投稿日 2010/10/10

実はよく知らなかったイスラム教のこと

世界には様々な宗教があります。下図は、1980年と2010年における主な各宗教の人口構成比です(図1)。

出所:「世界キリスト百科事典」(1980年)、「ブリタニカ国際年鑑2010」(2010年)
(1980年の人口はWikipediaを参照) 


■イスラム教とは

先月、旅行でエジプトに一週間滞在しました。初めてのイスラム圏の国への旅行だったわけですが、あらためて思ったことに、自分はイスラム教について実はよく知らないことに気付きました。帰国後、たまたま見つけた「高校生からわかるイスラム世界」(池上彰 集英社)を読んでみました。もっとも1冊くらいでは、最低限の知識にもならないかもしれませんが。

そもそもイスラム教のイスラムとは、「神に帰依する」という意味です。つまり、神様を信じ、神様の教えに従うということ。

イスラム教の信仰は、六信と五行から成り立っています。六信とは6つの信仰箇条で、1.神、2.天使、3.啓典、4.使途、5.来世、6.定命。啓典とはコーランのことです。五行とは5つの信仰行為であり、1.信仰告白、2.礼拝、3.喜捨、4.断食、5.巡礼です。


■六信とは

六信についてWikipediaを確認すると、これらのうち1.神と、4.使途がイスラム教の教義の根本に関わり、イスラム教徒は、アッラーが唯一の神であり、預言者であるムハンマドが真正な神の使途であると固く信じてると記載されています。ちなみに、イスラム教徒になる方法は、2人のイスラム教徒の証人の前で「アッラーのほかに神はなし」「ムハンマドは神の使途なり」とアラビア語で唱えることです。なお、イスラム教の神は日本語で「アッラーの神」という言い方をしますが、これは正確ではないようです。というのは、アッラー自体が神という意味を持っているからです。


■五行とは

五行についても簡単に書いておきます。1つ目の信仰告白とは、「アッラーのほかに神はなし」「ムハンマドは神の使途なり」、つまり、アッラーこそが唯一の神でありそれ以外に神は存在せずアッラーを信じること、その唯一の神の言葉を預かったのがムハンマドであると、常に言うことです。

2つ目の礼拝とは、1日5回、メッカの方向に向かってお祈りをすること。夜明け前の太陽が昇る前、昼過ぎ、午後3時くらい、日の入り、寝る前、の5回です。メッカはムハンマドが生まれて育ちイスラム教を教え始めた場所です。

3つ目は喜捨、つまり、寄付をしたり恵まれない人のためにお金を恵みなさいということ。どれくらいの額かというと、喜捨の目安は収入の2-2.5%程度。サウジアラビアでは、喜捨による税が存在するようです。また、喜捨に関係するところではイスラム金融があります。コーランの教えに基づくイスラム銀行は利子が存在しません。銀行は資金を(コーランの教えに反しない)事業にむけます。よって、銀行へお金を預けるというのは、間接的に喜捨を実践しているとも言えそうです。

4つ目は断食について。1年に1回、ラマダーンという月がありその1ヵ月は断食です。ただ、1ヵ月間全く何も食べないというわけではなく、日の出前の夜明け前から日没までの間は、飲み食いをしてはいけないというものです。エジプトに行った時の現地のガイドさんが言っていましたが、断食の期間はむしろ体重が増えるなんてこともあるようです。どういうことかと言うと、日中は飲み食いを我慢するのでその分夜にたくさん食べてしまい、それも盛大にお祭り気分で飲み食いすることもあるとのことで、自分のこれまで持っていた断食のイメージとかなりかけ離れていました。また、全てのイスラム教徒が断食をするわけではなく、子供や妊婦さんは断食をする必要がないそうです。

