ビジネスで重要になるのは、お客さんからの自社や商品への親近感や愛着の度合いを高めることです。
今回は 「顧客ロイヤルティ」 に焦点を当て、詳しく解説していきます。
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こちらの本、お客様の心をつかむ心理ロイヤルティマーケティング - 「心の満足」 と 「頭の満足」 を測り、科学的にロイヤルティを高める手法 (渡部弘毅, 諏訪良武) から、お客さんの心をつかみ、顧客ロイヤルティを科学的に高める方法を紐解いていきましょう。
本書の概要
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この本を読むことで、「顧客ロイヤルティ」 への理解の解像度が上がります。
ひとえに顧客ロイヤルティと言っても、より具体的に見ていくと複数のレイヤーでのロイヤルティがあります。そもそもの話として、これは個人的な感覚ですが、ロイヤルティへの適切な日本語訳がないように思います。裏を返せば、ロイヤルティとは多様な解釈が良くも悪くもできてしまうわけです。
本書を読むと、
- 顧客ロイヤルティとは何か (ロイヤルティの構造分解)
- なぜ顧客ロイヤルティが重要なのか
- 顧客ロイヤルティを上げていく構造的メカニズム
- ロイヤルティを上げる方法と測る指標
を体系立てて学ぶことができます。
では 「顧客ロイヤルティの構造」 から順番に、この本からの学びを共有しますね。
顧客ロイヤルティ
顧客ロイヤルティについての概要から詳細まで見ていきましょう。
顧客ロイヤルティの分解
顧客満足と収益を結ぶ重要なキーワードがロイヤルティです。顧客ロイヤルティには大きく3つの種類があります。
- 心理ロイヤルティ
- 行動ロイヤルティ
- 経済ロイヤルティ
順番に説明すると、1つ目の 「心理ロイヤルティ」 は、お客さんからの自社に対する感情を指標にしたものです。お客さんが自社あるいは自社商品とずっと付き合いたい、使い続けたい、買い続けたいと思う気持ちです。あるいは友人や家族に自社や商品のことを推奨したい意向の強さです。
2つ目が 「行動ロイヤルティ」 です。行動ロイヤルティではお客さんからの企業に対するアクションに注目します。具体的には、来店頻度、自社ホームページへのアクセス頻度や滞留時間、イベントへの参加回数、自社商品やサービスの購入や利用頻度です
3つ目の 「経済ロイヤルティ」 は、お客さんの購買金額に焦点を当てます。お客さんがどれだけ経済的に自社に貢献してくれているかという視点です。平たくいえば、どれくらい自社の商品を購入して収益をもたらしてくれるかが基準となります。
ロイヤルティやロイヤルティの向上策を議論する際には、これら3つのロイヤルティのどれを議論しているかを意識することが重要です。
そして、3つのロイヤルティの関係性への理解も大事です。心理ロイヤルティが高まると行動ロイヤルティに影響を及ぼし、さらに経済ロイヤルティを高め、収益への貢献につながるという流れです。
経済ロイヤルティ、すなわち支払ってもらえている金額がたとえ多くても、愛着度合いである心理ロイヤルティが低ければ、同じ売上でも質的には良い売上とは言えません。解像度を上げたロイヤルティというレンズを通して見ることで、良い売上と悪い売上を分けることができます。
ロイヤルティドライバー
顧客ロイヤルティに影響をおよぼす要因のことを 「ロイヤルティドライバー」 といいます。たとえば、商品の機能、品質やデザイン、価格などです。
他には商品・サービスを買うプロセスや利用における各種の顧客体験もロイヤルティドライバーです。具体的には購入前の情報収集、公式ページでの体験、店頭での接客、会員登録、商品利用、アフターサービスです。
これら数多くあるロイヤルティドライバーは、大きく 「基本価値」 と 「体験価値」 に分かれます。
