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投稿日 2023/02/07

明石家さんまさんの神トークからマーケターが学べること

出典: TV LIFE web

今回は明石家さんまさんのトーク術に学べることをご紹介します。

✓ この記事でわかること
  • 15年くらいぶりに見たさんま御殿
  • 明石家さんまさんの神トークの分析
  • マーケティングへの応用

よかったら最後までぜひ読んでみてください。

投稿日 2021/03/30

人気テレビ番組プロデューサーに学ぶ、n1 分析の有効活用の方法


今回はマーケティングです。n1 分析の有効な活用方法を考えます。

✓ この記事でわかること
  • 人気テレビ番組プロデューサーの番組ネタ集めの方法
  • インタビュー調査で超具体のエピソードを知る
  • マーケターがやる 「個客から顧客へ」 という抽象化

記事では最初に、ある人気番組のプロデューサーの方がやっている番組ネタ集めの方法をご紹介します。

この方法はマーケティングでのユーザーインタビューに参考になります。記事の後半では n1 分析の有効活用の方法として掘り下げています

ぜひ最後まで読んでいただき、お仕事での参考になればうれしいです。

投稿日 2020/05/21

ビジネスでは 「成果物 ≠ 提供価値」 に注意しよう (マーケティングから説明) 




今回は、マーケティングの話です。

提供価値について掘り下げて考えていきます。


この記事でわかること


  • 提供価値への認識のズレ
  • 本質的な提供価値まで掘り下げる重要性
  • 「自分の成果物」 と 「相手への提供価値」 を分けて考えよう


この記事でわかるのは、お客に価値を提供するときの注意点とポイントです。

記事の前半では、テレビ局とスポンサーを例に、提供価値とは何かを掘り下げています。

後半では、そこからの応用で個人に当てはめ、ビジネスパーソンとして学べることを深掘りしています。

ぜひ記事を最後まで読んでいただき、お仕事やキャリアへの参考にしてみてください。

投稿日 2020/05/13

イノベーションを生む方法を 「テレビ番組企画 → 3階建て組織 → Google プロジェクト管理手法 → 両利きの経営」 の着想から


今回のテーマは、イノベーションです。


この記事でわかること


  • テレビ番組の企画方法
  • イノベーションを生む組織との共通点
  • 「Google のプロジェクト管理手法」 からの示唆

この記事でわかるのは、大ヒットしたテレビ番組を企画した放送作家に学ぶ、新しいアイデアを生む方法です。

記事の後半では、そこからつなげてイノベーションを生む組織や方法から、私たちが学べることを掘り下げています。

ぜひ記事を最後まで読んでいただき、お仕事での参考にしてみてください。

投稿日 2020/05/08

ヒットするテレビ番組の秘密に学ぶ、成功するマーケティング




今回は、マーケティングです。


この記事でわかること


  • ヒットするテレビ番組の秘密
  • マーケティングへの横展開
  • 「潜在的な "あるある" 」 の本質


ヒット番組に共通する3つのポイントを取り上げ、そこからマーケティングへの応用を掘り下げています。

マーケティングのものの見方や考え方は、ビジネスで汎用的に使えます。ぜひ記事を最後まで読んでいただき、お仕事での参考にしてみてください。

投稿日 2020/04/25

売れるテレビショッピングの秘訣から学べること (マーケティングと提案技術)


今回は、テレビショッピングに学ぶマーケティングや提案技術です。

この記事でわかること


  • 売れるテレビショッピング番組の秘密
  • 人をネガティブな気持ちにする意図
  • 企画提案などビジネスへの応用

電通のテレビショッピング番組の分析から、マーケティングやビジネスの実務で活かせることを掘り下げています。

ぜひ記事を最後まで読んでいただき、お仕事での参考にしてみてください。

投稿日 2017/09/13

「分析では比較される側の反論を考えよ」 。尊敬する上司からの教え


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分析について考えます。私の上司からの教えで、分析をする際に心がけるとよいことです。

エントリー内容です。

  • 分析の本質
  • 上司からの教え
  • Twitter とテレビの比較分析に当てはめる上司の教え

投稿日 2017/06/06

ツイッターとテレビのリーチ比較から考える、データ分析で何と何を比べるかの重要性 #AWAsia 2017


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アドバタイジングウィーク アジア 2017 というイベントが、2017年5月29日から6月1日の日程で日本で開催されました。会場は六本木の東京ミッドタウンでした。アジアでの開催は去年に引き続き2回目です。

今回のエントリー内容です。

  • テレビと Twitter のリーチ比較
  • Twitter が過大評価されている比較方法
  • 望ましい比較方法

投稿日 2017/03/13

書評: 届く CM 、届かない CM - 視聴率 = GRP に頼るな、注目量 = GAP をねらえ (横山隆治 / 大橋聡史 / 川越智勇)


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届く CM 、届かない CM - 視聴率 = GRP に頼るな、注目量 = GAP をねらえ という本をご紹介します。




エントリー内容です。

  • 本書の内容。新しいテレビ視聴データを積極的に使用
  • データに基づく説得力のある検証結果と考察、マーケティングコミュニケーションへの俯瞰的な提言
  • データを味方にできるクリエイター

投稿日 2014/10/11

テレビ視聴分析サービス SMART の所感と課題




スイッチ・メディア・ラボが、テレビ視聴分析サービス 「SMART (スマート) 」 の正式サービスを開始しました (2014年10月6日) 。




テレビ視聴率の調査およびデータ提供です。


テレビ視聴分析サービス SMART とは


調査の特徴や提供サービス内容を見ると、すでに同じ視聴率サービスを展開しているビデオリサーチのできないこと (と言うよりやっていないこと) を突いているという印象です。

具体的には、以下の3つです。
投稿日 2013/02/01

朝日新聞はなぜ「録画再生率が視聴率上回る例」を一面で報じたのか?