5つ目の巡礼は、前述のメッカへの巡礼。本当は毎年一回はメッカへの巡礼が望ましいのですが、せめて一生に一度はメッカに行くことが望ましいとされているようです。


■ユダヤ教・キリスト教・イスラム教は密接に関わる

これは、今まであまり知らなかったのですが、この3つの宗教は密接に関わっており、複数の共通点が存在します。ユダヤ教とキリスト教については知っていましたが、イスラム教がそれぞれと関係しているとは知りませんでした(正確には習ったはずだけれども忘れていた)。簡単に整理すると下表のようになります(表1)。


中段のモーゼ、イエス、ムハンマドはイスラム教では全て「預言者」です。預言者とは、神の言葉を預かる者という意味。ただし、イスラム教にとっては同列ではなくムハンマドが最後の預言者としています。モーゼを通じて神の言葉を伝えたのがユダヤ人は正しく守ろうとはしなかった、イエスに神の言葉を託したがキリスト教徒も正しく守っていない、そこで、ムハンマドを最後の預言者と決め、人間たちが守るべきことを最後の言葉として伝えたということになっているようです。とはいえ、イスラム教の考えでは、モーゼもイエスも神の言葉を預かっている存在には違いないので「預言者」なのです。

では神の言葉を信者はどうやって知るのか。イスラム教徒にとっては、ムハンマドが聞いた神の言葉を書き記したコーランを読みあげることで、人々は神の言葉を知ることができます。なお、イスラム教徒にとっては、キリスト教の「旧約新書」も「新約聖書」も聖書であり、神の言葉であると信じています。ただ、前述のようにムハンマドが伝えたコーランこそが本当の言葉であり、故に、コーランを読めば良いという考え方のようです。

キリスト教やユダヤ教の聖書も、イスラム教徒にとっては聖書であるというのは知りませんでした。実際にコーランの中には、ユダヤ教徒もキリスト教徒も同じ神の言葉を信じている民であるという表現があるようです(これを「啓典の民」と言う)。


■様々な考え方を知ること

今回、エジプトというイスラム圏への旅行、関連する本や複数のサイトなどを通じて、イスラム教の考え方やユダヤ教やキリスト教との関連を知りました。

多くの日本人にとって、宗教は日常の生活においてはあまり意識するものではない存在です。むしろ宗教そのものよりも、それにもとづくイベントのほうが生活に根付いています。例えば、12月は日本中がクリスマスの雰囲気になりますが、1ヵ月もしないうちに年が明けると多くの人は初詣に神社へ訪れます。あるいは、七五三は神社、結婚式は教会、お葬式はお寺で行われたりします。そんな日本人の1人として、各宗教の考え方は時に実感が伴わないものの、最低限とはいえ様々な考え方を知ることができました。ついおろそかになりがちですが、物事を考える際には複眼的な視点で捉えることはとても大事だなと、あらためて考えさせられました。


※参考情報

世界人口 (Wikipedia)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%96%E7%95%8C%E4%BA%BA%E5%8F%A3

イスラム教 (Wikipedia)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%82%B9%E3%83%A9%E3%83%A0%E6%95%99

その他複数の関連サイト


投稿日 2010/10/04

エジプト旅行記②

エジプト旅行記のつづきです。


ポンペイの柱(左)/ ホルス神(中央)/ ラムセスⅡ世(左)


■カイロ

成田からカイロまでの直行便で行ったので、日本を離れてまず足を踏み入れたのがカイロでした。カイロはエジプトの首都で人口約1600万人(2006年)でエジプト最大の都市。ただ、最も強く印象に残っているのは町のいたるところにあったゴミと絶え間なく鳴る自動車のクラクションです。ゴミはほんとに道路や家々のまわりのいたるところに捨ててある感じ。あまりに不思議だったので現地ガイドに聞いてみると、ごみ収集をしてもらうために捨ててあるとのことですが、それにしてもゴミだらけ。そして空気もたぶん相当悪い。カイロでは基本マスクをつけてました。

 
カイロ市内の様子


■交通事情  (特にカイロ)

