2015/06/13

書評「経営戦略立案シナリオ」(佐藤義典)

ビジネスとは「顧客に価値を提供し、顧客からその対価をもらうこと」です。これが自分の中での最もシンプルな表現です。

従って経営戦略として考えるべきことは「どのような顧客に、どんな価値を提供し、どうやってお金をいただくか」となります。

経営戦略を実行する1つの要素としてのマーケティングにおいても、これは当てはまります。

今回のエントリーでは、マーケティングの本で過去に読んだ中から、最もおすすめなものをご紹介します。「経営戦略立案シナリオ」という本です。
経営者の仕事は未来を、戦略を考えることだ。しかし「高級路線で差別化」などお題目のような戦略を唱えている会社は多い。これでは現場がどう動けばいいかわからない。

本書は経営戦略立案の実践で使える戦略ツールを、社長、事業部長、そして将来、経営を担っていくべき人のために体系的にまとめたものである。今まで、なんだか経営戦略のことがわからなかったという人にもしっかり「腹に落ちる」一冊。

タイトルには経営戦略とありますが、マーケティングの本としても得られることが多くありました。

本書の特徴として、本書で詳細に解説されているのが経営戦略のフレームです。BASiCS (ベーシックスと読みます) がそれで、経営戦略の5つの要素の頭文字からのネーミングです。
  • Battlefield (戦場)
  • Asset (独自資源)
  • Strength (強み / 差別化)
  • Customer (顧客)
  • Selling Message (売り文句)

全体を通して強調されているのが5つの要素の一貫性です。

BASiCS において、整合性が取れれば、①戦いやすい市場で、②独自資源を活かし(ノウハウや資産など)、③差別化された商品/サービスを、④ターゲット顧客に対して、⑤わかりやすく価値を伝える、ことができます。

こう書くと非常にシンプルです。見方によっては簡単に見えるかもしれません。

しかし、シンプル = 簡単ではないのです。シンプルであり、本質だからこそ、それを自分たちの状況に当てはめ、かつ組織で実行し、結果を出し続けることは決して簡単なことではないでしょう。

だからこそ、本書には価値があると思います。B to C のみならず、B to B であっても普遍的に当てはまる内容になっています。(BASiCS に興味のある方は、経営戦略フレームワーク: 戦略BASiCS もどうぞ)




この本のサブタイトルは「顧客視点で事業の競争力を強化する!」です。

本書がおすすめできる理由の1つに、一貫して顧客の立場に立った経営戦略が書かれていることにあります。

例えば BASiCS の1つ目の要素である Battle field (市場)。自分たちはどんなマーケットで価値を提供するのかです。

本書では、競合を決めるのは、自分たち(企業などの商品/サービス提供者)ではなく、顧客であると言います。
競合とは、顧客が、「ある価値が欲しい」「欲求を充足したい」というときに、あなたの商品・サービスと一緒に浮かぶすべての選択肢なのだ。本当に競争が起きている場所は、顧客のココロ中だ。それは、あなたが競合であると思っているかどうかは、本質的には関係がない。

顧客が求める価値がまずあり、それが中心になり生活者の中で競合が決まる。生活者の頭の中に浮かぶ選択肢の束がマーケットになる、という考え方です。

この主張はあまり聞いたことがなく、異端に見えるかもしれません。しかし、自分が1人の消費者としての立場で考えたとき、日々の生活の中で起こっていることそのものです。

企業側がいくら競合を設定し、競合に対して自分たちの優位性を示してきたとしても、生活者にとってはそんなことは関係ありません。あくまで、自分が求めるお金を払ってでも欲しい価値があり、その時に浮かぶいくつかの選択肢を合わせたものが、その価値に対してできる市場なわけです。

BASiCS の B について、顧客視点での例を挙げました。他の要素についても、本書では一貫して顧客の立場から書かれています。

本書のタイトルには「経営戦略」とあり、実際に書かれていることは、読み手として経営者を想定されています。

ですが、個人的には、マーケティングに関わる人におすすめです。特にマーケティングの理論は一通り理解してはいるものの、自分の現業に活かしきれていない人(理論と実践がリンクされていない環境にある方)にぜひ読んでいただければ。




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