朝日新聞が、テレビの録画再生を含めた視聴率の実態を報じました(2013年1月31日付)。昨日の新聞の1面と、3面の解説記事で取り扱われています。

「ドラマは録画」くっきり 再生率が視聴率上回る例も|朝日新聞

記事の出だしから引用です。

テレビの録画再生を含めた視聴率の実態が、朝日新聞が入手した調査結果で初めて分かった。視聴率は放送時間中に見られた数値しか公表されていないが、視聴実態をより反映した録画を含めた数値をみると、人気ドラマの中には録画再生が放送中を上回る例もあった。

テレビ放送が始まって2月1日で60年、視聴率調査が始まってから半世紀以上がたつが、公表数値が視聴実態と離れつつあることが浮き彫りになった。

いくつかの録画再生率は下図の通りです。

確かにドラマ「ラッキーセブンスペシャル」の1/3放送分については、放送中に見たリアルタイムでの視聴率:12.6%、録画再生率:13.5%と、録画での視聴率が放送中のそれを上回ったようです。なお、今回の録画視聴率の定義は「録画した番組を放送の7日後までに再生した人の割合」とのことです。


出所:Yahoo!ニュース

■ 驚いたのは朝日新聞の1面に掲載されたこと

この記事を見た時にまず驚いたのは、視聴率のデータ自体よりも、今回のニュースがそもそも報じられたことでした。なぜ朝日はこのニュースを配信したのでしょうか?その意図や裏が非常に気になりました。

その前に少し前置きを書いておきます。

「録画での視聴率を含めない放送中のリアルタイム視聴率だけでは不十分」というのは、業界では昔からある不満です。自分の TV の視聴を考えてみても、録画して後から見るというタイムシフト視聴は当たり前のようにやっています。これが正確に反映されていない今の視聴率では実態が捉えられていないわけです。

背景には、ビデオリサーチが公表している600世帯での視聴率が絶対的な意味を持っていることがあります。

600世帯での視聴率はTV番組の人気のバロメーターに使われ、TVCM の広告費を出すためにも使用されています。テレビ視聴の指標として唯一無二の存在です。「通貨」とも呼ばれるほどです。

しかし、通貨である視聴率には録画再生率が含まれないために、録画視聴率はわかりません。つまり通貨として広く使われているが、価値が正しく付いていない(実態を捉えきれていない)のです。

なお、朝日記事の視聴率は通常の視聴率とは異なるものを使っています。「通常の」というのはビデオリサーチの関東600世帯からなるピープルメーター(PM)という機械を使った調査結果から出る数字です。

朝日の記事で「公表数値が視聴実態と離れつつあることが浮き彫りに」とある公表数値というのが通貨として使われているこの視聴率のことです。一方、同記事にある録画再生率はそれとは全く別の200世帯での調査結果です。両者は単純には比較できないです。

ここまでが前置きです。

今回の朝日の記事について、なぜ驚いたかの理由は、

  • 朝日新聞は朝刊の1面と3面に掲載した。国会も始まり、国内外でのニュースも色々ある中、かなりの力の入れようである
  • これまで表に出てこなかった「録画再生率」を公然と出してきた
  • その録画再生率は「通貨である視聴率」にはなかった指標。記事では単純に比べられないとしているが、通貨視聴率の絶対性を崩しかねない。視聴率が複数あるダブルスタンダードは、業界的にかなりタブーのはず(通貨は1つ)
  • データソースはビデオリサーチと書かれているが、そもそもビデオリサーチやバックにいる電通はこのニュース内容を事前認知はしていたのか。記事掲載は許容されていたのか

ビデオリサーチや電通はこのニュース配信にGOを出したとは思えません。朝日のニュース配信には何か強い意図を感じます。

■ なぜ朝日は録画再生率ニュースを流したのか?

なぜ朝日はこのニュースを配信したのでしょうか?その裏にはどんな意図があるのかをいくつか考えられることを書いておきます。

1.TV 番組の人気度を正しく認知してもらうため:人気度とは正確には視聴世帯率の高さ。通常の視聴率では放送中に視聴するリアルタイム視聴だけだが、録画をして後からの視聴も含めるとこんなに高い、というメッセージ。

2.TV 全体で言われる視聴率低下の原因を伝えるため:リアルタイム視聴だけ見ると低下傾向にあるが、録画も含めるとそんなことはない、という反論。

3.現在の「通貨である視聴率」への不満を表している:上記のように、通貨とも呼ばれるにもかかわらず正しく視聴実態を捉えているとは言えない視聴率。別データを具体的に提示することで、事実を反映していない不満を伝えたかった

4.視聴率を新しくするべきとの主張:3の不満への先として、より正しい視聴率を出してほしい意思表示。記事の最後のほうに書かれているのが「米国ではすでに録画も含む視聴率が公表されている。(中略) 実態を正確に測ろうとの試みもあるほどだ」。さらにリサーチ評論家の藤平芳紀氏のコメントが続く。以下は記事から引用。

技術の発展で視聴形態は劇的に変化し、自宅以外のあらゆる場所でテレビは見られている。メディアのあり方に大きな影響を与える基礎データなのだから、録画も含めて実態を正しく反映させた調査結果が世に出されるべきだ

■「通貨」視聴率のそもそもの問題点

民放では、番組の途中や番組と番組の間に CM が放送されます。現状では、A という番組の視聴率をもってして、番組 A の中で流れたCMの視聴率を出しています。

しかし、本来は番組視聴率と CM 視聴率は分けるべきなのです。もっと言うと、CM は数本が連続して流れるのでそれぞれの CM に対して視聴率を出すのが望ましいです。

ここで問題になるのが、番組の視聴率 = CMの視聴率なのか?という点です。多くの人は CM に入れば他のチャンネルに切り替えたり、席を外したりします(中座)。この状況では番組ほど CM は見られません。

録画での再生になると、CM スキップはもっと起こるはずです。リモコン1つで CM を飛ばせ、早送りをすれば CM は見られません。リアルタイム視聴での視聴率以上に録画視聴率においては CM の視聴率を正しく測れていないことになります。

以上から、個人的に思う視聴率の問題は以下です。

  • 「TV 番組視聴率 = CM 視聴率」が成り立たないのが実情。よって、TV 番組視聴率と CM 視聴率は本来は分けるべきだが、現状は1つの視聴率が使われている。これでは CM 視聴率が正しく測られていない
  • 民放のビジネスは CM から得られる広告費で成り立っている。にもかかわらず、その広告費を出すための CM 視聴率が正しくないという構造。広告費算出に使われている GRP には CM 視聴率を用いるべき
  • 視聴率に録画再生率を含めたとしても、依然として CM 視聴率が実態を正しく捉えていない現状は変わらない


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藤平 芳紀
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投稿日 2012/12/24

書籍 MEDIA MAKERS に書かれていた 「メディア変化がコンテンツをも変える」 論点がおもしろい




MEDIA MAKERS - 社会が動く 「影響力」 の正体 という本をご紹介します。

メディアに関する様々な論点が提示され、随所に具体例が書かれています。抽象的な内容で終わらず、読み応えのある本でした。


投稿日 2012/08/14

スマートテレビは普及するのか?ビジネスモデルで考える理想の姿と現実




スマートテレビが、スマートと言えるための必要な要件は以下です。

  • ネットワーク接続され双方向性がある。テレビと、パソコン・スマホ・タブレット等の各種デバイスと連動する
  • テレビ上で各種アプリが使える。例えば、ソーシャルメディアと連携する
  • OS などのソフトウェアのアップデートでテレビが新しくなる (テレビを新しくする ≠ ハードの買い替え)
  • ユーザーインターフェイスが直感的な操作で使いやすい
  • 課金の仕組みができている
  • あらゆるコンテンツがいつでもどこでも自分の見たいタイミングで見られる
投稿日 2012/06/23

今一番欲しい SPIDER から考える 「テレビの次の50年」


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2012年現在の家電メーカーがつくるテレビの方向性は、高画質化と 3D 対応でしょう。

よりきれいな (高画質) 、よりリアルな (3D) 映像をユーザーに提供するかに注力しており、「テレビの画面は、まだきれいでなくリアルではない」 という問題を解決しようとするものです。


現在のテレビの方向性は課題設定がずれている


果たしてこの課題設定の立て方は正しいのでしょうか?