前述のように、カイロでは車のクラクションが常に鳴っていました。始めはうるさくて仕方なかったものの、人間慣れるものですぐに気にならなくはなったのですが。となると、現地の人はクラクションにどれだけアラームを感じているのかちょっと不思議。なぜこれほどクラクションが鳴っているかと思って観察していると、理由はたぶん3つ。1つは交通マナー。比較対象が日本なので、どうしてもマナーが気になります。よく車がぶつからないなと思うほど。


■信号・横断歩道

2つ目の理由は、信号。そもそもカイロの道路には信号がほとんどなかったです。交差点には交通整理の警官が必ずいて、一日中交通整理をしているらしいです。すごい人件費かかってるなと思ったのですが、それがエジプトでは普通というから驚き。

3つ目の理由は歩行者。エジプト人は横断歩道がないところでも平気で道路を渡る。これもそもそもとして横断歩道をほとんど見かけないことが要因でしょう。しかしそれにしても堂々と渡る歩行者。よく車に引かれないなと見てるこっちが怖いほどでした。でも、よくよく見ると、歩行者もドライバーもある意味慣れているようで、あえて俯瞰してみると、車と歩行者が道路上で共存している感じ。


■バス

現地で最も多く利用したのが観光バスでした。一度、アスワン-アブ・シンベル間の約280kmの移動があったのですが、砂漠の中の高速道路(?)の道中は、テロ対策ということで車内に警官が乗り込みました。一方帰りは、観光バスが複数台まとまって移動するというコンボイで。これもテロ対策ので、エジプト政府からの要請のようです。

エジプトは観光産業は重要な収入源とのことで、テロには神経をとがらせている印象でした。帰国後調べてみると、世界旅行産業会議(WTTC)によれば、2007年のエジプトの観光収入は約214億ドル。エジプト経済全体における観光産業の影響力は、GDPの16%を占め、総雇用人口の14%が従事しているみたいです。


■列車・寝台列車

バス以外にも、飛行機や列車・寝台列車に乗る機会がありました。列車の乗り心地は思ったほど悪くはなかったものの、特に寝台列車の時間間隔は相当にゆるい感じでした。もともと、寝台列車のカイロ到着時間が朝の5:30と聞かされていたのですが、5:30を過ぎても到着する気配がなく、車掌さんに聞いてみると、6:00頃になりそうだとのこと。ちなみに別の車掌さんは6:30じゃないかと言ってました。で、結局到着時刻は6:15くらいで、二人とも正解(?)みたいなアバウトさ。これが日本なら、6:17とかにきっちり到着し、6:30になろうものなら、「到着が遅れ申し訳ありません」とかなる。色々と考えさせられる列車での旅でした。ちなみに、寝台列車は日本人は一等車を利用できたのですが、それでも二畳くらいのスペースしかなくこれはこれで貴重な経験でした。


■その他乗り物

個人の移動手段でエジプトで目立ったのは車でしたが、それ以外だとロバが多かったです。バイクとか自転車よりも多い印象。ロバは移動用だったり、荷物を運ばせたり、農業用だったり。かなりマルチな感じでした。


■イスラム教

イスラム圏の国に訪れたは今回が初めてだったのですが、キリスト圏とはまた異なる文化でした。もちろん観光をしてそこから表面的にしか見ていないので、それだけの感想しかないのですが。イスラム教の決まりでは、アルコールは飲むの禁止、婚前交渉禁止、女の人は家族以外には肌等の露出は極力禁止、など、やってはいけないことがあります。ただ、色々と話を聞いていると、決まりとはいえ守らないと罰せられるとかはないみたいで、人によってはお酒を飲む人もいるとのことで、(一部ですが)アバウトな感じもあり、もっと規律が厳しいと思っていたので意外でした。

イスラム教については、そういえば高校とかの世界史レベルでしか知識がなく、それよりもTVやネット等で報道される内容に影響され、本当のところを知らないことに気づきました。最低限のことは知っておいたほうがよさそうなので、少し勉強してみようと思います。


