2015/08/12

書評「おじいちゃん戦争のことを教えて―孫娘からの質問状」(中條高徳)

日本の学校の歴史教育は、第二次世界大戦とその前後について、詳細に教えられる機会は少ないのが現状です。少なくとも自分自身が習ったのはそうでした。多くの人が同じ状況ではないでしょうか。




日本の近現代史を知るために、興味深かった1冊が「おじいちゃん戦争のことを教えて―孫娘からの質問状」でした。

本書は、おじいちゃんこと 故 中條高徳氏が孫娘に宛てて、自身の戦争への体験や意見/思いを手紙を通して伝えていきます。

孫娘は当時ニューヨークに住む高校生。歴史のクラスで太平洋戦争を勉強するため、おじいちゃんに手紙を送りました。

その手紙は「戦争の捉え方や体験は国によっても違いがあるはず」との学校の歴史教師からの考えを受け、戦争を体験した祖父への孫娘からの質問状でした。
  • おじいちゃんの生まれたころの日本は?
  • アメリカとの戦争は正しかったと思う?
  • 極東軍事裁判について、どう思う?
  • 戦後の社会を見て思うことは?
  • 天皇について、おじいちゃんの考えは?
  • 日本のこれから、そしてアメリカとの関係は?

祖父は自らの人生を振り返り、孫娘の問いに1つ1つ丁寧に応えていきます。

本書を読んで印象深かった指摘を2つ。①自国の国益という視点から歴史を捉えることの大切さ。②歴史の、特に戦争の教訓を活かすために、どう考えればよいか。

国益の観点から歴史を見ることについて、本書から引用です。
大正から昭和のはじめにかけての各国の動向を見ると、だれにでもわかるのは、どの国も自国の国益を最優先にしているということである。国民国家は自国の国民の安全と財産を守るためのシステムなのだから、国益最優先が行動原理となるのは当然なのだ。これはいい悪いの問題ではなく、国際社会に働く力学の現実なのである。その点では日本もアメリカも例外ではない。

だから、二つの国の利益が相反したとき、一方にとっては正義でも、その正義は相手国にとっては正義ではない、ということが起こる。これもまた、当然のことだ。

実はこのようなことは常識以前の常識であって、いわずもがなのことなのだ。それをあえていわなければならないのは、戦後の日本にはあまりにも国益を無視した議論が多いからである。日本の国益にとってどうだったのかという視点を欠いたまま、近現代史を論じることが非常に多い。これでは歴史的事実を認識するのに、リアリティを欠くというものだ。

次に、歴史の教訓を活かすために、どう歴史を捉えればよいかについての引用です。
戦争の正邪は軽々しく判断すべきではないし、またできるものではない。

ただ一つ、確かにいえることは、戦争はあってはならないものだということだ。勝つにしろ負けるにしろ、戦争がもたらすものは悲惨でしかないからだ。

大切なのは、正しかったか悪かったかを考えることではない。結果にとらわれず、その中身を一つひとつ正確に吟味して、いいはいい、悪いは悪いときちんと整理をつけて把握することだ。そうしてこそ、歴史に学び、その教訓を未来に生かすことができる。

あってはならない戦争を、日本とアメリカはやったのだ。その責任は日本とアメリカの双方にある。日本は中国大陸に戦線を拡大して誤った。アメリカは日本を戦争以外の選択肢がないところに追い込んで誤った。双方がそういう過ちを犯したのだということをきちんと認識しなければならない。

ところが、結果からものごとを見てしまいがちな人間の性向で、戦争に関して日本はすべてが悪かった、アメリカはすべてが正しかったと考える傾向が確かにある。特に日本はその傾向が強い。

これではいけない。戦争の教訓を真に生かすことはできない。

景子が誤解しないように再度いっておくが、おじいちゃんは決して戦争を讃えているのでも肯定しているのでもない。きみも感じていると思うが、いまの日本人は過去の戦争については自虐に陥っている。総理大臣すらが自虐的になり、こと戦争に関係することになると「お詫び外交」一辺倒になってしまう。

詫びなければならないものは、素直に詫びなければならない。しかし、日本はすべて悪かったととらえて、ただただペコペコと頭を下げるばかりなのは、歴史を正しく認識しているとはいえない。むしろ、歴史に対する冒瀆である。自分が生まれ育った国に唾するものである。

いうべきことはきちんと主張しなければならない。そうでなければ、国益を損なってしまう。

著者である 故 中條高徳氏は、孫娘からの質問に真摯に応えています。本書の内容は、ある一人の歴史観であり、異にする考え方をする人もいることでしょう。

それでも、本書は戦中/戦後を生きた方の貴重な情報、考え方や歴史の見方を示してくれます。

(当時の)国益の観点から歴史を見ること、日本だけではなく相手国の視点に立ってみる、全てにおいて日本が悪かったのか(アメリカは正しかったのか)ではなく、双方に過ちがあったのではないかという見方。このような視点の重要性に気付きを与えてくれます。

1人でも多くの人に読んでもらいたい1冊です。




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