ここ最近で読んだ本に
「ソーシャルメディア実践の書 -facebook・Twitterによるパーソナルブランディング-」があります。
ソーシャルメディアを活用して個人レベルでできるブランディングのヒントがたくさん書かれていました。それ以外にも考えさせられたこともあり、興味深く読めました。
著者である大元隆志氏はソーシャルメディアの最も重要な特徴を次のように表現します。「世界中の人に、あなたというこの世でたった一つの存在を知ってもらうことを実現する最良のメディアである」と。
では、自分のこと、それも「あなたの魅力」をソーシャルメディアで伝えるにはどうすればよいか、これが本書の主題です。
この本では、自分自身のポテンシャル向上方法と、ソーシャルメディア活用し自分の魅力伝える方法の2点が指南されています。
■ ソーシャルメディアを活用する心得
本書の構成は大きくは3つです。
- ソーシャルメディアとは何か(第一章・第二章)
- ソーシャルメディアでの実践ノウハウ(第三章・第四章)
- ソーシャルメディアの未来(第五章)
本書はタイトルが「ソーシャルメディア実践の書」とある通り、ソーシャルメディアで自分の魅力を伝えるためにどう考え、何をすればよいかが具体的に書かれているのが特徴です。
よく、ソーシャルメディアでは絆をつくることが大切であるということが言われます。例えば、企業が消費者と絆を形成することで、自社のブランドや商品のファンになってくれる、これをソーシャルメディアであれば実現できる、というようなことも書かれていたりします。
ただ、肝心の「絆をどうつくるか」はあまりフォーカスされていないような気がします。それが本書では、個人レベルでもできる内容が書かれています。もちろん、著者が言うように本書のノウハウを実践したとしても、成果が出るには早くても半年くらいはかかるとあるように、継続してやるのはそれなりの努力は必要です。
本書で提示されているソーシャルメディアの実践ノウハウは2つに分けることができます。1つがソーシャルメディアのリテラシーで心得、2つ目が具体的な活用ノウハウです。
1つ目の心得ですが、私が印象に残った内容は以下のようなものでした。
- ソーシャルコミュニケーションの王道は人から尊敬され人望を集めていくこと
- パーソナルブランディングは目立つことよりも信頼されることを重視するべき
■ ソーシャルメディアの実践
それではソーシャルメディアを使って、人望を集め信頼されるにはどうすればよいのでしょうか。
著者のアドバイスが「実践の書」として書かれていて、一言で表現すると必要なのは「評判を管理していく能力」です。
評判を管理し、自分への信頼を少しずつ積上げていきます。必要な能力は3つだと著者は言います。
- キューレーション能力
- 表現力
- コミュニケーション能力
なぜこの3つなのかというと、それはソーシャルメディア上での自分の魅力を伝えるための活動と関係しています。
つまり、情報をインプットするためには目利きとしてのキュレーション能力が必要になり、インプットした情報をコンテンツ(例.ブログ記事にする)にして自分の魅力を伝えるために表現力が、ソーシャルメディア上で交流するためにはコミュニケーション力が要求されるというものです。このサイクルをまわすことで評判を管理するのです。
詳細は本書に譲りますが、この3つの能力のうち表現力に該当する情報提供について、著者の考え方に共感しました。
例えば、ツイッターやブログで何かをツイート・記事のエントリーをするということは情報を提供することになりますが、その時に重要なのはいかに質の高い情報を発信し相手に貢献できるか、価値を提供できるかという考え方です。ただ読んでもらうだけではなく、そこに自分ならでは視点・考え方をプラスアルファで提示し、共感をしてもらえることを目指します。
ここに著者の哲学がありました。この本の最後の「結び」で、次のようなことが書かれていました。
- ソーシャルメディアで活躍する最もよい方法は誰かを幸せにすること
- あなたの隣にいる人を幸せにしたいと願う気持ちが成功の秘訣である
これらが、著者が本書を通じて最も伝えたかったことであり、この本を通じて書かれていた実践の仕方はこの考え方がベースになっていると思いました。
■ ソーシャルメディア時代の4つの絆から考えた本当に大切なもの
ここまでは本書のソーシャルメディア実践の考え方・ノウハウでした。この本に書かれていたことで印象的だったのはノウハウ以外にもありました。
おもしろいと思ったのは、ソーシャルメディア時代には四種類の絆が形成されると書かれていたことです。強い絆、仲間の絆、弱い絆、一時的な絆です。
上図は本書(p.318)からの引用です。
ソーシャルメディアにより、それまでは家族などの強い絆と友人などの仲間の絆という2つだったものが、弱い絆、一時的な絆(ちなみに図では一次となっていますが一時のはずです)が形成されるようになると言います。
弱い絆は例えばツイッターで2、3回やりとりした、ソーシャルメディアを通じて知り合った人などの相互フォローの関係です。一時的な絆はあるトピックでその時だけ一時的にコミュニケーションをとったことのある関係です。
上図のソーシャルメディア時代の4つの絆について、弱い絆や一時的な絆はソーシャルメディア以前にも存在はしていたと思います。
というのも、ソーシャルメディア以前にも、弱い絆は、例えば会社内で顔と名前は知っているけれども、あまり話したことがない人やメールでしかやりとりをしたことがない人です。一時的な絆は、業界カンファレンスや何かの集まりで会って話したけど、それ以降は特にコミュニケーションが発生していない人などがいたからです。
ただし、ソーシャルメディアの使用以前と以後で大きく違うのは、この関係の人たちから得られる情報です。
弱い絆や一時的な絆からの情報(業界動向、ニュースなど)も、時には有力なものに成り得ると実感するからです。
例えば自分の専門ではない話題(経済、政治など)のニュースや考察などの情報は、ツイッターで流れていることが多く、それは多くの場合弱い絆や一時的な絆である人たちからのものです。あるいは、自分がいる業界の情報も、時にはこうした人たちが情報源になることもあり、情報が入ってくる速さ・頻度・質がソーシャルメディア使用以前よりも明らかに向上しています。
これは絆が弱かったり、一時的だったとしてもソーシャルメディア上でつながっていることが大きいのではと思います。
自分にとって大切なのは家族などの強い絆や友達や一緒に仕事をしている人たちで構成される仲間の絆です。そこに弱い絆と一時的な絆が加わり、様々な関係性が形成されます。
ソーシャルメディアはこうした関係性を充実させてくれるツールだと思いますし、いくらソーシャルメディアの使い方に詳しくてもそこにコミュニティがあるかどうかで楽しさが違ってきます。
本書で書かれているソーシャルメディアの実践も参考になりますが、一方で自分が持つコミュニティは財産とも言え、お金では買えない大切なものだということが本書を読んであらためて考えたことでした。
※参考情報
ソーシャルメディア実践の書 -facebook・Twitterによるパーソナルブランディング-|ASSIOMA:ITmedia オルタナティブ・ブログ
大元隆志
リックテレコム
売り上げランキング: 23429