2015/06/27

同僚がマクドナルドに行かなくなった理由 (マーケティング戦略を考える好材料)




少し前にランチを一緒に食べていた会社の同僚が、マクドナルドについてこんなことを言っていました。

「マックは前は時々行っていたけど、最近は行かなくなった」


店内のレイアウト変更で足が遠のく


その理由を聞いてみると、店内のレイアウトが変わったからとのことでした。

以前の行っていた頃はソファタイプの椅子があり、よく使っていたそうです。ところが、ソファがなくなり、代わりに設置されたのはサイズが小さくなった固めの椅子とテーブルだったそうです。

それまでの居心地の良さがなくなってしまい、いつの間にか行かなくなったようです。

この話はマーケティングや戦略を興味深く考えさせられました。以下、マーケティングと戦略の視点で思ったことを書いています。


お客に提供する本当の価値は何か


マクドナルドが商品として売っているのは、ハンバーガーやポテト、ドリンク、サラダなどのファストフードです。お客にとってのマクドナルドの価値は、おいしいファストフードが気軽に、安く食べられることです。

同僚との会話の中であらためて考えさせられたのは、マクドナルドが提供する価値はハンバーガーなどのフード以外にもあることでした。

同僚にとって、ソファでゆっくりとリラックスできることがマクドナルドに行く理由でしたです。ゆっくりリラックスできることが、マクドナルドが同僚という1人の顧客に提供していた価値でした。


価値をめぐって争う相手が競合


「店内でゆっくりとリラックスできる」 という価値提供の視点で考えると、マクドナルドの競合は、他のハンバーガーファストフード店 (ロッテリアなど) というよりは、スタバなどのカフェやレストランになります。

なぜなら、顧客が求める価値 (ベネフィット) があり、価値を得るために頭の中で浮かぶ選択肢が競合になるからです。同僚の場合は、「会社の外に出て、ゆっくりとリラックスしながら食事をしたい」 と思い、そのニーズを満たすことができそうな頭の中に浮かぶ候補がマクドナルドの競合になるのです。

競合は、同じ価値を提供するもの同士で構成されます。競合とは価値をめぐって争う関係です。


自分たちが選ばれる理由が 「強み」 


いくつかの候補先の中から、他の店ではなくマクドナルドが選ばれれば、その選択理由こそがマクドナルドの 「強み」 です。競合に比べ、差別化できていているからです。

同僚の場合は、マックが選ばれていた理由は、ソファでゆっくりとリラックスでき、かつハンバーガーやサラダなどの食事も価格に対しておいしいことでした。

他の候補であるスタバでは 「コーヒー等のドリンクは良いし店内でゆっくりできるが、フードはマックのほうがいい」 、他のレストランは 「料理は充実しているけど、食後はすぐに出て行かないといけないと感じてしまう (ゆっくりできない) 」 、のだそうです。


 「客が求めるニーズ」 と 「提供する価値」 を一致させる


マックとしては回転率を上げる狙いがあったのでしょう。同僚のような 「店内でゆっくりする客」 をターゲット顧客から外し、「ハンバーガーをさっと食べていく客」 に絞ったわけです。ビジネスの意図は、客数を増やし売上を増やすことです。
マックのレイアウト変更で、店内にコンパクトな椅子とテーブルが増えました。同僚にとっては、彼女が気に入っていたソファタイプの椅子がなくなりました。

この状況が意味するのは、同僚はこのマックのターゲット顧客ではなくなったことです。自分が求めるニーズと提供される価値が一致しなくなったので、同僚は、マックに足を運ばなくなりました。

マックは、ターゲット顧客を絞った結果、1人の客を失いました。その分、店内でさっと食べたい客は、ソファをなくしコンパクトな椅子とテーブルを設置したので増えたはずです。

ターゲット顧客を絞ることは悪いことではありません。むしろ、自分たちが提供するものに価値を感じてくれる人にターゲット顧客を絞ること自体は、良いことです。

絞らないと、相反するニーズを満たす必要があります。例えば、店内でゆっくりしたいニーズと、店内でおしゃべりしたいニーズの両方を満たしていくことになります。しかし、現実的には難しいでしょう。

静かな環境でゆっくりとコーヒーを飲みながら過ごしたい客がいる隣で、4人グループの女子高生が盛り上がっていれば、ゆっくりとリラックスしたい客のニーズは満たせません。お店は、ゆっくりできる価値を求める顧客に価値を提供できていないことになります。

ターゲット顧客を絞るのは、客が求めるニーズと提供する価値を一致させるためです。


戦略と戦術に一貫性があるか


ターゲット顧客を絞るというのは戦略です。実際に戦略が実現するかは戦術次第です。戦術とは、例えば店内のレイアウトや BGM などの店内環境、店員の対応、などです。

戦略とはやることを決めることであり、やらないことを決めることでもあります。同僚がよく行っていたマックは、ゆっくり過ごしたい客のニーズは満たさないことを戦略として決めました。

重要なのは、戦略と戦術に一貫性があるかです。

時間がない時にすぐに食べられる価値を顧客に提供する戦略であれば、戦術も沿ったものにすべきです。

具体的には、店内のテーブルの配置は客が通りやすいように配置され、流れる音楽もアップテンポのものになります。店員の服装は動きやすさが重視され、きびきびとした態度で対応が求められます。スタバのような馴染みの客への親密なコミュニケーションは必ずしも必要ありません。

細部にわたって、戦略と矛盾がないことです。それができて、顧客にとって一貫性のある価値がもたらされます。


戦術が自分たちの都合だけではなく、顧客に価値をもたらすか


同僚が行っていたマクドナルドは、顧客の回転率を上げる方針にしました。ただし、この方針自体は、お客にとってはまだ価値にはなっていません。あくまで店側のマクドナルドの都合です。

回転数を上げるために、一貫性のある各種施策 (例: ハンバーガーがすぐに出てくる) ができているかです。同時に、その施策が顧客の求めるニーズを実現するかどうかです。

それができてはじめて、食事に時間をかけていられない時にさっと食べられる環境という価値を顧客に提供できます。戦術が顧客に価値をもたらし、戦略が実現できたことになります。

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多田 翼 (書いた人)


外資系 IT 会社にてマーケティングリサーチ マネージャー (LinkedIn) 。

1981年 (昭和56年) 生まれ。名古屋出身。学生時代は京都。家族4人で東京23区内に在住、2人の子どもの父親。気分転換は毎朝 8km のランニングとピアノ。

書いている内容は、所属組織や会社の正式見解ではなく個人の見解です。