投稿日 2011/11/06

失敗を評価する4つの視点


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失敗学を提唱する畑村洋太郎氏の著書が、回復力 - 失敗からの復活 です。



この本には、人は誰でも失敗をしてしまうこと、だからこそ大切なのはそこからどう失敗を捉え、考え、行動するかが書かれています。


失敗を評価する4つの視点


本書で印象的だったのは、著者が紹介する失敗を評価するための4つの視点でした。
投稿日 2011/11/03

TVチェックインサービスIntoNowがもたらす新しいTV視聴体験

ツイッターのタイムラインでは、TVの話題が流れていることがあります。その中にはまさに「今見ている番組」のツイートも見かけます。そんな今見ている番組をツイッターやフェイスブックに共有するためのサービスにIntoNowがあります。このIntoNowに今回新しい機能が追加されたのですが、その内容がちょっと興味深かったので、そのあたりを中心に書いています。

■IntoNowとは

IntoNowというのはiPhone/iPad・Android用アプリです。使い方は簡単で、テレビを見ている時にアプリ上のボタンを押すとアプリがその番組を自動認識します。あとはツイッターやフェイスブックで見ている番組を共有するだけです。(ちなみにIntoNowは今年4月にYahoo!に買収されています)

あいにくIntoNowは日本では使えないので(米国向けサービス)、YouTubeなどで動画を見るくらいしかできないのですが、動画を見る限り本当にボタンを押してから数秒で自動認識し、番組名が表示されています。これは百聞は一見にしかずなので、以下の動画を見るとイメージがつかみやすいです。

IntoNow from Yahoo! for iPad|YouTube

IntoNowがとてもユニークで、かつ個人的に興味深いと思っているのは、TV番組の音声だけで見ている番組を自動認識をする仕組みです。具体的には、アプリが見ている番組の音声を記録し、その音声情報と独自に構築している番組音声情報のデータベースと照合させます。そして、認識させた結果(見ている番組名)をアプリに表示させるのです。

IntoNowがすごいのは、このプロセスをわずか数秒でやることです。つまり、数秒以内にまさに今放送されている番組の音声情報をインデックス化したデータベース構築と、ユーザーのアプリから送られる音声情報をマッチングをしその結果を返すことの2つをしているのです。

■IntoNowに新しく追加されたわくわくする機能

IntoNowのアプリはこれまではスマートフォンだけだったのですが、今回新たにiPad用アプリがリリースされました。これだけ聞くと、スマートフォンでできたことがタブレットでもできるようになったと映りますが、実は今回のリリースではなかなかおもしろい機能が追加されているのです。

実は上の動画の後半でその紹介があるのですが、これまでは主に自動認識をさせるのが何の番組かだけだったのが、その番組に関連する情報までもわかるようになっています。例えば、プロ野球の試合を見ていてIntoNowで認識させると、試合のスコアや経緯の詳細、各選手の成績などの情報や、試合に関するツイート情報がアプリ上に表示されます。もちろん、これまでのスマホ用アプリでできた、ツイッターやフェイスブックへの共有も同じ画面からできます。あるいはここからは想像と期待も込めてですが、ドラマであれば登場している俳優のプロフィールであったり、もしかしたら着ている服やアクセサリーなども簡単に確認ができ、さらには気に入ればその場で買えるなんてこともできるようになるかもしれません。バラエティ番組で考えると、番組内で紹介されたお店、スイーツなどの商品、訪れたことのない名所など、関連する動画や説明などの情報が向こうからやってきてアプリ上に表示されるイメージです。

見ている番組が自動認識され、そして関連する情報までも提供される。この間にユーザーがすることはアプリ上のボタンをたった1回押すだけで、数秒後にはアプリ上に表示されるのです。グーグルでの検索や他の複数のアプリを使う必要などもなく。

IntoNowはTV番組に「チェックイン」するためのアプリです。これまでのチェックインをする目的は、はソーシャルメディアへの共有にあったのではと思いますが、今回のiPad用アプリのリリースで関連する情報を手に入れるためという新たな目的が加わったことになります。TVを見ながら、手元のiPadでボタンを押すだけで関連する情報が手に入り、それが数秒で自動的にできるというのは、今までにないTV視聴体験だと感じます。

■考えられる課題

そんなユーザー体験がIntoNowアプリでできるのはおもしろそうですが、課題もあると思います。大きくは2つで、1つ目がTV音声認識です。スマホやタブレットでTVの音を記録するということは、同時にTV以外の音も拾ってしまいます。家族の会話やペットの鳴き声、家のまわりの音も混じってくるケースも考えられます。その中で番組認識に必要な音だけをどれだけ正確に認識できるか。

