投稿日 2010/06/12

iPhoneアプリ「ショッピッ!」が変える購買行動

■まとめ

今回の記事のまとめです。

・ iPhoneアプリ「ショッピッ!」がおもしろい
・ ショッピッ!と楽天市場端末の比較
・ ショッピッ!は私たちの購買行動に一石を投じると思う



■iPhoneアプリ「ショッピッ!」

最近使ってみておもしろいと思ったiPhoneのアプリに、「ショッピッ!」というサービスがあります。これは、iPhoneのカメラで商品バーコードを読み取り、その場でネットサイトからその商品を買うことができるアプリケーションで、先日10日に無料公開されました。具体的な使い方は、ショッピッ!のサイトに次のように書いてあります。

<ショッピッ!の使い方>
(1) アプリを起動し、商品のバーコードに、iPhoneのカメラをかざす
(2) その商品をいちばんおトクに購入できる店舗が見つかる
(3) 店舗を選んでその場で注文する

そして、ショッピッ!について個人的におもしろいと思った点は以下の通りです。

<ショッピッ!のおもしろい点>
(a) バーコード取得から商品購入までがその場で完結する
(b) 最安値の提供店サイト候補は日本国内約5万店
(楽天市場、アマゾン、ヤフーショッピング。価格.comでも検索可能)
(c) 以上がいつも携帯しているiPhoneでできてしまう



■楽天市場の小型バーコード端末

10年4月30日の日経web版に、楽天市場に関する記事がありました。その中で、「楽天市場での買い物を容易にする小型の端末も独自に開発した」と言及されていました。ポイントは以下の通りです。

<楽天市場の小型バーコード端末の使い方>
(1) 商品のバーコードを小型バーコード端末に読み込んで保存する
(2) パソコンにつなぐと、楽天市場の中で商品を最安値で売る店舗が表示される
(3) 楽天市場から購入する

なお当時(4/30)の時点のことですが、記事には次のようにも書いてありました。
・ 試作品は完成済みで、今年秋にも最大で1千台程度を試験的に配布する
・ 利用者の反応をみて、事業化を判断する。端末は無償提供するか低価格で販売する可能性が高い



■「ショッピッ!」と「楽天端末」の比較

上記に使い方をそれぞれ(1)(2)(3)で挙げましたが、あらためて両者を比較してみます。

○バーコード取得~購入までの流れ
両者を購買フローで並べてみます(図1)。





ショッピッ!がiPhone内でその場で注文までできるのに対して、楽天の端末ではPCに接続させる手間が発生します。これは、PCを立ち上げた状態でパーコードをスキャンするか、端末を接続させるためにPCを立ち上げる必要があるということです。


○両者の優位性を比較
比較項目をいくつか挙げてもう少し比べてみます(表1)。なお、楽天市場の端末については実際に使っていないので、推測内容も含まれます。





<携帯性>
ショッピッ!はiPhoneアプリなのに対し、楽天端末は独自端末です。つまり、ショッピッ!は日頃から携帯するiPhone内にある一方で、楽天端末は持ち運ぶ端末が増えてしまいます(屋外でもバーコードをスキャンしたい場合)。

<バーコード読取>
おそらく、iPhoneのカメラでバーコードを読み取るよりも、楽天端末のほうがバーコードをスキャンしやすいのではないかと思います。

<利便性>
ショッピッ!がバーコード読取~購買までiPhone内で行うのに対し、楽天端末はPCに接続する手間が発生します。実際にショッピッ!を使ってみましたが、その場で購買までが完結する仕組みは非常に魅力的です。

<多様性>
前述の通り、ショッピッ!は楽天市場だけではなくアマゾンやヤフーショッピングからも買えます。楽天端末は楽天市場専用です。

<サービス価格>
ショッピッ!は無料でダウンロードできましたが、楽天端末は上記の日経Web記事の通り有料の可能性があります。



■これからの購買行動

店舗で商品を見るが、実際に買うのはネットという購買行動が最近は一般的になってきているように感じます。少なくとも、個人的にはこの購買行動は当たり前のようになりつつあります。

ショッピッ!のようなサービスがスマートフォン以外でも使えるようになれば、ますますこの傾向が強くなるような気がします。そうなると、お店は単なるショーウィンドウの役割でしかなくなるのではないでしょうか。消費者にとっては便利な仕組みですが、小売側にとっては脅威のサービスかもしれません。

暫定的な措置として、店内に「携帯電話のカメラでバーコードを撮らないでください」という貼り紙が表示されることも考えられます。あるいは、抜本的な措置として、次世代のバーコードでは、携帯のカメラでは簡単に読み取れないような仕組みが導入されるかもしれません。

いずれにせよ、ショッピッ!のようなアプリは、私たち消費者の購買行動や小売にとって、一石を投じる役割を果たすのではないでしょうか。


※ショッピッ!のサイト
http://shoppi.jp/


投稿日 2010/06/05

感情もクラウドに置かれるようになる

■まとめ

今回の記事のまとめです。
・ クラウドについて (文化的考察と自分のクラウド区分)
・ これからのクラウドは、「感情」もネットワーク上に置いておくようになるのではないか
・ 今後はどこが「感情のクラウド」をプラットフォーム化するか