※参考情報

エジプト基本情報 (統計資料) エジプト大使館
http://www.egypt.or.jp/basic/statiscs.html
投稿日 2010/10/03

エジプト旅行記①

先月、一週間の休みをとりエジプトに行ってきました。

 
スフィンクス(左) / カフラー王のピラミッド(右)

日本とは、文化・歴史・習慣・人種・気候など全くの異世界でした。現地で思ったことや感じたこと、考えたことを備忘録として記しておきます。


■エジプトの人々

あくまで旅行中に出会った・見かけた人たちだけですが、彼らの特徴はとても人懐っこいこと。目が合うだけで笑顔を向けてくれるだけではなく、手を振ったり、「Welcome to Egypt」などと声をかけてくる。また、「Japanese?」と聞かれ、そうだと答えると「コンニチハ」とあいさつをしてくる。子供たちも同様で、とても愛くるしい笑顔をくれる。ちなみに、向こうがよく使ってきた日本語は、コンニチハ・サヨナラ・センエン(1000円)・ヤスイ・ヤマモトヤマが多かったです。

一方で、バスの窓から見ていて印象に残ったのは、カフェや町中で座っているエジプト人。彼らはタバコを吸っているくらいで、特に話をするわけではなくただ座っているだけの人たちが多かった。現地ガイドに聞いてみたところ、仕事の休憩としてカフェなどに来ているとのことだったけど、それにしてもただ座っているだけの人が多いなという印象だった。


■物売り

どこの遺跡に行っても必ずと言っていいほど出入口やバスの駐車場にいた物売り。売っているのは観光客相手の土産物で、見かけたものだけでも、ツタンカーメンとかファラオやピラミッドなどの置物、アクセサリー、キーホルダー、Tシャツ、スカーフ、帽子、カレンダー、パピルスの絵やしおり、ラクダのぬいぐるみ、定規(?)、マグネット、ガラス細工などなど。売り方の特徴はおもしろくて、一番多かったのは「1dollar」と連呼してくる物売り。あまりに「1ダラー」ばかり言ってくるので、途中からはワンダラワンダラ・・という呪文にしか聞こえなかったり。それ以外には、ヤスイヨ・Noタカイ・センエンがよく使われている印象。

こちらが買う気がないとすぐに次の観光客に移るけど、ちょっとでも興味を示すとそのしつこさはすごかったです。狙った獲物は決して離さないというか、買わないとそのまま観光客のバスまで乗り込んでくるんじゃないかと思ったほど。ガイドさん曰く、ほとんどが偽物とのことだったので一個も買わなかったけど、どんなものを実際に売っているのかちょっと手に取ってみたかったのが今更ながらの心残り。


■買い物での値段交渉

特に観光客相手のお土産は、あまり定価という概念がないように感じました。というのも、交渉次第で価格は全然違ったりするから。例えば、始めは1個1000円と声をかけられます。で、こちらが「高い」と言うと、2個1000円 ⇒ 1個1000円のハンブンなどと下がっていき、最後には1ドルと破格の値段を提示してきたりします。もっとも、現地のガイドさんに聞いてみると、さすがに1ドルは安いようですが、2,3ドルくらいでも利益は出るようです。

上記は露店でのやりとり例ですが、わりとちゃんとしたお土産屋でも定価の10%オフは基本で、現地の雰囲気に慣れてくるとそこからどれだけ下げるかを、まるでゲーム感覚でやりとりするのがとてもおもしろかったりする。最終的には下がるのは数百円の世界だけど、現地の人とのコミュニケーションが旅行の楽しさの1つだと思っています。最後はお互いおもしろかったということで握手で終わるので、買ったモノより買うプロセスが楽しい。


つづく


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

ブログ以外にマーケティングレターを毎週1万字で配信しています。音声配信は Podcast, Spotify, Amazon music, stand.fm からどうぞ。

名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。