投稿日 2024/04/29

オルツ 「AI クローン」 。AI クローンに自分の代わりにお金を稼がせる方法

#マーケティング #AIクローン #言語化

自分の 「AI クローン」 が、自分の代わりにお金を稼いでくれる未来は、空想の夢物語ではなくなりつつあります。

では AI の可能性を最大限に引き出すためには、どうすればいいのでしょうか?

今回は先進的な取り組みを続けるオルトの AI 開発事例から、人と AI の関係性を探求します。AI と向き合うことで、人は自己研鑽や自己成長にもつなげられます。

AI クローン


出典: オルツ

生成 AI の基盤となる大規模言語モデル (LLM) を開発するオルツが、ユニークな取り組みを進めています (参考記事) 。

オルツの先進的な取り組み


オルツの約100人の社員1人ひとりの 「AI デジタルクローン」 を独自に作製し、社員の行動パターンや意思決定プロセスを学ばせることで、社員の業務を一部代行できるようにしているとのことです。

AI クローンが働いた分の給与を社員に支給するといった、世界でもまだ例のない取り組みも始めています。

AI クローンをどう使っている?


オルツでは、すでに AI クローンを活用して様々な業務を効率化しています。具体的には、次のような業務が AI クローンによって対応されています。

採用業務


オルツ社の採用プロセスでは、AI クローンが重要な役割を担っています。

応募者の一次面接を AI クローンが代行し、履歴書にもとづいた質問を AI クローンが行います。面接の様子は録音または録画がされ、内容が分析から要約された後に、人事担当者に提供されます。

これにより、応募者の選考プロセスが迅速かつ効率的に行われています。

社内外の問い合わせへの回答


人材紹介会社からの問い合わせや、プレス関係者とのコミュニケーションなど社外のやりとりも AI クローンが代行します。

社員の AI クローンが社内外からのオンライン問い合わせに回答すると、これを1セッションとしてカウントし、約10円が社員本人に支払われます。

また、個人的な質問や社員同士の問い合わせにも AI クローンは使われ、社内コミュニケーションの向上にもつながっているようです。

このようにオルツでは AI クローンを活用することで、多様な業務を効率的に処理し、社員の負担を軽減しつつ、組織全体の生産性向上に貢献しています。


AI クローンを有効活用する3つのポイント (考察) 


ではここからは、オルツの取り組みを知って思ったことです。

AI クローンを有効に活用するためには、次の3つが大事になると考えます。

  • 暗黙知の言語化
  • 挑戦と自己研鑽
  • AI クローンの継続的アップデート

順番に見ていきましょう。

暗黙知の言語化


暗黙知の言語化は AI が人間の知識や経験を理解し、再現する上で欠かせません。人は日々の業務で多くの暗黙知を蓄積していますが、これらはまだ非言語な状態で、他人に説明できるほど言語化はされていません。

よって、AI にこれらを学習させて自分のクローンを作るためには、自分の持っているスキル、経験、価値観や判断基準などを体系立てて言語化し、AI が理解しやすい学習データに変換する必要があります。

挑戦と自己研鑽


次に、自己啓発と自己成長が大事です。

AI クローンによって人がこれまでやっていたルーティンワークが代行できるようになると、人はクローンにはできないこと、新しいことをやる時間が生まれます。この時間を活用して、絶えず挑戦と自己研鑽を続けることが重要です。

自分の AI クローンに勝つほどの成長が求められるわけで、これが意味するのは他者との競争だけでなく、過去や今の自分との競争も起こるということです。

AI クローンの継続的アップデート


AI クロ-ンは一度構築して終わりではありません。挑戦と自己研鑽によって人は変わり、変化を AI クローンにも反映させないと、自分と AI クローンが徐々に別の存在になっていきます。

AI クローンが自分自身のクローンであり続けるために、自分が新しく獲得した経験や知見、価値感の変化などを再び言語化します。場合によっては既存の考え方・知識・価値観を捨てるというアンラーニングをした内容を継続的に自分の AI クローンに学習させ、アップデートし続けることが必要になるのです。


実践する方法


では、ここまで見てきた3つのポイントについて、具体的にどう実践していけばいいかを最後に考えてみましょう。

暗黙知を言語化するために


暗黙知であった状態を、人に説明できるという形式知に昇華させます。

暗黙知を言語化するために、日々の業務を振り返り、自分が普段から行っている作業や判断基準を具体的な言葉や図に落とし込むという棚卸しが有効です。

たとえば、ミーティングの議論や意思決定の方法、目的設定のやり方、戦略から実行策をつくるときのポイント、プロジェクト管理の方法論などを文書化するといいでしょう。

自己研鑽を続けるために


自己啓発や自己成長については、前提として何か新しいことに取り組めるだけの時間や精神的な余裕があることが大事です。

余白として意図的に確保した時間を使い、新しい場所へ出かけたり、普段は会わないような人に会いに行くといいでしょう。また、今すぐには役に立つとは思えないことでも、スキルの習得や専門知識の拡充に努めることも重要です。

継続的な挑戦と言語化を続けるために


自分の中で何か新しく変わったこと、成長できたと感じたら、少し立ち止まって振り返りの機会を持つといいでしょう。

自分1人での作業としてでいいので、定期的なレビューと自分自身へのフィードバックの場とします。古い知識・スキルや価値観をアップデートするというアンラーニングを意識し、過去の自分の知識資産を捨てる覚悟も時には必要です。


まとめ


今回はオルツの AI クローンの取り組みから、学べることを見てきました。

最後にポイントをまとめておきます。

  • オルツが開発・運営しているような 「AI クローン」 を有効活用するためには3つが大事になると考える。① 暗黙知の言語化、② 挑戦と自己研鑽、③ AI クローンの継続的アップデート

  • 自分の経験・知識、スキル、判断基準・価値観などの暗黙知を定期的に言語化するといい。自分のやってきたことを振り返り、自分の変化や成長を言語化をすることで、経験が知識・ノウハウとして血肉になる

  • そのためには、時間と心の余裕を持つようにし、常に新しいことに目を向けて試してみる 「余白」 をつくっておくことが大事


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。