■クラウドの文化的考察

isologe(イソログ)というブログで、「なぜ『クラウド』か?の文化的考察+スキャナの効用第二弾」と題する記事がエントリーされていました。タイトルにもあるクラウドの文化的考察は、以下のような内容が書かれていておもしろかったです。

・ 著者は「クラウド」という表現に違和感を持っていた
・ なぜなら、雲などと「こんなモヤモヤした得体の知れないところに重要なデータを保存するのは、気持ち悪い以外の何物でもない」から
・ 新約聖書に、「富は天に積みなさい。そこでは虫が食うことも、さび付くこともなく、盗まれることもない」という旨の記述がある
・ (キリスト教文化である)欧米人には「クラウド≒天」という図式があり、「クラウドこそ財産を蓄える場所だ」という感覚があるのではないか

日本語には「雲隠れ」という言葉があるように、日本人の雲について「いつか消えてなくなるもの」という意識があるような気がしますが、欧米人のそれとは大きく異なるのかもしれません。

※クラウドコンピューティング
ネットワーク、特にインターネットをベースとしたコンピュータの利用形態である。ユーザーはコンピュータ処理をネットワーク経由で、サービスとして利用する。(Wikipediaより)



■クラウド区分

とは言いつつも、クラウドの各種サービスを使いだすととても便利だと感じます。自宅のPCと会社のPC、そしてiPhoneがクラウド上で同期することで、いろんな情報が1つに集約できます。イメージとしては、iPhoneが自宅と会社のPCのハブの役目を果たしており、この仕組みは非常にありがたいものです。

自分が活用している情報について、クラウドとしてどのような使い方をしているのかをちょっと整理してみました(図1)。クラウドの区分というよりは、自分が利用しているネットワークの区分というイメージです。切り口は以下の2軸で切っています。
・ 公共情報(仕事含む) or プライベート情報
・ ソーシャル(共有)ユース or パーソナルユース





右下の象限に仕事の情報とありますが、これは現在使用していません。理由は、社外秘情報もあるため社内に保管するにとどめていることと、クラウドに置いておく必要性がそこまで高くないためです。



■クラウド化できたらいいもの

現状、自分のクラウド区分は上図のイメージですが、身の回りを考えてみるとクラウド化できたらいいのにと思うもの・情報が多数あることに気づきます。主な例として次のようなものがありました。
・ 本、雑誌、新聞記事
・ 各種説明書、契約書、保証書
・ 思い出映像(出演したストリートダンスのショーとか)、CD

あえて上記のものをまとめて表現すると、
(1) 普段は使わないが、イザという時に必要になるもの
(2) 現状は必要になっても見つかるまで時間かかる
の2点で換言できそうです。

特に(2)については、Googleなどの便利な検索技術がある一方で、自分の身の回りの「検索」方法が手当たり次第に探すだけというのは、時に悲しいくらいのアナログな方法です。

なお、契約書等をクラウド上に保管するのはリスクもあるかもしれませんが、自宅での保管にも一定程度にリスクはあるわけで、トータルで考えて個人的にはクラウド上で一括管理ができたらいいなと思っています。



■今後のクラウド

ミック経済研究所の調査によると、2009年度のクラウドコンピューティング市場規模は1941億円(対前年度比138.4%)、今後は年平均29.4%で成長し、2014年度には6570億円の市場規模になる見通しだそうです。

では、今後のクラウドはどのように発展するのでしょうか?1つの方向性として、個人の「感情」がネットワーク上に置かれるようになるのではないかと思っています。

最近、mixiが「mixiフォト」を開始したようです。詳細は確認していないのですが、写真単位で「イイネ!」がつけられるとのことです。この「イイネ!」はmixiのボイスにもある機能です。Facebookには"Like"ボタンがあります。mixiの「イイネ!」はあくまでmixi内でのクローズドですが、FacebookのLikeボタンはあらゆるページで付けることができます。似たものに「はてなブックマーク」があります。

これらの機能は、「おっ」と思った時にポチっと押して、この「おっ」をそのサイトに付けておくものです。すなわち、自分の感情をネットワーク上に置いておくということではないでしょうか。今までは自分の感情を置いておくには例えばブログならコメント欄に記入しましたが、自分の気持ちを文章化してコメントをつけるというのは結構面倒なこともあり、その点"Like"ボタンは気軽にクリックするだけです。

さらに"Like"ボタンはFacebook上で公開されるので、どの人がどのページで付けたのかがわかります。つまり感情をネットワーク上で共有できるのです。

この方向性は結構おもしろいと思っています。例えば、今は「イイネ!」だったり"Like"だったりと感情の種類は1つしかありませんが、これが喜怒哀楽の4つになったら、そのサイトや動画などへのまわりの反応がもっとわかるのではないでしょうか。