2つ目の課題は、音声で番組を認識できたとして、その番組に関連する情報がどれだけ提供できるかだと思います。一口に関連する情報と言っても、ユーザーに必要な情報でなければ逆効果になってしまいます。さらに言えば、同じ関連情報でもユーザーによっては欲しかった内容であり、他のユーザーにとっては不要となることもあり得ます。アプリのボタンを押して関連情報も含めた結果を返すのは長くても10秒ちょっととのことで、これだけ短時間で実現するためには自動化されているはずで、いかにユーザーにとって目利きされた情報が提供できるか。これが2点目の課題になるのではないでしょうか。

■タブレットでIntoNowを使う価値

このように課題はありそうですが、それでも先のイメージ動画を見ると今の自分の環境ではできないテレビの見方ができ、日本でリリースされていないのが残念です。今回のiPadアプリのリリースにより関連情報の提供を開始するわけですが、これはタブレットの画面の大きさをうまく活用した事例とも言えそうです。同じことをiPhoneなどのスマートフォンでやる場合、画面の大きさが十分ではないので、画面をトントンして拡大させたり、スライドさせたりなど、拡大/縮小・移動を繰り返していると、テレビのほうに集中できないような気もします。だからiPadというタブレット用のアプリで実装されていることに価値があるんだと思います。

IntoNowの特徴はTVの音声だけで番組認識と関連情報の提供をする点にあると思いますが、これが実現できるのは高い音声認識技術と、放送されている番組をリアルタイムで独自に収集しデータベース化しているからです。特に番組音声のデータベース化は相当の投資が必要ではと思います。ましてやアメリカ以外の国でサービスを開始するためには、その国のTV番組をゼロから集めないといけません。そんなことを考えると、IntoNowが日本でもリリースされるのはなかなか難しいのかなと、ちょっと残念に思います。


※参考情報

IntoNow - Connect with your friends around the shows you love
IntoNow App Turns iPad into ‘Intelligent’ TV Companion | Gadget Lab | Wired.com
Yahoo Brings Intelligent Social TV App IntoNow To The iPad; Adds Content Feeds And More | TechCrunch
Share your TV habits with Yahoo's IntoNow app, now on the iPad | Digital Media - CNET News
リアルタイムウェブとチェックインの可能性を考える|思考の整理日記
IntoNow from Yahoo! for iPad|YouTube
IntoNow iPhone App Review - AppVee.com|YouTube


投稿日 2011/10/29

高機能一辺倒へのテレビにはあまりワクワクしなくなったので、そろそろ次のテレビに期待したい

先日の24日にスティーブ・ジョブズ公認の伝記が発売されましたが、書かれていた内容で話題を呼んでいたのは、ジョブズがTVへの取り組みに強い意欲を持っていたことです。
Jobs's final plan: an ‘integrated’ Apple TV|The Washington Post

■ジョブズのTVへの熱意

書かれていたことは確かに興味深いものでした。ワシントンポストから引用したものがこちら。
“He very much wanted to do for television sets what he had done for computers, music players, and phones: make them simple and elegant,” Isaacson wrote. (引用者注:Isaacson氏はジョブズ公認伝記の著者)
Isaacson continued: “‘I’d like to create an integrated television set that is completely easy to use,’ he told me. ‘It would be seamlessly synced with all of your devices and with iCloud.’ No longer would users have to fiddle with complex remotes for DVD players and cable channels. ‘It will have the simplest user interface you could imagine. I finally cracked it.’”
これを読むと、ジョブズはコンピューター(Mac)・音楽プレイヤー(iPod)・携帯電話(iPhone)で成し遂げた、シンプルでエレガントなユーザー体験をテレビでも実現したいという熱意を持っていたことがうかがえます。ユーザーが持っているiPhoneやiCloudとも連携させることも構想していたようです。とにかくシンプルで、誰でも使えるようなテレビです。

そして最後にこう言っています。「I finally cracked it(その方法がついにわかった)」。crackというのは、この文脈では「暗号を解読した」みたいなイメージですが、ジョブズがこのように言ったとすればかなり具体的なイメージを描いていたのではないかと思います。ただ、「その方法」がどんな内容なのかは残念ながら、今回のジョブズの伝記には書かれていなかったようです。

■What is "I cracked it" for the next TV?

では、ジョブズはどのようなテレビを思い描いていたのか。上記のジョブズの言葉の中にはTVのリモコンについて不満を抱いていたことがわかります(No longer would users have to fiddle with complex remotes for DVD players and cable channels)。となると少なくともリモコンはもっとシンプルで使いやすいものになるはず。余分なものを徹底的にそぎ落とし、本当に必要なものだけしか残さないジョブズの哲学にも近い考え方です。

とすると、iPodのような本当に必要なボタンだけしかないリモコンになるのでしょうか。確かにそれは十分にあり得ることだと思います。自分の家にあるTVのリモコンを思い浮かべると、本当にたくさんのボタンがあるのに実際に使うボタンは最低限に限られます。中には一度ども押したことのないボタンもある。そういうのを割り切って削っていけば、かなりシンプルなリモコンにできそうなものです。