課題設定の前提は、ユーザーは現在のテレビ画面の美しさに不満を持っていることです。少なくとも私自身はさらにきれいになるテレビ画面に魅力を感じません。課題設定がずれていると思います。

例えば、テレビの画像のきれいさは、YouTube や TED などの動画と比べるとすでに高いです。勝負にならないくらいテレビの圧勝です。

それでも TED は見ていていておもしろいし、英語やプレゼンの勉強にもなります。YouTube のバスケットボールやサッカーのゴールシーンを集めたもの、音楽やプロモーションビデオ、海外の動画も見ていて楽しいです。

つまり、魅力なのは映像の中身であって、画質ではないのです。これからのテレビの課題設定は、「いかにおもしろい映像や番組に出会えるユーザー体験を提供するか」 ではないでしょうか。


SPIDER の魅力


このイシューに挑戦しているのが、ベンチャー企業である PTP が開発している SPIDER (スパイダー) です。スパイダーは一言で言えば全録ができるハードディスクレコーダーです。


法人向けの SPIDER PRO


スパイダーの特徴は、次の通りです。

  • 最新の1週間の番組を全て自動録画できる。放送後の見たかった番組も後から自由に見られる
  • 検索機能が充実。番組をシェアできるソーシャル性にも注力
  • 使い勝手のよいリモコンなど、ユーザーインターフェイスを重視

スパイダーは法人向けと個人向けの2つがあります (上の画像は法人向けの SPIDER PRO です) 。

地デジ対応版はまだ法人のみしか出していません (2012年6月現在) 。個人向けが発売されたら買いたいと思っていたのですが、待ちきれず結局は他社のレコーダーを買いました。

もし今後、個人向けのスパイダーが出たら、今のレコーダーから買い替えます。なぜなら、スパイダーには他のレコーダーにはなく、そもそものテレビ視聴体験を大きく変える可能性が期待できるからです。


SPIDER の本質


スパイダーを放送された番組を全て録画する 「全録レコーダー」 としか見ないと、スパイダーが持つ可能性を見誤ります。

スパイダーの本質は、番組や CM のインデックス化と、検索やソーシャル機能による新たな発見です。

前者は主に検索のための番組情報データ整理です。ネットの世界でグーグルがやっていることをスパイダーはテレビでもやろうとするものです。今回は後者について書くので割愛します。詳しくは以下の記事にあります。

参考:テレビが進化する可能性を追う!日本の閉鎖的な放送業界を揺り動かす 「SPIDER」 のさらなるチャレンジ (佐々木俊尚)| 現代ビジネス


全録でも結局は予約録画と同じ


スパイダーを開発している PTP 社長の有吉氏によれば、単に全録機能だけを提供しても結局見るのは普段視聴している番組しか見ないそうです。

これは同社が2年間に渡って一般家庭モニターで行なった実験結果データからです。放送された番組を全て保存しておく全録でも、結局は知っているものしか見ないのであれば予約録画と変わりません。

スパイダーが目指すのは使いやすい検索機能と、ソーシャルによる自分が知らなかった番組の提供です。根底にあるのは 「テレビがつまらない」 ではなく、「おもしろいテレビ番組 / CM に出会っていないだけ」 という考え方です。

全録は、大容量のハードディスクを積み、多数のチューナーを設置すれば、家電メーカーであればできてしまうコンセプトです。

有吉氏は、「全録」 に懸けているのは 5% くらいだそうです。残り 95% は、どうやったら番組や CM を楽しく見られるか、どうやって面白いものに出会えるか、どのように友達や著名人のおすすめ番組を見ることができるかの実現を重視していると言います。新しい発見や埋もれている番組や CM とどうマッチさせていくか、そこばかり考えているそうです。


テレビの次の50年をつくる


スパイダーの目標は 「テレビの次の50年をつくる」 とのことです。

テレビが世の中に出て、その後にユーザー体験を大きく変えた1つにビデオの登場があります。番組を録画し自分の見たいタイミングで自由に見られるようになりました。

テレビ番組や CM はテレビ局の都合で番組表が組まれ、その通りに流すという構図です。視聴者はその時間に合わせてテレビをつける必要があります。この仕組みは今も基本的には変わりません。

視聴者の都合ではなく、見たいならその時間にテレビつけてくださいという発想です。それが無理なら自分で録画してくださいという考え方です。

ビデオ登場後、DVD やブルーレイ、地デジによる高画質なデジタル映像、3D テレビの登場もありますが、どれも過去の延長線でしかありません。ビデオ以来のイノベーションを期待するとしたら、「いかにおもしろい映像/番組に出会えるユーザー体験を提供するか」 という課題設定なのです。


本当の意味での 「通信と放送の融合」 「テレビのネット化」 とは


ここまでスパイダーの魅力を書いてきました。スパイダーが現在やろうとしていることも、本来のあるべき姿から逆算すると、まだ違う点もあると私は思います。

スパイダーの仕組みは、1週間程度の全放送番組を自動で保存しておき (全録) 、それを使い勝手に優れた検索やリモコン、ソーシャルサービスで 「新たな番組との出会い」 を提供しようとするものです。

ただ、例えば10,000人がスパイダーを使うとすると、1週間の放送データが、10,000人分それぞれのスパイダー内に記録されます。全体で見ると無駄が発生しています。なぜなら、全員が各自で全録をすればデータの重複が生まれるからです。

もし、中央に1つの全データがあって、それを各自が読みに行くという仕組みであれば、もっとシンプルになります。

発想はクラウドコンピューティングと同じです。各端末のローカル内にデータを置いておくのではなく、中央のクラウドにつなげるというものです。これがテレビでもできれば理想ではないでしょうか。

そうすれば、1週間という限られた期間ではなく、過去全ての番組が用意されており、検索やソーシャルからフィルターされ、自分が見たい番組、知らなかった新しいコンテンツの発見につながるテレビ環境です。