基本価値とは商品そのものの価値で、ロイヤルティを高める必要条件です。品揃えや商品の品質、機能、デザイン、価格、カスタマイズ性などです。
体験価値は、お客さんが商品を選んで購入し、使用するプロセスで提供される価値です。ユーザー体験やカスタマーエクスペリエンスと呼ばれるものです。
体験価値の具体例は、企業や商品の情報収集、ネットでの商品閲覧、購買体験時の店舗接客や支払い、サービス導入や商品の説明、商品使用時の顧客体験、商品の保管、再購入、トラブル対応サポート、お客様センターでの問い合わせなどから生まれるユーザー体験です。
ロイヤルティを向上させるためには、基本価値と体験価値の両方の向上が必要になります。基本価値は商品によって実現される価値であり、体験価値はサービスプロセスを磨き上げることで実現できる価値です。
特に体験価値によるロイヤルティの向上が大事です。
商品を購入するプロセス (カスタマージャーニー) において、お客さんに寄り添ったサポートをすることや、商品を使用する際に価値のある体験を感じてもらうことで顧客満足を高めて体験価値をより良くしていくわけです。
体験価値の向上は、次回以降の商品やサービスの購入時の意思決定に影響し、愛着を高める要因になります。
頭の満足と心の満足
顧客満足には、論理的に評価した 「頭の満足」 と、感情的に感じる 「心の満足」 の2つが存在します。
頭の満足とは、各ロイヤルティドライバーを論理的に評価した満足のことです。たとえば、アンケートで5段階の満足度調査を実施した結果です。お客さんが様々な要因を頭に浮かべて、論理的に評価して 「満足している」 と回答すれば、それが頭の満足です。
心の満足とは、各ロイヤルティドライバーに感情的に感じている満足のことです。言い換えれば、該当のロイヤルティドライバーがどれだけ心に響いたかです。
論理的に納得した 「頭の満足」 と、ハートをつかんだ 「心の満足」 を高めることが、ロイヤルティを向上させるための活動となります。
ポジティブ体験とネガティブ体験
顧客満足を生み出すのは顧客体験です。
お客さんの満足を高めるためにはポジティブな体験を増やし、ネガティブな体験を減らすことが必要です。顧客体験の中でもお客さんの心に響くような感動体験をいかにつくり、一方で悪影響を及ぼす落胆体験をなくせるかです。
顧客ロイヤルティの全体構造
ここまでの顧客ロイヤルティの全体構造を整理すると、
- 顧客ロイヤルティには、心理、行動、経済的な3つのロイヤルティがある
- ロイヤルティに影響するのがロイヤルティドライバー
- 各ドライバーで 「基本価値」 または 「体験価値」 を体験する
- そのときにポジティブ体験によって 「頭の満足」 や 「心の満足」 が満たされることで、ドライバーが押されロイヤルティが向上する (理想は経済ロイヤルティへの寄与)
流れは 「顧客体験 (基本価値 or/and 体験価値) → 頭や心の満足 → ロイヤルティドライバーにきく → ロイヤルティ向上 → 収益」 となります。
顧客ロイヤルティ指標
顧客ロイヤルティは適切に測ることによって、数字で客観的にマネジメントができます。
指標で見られるということは、顧客ロイヤルティを向上させる活動に PDCA という改善サイクルをまわせるということです。
顧客ロイヤルティの指標は、ここでは三種類を解説します。順番に見ていきましょう。
[顧客ロイヤルティを測る指標 1] NRS
顧客ロイヤルティの最上位の指標とするのが、継続利用の意向 (NRS (詳細後述) ) 、あるいは推奨の意向 (NPS) です。NRS でロイヤルティを定量化し、顧客全体や顧客セグメントごとに集計します。
NRS とは Net Repeater Score の略で、お客さんの継続利用の意向のことです。1年後の継続利用意向とし、先行指標と捉えます。非常に高い継続利用の意向者 (0 ~ 10 段階で 9 または 10 点を付けたリピーター) の割合から離反リスクのある顧客 (0 ~ 6 の点数) の割合を引いた数値が NRS です。
