投稿日 2024/04/24

エーリッヒ・フロム 「愛するということ」 に学ぶ、マーケティングリサーチャーがインタビュー調査で成果を出す方法

#マーケティング #マーケティングリサーチ #本

 「愛する」 という行為は、ビジネスにおいても重要です。

今回は、エーリッヒ・フロムが提唱する 「人を愛するための6つの要素」 がビジネスにも応用できることを、具体的にはマーケティングリサーチへの横展開を試みます。

愛するということ


エーリッヒ・フロムの著書 「愛するということ」 は、愛についての深い洞察を提供する本です。



本書の概要


エーリッヒ・フロムは、愛することは技術であると捉えています。愛を他者との関係を築くための技術とし、多様な形の愛を説明しています。兄弟愛、母性愛、恋愛、自己愛、神への愛です。

英語での原題 「Art of Loving」 で、愛することを実践するには自己認識、自己啓発 (人格を磨く) 、そして他者への敬意が必要であると主張されています。

この本では、愛について深く理解し、より満足のいく人間関係を築くために考えさせられたり、我が身を振り返るきっかけが得られます。フロムは、愛は単に感じるものではなく、愛する技術は習得でき、実践するものであると説いています。読者に自己改善と他者への深い理解を促します。

愛を習得するための6つの要素


著書 「愛するということ」 においてエーリッヒ・フロムは、愛するための具体的な方法を詳しく説明しています。

愛することは習得できる技術であり、これは私自身の解釈も入りますが、次の要素が重要になります。

  1. 自己認識: 愛を深めるためには、まず自分を理解することが大事。自分自身の感情、欲求、弱みなどを知り、自分自身と向き合う。自己認識により、他者との健全な関係を築く基盤が形成される

  2. 自己犠牲: 愛における自己犠牲とは、自分の利益を超えて相手の幸せを願い、行動することを意味する。ただし、自己犠牲の精神は自暴自棄や自己を放棄することは異なる

  3. 尊敬: 真の愛には相手のことを尊重する姿勢が大切。相手の存在を価値あるものとして認め、相手の成長や幸福に貢献する

  4. 知識: 相手を深く理解しようとする努力が必要。表面的な理解に終わらず、相手の内面を理解し、共感することまでを含む

  5. 責任: 相手を支えることへの責任。愛する人に対する責任感は、愛を成熟させるために不可欠

  6. 実践: 愛は単なる感情ではなく、行動を伴うもの。愛を表現し、育てるためには、日常の中でこれらを積極的に実践することが大切


マーケティングリサーチへの応用


技術として 「愛すること」 を習得するための6つの要素は、ビジネスにも応用できます。

たとえば、6つのポイントはマーケティングリサーチにおけるインタビュー調査と共通点があります。

リサーチの中のインタビューで対象者のことを深く理解するためへの示唆として、6つの要素から掘り下げていきましょう。

  1. 自己認識: マーケティングリサーチャーはインタビューへの目的、調査課題、課題についての仮説を理解し、また自分には少なからずバイアスがあることを自覚し、インタビューに臨むといい。自己認識には、事前に可能な限りインタビュー対象者のことも理解し、対象者について自分が何を思う・感じるかも含む

  2. 自己犠牲: インタビューが始まればリサーチャーは仮説にとらわれすぎることなく、対象者の声に真摯に目と耳を傾ける。事前の収集情報や自分の意見とは違うときこそ、持っていた知識やバイアスを捨ててインタビュー対象者に向き合うことで、客観的かつ真実にもとづいた顧客理解が可能になります

  3. 尊敬: インタビュー対象者をリスペクトする姿勢はインタビューでは重要。相手の発言、行動、見解、感情を事実として受け入れ、共感を示し、信頼関係を築くことで相手からのオープンな発言を促す雰囲気をつくることを心がける

  4. 知識: インタビューの前に、事前アンケートやウェブ検索などインタビュー対象者に関する情報を収集する。対象者の背景や文化的な文脈を理解することも含まれる。背景・文脈情報はインタビュー時での本音の発言を引き出すきっかけにつながる

  5. 責任: マーケティングリサーチャーは、インタビューから正確で公正な情報を収集し、インタビュー調査からマーケティングへの示唆を提供するまでの責任を果たす。また、インタビュー対象者の個人情報や発言は、許諾を受けた利用範囲以外には使用しない

  6. 実践: マーケティングリサーチャーはインタビュー技術や示唆だしまでの分析・統合方法を常に磨いておく。インタビュー調査の実務機会だけでなく、日常生活でのプライベートの時の会話や対人関係においても相手を理解することを実践するといい

これらの6つの要素を意識的に取り入れることで、マーケティングリサーチャーはインタビュー対象者とのより深いつながりを築けます。ビジネスに貢献できる有意義な調査にすることができるでしょう。


まとめ


今回は、エーリッヒ・フロムの著書 「愛するということ」 を取り上げ、マーケティングリサーチへの応用を考えました。

最後にポイントをまとめておきます。

  • エーリッヒ・フロムは 「愛すること」 を習得するための6つの要素として、自己認識、自己犠牲、責任、知識、尊敬、実践を説いた

  • 技術としての愛するための6つの要素はビジネスにも応用できる

  • マーケティングリサーチのインタビュー調査では、リサーチャーは自らのバイアスを理解し、調査対象者にリスベクトの姿勢を持ち真摯に向き合い、ビジネスへの示唆を出す責任感を持って調査に臨む。インタビューへの研鑽から理論と実践の経験値を常に高める姿勢が大事



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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。