2015/06/20

顧客視点の経営戦略:顧客を絞れば戦略が決まる




これまに読んだマーケティングの本で、最もおすすめな1冊が 経営戦略立案シナリオ です。



本書のサブタイトルは 「顧客視点で事業の競争力を強化する!」 です。一貫して顧客を基点に考えていくことの重要性が説明されています。


顧客を絞れば戦略が決まる


印象的だったのは、顧客を絞れば (明確にすれば) 、そこから連動して戦略と戦術が決まっていくことでした。以下は本書からの引用です。

経営の根幹が顧客だから、経営戦略も顧客視点であるべきだ。

顧客を絞れば、競合が決まる。競合が決まれば、差別化ポイントが決まる。差別化ポイントが決まれば、独自資源も決まる。

あなたの経営を顧客のアタマの中に合わせていこうというのが、本書でいう 「顧客視点の経営戦略」 なのである。

もちろん単純な一方向ではありませんが、連動する流れは次の通りです。

  • 顧客を絞る
  • 競合が決まる
  • 競合との差別化ポイントが決まる

ここからは、顧客視点での戦略をつくることについて、それぞれ考えていきます。


顧客を決める


顧客を決めるときの視点は2つあります。想定する人たちが、あなたから買いたい人かどうか、もう1つは、あなたが売りたい人かどうかです。

  • あなたから買いたい人:彼ら彼女らの求めるニーズと、自分たちが提供するものが一致している人たち。自分たちのことを評価してくれ、価値として認めてくれている
  • あなたが売りたい人:例えば、購買力の高い層を狙う、あるいは長期にわたって顧客関係を続けていきたい人たち

最終的には、あなたから買いたい人 = あなたが売りたい人、となるのが望ましいです。

よって、売りたい人と買いたい人を別々に考えないようにする必要があります。あなたが売りたい人が求めるニーズと、自分たちが提供する価値が一致するかどうかです。自分たちが提供できる価値 = 顧客が求めている価値、と価値がつながることがポイントです。


顧客を絞れば、競合が決まる


本書のユニークな考え方の1つに、競合が決まるのは顧客の頭の中で、というものがあります。

顧客が何かを欲しいと思う瞬間、買いたいと思うときに、頭の中ではいくつかの選択肢があります。自社以外の選択肢が競合であり、それら全ての選択肢を合わせたものが自分たちが戦う 「市場」 になります。

これが意味するのは、市場を決めるのは自分たちがではなく、あくまで顧客の頭の中ということです。顧客を決めれば、自ずと競合が決まるという考え方です。


顧客と競合が決まれば、差別化ポイントが決まる


差別化ポイントの条件は2つです。

  • 競合よりも自分たちが顧客に優位に提供できること
  • それが顧客にとって実際に価値になっていること

差別化されているとは、顧客の頭の中に浮かんだ選択肢に対して、競合よりも自分たちが選ばれる状況です。

本書では、差別化ポイントには3つあると書かれています。「手軽軸」 「商品軸」 「密着軸」です。お寿司屋の例で説明します。

  • 手軽軸:利便性や価格で優位。1皿100円のような回転寿司
  • 商品軸:技術的や品質で優れている。高級寿司店
  • 密着軸:顧客が利用しやすいようなオーダーメイドでカスタマイズできる。近所の顔なじみの店主がいる寿司屋

自分たちはどの軸を追求するかを決断するのは経営者の役割です。3つ全てを満たすのは不可能です。本書には、どれか1つでナンバー1を目指し、他の2つは少なくとも競合と同程度であれば、競合に対して優位な立場を築けると説明されています。


顧客を絞ればメッセージが決まり、販売チャネルや広告媒体も決まる


差別化ポイントが決まれば、それをどうやって顧客に伝えるかのメッセージも決められます。

いかに魅力的な差別化ポイントを持っていても、顧客に届き伝わらなければ、差別化ポイントは机上のものでしかありません。顧客にとっては存在していないとの同じです。

差別化ポイントをメッセージにしてどうやって伝えるかです。自分たちの顧客が接触するところメッセージを出さなければ、顧客には届きません。

そこに顧客がいるから、彼らにとって魅力的な (価値として感じてもらえる) 内容を、メッセージにして伝えるのです。また、顧客が買う場所が販売チャネルになります。

顧客を絞る段階で、その顧客に到達できる販売チャネルや広告媒体はどこか。逆に、自分たちが使えるチャネルや媒体に接触する人たちは顧客になり得るか、という戦術面からの視点で、基点となる顧客セグメンテーションを進める必要も場合によってはあるでしょう。


戦略と戦術の一貫性


何をやって何をやらないかの戦略と、戦略を具体的な実行策に落とし込んだ戦術の一貫性は大切です。

以下、本書からの引用です。

戦略を考えるとは、「戦略 → 戦術」 という一方向の単純なものではなく、すべてを俯瞰しながら一貫性をとっていく、行ったり来たりのプロセスなのだ。「戦略 → 戦術」 と一方向で考えると、戦略と戦術の境目に溝ができてしまう。

だから、戦略を考える際には戦術をおぼろげながらアタマに置き、実行できるかどうかを確認しながら行うことになる。実行できない戦略には意味がないからだ。

戦略を考えるにあたって、戦略のプロであることは必要条件だが、十分条件ではない。現場での戦術の知識・体験が豊富な人でないと、実行できない机上の戦略を作ってしまう。戦略を作る際には戦略のプロと戦術のプロの両方を巻き込むことが重要だ。



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多田 翼 (書いた人)


外資系 IT 会社にて 「シニア マーケティングリサーチ マネージャー」 (LinkedIn) 。

1981年 (昭和56年) 生まれ。名古屋出身。学生時代は京都。家族4人で東京23区内に在住、2人の子どもの父親。気分転換は毎朝1時間のランニング。

書いている内容は、所属組織や会社の正式見解ではなく個人の見解です。