テレビ番組放映開始から50年以上の全ての番組や CM が中央にあり、自由に見られることがあるべき姿です。

もちろん素人の発想なので、現実的にやろうとするといくつもの技術的・コスト・政治的なハードルがあるのでしょう。

ただ、ネットの世界ではこのあるべき姿がすでに実現しています。100% 完璧ではないですが、それでもネットが便利なのはこの点にあります。

同じことがテレビの世界でもできる時、本当の意味での 「通信と放送の融合」 「テレビのネット化」 が実現します。


※ 参考情報

テレビが進化する可能性を追う!日本の閉鎖的な放送業界を揺り動かす 「SPIDER」 のさらなるチャレンジ|現代ビジネス
便利になるテレビへの想い- 「全録ブーム」 からの離脱宣言- 株式会社PTP 代表取締役 有吉昌康|株式会社PTP
2011年、SPIDER が変えるテレビの 「未来」 と 「可能性」 |現代ビジネス
「ソーシャル」 こそが再びテレビを甦らせる|現代ビジネス
投稿日 2012/06/16

テレビでターゲティング広告は実現できるのか:理想と現実のギャップ

ネット広告の世界では人によって見せる広告の内容を変えるターゲティング広告は当たり前のように使われています。具体的には、そのユーザーが過去にどのウェブページを見たか、何の広告が表示されたかや実際にクリックしたか、どんな検索をしたか等の、行動データから機械的にその人に最も適切であろう広告を表示させています。広告を見せる人を絞り、より広告の効果を高めるやり方。

つい最近見た記事でもフェイスブックのターゲティング広告の話題があり、このへんの話は日進月歩という感じです。このフェイスブックの広告システムはクッキーを使ってユーザーの行動履歴を取っているとのこと。
Facebook Tests Real-Time Ad Targeting Based on Web Browsing Activity|HubSpot Blog

■ターゲティングが弱いマスメディアの広告

一方、それに比べてテレビなどのマスメディアでは広告のターゲティングはできていないのが現状です。ネットでは同じウェブページを見ていても、見る人により表示させる広告が違いますが、テレビは見る人によってCMが異なることはありません。今、日テレで流れているCMは視聴者全員が同じものを見ているのです。

視聴者全員に同じものを見せるというのはメリット/デメリットがあって、メリットとしては一度に多くの人に広告を見せることができます。専門的にはリーチ率と言いますが、テレビでは一般的に視聴率1%で100万人が見ているとされているので、単純計算では視聴率10%の全国ネットの番組にCMを流せば1000万人にCMを見せることができる。(もちろん、CMは流れていても見ていない、トイレとかで離れていることもあったり、そもそも視聴率1%は普通は世帯ベースなので、100万人という人ベースに置き換える計算も正確ではないのですが)

デメリットは、全員に見せるということは、広告のターゲットができていないということなので興味のある人にもない人にも一様に見せるので、どうしても無駄が発生します。TVCMを放映するのに大きなお金をつぎ込みますが、無駄があるほど費用対効果が悪くなります。

■ターゲティング広告配信機能を持つインテルのTVセットトップボックス

Mashableの記事によればインテルがテレビCMのターゲティングを可能にするセットトップボックスを開発したとのことです。
Intel Set-Top Box Uses Face Recognition to Target Ads to You [VIDEO]|Mashable

機能としては、インテルのセットトップボックスに搭載された顔認識技術により、TVを見ている人の性別や大人/子どもを判定し、そこからより適切なテレビ広告を表示させるようです。記事によれば認識するのは性別とか大人か子供かくらいのレベルで、個人までは特定しないとあります。おそらく技術的には事前のユーザー登録と顔認識技術でもっと詳細に個人を特定できる気はします。例えばセットトップボックスに性別・年齢・趣味・興味のあるジャンル(美容/ダイエットとか)、などに加えて顔写真を登録するイメージ。が、あえてそこまでしないのでしょう。

インテルのセットトップボックスのメリットとして、広告主には広告のターゲティングができること、視聴者にはセットトップボックスを買って使ってもらうことで、テレビや番組視聴の料金が下がるようです(なお、アメリカでは日本と違いケーブルテレビが主なので有料でテレビを見るという感覚が強いです)。

記事の最後の方に少しだけ触れていたのが、このインテルのセットトップボックスはニールセンの視聴率調査とも何かしらの連携があるようで、アメリカではニールセンのテレビ視聴率調査は日本でいるビデオリサーチのような存在なので、個人的にはこちらも気になる動きです。

■テレビでターゲティング広告をするには

顔認識で広告を出しわけるセットトップボックスは色々と興味深いのですが、出しわけが性別と大人or子供というのは切り口としてはまだまだ不十分です。これだけだと2×2マトリクスの4象限しかないので、絞っていると言ってもターゲティングとしては粗い。どこまで効果的な広告を表示できるか。

方向性としては、テレビもネットの世界と同じように今後はターゲティング広告に進んでいくはずです。テレビでもターゲット広告を実現するにはどうすればよいか。ちょっと考えてみると、

1つはインテルの顔認識のようなテクノロジーで見ている人を識別すること。前述のようにもっと細かく「その人が誰か」を判別できるようになれば、その条件に合う広告表示も可能になってくるかもしれません。ただし、これ系の技術は高度なテクノロジーを使うほどコストもそれだけ上がるので費用対効果の制約が大きくなるように思います。研究やアカデミックには色々とできるのですが、ビジネスとしてやる場合はコスト感が全然合わないという状況です。

2つ目、ネットで行動履歴データから表示広告を出しわけることをテレビでも応用する。実際にこうした技術があるのかあまり詳しくないのですが、過去に見た番組からその人の嗜好性を判定し、より興味のありそうな広告を表示させることです。いずれテレビもパソコンなどと同じように将来的にはネットにつながるのが普通になると思うので、テレビの過去視聴情報だけではなく、ネットの過去履歴も色々と統合すると、ターゲティング精度はもっと上がるかもしれません。よく「つづきはWebで」というテレビ-ネットを連動させるクロスメディアで広告を出す例がありますが、実際にテレビとネットがつながることでシームレスな広告展開ができるようになるのかもです。

3つ目、テレビにフェイスブックやツイッター、その他SNSの情報を統合して、その人に刺さるような広告を表示する。これをやる場合は2つ目同様にプライバシー/個人データ利用とかでハードルは高そうですが、SNSからその人の興味関心を導き出したり、友人おすすめ商品を広告として表示させる。おそらく上記2つ目も同時に実現される気もするので、今よりもターゲティング精度は上がります。

これら以外にも、テレビと手元のスマホを連動させて、スマホサイドでターゲティング広告を出すというダブルスクリーンを活用することも考えられます。個人的にはこちらも興味があるのですが、ちょっと長くなりそうなので割愛。

■あらためて広告について少し

テレビCMについて色々と書いてきましたが、個人的な問題意識としてはTVCMに無駄が発生している点です。ムダというのは、興味のある人にもそうでない人にも一律に見せることでせっかく広告投資をしてもどうしても捨て金が発生すること。視聴者にとっても興味のない広告を見せられるほどつまらないものはないので、結果どうなるかというとCM中はチャンネルを変えたり、録画視聴であればCMスキップされてしまう。