[顧客ロイヤルティを測る指標 2] ロイヤルティドライバーの指標
ロイヤルティスコアを形づくるのが複数のロイヤルティドライバーの満足度です。満足には 「頭の満足」 と 「心の満足」 の2つがありました。
頭の満足は、ロイヤルティドライバー (例: 店頭での接客, EC サイトの支払い) での満足度において Top2 Box という、5段階での上位2つの 「とても満足」 と 「やや満足」 の比率の合算をとります。
心の満足度は、Top2 Box に該当した人のロイヤルティスコア (例: NRS) を使います。ロイヤルティドライバーで 「頭の満足」 が高かったと感じた人たち (Top2 Box) が、どれぐらいのリピート意向があるかで 「心の満足」 レベルを測ろうという考え方です。
[ロイヤルティを測る指標 3] 体験指標
ロイヤルティドライバーの満足に影響を与えるのが 「ポジティブ体験」 と 「ネガティブ体験」 でした。
体験指標は2つあり、1つは各体験をどれくらいの人が実際に経験したかどうかの体験者率です。
たとえば、試着というロイヤルティドライバーで、「スタッフからの着回しやアクセサリーとのコーディネート提案があった」 という体験を経験した人が 30% であれば、体験者率のスコアは 30% となります。
体験指標のもう1つが、その体験に該当した人たちのロイヤルティスコア (NRS) です。その顧客体験を経験した人たちがどれぐらいのロイヤルティを感じているかで、ポジティブ体験やネガティブ体験のレベルを測ろうというものです。
先ほどの例の 「スタッフからの着回しやアクセサリーとのコーディネート提案があった」 なら、この体験をした人が高いロイヤルティスコアの場合はポジティブ体験と捉え、心に響いている度合いが高いという解釈をします。
一方で 「試着室に案内されただけで、そのあとは全く気にかけてもらえなかった」 という体験をした人たちが低いロイヤルティスコアの場合、残念に感じられた度合いが高くネガティブ体験になってしまったと判断します。
顧客ロイヤルティ指標の全体像
顧客ロイヤルティ指標の全体像をまとめると、
- ロイヤルティスコア (継続利用意向 (NRS) または推奨意向 (NPS) )
- ロイヤルティドライバーの満足度 Top2 Box [頭の満足]
- 満足度 Top2 Box 該当者のロイヤルティスコア [心の満足]
- 各体験の経験者率
- 各体験経験者のロイヤルティスコア NRS (ポジ・ネガ体験の判断)
まとめ
今回は、「顧客ロイヤルティ」 をキーワードに、書籍 お客様の心をつかむ心理ロイヤルティマーケティング - 「心の満足」 と 「頭の満足」 を測り、科学的にロイヤルティを高める手法 (渡部弘毅, 諏訪良武) を読み、学んだことを共有させてもらいました。
最後にポイントをまとめておきます。
✓ 顧客ロイヤルティの構造
- 顧客ロイヤルティには、心理、行動、経済的な3つのロイヤルティがある
- ロイヤルティに影響するのがロイヤルティドライバー
- 各ドライバーで 「基本価値」 または 「体験価値」 が体験される
- そのときにポジティブ体験によって 「頭の満足」 や 「心の満足」 が満たされることで、ロイヤルティドライバーが押され顧客ロイヤルティが向上する (理想は経済的ロイヤルティへの寄与)
✓ 顧客ロイヤルティ指標
- ロイヤルティスコア (継続利用意向 (NRS) または推奨意向 (NPS) )
- ロイヤルティドライバーの満足度 Top2 Box [頭の満足]
- Top2 Box 該当者のロイヤルティスコア [心の満足]
- 各体験の経験者率
- 各体験経験者のロイヤルティスコア NRS (ポジ・ネガ体験の判断)
この本を読むことで、タイトルにある 「顧客ロイヤルティ」 へ理解の解像度がかなり上がった実感があります。
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