さらにはその広告の商品・サービスを買うところまで至ったかという点です。ウェブ上でも多くの広告が表示されますが、個人的には大部分はクリックすることはなく、もっと言えば何の広告かの認識すらしていないこともあります。

この状況を冷静に考えてみると、現在の広告は多くの場合でミスマッチが起こっているのではないでしょうか。つまり、広告が表示されていても、見る人にとってその時点で興味関心は持たれていない、本当に見てほしい人(見てくれる人)に表示されないというミスマッチです。これはあらためて考えてみると残念な状況です。とういのも、ミスマッチが発生しているということは、その広告の広告主・消費者・広告媒体の三者それぞれにとっても望ましい状況ではないと言えるからです。広告出稿費を払ったのに広告の効果が出ない、見たくはない広告が表示される、表示広告に効果が見えにくいと広告媒体としての価値が上がらない、といった感じに。

広告というのは必要な人に適切なタイミングで提供できれば、消費者と広告主の双方にメリットがあるものだと思っています。広告の中には関心を抱くものも多少はあるわけで、広告で存在をはじめて知ったり、ちょっと買ってみようかなと思うこともある。あるいは実際に広告の影響で買うこともあります。

少し前置きが長くなりましたが、グーグルの取り組みが実現されるとこうしたミスマッチが解消していく可能性があると考えます。グーグルが提供している検索連動型広告は検索ワードという興味・関心に連動した広告なわけですが、それよりも幅広いネットでの行動履歴をベースに広告を表示させるターゲットを選んでくることができるからです。これにより、広告が必要な人に適切なタイミングで提供されることが期待できます。ふと○○が欲しいと思った時に向こうから知らせてくれたり、自分の中で完全なニーズになっていないことまで提案してくれる、なんてことが実現できるかもしれません。

■独占とプライバシーの問題

一方で、自分のネットでの行動履歴が使われることに対しての反発も当然起こってくるでしょう。このようなウェブのユーザーデータはクッキーという機能を活用することになるのですが(他にも仕組みはあるのですが)、自分のデータが提供されることがわかっていて許諾が得られている場合はいいとして、ユーザーにとっては自分のウェブデータが活用されていることにも気づいていないケースもあり、このあたりは個人情報やプライバシーの問題が必ず出てくると思います。

それにただでさえグーグルは独占禁止法やプライバシー問題で、アメリカやヨーロッパの独禁・司法当局からの監視の目が増している状況です。そんな中、グーグルが個人のウェブデータを集約し、売買できるようなデータベース・仕組みを構築するとなれば、独占禁止法とプライバシー問題の両方で懸念の声が出てきてしまう恐れがある。その実現は簡単ではないというのが個人的な見解でもあります。
フェイスブック・米当局…グーグル支配に包囲網|日本経済新聞(11年7月7日)
[FT]グーグルに独禁法関連の疑い相次ぐ 今度は欧州で訴訟 |日本経済新聞(11年6月28日)

■グーグルにとってなぜこのプロジェクトなのか

それでもなお、グーグルはこのプロジェクトを前に進めていくのでしょう。なぜなのかを整理するために、ここではグーグルの目的を考えてみます。1つ考えられるのは、ユーザーの行動履歴というウェブデータが集まるデータベースが構築できそこにデータを売る/買うプレイヤーが集まる、こうしたプラットフォームをグーグルが支配することです。支配できれば、課金モデルが構築できます。一定の手数料という形でグーグルにとっては持続的な利益を得ることができる。

この可能性はなくはないのですが、個人的にはグーグルの目的はこのビジネスモデルではないのではと思っています。それはグーグルがアンドロイドOSを無償提供し、あくまでアンドロイドの普及を進めているのと同じで、グーグルにとって大事なのはあらゆるウェブのデータが集まることです。グーグルの目的は、データが集まり、広告主がそのデータベースからターゲットを抽出できる、本当に必要な人に広告が表示でき広告のマッチング精度・効果が上がる、そしてオンライン広告の価値がより向上すること。これがグーグルが描いていることなのではないでしょうか。

冒頭で引用したAd Ageの記事はタイトルにAmbitious Planという表現が入っており、さらに記事ではこのプロジェクトに詳しいグーグルの幹部によれば「one of the most ambitious in Google's march to become a brand advertising giant.」と表現し、グーグルがブランド広告の巨人になるためは最も重要なプロジェクトの1つと指摘しているのです。グーグルの目的はウェブデータ取引所で広告主にデータを活用してもらい、オンライン広告へこれまで以上に投資してもらうこと、ひいてはそれが広告媒体としてグーグルの収益に結びつくという構図です。

