投稿日 2024/05/03

IoT アイデア発想ツール 「IF-THEN カード」 。技術や製品のアイデアが成功するかは、“顧客課題” を理解してこそ

#マーケティング #アイデアのつくり方 #誰に何を

今までに 「思いもよらないアイデアがほしいけれど、どこから始めたらいいかわからない」 と悩んでしまったことはないでしょうか?

今回は、アイデア発想がカードゲームのようにできる 「IF-THEN カード」 を取り上げます。アイデアをどうやってつくればいいか、ここにマーケティングの観点も入れて、その秘訣を紐解いていきましょう。

IF-THEN カード



ご紹介したいのは、IoT のアイデアを出し合うカードゲーム 「IF-THEN カード」 です。

カードに書かれた製品や IoT 機器を組み合わせ、サービスを考えてもらうというもので、東芝子会社の東芝デジタルソリューションズが2024年春から本格的に販売します。企業の研修や学校での活用を目指します。

IF-THEN カードは青色と赤色がそれぞれ25枚ずつの合計で50枚あります。使い方は、青色と赤色の2色カードを組み合わせて、意外な IoT 機器と製品の組み合わせのアイデアをつくるというものです。

青色のカードには 「水漏れセンサー」 「におい識別センサー」 などの IoT 機器の種類が書かれており、もう一方の赤色のカードには 「しゃべるぬいぐるみ」 「指ロボット」 などの製品名が記載されています。

例えば、青色の 「水漏れセンサー」 と赤色の 「ぬいぐるみ」 を1枚ずつ選べば、水漏れを感知する IoT 製品をぬいぐるみにするというアイデアができます。カードでの意外な組み合わせから、今までにはなかった IoT 製品や関連サービスを考えるきっかけになります。

青色のカードに書いてある IoT 機器は、いずれも 「ifLink (イフリンク) 」 (東芝デジタルソリューションズが提供する IoT 開発プラットフォーム) への参加企業の製品なので、IF-THEN カードの組み合わせで生まれたアイデアの試作機をすぐに作れるようになっています。


学べること


では IF-THEN カードから、学べることを掘り下げていきましょう。

この事例から学べるのは、アイデアのつくり方です。

アイデアのつくり方



書籍 「アイデアのつくり方」 には、アイデアは既存のもの同士の組み合わせで生まれるものであると書かれています。

IF-THEN カードでは、IoT 機器の種類という 「実装する技術」 と、製品名という 「最終的なカタチ」 をランダムで組み合わせることで、ときには偶然からのセレンディピティ的に思わぬアイデアが生まれることが期待できます。

 「誰の問題を解決するのか」 


ただし、IF-THEN カードだけではまだ足りない要素もあります。

それは、「想定するお客さんのどんな困りごとや顧客課題を解決するのか」 という視点です。

活用する IoT 技術や最終的にできるプロダクトも、お客さんの役に立ったり課題への対処に貢献できてこそビジネスとして意味があります。逆に言えば、顧客課題というイシューなきプロダクトでは、せっかく開発したはいいものの、誰にも必要とされなかったという存在になってしまいかねません。

新規事業の立ち上げプロセス


新製品などの新規事業を生み出すためには、大きく次のようなプロセスで進めていくといいことが大事です。

✓ 新規事業の立ち上げプロセス
  1. ターゲットとするユーザーやお客さんを決める
  2. お客さんの置かれた環境、抱えているであろう問題、本当に望んでいることや奥にある不満などの 「顧客文脈」 を理解する [Customer Problem Fit]
  3. 見出した問題設定に対して解決する方法を探る [Problem Solution Fit]
  4. 解決策となる商品やサービスをつくる [Solution Product Fit]
  5. 商品を買って使ってもらうことでお客さんに価値をもたらす [Product Market Fit]
  6. 持続可能な仕組みとしてビジネスを成長させる

 「顧客設定」 と 「顧客理解」 があってこそ


新規事業を立ち上げるこの全体プロセスにおいて、ご紹介した 「IF-THEN カード」 の位置づけは、3つ目と4つ目の 「見出した問題設定に対して解決する方法を探る」 や 「解決策となる商品やサービスをつくる」 ところで活用できます。

ステップの3つ目の前には、1つ目の 「ターゲット顧客の明確化」 、2つ目には 「顧客理解」 があるように、IF-THEN カードの守備範囲の 「解決策の考案」 や 「商品化」 は、その前にある顧客定義と顧客課題が前提になります。顧客設定と顧客理解があってこそ活きるのが、IoT 機器と製品名を組み合わせてカードゲームのように使う 「IF-THEN カード」 なのです。

実装する技術や製品をつくるためには、前提となる 「誰の」 「どんな困りごとを解決し」 「それによる顧客価値は何か」 をしっかりと詰めておくことが大事です。


まとめ


今回は、IoT 製品やサービスのアイデア創出ツールである 「IF-THEN カード」 を取り上げ、学べることを見てきました。

最後にまとめとして、新規事業を立ち上げる全体プロセスです。今回の文脈では、1つ目の 「顧客定義」 と2つ目の 「顧客理解」 があっての、つまり 「誰の何の問題を解決するのか」 を明確にすることが重要です。

✓ 新規事業の立ち上げプロセス
  1. ターゲットとするユーザーやお客さんを決める
  2. お客さんの置かれた環境、抱えているであろう問題、本当に望んでいることや奥にある不満などの 「顧客文脈」 を理解する [Customer Problem Fit]
  3. 見出した問題設定に対して解決する方法を探る [Problem Solution Fit]
  4. 解決策となる商品やサービスをつくる [Solution Product Fit]
  5. 商品を買って使ってもらうことでお客さんに価値をもたらす [Product Market Fit]
  6. 持続可能な仕組みとしてビジネスを成長させる


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。