テレビを操作するのに別にリモコンではなくてもいいのでは、という発想で考えると違ったテレビのコントロールの仕方もでてきます。それがiPhone4Sで搭載された音声認識のSiri。つまり、直接テレビに話すことでコントロールするという考え方です。このSiriについては、実際に海外のブログとかを読んでいると、TVへの統合への期待がかなり高い印象を持ちました。Siriについてはまだ実際に使ったことがなく、YouTubeや使った人の書いたブログとかを読んだ印象ですが、「明日の天気は」「○○に行くにはどう行ったらいい」という質問にも的確に回答するなど、なかなかおもしろそうな機能です。Siriは単に人間の話した言葉を正確に聞き取ることだけではなく、質問やリクエストを理解しその答えを提案するというのは、既存のボイスメモやボイス検索とは大きく異なると思います。テレビにSiriがあれば、「野球が見たい」と言えば野球中継を映してくれ、もしかすると、「ちょっと退屈なので何か笑える番組を見たい」とテレビに話しかければ、ユーザーの好みや過去の視聴履歴などから、その人に合った番組を提案してくれるかもしれません。人によっては漫才などのお笑いかもしれないし、別の人には落語なんてことも。そこには、TV番組欄を見て今の時間に何がやっているかとか、適当にチャンネルを変え見たい番組を探すザッピングなどはもはや不要です。

音声認識のSiri以外だと、アップルは離れたデバイスを動かすのにジェスチャーを使うことを研究しているという話もありました。これも既存のリモコンだけに比べて、テレビの使い勝手を大きく変えてくれるかもしれません。ただ、SiriはすでにiPhone4Sに実装されていることに比べ、こちらはまだ少し先の話になりそうですが。
Apple exploring 3D gestures to control devices from a distance|AppleInsider

■そろそろフレームを変える時

あらためて考えてみると、今私たちの身の回りにあるテレビへの操作は、ほぼ100%リモコンを使っています(リモコン以外だと主電源のON/OFFくらい)。その状況でいろんな機能が次々に追加される一方でリモコン操作という形式が変わらなかった結果、とても使いにくいリモコンになってしまいました。とにかくボタンが多い割に実際に使うボタンは多くなく、わかりにくく使いづらいのです。

ところが多くのテレビメーカーはそこにはあまり注力していなく、より大きく、高画質な美しい画面、あるいはそれ専用の眼鏡を用意し3Dという立体的に見ることができる画面を実現し、ユーザーに提案してきています。これはよりいい機能を追加するという足し算の発想ですが、本当にそこにユーザーのニーズがあるのかは個人的には疑問です。さらなる高性能よりも利便性なのではないでしょうか。

番組配信の仕方もアップルは変えるのかもしれません。iCloudとも連携するということは、単に放送される番組を見るだけではなく、過去の番組も含めて見たい番組を見たい時に、その状況に適切なデバイスで見られるようになるのでしょう。家で見る時はリビングのアップルTVで、自分の部屋のベッドではiPadで、電車で続きを見る時はiPhoneで、といった感じで、アップルが得意とするユーザーに必要以上の設定をさせることなく、全ての端末が一連となって機能する仕組みです。

直感的な操作性に優れたテレビ、自分の好きな番組を好きなように見られるという、ユーザーにとって何が本当に価値があって、それに対して自分たちが提供できることは何か、これを徹底的に考え抜いた結果、ジョブズの頭にはすでにそのテレビは完成していたのではないでしょうか。

■次のテレビへの期待

こんな情報がありました。次のアップルTVは2012年あるいは13年頃にリリースされるというものです。
Apple Could Release TV Set in 2012 [REPORT]|Mashable
Apple Looking to Launch Siri-Enabled Television Set by 2013|MacRumors

アップル以外にも、グーグルとTVの話題も見かけました。方向性はアップルTVと似ており、シンプルにし利便性を高めるというものです。
An Update on Google TV|Google TV
Google TV gaining Android Market, simpler interface with new update|AppleInsider

昨今はTV離れが言われ、実際にそうしたことを示すデータを見かけることもありますが、少なくとも自分の身の回り、家族だったり、ツイッターやフェイスブックを見ていると、テレビの話題で盛り上がっていることが少なくありません。なんだかんだでテレビって、みんな好きなんだなと感じます。そんなテレビでイノベーションが起こるのか、そしてそれが私たちとテレビの関わりを変えてくれるのか。近い未来にその答えがわかる日がやってくるのかもしれません。


※参考情報

Jobs's final plan: an ‘integrated’ Apple TV|The Washington Post
Apple exploring 3D gestures to control devices from a distance|AppleInsider
Apple Could Release TV Set in 2012 [REPORT]|Mashable
Apple Looking to Launch Siri-Enabled Television Set by 2013|MacRumors
An Update on Google TV|Google TV
Google TV gaining Android Market, simpler interface with new update|AppleInsider


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

ブログ以外にマーケティングレターを毎週1万字で配信しています。音声配信は Podcast, Spotify, Amazon music, stand.fm からどうぞ。

名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。