■個人データ活用への期待

最後に、このニュースについて自分はどう思うかを少し書いておきます。ウェブのデータ活用にはメリット/デメリットがあるものの、結論としては期待のほうが大きいと思っています。マイナス面としては自分のウェブ上の行動履歴がデータとして誰かに(知らないところで)活用されるという不安がありそうですが、一方でウェブを使い以上はある程度の自分のデータが提供されてしまうのは不可避だと考えます。自分の個人情報をウェブ上に預けることで、利便性を享受できている面もあります。であるならば、データが提供されることを受け入れ、そこから個人データをいかに活用し、どうすれば世の中をもっと豊かにできるかを考えたいというのが個人的な思いです。

※参考情報
Google Readies Ambitious Plan for Web-Data Exchange|Ad Age DIGITAL
データが通貨になる Googleが「ウェブデータ取引所」機能構築へ=米報道【湯川】|TechWave
フェイスブック・米当局…グーグル支配に包囲網|日本経済新聞(11年7月7日)
[FT]グーグルに独禁法関連の疑い相次ぐ 今度は欧州で訴訟 |日本経済新聞(11年6月28日)


2011/07/10

「ソーシャルメディア実践の書」から得られたノウハウ以上のこと

ここ最近で読んだ本に「ソーシャルメディア実践の書 -facebook・Twitterによるパーソナルブランディング-」があります。

ソーシャルメディアを活用して個人レベルでできるブランディングのヒントがたくさん書かれていました。それ以外にも考えさせられたこともあり、興味深く読めました。

著者である大元隆志氏はソーシャルメディアの最も重要な特徴を次のように表現します。「世界中の人に、あなたというこの世でたった一つの存在を知ってもらうことを実現する最良のメディアである」と。

では、自分のこと、それも「あなたの魅力」をソーシャルメディアで伝えるにはどうすればよいか、これが本書の主題です。

この本では、自分自身のポテンシャル向上方法と、ソーシャルメディア活用し自分の魅力伝える方法の2点が指南されています。

■ ソーシャルメディアを活用する心得

本書の構成は大きくは3つです。

  • ソーシャルメディアとは何か(第一章・第二章)
  • ソーシャルメディアでの実践ノウハウ(第三章・第四章)
  • ソーシャルメディアの未来(第五章)

本書はタイトルが「ソーシャルメディア実践の書」とある通り、ソーシャルメディアで自分の魅力を伝えるためにどう考え、何をすればよいかが具体的に書かれているのが特徴です。

よく、ソーシャルメディアでは絆をつくることが大切であるということが言われます。例えば、企業が消費者と絆を形成することで、自社のブランドや商品のファンになってくれる、これをソーシャルメディアであれば実現できる、というようなことも書かれていたりします。

ただ、肝心の「絆をどうつくるか」はあまりフォーカスされていないような気がします。それが本書では、個人レベルでもできる内容が書かれています。もちろん、著者が言うように本書のノウハウを実践したとしても、成果が出るには早くても半年くらいはかかるとあるように、継続してやるのはそれなりの努力は必要です。

本書で提示されているソーシャルメディアの実践ノウハウは2つに分けることができます。1つがソーシャルメディアのリテラシーで心得、2つ目が具体的な活用ノウハウです。

1つ目の心得ですが、私が印象に残った内容は以下のようなものでした。

  • ソーシャルコミュニケーションの王道は人から尊敬され人望を集めていくこと
  • パーソナルブランディングは目立つことよりも信頼されることを重視するべき

■ ソーシャルメディアの実践

それではソーシャルメディアを使って、人望を集め信頼されるにはどうすればよいのでしょうか。

著者のアドバイスが「実践の書」として書かれていて、一言で表現すると必要なのは「評判を管理していく能力」です。

評判を管理し、自分への信頼を少しずつ積上げていきます。必要な能力は3つだと著者は言います。

  • キューレーション能力
  • 表現力
  • コミュニケーション能力

なぜこの3つなのかというと、それはソーシャルメディア上での自分の魅力を伝えるための活動と関係しています。

つまり、情報をインプットするためには目利きとしてのキュレーション能力が必要になり、インプットした情報をコンテンツ(例.ブログ記事にする)にして自分の魅力を伝えるために表現力が、ソーシャルメディア上で交流するためにはコミュニケーション力が要求されるというものです。このサイクルをまわすことで評判を管理するのです。

詳細は本書に譲りますが、この3つの能力のうち表現力に該当する情報提供について、著者の考え方に共感しました。

例えば、ツイッターやブログで何かをツイート・記事のエントリーをするということは情報を提供することになりますが、その時に重要なのはいかに質の高い情報を発信し相手に貢献できるか、価値を提供できるかという考え方です。ただ読んでもらうだけではなく、そこに自分ならでは視点・考え方をプラスアルファで提示し、共感をしてもらえることを目指します。

