2012/04/08

「勝ち続ける経営」を続けるマクドナルドのすごさ

ちょっと前のことですが、マクドナルドが昨年2011年期の既存店売上高は前年比プラス(1.0%増)であったと発表しています(12.1.5)。これで2004年から8年連続の対前年プラス。驚異的とも言える成長を続けているマクドナルドですが、実は2003年までは7年連続のマイナスでした。2004年を堺にV字回復をしているわけです。


引用:ダイヤモンド・オンライン

V字成長を牽引しているのがマクドナルド代表取締役会長兼社長兼CEOの原田泳幸氏。今回のエントリーではマクドナルドの経営について取り上げ、何がすごいのかを思ったところを書いてみます。(参考書籍:勝ち続ける経営 日本マクドナルド原田泳幸の経営改革論マクドナルドの経済学

■基本に忠実に

当時7年連続のマイナス状況であったマクドナルドに来て原田氏がまず行ったことは、基本に立ち返ることでした。なぜなら就任当初は基本中の基本すらできていなかったからと言います。基本とはQSCという、Quality(品質)、Service(サービス)、Cleanliness(清潔さ)の3つ。すなわち、おいしくて・サービスが良く・清潔な店舗/食事空間の提供です。これに価値ある食事体験という価値(Value)を加えQSC&Vという基本を徹底させたのです。

具体例を1つ。言われてみると当たり前に聞こえますがレストランビジネスの基本はおいしいものを提供することです。ところが、原田氏が就任した当時はハンバーガーなどがつくり置きしていたため、それすらできていなかったと語ります。そこで導入されたのがメイド・フォー・ユーというキッチンシステム。注文を受けてからハンバーガーをわずか50秒でつくれるもので、すごいのがシステム導入への投資を決断するや半年間で一気に全店で導入していること。メイド・フォー・ユーの効果は、お客を待たせることなくできたてのハンバーガーを提供できることに加え、注文後につくるために廃棄ロスが減ったことでした。

■強みを活かす

基本に立ち返り、自分たちの強みを活かす。考え方はオーソドックスですが、8年連続プラスという成果を出した背景には、マクドナルドらしさは何かを考え自分たちの強みを伸ばしてきたという印象を受けました。

原田氏はマクドナルドはアメリカをアイデンティティとした企業であると言います。「らしさ」を象徴する商品には、メガマック、クウォーターパウンダー、それにビッグアメリカシリーズあたり。食べた人はわかると思いますが、メガマックやビッグアメリカはボリュームもありかつ値段もマックの中では結構高い設定がされています。マクドナルドのすごいところは、このへんの「らしい」商品を高単価で提供し、実際にヒットさせている点にあると思います。

もう1つのマクドナルドの強みは利便性にあります。マックには注文をしてから3分30秒以内に商品をお渡しするというルールがあるようですが、他にも利便性を強化している施策として、携帯クーポン、ドライブスルー、24時間営業、店内での電源/無線LAN、それに個人的に注目している試験的に導入中のデリバリーサービスなど。

■Value for Money:価値を提供して対価をもらう

原田氏の言葉であらためて印象的だったのが「商売の基本は価値をつくりお客様に提供し、価値の対価としてお金を支払ってもらう」。価格を上げる際にも、まず価値を上げてそれに見合う価格設定にするという考え方です。まずは価値。この考え方はほんと大切だと思っています。商品の価値自体は変わっていないのに円高還元セールでの値下げ、あるいはガソリン高による値上げなど、価値が変わっていないのにもかかわらず価格の変動ではいけないと言います。

自分の仕事でも、顧客に提供する価値を考えることなく、提供者視点でしかものを見ていない時がしばしばあります。自分たちは結局のところどんな価値を提供しているのか、その価値は競合と差別化/優位性があるものなのか、顧客にとって本当に価値のあることなのか、この視点を忘れないようにしたいもの。

継続的な成長とはつまりは価値を上げ続けること。「価値」の難しいところは、価値を感じるのはあくまで顧客だという点です。商品やサービスであれば支払った料金や使った時間(お店に行く時間・行列に並んだ時間など)に対して超えるモノ/体験を享受できて、はじめて価値を感じることができるのではないでしょうか。だから価値を上げ続けるのは、顧客の期待値を超えた価値を提供していくことだと思います。気になる新しい商品がでたから食べてみよう、この値段でこれはお得、気持ちのよい接客対応、きれいで居心地のいい店舗、また来たくなるおいしさ、など、こういう顧客体験を日々地道に積み重ねることでの価値の創出です。

■変化こそ成長の原動力

基本に立ち返り、強みを活かしながら、価値を提供する。言われてみればどれも当たり前のことかもしれません。しかし8年連続のプラスを達成した原田氏に言わせると、何回も言い続けて徹底させなければならないほど当初はできていなかった。当たり前のことを当たり前にやった、マクドナルドのすごさはこの一言に尽きるのかもしれません。

原田氏の言葉に「Back to the Basic with Innovative Manner」というものがあります。言わんとすることは基本に忠実であること、ただしそれを革新的なやり方で行なうこと。この一見相反する2つを追求し、かつ成果を上げ続けたことに原田氏の経営改革のすごさがあります。変化をし続けることこそが成長の原動力になっていると思いますが、やみくもに変えたり方向感のない変化ではなく、基本に忠実でマックらしさを忘れることなく、変化をする。

この考え方は経営だけではなく個人レベルにも当てはめられるものだと思いました。自分を成長させるためには変わっていく、あえて環境を変化させることが必要と思っています。ただ、自分の価値観だったり目指す方向性はブレないようにする。自分の強みを把握/意識し、何事も基本を大切にする。やると決めたら即実行するなどのスピード感も大切にしたいところ。個人レベルの仕事でもスポーツでもこのへんの考え方は同じではないでしょうか。マクドナルドの経営哲学からはそんなことをあらためて教えられたように思います。


※参考情報
メイド・フォー・ユー|マクドナルド
マクドナルドの経営戦略がおもしろい|思考の整理日記


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