広告をつくること、広告枠を買うこと、広告を流すこと、それぞれにお金がかかっていて、これらの広告コストはめぐりめぐって商品/サービス価格に反映されます。つまり、広告コストは結局は消費者が負担する構図。考えてみれば、普段の生活で朝のスマホから始まり出かける前のテレビ、移動中の電車内の広告、該当広告、PCで見るネット広告・・、とそれこそ1日中、私たちは広告に接触しています。それだけ見た広告の中で印象に残る広告はどれだけ少ないことかがよくわかります。これだけ広告があるのに、ほとんどがスルーされている状況は社会全体で見た場合にそれだけ無駄が発生しているのではないでしょうか。

TVコマーシャルでも、いくつかは見ていておもしろいCMがあると思っています。広告自体がおもしろいクリエイティブに優れたもの、思わず興味が湧くCM、買ってみてもよいかなと思わせるCM、店頭でそのCMを思い出して手に取ってみる、以前に買ったもののCMを見るともう1回買ってもいいかなと思ったり。

理想論の世界ですが、自分の見るCMが興味関心があるものばかりで、TV番組と同じくらい見ていておもしろい状況が本来あるべき姿なのかなと思っています。



※参考情報
Facebook Tests Real-Time Ad Targeting Based on Web Browsing Activity|HubSpot Blog
Intel Set-Top Box Uses Face Recognition to Target Ads to You [VIDEO]|Mashable
Insight: Intel's plans for virtual TV come into focus|Reuters
日テレ、TV番組の盛り上がり表示できるスマホアプリ-Twitter連携「wiz tv」。過去番組や他局対応も|AV Watch

投稿日 2012/05/06

ケータイ⇒スマホの進化から「あるべきスマートTV」が見えてくる

モバイルについて、今から10年後とか20年後に歴史を振り返った時に、2007年がターニングポイントの1つだったと言われると思っています。

07年はiPhoneが登場した年。ターニングポイントとは、iPhoneがスマートフォンというそれまでの携帯電話にはなかった新しいモバイルを定義付けたということです。

■iPhoneと携帯電話のユーザーインターフェイス

iPhoneが変えたこと、それは画面に直接触れて操作するタッチパネル、ビジネスから遊びまで多種多様なコンテンツが揃うアプリ、インターネットやクラウドを活用したネットワークなど、それまでの携帯電話にはなかった利便性をもたらしてくれました。

初めてiPhoneを手にした時の感動は今でも覚えています。デモ映像とか店頭で使ったことはあったのでイメージは持っていましたが、それでもiPhoneの使い易さはついさっきまで使っていた携帯電話とは全くの別物。久々にワクワクする体験でした。iPhoneでいつでもどこでもネット閲覧/検索、アマゾンやネット通販での注文、アプリも有料版をダウンロードすることもいつの間にか普通になっていました。

ただよくよく考えてみると、こうしたiPhoneでできることの多くはそれまでの携帯電話でもできたことに気づきます。ネットもあったし、ケータイから買いものもできるようになっていた。アプリもiPhone用ほどではないにしろ提供されていた。それでも携帯では全くと言っていいほどこれらは利用していませんでした。

なぜか。当時の携帯電話とiPhoneを比べるとあらためて思うのが、携帯は使いにくかったということ。できることは知ってて一回くらいは試したけどあまり便利とは思いませんでした。ネットにつないでもクリックしたいところに行くには十字キーボタンの↓を何回も押さないといけないし、コンテンツやアプリも十分ではなく、スマホとPCがクラウド経由でシームレスにつながっているようなこともなく携帯だけで独立した存在だった。もちろんこれらの「使い勝手の悪さ」は、携帯しか持っていなかった頃はそこまで不満には思っておらず、iPhoneと比べたからこそわかることです。

■テレビとケータイの類似性

テレビについても、ここまで述べたケータイ⇒スマホへの進化と同じことが起こると思っています。去年くらいから「スマートTV」という表現がよく出てくるようになってきて、実際にGoogle TVなどがアメリカでは売られるようになっています。

でも今現在のスマートテレビは、モバイルで言うとiPhone登場前のブラックベリーあたりの段階なんだと思っています。で、現在主流の薄型テレビはケータイに当たります。ケータイとテレビを比較するととても似ている状況にあることがわかります。

例えばテレビのリモコン。下図はうちにあるテレビリモコンとほぼ同じですが、こんなに機能があるのかと思うほどの多くのボタンがついています。ここには載っていませんが、手元にあるリモコンはフタがパカっと開いて、その下にもさらにボタンがある。ボタンの多くは普段はほとんど使わないし、中には何のためかもよくわかっていないボタンもあったりします。


テレビ画面上に番組表(EPG)が表示され、予約録画は番組表から撮りたい番組を選ぶやり方は便利といえば便利ですが、目的の番組まで移動させるにはリモコンの十字キーボタンを押さないといけません。大抵の場合、何回も押すことに。

最近のデジタル対応のテレビには「アクトビラ」というネット接続サービスがほぼ標準で付いていると思います。アクトビラはソニーやパナソニック、シャープなどの主要メーカー間で統一されたテレビからのネット接続ポータルで、利用するためにはテレビにLANケーブルをつないで簡単な設定をするだけだったりします。つまり、今の多くのテレビにはすでにネットへの接続機能がついています。でも、アクトビラは使ったことがありません。アクトビラの認知率や利用率を正確に把握しているわけではありませんが、多くの人が同じ状況でしょう。なぜ使わないかというと、アクトビラで提供されるコンテンツが少ないのと、リモコン操作が前提の使いにくさがあると思います。スマホとかタブレットでの操作性に慣れてしまうと、リモコンでの操作は一世代前という感じです。

■あるべきスマートTVとは

こうした状況が、今のテレビの状況はiPhone登場前のケータイにそっくりだと思った理由です。この話をGWで会った家族にしてみましたが、リモコンや番組表操作などの使い勝手を「使いにくい」とは特に思っていなく、iPadのテレビ番組表を指でさくさく動かせるタッチパネル操作と比較して、初めて気づいていました。iPhoneでなくてもスマホの操作性と、テレビのリモコンやデータ画面の操作性を比較すると、大きく違うことがイメージできると思います。

だから期待したいのは、テレビにおける「iPhone」の登場です。大量に並んでほとんど使われないボタンばかりのリモコンではなくユーザーインターフェイスが優れ、見たい映像が「いつでも/どこでも」見られる環境、ネットやクラウドとも連携したテレビ。こうした圧倒的に使いやすいテレビです。これら全てが実現できて初めて、「スマート」という言葉が付くに相応しいテレビになると思います。iPhoneの登場後、多くのメーカーがiPhoneのような全く新しいモバイルをリリースし、スマートフォンという言葉が一般的となったような流れです。