そうなると、今後は感情のクラウドをどこがプラットフォーム化するかに興味があります。mixiはmixiという閉じた世界ではプラットフォーム化ができていますが、あらゆるサイトとなると現時点ではFacebookが一歩抜きんでた存在のような気がします。

感情をクラウド上に置くことで「雲隠れ」してしまうのか、あるいは「さび付かない天」に置けるのか。今後の動きに注目しています。



※参考情報
isologe(イソログ):「なぜ『クラウド』か?の文化的考察+スキャナの効用第二弾」
http://www.tez.com/blog/archives/001637.html

クラウドコンピューティング(Wikipedia)
http://ja.wikipedia.org/wiki/

クラウドコンピューティング市場規模
http://journal.mycom.co.jp/news/2010/03/09/033/index.html


投稿日 2010/05/29

あらゆるコンテンツがフラット化する

■まとめ

今回のエントリーのまとめです。

・ マラドーナやペレのプレーを見て、その試合があたかも今やっているものかと思った
・ 「電子書籍の衝撃」で書かれたフラット化をなんとなく実感した
・ Google TVやiPadなどにより、あらゆるコンテンツがフラット化する環境ができつつある



■マラドーナとペレ

先日、NHKのBSで1986年のサッカーW杯のアルゼンチン対イングランド(準々決勝)、1970年のブラジル対イタリア(決勝)の試合を見ました。

前者はマラドーナの「神の手」ゴールと「5人抜きドリブル」でアルゼンチンが、後者はペレの先制ゴールなどでブラジルが勝利した試合です。ちなみに、この放送は「FIFAワールドカップ 記憶に残る名勝負」というNHKの企画で、過去のW杯の中から名勝負をピックアップしハイライトではなくその試合を始めから試合終了までを放送したものです。



■「電子書籍の衝撃」で書かれたフラット化

W杯の記憶に残る名勝負とだけあっておもしろかったです。特にマラドーナの5人抜きはそのシーンだけなら何度も見たことがあったのですが、試合全体の流れの中で見たのは初めてでした。で、見ていてふと思ったのが、過去の試合ではなくあたかも今現在どこかでやっている試合のような気がしたことです。

「電子書籍の衝撃」(佐々木俊尚 ディスカバー)には、以下のような記述がありました。
---------------------------------------------------------------------------
1960年代の古いロックからゼロ年代の新しいポップミュージックまでが同じ地平線の上に見えていて、その並び順は「自分が気持ちよいと感じるかどうか」「友人が『この曲凄いよ』と紹介してくれた」といった文脈の中に存在しています。(中略) 
つまりここで起きているのは、(中略) 「いつでも自分の好きな音楽を好きなように聴く」という方向へとアンビエント化が進んでいるということなのです。(p.50-51から引用)
---------------------------------------------------------------------------

まさにこれと同じことを、W杯の試合映像でそう思ったのです。



■あらゆるコンテンツでのフラット化

テレビは地デジなどによるデジタルのコンテンツが主流になりました。本や雑誌についても、最近話題の電子書籍というデジタル化が進んでいくのでしょう。(テレビのアナログ放送とは違い、紙の本が今後もなくなることはないと思いますが)

このように、いろんなものでデジタル化が実現されています。主なものを整理すると、下表のようになります。(表1)



「電子書籍の衝撃」の著者である佐々木俊尚氏は、前述の引用部分の状況について、「古い音も新しい音も、フラットに聞こえている」と表現しています。これと同じように、上記の音楽以外のコンテンツでも私たちのまわりにフラットに、すなわち同列に並ぶようなっていくと思います。ちなみに、「古いW杯も新しいW杯も、フラットに見える」と感じたのが、前述のW杯の放送でした。(もちろん、当時の戦い方やルールなどは今とは異なるものもありましたが)

本・雑誌は電子書籍やキンドル・iPadなどの新しい端末の登場により、また音楽はiTunesによりフラットになります。写真についてもデジタル媒体で保存すれば、フォトフレーム等で昔の写真も最近の写真も簡単に同列に並べることができます。テレビ番組も、さらなるオンデマンド化やGoogle TVなどのネットテレビの登場により、昔の良質な番組を見たい時にいつでも見られるようになってほしいです。そういえば、ゲームでは先日Googleのロゴがパックマンになり実際にプレーできる環境が用意されていました。

あらゆるコンテンツがフラット化する環境、見たい時・聞きたい時・遊びたい時に自然と身の回りにあるというアンビエント化。マラドーナやペレの躍動感あるプレー、Google TVのニュース、昨日のiPadの日本での発売状況を見ていると、このような環境がすぐそこまで来ているように思いました。


電子書籍の衝撃 (ディスカヴァー携書)

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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

ブログ以外にマーケティングレターを毎週1万字で配信しています。音声配信は Podcast, Spotify, Amazon music, stand.fm からどうぞ。

名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。