ここに著者の哲学がありました。この本の最後の「結び」で、次のようなことが書かれていました。

  • ソーシャルメディアで活躍する最もよい方法は誰かを幸せにすること
  • あなたの隣にいる人を幸せにしたいと願う気持ちが成功の秘訣である

これらが、著者が本書を通じて最も伝えたかったことであり、この本を通じて書かれていた実践の仕方はこの考え方がベースになっていると思いました。

■ ソーシャルメディア時代の4つの絆から考えた本当に大切なもの

ここまでは本書のソーシャルメディア実践の考え方・ノウハウでした。この本に書かれていたことで印象的だったのはノウハウ以外にもありました。

おもしろいと思ったのは、ソーシャルメディア時代には四種類の絆が形成されると書かれていたことです。強い絆、仲間の絆、弱い絆、一時的な絆です。



上図は本書(p.318)からの引用です。

ソーシャルメディアにより、それまでは家族などの強い絆と友人などの仲間の絆という2つだったものが、弱い絆、一時的な絆(ちなみに図では一次となっていますが一時のはずです)が形成されるようになると言います。

弱い絆は例えばツイッターで2、3回やりとりした、ソーシャルメディアを通じて知り合った人などの相互フォローの関係です。一時的な絆はあるトピックでその時だけ一時的にコミュニケーションをとったことのある関係です。

上図のソーシャルメディア時代の4つの絆について、弱い絆や一時的な絆はソーシャルメディア以前にも存在はしていたと思います。

というのも、ソーシャルメディア以前にも、弱い絆は、例えば会社内で顔と名前は知っているけれども、あまり話したことがない人やメールでしかやりとりをしたことがない人です。一時的な絆は、業界カンファレンスや何かの集まりで会って話したけど、それ以降は特にコミュニケーションが発生していない人などがいたからです。

ただし、ソーシャルメディアの使用以前と以後で大きく違うのは、この関係の人たちから得られる情報です。

弱い絆や一時的な絆からの情報(業界動向、ニュースなど)も、時には有力なものに成り得ると実感するからです。

例えば自分の専門ではない話題(経済、政治など)のニュースや考察などの情報は、ツイッターで流れていることが多く、それは多くの場合弱い絆や一時的な絆である人たちからのものです。あるいは、自分がいる業界の情報も、時にはこうした人たちが情報源になることもあり、情報が入ってくる速さ・頻度・質がソーシャルメディア使用以前よりも明らかに向上しています。

これは絆が弱かったり、一時的だったとしてもソーシャルメディア上でつながっていることが大きいのではと思います。

自分にとって大切なのは家族などの強い絆や友達や一緒に仕事をしている人たちで構成される仲間の絆です。そこに弱い絆と一時的な絆が加わり、様々な関係性が形成されます。

ソーシャルメディアはこうした関係性を充実させてくれるツールだと思いますし、いくらソーシャルメディアの使い方に詳しくてもそこにコミュニティがあるかどうかで楽しさが違ってきます。

本書で書かれているソーシャルメディアの実践も参考になりますが、一方で自分が持つコミュニティは財産とも言え、お金では買えない大切なものだということが本書を読んであらためて考えたことでした。

※参考情報
ソーシャルメディア実践の書 -facebook・Twitterによるパーソナルブランディング-|ASSIOMA:ITmedia オルタナティブ・ブログ


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2011/07/03

グーグルが新SNSのGoogle+をリリースする2つの意味とわくわく感

ついにGoogleも動いてきました。同社が世界に発表した新しいSNSであるGoogle+です。(11年7月2日現在まだパイロットテスト段階で、一部のユーザー限定で使用が可能)

参考:Introducing the Google+ project: Real-life sharing, rethought for the web|The Official Google Blog

今回のエントリーでは、Google+について以下のような論点で書いています。

  • Google+とは何か?Facebookとの違いは?
  • なぜGoogleはSNSに取り組むのか?
  • Google+が普及するとどうなるのか?そして期待すること

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多田 翼 (書いた人)


複数のスタートアップ支援に従事。経営や事業戦略、プロダクトマネジメント、マーケティングのコンサルティング及びメンター。前職は Google でシニアマーケティングリサーチマネージャー、現在は独立 (詳細は LinkedIn をご覧ください) 。

1981年 (昭和56年) 生まれ。名古屋出身、学生時代は京都。現在は東京23区内に在住。気分転換は毎朝のランニング。

内容は、所属組織や会社の正式見解ではなく個人の見解です。