真にスマートTVと呼べるプロダクトを出せる最有力候補は、やはりアップルだと思います。リモコンは今のApple TVのような超シンプルなものにしてくる、もしくはSiriを搭載した音声でテレビをコントロールする方式かもしれません。iTunesには様々なジャンルの映像が用意され、iPhoneやiPadとも連携する。iCloudが中心となったネットワーク。

アップルではなくてもいいのですが、本当にスマートテレビと呼べるテレビは今のテレビの延長上にはないことだけは確かだと思います。スマートフォンがケータイとは別物だったように。操作性、コンテンツ、ネットワーク、これらがスマートテレビのキーワードだと思っています。

思えば、日本でテレビのリモコンが本格的に登場したのが1970年代、VHSの録画が1980年代です。この2つはテレビのユーザー体験を大きく変えました。その後、確かに画面はデジタル放送に切り替わったことできれいにはなりましたが、リモコンや録画ほどのインパクトではないと思っています。テレビもそろそろ次のステージに移ってもいい頃ではないかと期待しています。




※参考情報
アクトビラ
Apple TV

投稿日 2012/01/28

重宝してるアプリ zite をヒントに、4層で考えるテレビのパーソナライズ化


Free Image on Pixabay


最近の関心キーワードの1つは、パーソナライズ化です。あなただけにカスタマイズされたサービスです。

去年2011年の後半から、情報収集に新しいサービスを使いだすようになりました。それまでは RSS やツイッターが中心でした。新しいサービスとは具体的には、ziteFlipboard vingow です。特に zite (ザイト) は重宝してます。
投稿日 2011/11/03

TVチェックインサービスIntoNowがもたらす新しいTV視聴体験

ツイッターのタイムラインでは、TVの話題が流れていることがあります。その中にはまさに「今見ている番組」のツイートも見かけます。そんな今見ている番組をツイッターやフェイスブックに共有するためのサービスにIntoNowがあります。このIntoNowに今回新しい機能が追加されたのですが、その内容がちょっと興味深かったので、そのあたりを中心に書いています。

■IntoNowとは

IntoNowというのはiPhone/iPad・Android用アプリです。使い方は簡単で、テレビを見ている時にアプリ上のボタンを押すとアプリがその番組を自動認識します。あとはツイッターやフェイスブックで見ている番組を共有するだけです。(ちなみにIntoNowは今年4月にYahoo!に買収されています)

あいにくIntoNowは日本では使えないので(米国向けサービス)、YouTubeなどで動画を見るくらいしかできないのですが、動画を見る限り本当にボタンを押してから数秒で自動認識し、番組名が表示されています。これは百聞は一見にしかずなので、以下の動画を見るとイメージがつかみやすいです。

IntoNow from Yahoo! for iPad|YouTube

IntoNowがとてもユニークで、かつ個人的に興味深いと思っているのは、TV番組の音声だけで見ている番組を自動認識をする仕組みです。具体的には、アプリが見ている番組の音声を記録し、その音声情報と独自に構築している番組音声情報のデータベースと照合させます。そして、認識させた結果(見ている番組名)をアプリに表示させるのです。

IntoNowがすごいのは、このプロセスをわずか数秒でやることです。つまり、数秒以内にまさに今放送されている番組の音声情報をインデックス化したデータベース構築と、ユーザーのアプリから送られる音声情報をマッチングをしその結果を返すことの2つをしているのです。

■IntoNowに新しく追加されたわくわくする機能

IntoNowのアプリはこれまではスマートフォンだけだったのですが、今回新たにiPad用アプリがリリースされました。これだけ聞くと、スマートフォンでできたことがタブレットでもできるようになったと映りますが、実は今回のリリースではなかなかおもしろい機能が追加されているのです。

実は上の動画の後半でその紹介があるのですが、これまでは主に自動認識をさせるのが何の番組かだけだったのが、その番組に関連する情報までもわかるようになっています。例えば、プロ野球の試合を見ていてIntoNowで認識させると、試合のスコアや経緯の詳細、各選手の成績などの情報や、試合に関するツイート情報がアプリ上に表示されます。もちろん、これまでのスマホ用アプリでできた、ツイッターやフェイスブックへの共有も同じ画面からできます。あるいはここからは想像と期待も込めてですが、ドラマであれば登場している俳優のプロフィールであったり、もしかしたら着ている服やアクセサリーなども簡単に確認ができ、さらには気に入ればその場で買えるなんてこともできるようになるかもしれません。バラエティ番組で考えると、番組内で紹介されたお店、スイーツなどの商品、訪れたことのない名所など、関連する動画や説明などの情報が向こうからやってきてアプリ上に表示されるイメージです。

見ている番組が自動認識され、そして関連する情報までも提供される。この間にユーザーがすることはアプリ上のボタンをたった1回押すだけで、数秒後にはアプリ上に表示されるのです。グーグルでの検索や他の複数のアプリを使う必要などもなく。

IntoNowはTV番組に「チェックイン」するためのアプリです。これまでのチェックインをする目的は、はソーシャルメディアへの共有にあったのではと思いますが、今回のiPad用アプリのリリースで関連する情報を手に入れるためという新たな目的が加わったことになります。TVを見ながら、手元のiPadでボタンを押すだけで関連する情報が手に入り、それが数秒で自動的にできるというのは、今までにないTV視聴体験だと感じます。

■考えられる課題

そんなユーザー体験がIntoNowアプリでできるのはおもしろそうですが、課題もあると思います。大きくは2つで、1つ目がTV音声認識です。スマホやタブレットでTVの音を記録するということは、同時にTV以外の音も拾ってしまいます。家族の会話やペットの鳴き声、家のまわりの音も混じってくるケースも考えられます。その中で番組認識に必要な音だけをどれだけ正確に認識できるか。

2つ目の課題は、音声で番組を認識できたとして、その番組に関連する情報がどれだけ提供できるかだと思います。一口に関連する情報と言っても、ユーザーに必要な情報でなければ逆効果になってしまいます。さらに言えば、同じ関連情報でもユーザーによっては欲しかった内容であり、他のユーザーにとっては不要となることもあり得ます。アプリのボタンを押して関連情報も含めた結果を返すのは長くても10秒ちょっととのことで、これだけ短時間で実現するためには自動化されているはずで、いかにユーザーにとって目利きされた情報が提供できるか。これが2点目の課題になるのではないでしょうか。

■タブレットでIntoNowを使う価値

このように課題はありそうですが、それでも先のイメージ動画を見ると今の自分の環境ではできないテレビの見方ができ、日本でリリースされていないのが残念です。今回のiPadアプリのリリースにより関連情報の提供を開始するわけですが、これはタブレットの画面の大きさをうまく活用した事例とも言えそうです。同じことをiPhoneなどのスマートフォンでやる場合、画面の大きさが十分ではないので、画面をトントンして拡大させたり、スライドさせたりなど、拡大/縮小・移動を繰り返していると、テレビのほうに集中できないような気もします。だからiPadというタブレット用のアプリで実装されていることに価値があるんだと思います。

IntoNowの特徴はTVの音声だけで番組認識と関連情報の提供をする点にあると思いますが、これが実現できるのは高い音声認識技術と、放送されている番組をリアルタイムで独自に収集しデータベース化しているからです。特に番組音声のデータベース化は相当の投資が必要ではと思います。ましてやアメリカ以外の国でサービスを開始するためには、その国のTV番組をゼロから集めないといけません。そんなことを考えると、IntoNowが日本でもリリースされるのはなかなか難しいのかなと、ちょっと残念に思います。


※参考情報

IntoNow - Connect with your friends around the shows you love
IntoNow App Turns iPad into ‘Intelligent’ TV Companion | Gadget Lab | Wired.com
Yahoo Brings Intelligent Social TV App IntoNow To The iPad; Adds Content Feeds And More | TechCrunch
Share your TV habits with Yahoo's IntoNow app, now on the iPad | Digital Media - CNET News
リアルタイムウェブとチェックインの可能性を考える|思考の整理日記
IntoNow from Yahoo! for iPad|YouTube
IntoNow iPhone App Review - AppVee.com|YouTube


投稿日 2011/10/29

高機能一辺倒へのテレビにはあまりワクワクしなくなったので、そろそろ次のテレビに期待したい

先日の24日にスティーブ・ジョブズ公認の伝記が発売されましたが、書かれていた内容で話題を呼んでいたのは、ジョブズがTVへの取り組みに強い意欲を持っていたことです。
Jobs's final plan: an ‘integrated’ Apple TV|The Washington Post

■ジョブズのTVへの熱意

書かれていたことは確かに興味深いものでした。ワシントンポストから引用したものがこちら。
“He very much wanted to do for television sets what he had done for computers, music players, and phones: make them simple and elegant,” Isaacson wrote. (引用者注:Isaacson氏はジョブズ公認伝記の著者)
Isaacson continued: “‘I’d like to create an integrated television set that is completely easy to use,’ he told me. ‘It would be seamlessly synced with all of your devices and with iCloud.’ No longer would users have to fiddle with complex remotes for DVD players and cable channels. ‘It will have the simplest user interface you could imagine. I finally cracked it.’”
これを読むと、ジョブズはコンピューター(Mac)・音楽プレイヤー(iPod)・携帯電話(iPhone)で成し遂げた、シンプルでエレガントなユーザー体験をテレビでも実現したいという熱意を持っていたことがうかがえます。ユーザーが持っているiPhoneやiCloudとも連携させることも構想していたようです。とにかくシンプルで、誰でも使えるようなテレビです。

そして最後にこう言っています。「I finally cracked it(その方法がついにわかった)」。crackというのは、この文脈では「暗号を解読した」みたいなイメージですが、ジョブズがこのように言ったとすればかなり具体的なイメージを描いていたのではないかと思います。ただ、「その方法」がどんな内容なのかは残念ながら、今回のジョブズの伝記には書かれていなかったようです。

■What is "I cracked it" for the next TV?

では、ジョブズはどのようなテレビを思い描いていたのか。上記のジョブズの言葉の中にはTVのリモコンについて不満を抱いていたことがわかります(No longer would users have to fiddle with complex remotes for DVD players and cable channels)。となると少なくともリモコンはもっとシンプルで使いやすいものになるはず。余分なものを徹底的にそぎ落とし、本当に必要なものだけしか残さないジョブズの哲学にも近い考え方です。

とすると、iPodのような本当に必要なボタンだけしかないリモコンになるのでしょうか。確かにそれは十分にあり得ることだと思います。自分の家にあるTVのリモコンを思い浮かべると、本当にたくさんのボタンがあるのに実際に使うボタンは最低限に限られます。中には一度ども押したことのないボタンもある。そういうのを割り切って削っていけば、かなりシンプルなリモコンにできそうなものです。

テレビを操作するのに別にリモコンではなくてもいいのでは、という発想で考えると違ったテレビのコントロールの仕方もでてきます。それがiPhone4Sで搭載された音声認識のSiri。つまり、直接テレビに話すことでコントロールするという考え方です。このSiriについては、実際に海外のブログとかを読んでいると、TVへの統合への期待がかなり高い印象を持ちました。Siriについてはまだ実際に使ったことがなく、YouTubeや使った人の書いたブログとかを読んだ印象ですが、「明日の天気は」「○○に行くにはどう行ったらいい」という質問にも的確に回答するなど、なかなかおもしろそうな機能です。Siriは単に人間の話した言葉を正確に聞き取ることだけではなく、質問やリクエストを理解しその答えを提案するというのは、既存のボイスメモやボイス検索とは大きく異なると思います。テレビにSiriがあれば、「野球が見たい」と言えば野球中継を映してくれ、もしかすると、「ちょっと退屈なので何か笑える番組を見たい」とテレビに話しかければ、ユーザーの好みや過去の視聴履歴などから、その人に合った番組を提案してくれるかもしれません。人によっては漫才などのお笑いかもしれないし、別の人には落語なんてことも。そこには、TV番組欄を見て今の時間に何がやっているかとか、適当にチャンネルを変え見たい番組を探すザッピングなどはもはや不要です。

音声認識のSiri以外だと、アップルは離れたデバイスを動かすのにジェスチャーを使うことを研究しているという話もありました。これも既存のリモコンだけに比べて、テレビの使い勝手を大きく変えてくれるかもしれません。ただ、SiriはすでにiPhone4Sに実装されていることに比べ、こちらはまだ少し先の話になりそうですが。
Apple exploring 3D gestures to control devices from a distance|AppleInsider

■そろそろフレームを変える時

あらためて考えてみると、今私たちの身の回りにあるテレビへの操作は、ほぼ100%リモコンを使っています(リモコン以外だと主電源のON/OFFくらい)。その状況でいろんな機能が次々に追加される一方でリモコン操作という形式が変わらなかった結果、とても使いにくいリモコンになってしまいました。とにかくボタンが多い割に実際に使うボタンは多くなく、わかりにくく使いづらいのです。

ところが多くのテレビメーカーはそこにはあまり注力していなく、より大きく、高画質な美しい画面、あるいはそれ専用の眼鏡を用意し3Dという立体的に見ることができる画面を実現し、ユーザーに提案してきています。これはよりいい機能を追加するという足し算の発想ですが、本当にそこにユーザーのニーズがあるのかは個人的には疑問です。さらなる高性能よりも利便性なのではないでしょうか。

番組配信の仕方もアップルは変えるのかもしれません。iCloudとも連携するということは、単に放送される番組を見るだけではなく、過去の番組も含めて見たい番組を見たい時に、その状況に適切なデバイスで見られるようになるのでしょう。家で見る時はリビングのアップルTVで、自分の部屋のベッドではiPadで、電車で続きを見る時はiPhoneで、といった感じで、アップルが得意とするユーザーに必要以上の設定をさせることなく、全ての端末が一連となって機能する仕組みです。

直感的な操作性に優れたテレビ、自分の好きな番組を好きなように見られるという、ユーザーにとって何が本当に価値があって、それに対して自分たちが提供できることは何か、これを徹底的に考え抜いた結果、ジョブズの頭にはすでにそのテレビは完成していたのではないでしょうか。

■次のテレビへの期待

こんな情報がありました。次のアップルTVは2012年あるいは13年頃にリリースされるというものです。
Apple Could Release TV Set in 2012 [REPORT]|Mashable
Apple Looking to Launch Siri-Enabled Television Set by 2013|MacRumors

アップル以外にも、グーグルとTVの話題も見かけました。方向性はアップルTVと似ており、シンプルにし利便性を高めるというものです。
An Update on Google TV|Google TV
Google TV gaining Android Market, simpler interface with new update|AppleInsider

昨今はTV離れが言われ、実際にそうしたことを示すデータを見かけることもありますが、少なくとも自分の身の回り、家族だったり、ツイッターやフェイスブックを見ていると、テレビの話題で盛り上がっていることが少なくありません。なんだかんだでテレビって、みんな好きなんだなと感じます。そんなテレビでイノベーションが起こるのか、そしてそれが私たちとテレビの関わりを変えてくれるのか。近い未来にその答えがわかる日がやってくるのかもしれません。


※参考情報

Jobs's final plan: an ‘integrated’ Apple TV|The Washington Post
Apple exploring 3D gestures to control devices from a distance|AppleInsider
Apple Could Release TV Set in 2012 [REPORT]|Mashable
Apple Looking to Launch Siri-Enabled Television Set by 2013|MacRumors
An Update on Google TV|Google TV
Google TV gaining Android Market, simpler interface with new update|AppleInsider


投稿日 2011/10/16

TVのながら見とマルチタスク

アメリカ調査会社のニールセンがある調査結果を発表していました。
40% of Tablet and Smartphone Owners Use Them While Watching TV|Nielsen

■TV視聴中のスマホやタブレット使用状況

それによると、タブレットPCを持っている人のうちおよそ4割の人がTVを見ながらタブレットを同時に使用しているそうです。スマートフォン所有者も同様で、一方で、TV視聴中に使ったことがないのは12-13%程度という結果になっています。

引用:40% of Tablet and Smartphone Owners Use Them While Watching TV|Nielsen

なお、数字だけ見るとなかなか興味深い結果が出ているのですが、この調査がどういう人たちから得られたデータなのか(たぶんアメリカ人だとは思いますが)、母数が何人なのか、年齢や男女構成比など、詳細情報が載っていなかったのが残念です。これらの基本情報以外にも、そもそも毎日TVを見る人がどれくらい存在するのか、タブレットやスマホの所有率など、上記の数字を見るにあたっての前提もあるとよかったなと思います。詳細情報は個別での問合せフォームが用意してあるので、そこから入手できるのかもしれませんが。

というわけで、調査結果の数字を見るうえで前提情報が不足していてやや気持ち悪い感は残るのですが、上記グラフの下段の横棒グラフでは、タブレット&スマホ所有者がTVを見ながら実際に何をしているかの結果が出ています。最も多いアクションとして、TV番組やCM中にメールをチェックすることが挙がっており、次いで番組やCMと関係ないサイト等を見ていたり、SNSを使っていたりするようです。

これらに比べて比率としては小さいのですが、番組に関する情報検索が29%、流れたCMの商品についての情報検索が19%となっているのには少し驚きました。特に、後者の見たCMに興味を持ち、詳しい情報を探すのが2割弱もいる。この人たちがその後にどういった行動を取るのか、例えば詳細情報を見ただけで終わるのか、見つかった情報をSNS等でシェアするのか、あるいは記憶に残り実際に買うことになるのかは気になるところです。

■TVのながら見とマルチタスク

ニールセンの調査は、TVを見ながらタブレットやスマホを使うという「マルチタスク」がどれくらいされているかの調査です。自分自身のことを振り返ってみると、ノートブックPCだけだったころは、そういえばTVとPCという状況はそんなにありませんでしたが、TVを見ながらiPhoneやiPadを使うという行動はかなり普通にするようになりました。ただ、正確に言うと手元でiPadを使っている時はTVからの音はあまり頭に入っておらず、実際のところは本当に「マルチタスク」かと言うと、ちょっと疑問だったりもします。感覚的には、TVの内容と関連のあることならまだしも、番組やCMとは無関係な情報をiPhoneやiPadで見ている場合はほぼシングルタスクと言っていい状況に思います。

このマルチタスクについて、Dener大学のJim Taylor博士によると以下の2つが満たされる場合は有効であるとしています。
・どちらか一方のタスクは集中する必要がない
・各タスクを行なうために使う脳の部分が異なること
Technology: Myth of Multitasking|Psychology Today

どういうことかと言うと、例えば、クラシック音楽を聞きながらの読書は効果があるものの、歌詞のある音楽を聞きながらの読書では、どちらも脳の言語処理が必要になるためにマルチタスクにはならないそうです。もっとも、個人的な感覚としては歌詞付きの曲でも歌詞の部分も単なる音として(歌詞の意味をほとんど気にしない状況)聞いている状態では、読書の邪魔にはならないようにも思いますが。

ニールセンの調査結果に話を戻しますが、このマルチタスクへの指摘を踏まえると、番組やCMの最中にTVはついていても実際はメールチェックや無関係なサイト閲覧をされるというのは、一見マルチタスクな状態かもしれませんが、実質的にTVを視聴されていないのと同じ状況です。TV番組制作側やTVCM広告主にとっては望ましい視聴状態ではないことは言うまでもありません。コンテンツ配信側としては、いかに視聴者の興味を引き付けられるか、あるいは、放送内容と関連するフェイスブックやツイッター等のSNSとの連携をいかに設計でき、TVだけで終わらない水平展開が今まで以上に必要になってきそうです。


※参考情報

40% of Tablet and Smartphone Owners Use Them While Watching TV|Nielsen
How People Use Smartphones and Tablets While Watching TV [STUDY]|Mashable
Technology: Myth of Multitasking|Psychology Today
Why Multitasking May Make You Less Productive|Mashable


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

ブログ以外にマーケティングレターを毎週1万字で配信しています。音声配信は Podcast, Spotify, Amazon music, stand.fm からどうぞ。

名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。