2017/02/18

「多様性重視」 と 「選択と集中」 をバランスよく循環させよう


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書籍 経営戦略の思考法 で、「選択と集中 - 偶発的多角化戦略の問題点」 という指摘が興味深く読めました。

■ 「多様性」 と 「集中」 は矛盾する

以下は引用です。

「組織内に多様性が許容されなければならない」 「同質的な集団は滅びる」
これらの主張は、組織を運営するときに頻繁に耳にする言葉である。

(中略)

多様性への愛と同質性への忌避の源泉をたどっていくと、おそらく、 「生物進化論」 と 「自由主義・民主主義」 という一見異質な2つの思想にたどり着くことになると思われる。

その思想について詳しく触れることはしないが、「多様性のない生物は滅亡する」 という信念や 「思想の違う人を排斥したり、粛清したりすることのない、自由で平和な政治社会の構築が望ましい」 という信念がわれわれには染みついている。

(中略)

ある程度までこれらをメタファーとして使用して企業を考察することには意義がある。しかし、同時に、企業は生物そのものでもなければ、政治社会そのものでもない。

生物学や政治システムを漠然とした源泉とする 「多様性への愛」 と 「同質性への忌避」 という感覚を、そのまま経営の場面で無反省に用いるのは問題が多いと思われる。多様性は大切であるが、その重視が行きすぎれば、やはり問題が生じるはずである。

「多様性への愛」 のどこが戦略上問題なのかは、比較的簡単に理解可能である。「集中せよ」 という戦略の基本原理のひとつと対立する点が、決定的に問題なのである。

もちろん戦略の議論を突き詰めた上で、やはり多様な技術分野で人材を育成しておくべきだという結論が出る場合もあるだろうから、いつでも対立するわけではない。しかし、多くの場合、「多様性が大事だ」 という主張は分散投資につながり、戦略の観点から見た 「あるべき姿」 から実態を遠ざけることになりやすい。

「組織の多様性」 と 「選択と集中」 はそもそも矛盾するという指摘です。

本書では次に、「平時の多様性と戦時の集中は両立可能か」 という問いが立てられます。引用を続けます。

ここまで考えてくると、「多様性を重視せよ」 という組織運営上の命題と 「集中せよ」 という経営戦略の命題が矛盾するか否かは、平時の多様性を、危機に直面したときの集中へと柔軟に転換できるか否かにかかっているということが分かってくる。

多様性を許容する組織運営を行い続けても、いざというときに研究分野を絞り込み、集中した研究開発に取りかかれるという柔軟性を維持できるのであれば、問題は発生せず、むしろ平時の多様性がリスク分野や広範囲の情報探索機能として生きてくる。

現実としてハードルになるのは、この後で本書の中で指摘されるように、「多様性を許容する平時の組織運営」 と 「いざという戦時の場合には集中できる柔軟性」 は矛盾することです。

なぜなら、多様性が許容される組織では、各人や各組織が多様なため 「危機への認識」 に温度間のズレが生じるからです。ある組織にとっては戦時でも、別の組織には平時に見える状況です。

本書ではこの問題を解決するためには、次のことが書かれています。

組織内でミドルの立場にいる人が経営戦略に関するリテラシーを高く持ち、ミドルの間での情報や危機感を共有するべきであること、またミドルに対して経営トップからの情報発信が大切であることです。

■ 「多様性」 と 「集中」 は循環するという示唆

「組織の多様性」 と 「選択と集中」 は矛盾するのではということを読んだ時、思い出したのは ザ・会社改造 - 340人からグローバル1万人企業へ という本に書かれていた企業組織の理論でした。

「組織活性の循環動態論」 と名付けられた理論です。組織の活性化を維持するためには、2つの対立する状態をいかにバランスよく循環させられるかです。

  • 末端やたら元気:本社から離れている組織でも、若手社員まで含めた一人ひとりが、生き生きと仕事をしている
  • 戦略的束ね:上位が決断する方針や戦略ストーリーを皆が共有し、優先順位を尊重しつつ、外部競合に対して束になって攻めていく

一方で、以下のような弊害を生みます。

  • 「末端やたら元気」 の弊害:組織内で個人が自由に動くので、全社としてのまとまりがなくなっていく。各自が自分たちの組織のスケールに合わせた行動しか取らなくなる。
  • 自分たちが勝手に動くので、組織や事業間の連携が生まれにくい。全社戦略の観点からはバラバラな状態になり、全社の成長が抑制される。

  • 「戦略的束ね」 の弊害:上位者が戦略を上意下達で動かすことが多くなる。現場での裁量がなくなり、組織下部では上を見て行動する習性が強まる。個人の自由な行動が封じ込まれる。

「組織活性の循環動態論」 と 「循環」 という言葉が入っているのは、末端やたら元気という 「放任」 と、戦略的束ねという 「統制」 は、四季のように繰り返されるからです。

1) 末端やたら元気 → 2) 放任の弊害 → 3) 戦略的束ね → 4) 統制の弊害 → 1) 末端やたら元気 → …

「末端やたら元気」 は多様性の重視、「戦略的束ね」 は選択と集中です。組織活性の循環動態論からの示唆は、「多様性」 と 「選択と集中」 は繰り返されるものということです。

多様性のメリットを追求する一方で、多様性が行きすぎれば弊害も生まれます。問題を解消するために選択と集中に舵を切っても、やりすぎれば弊害が出ます。

★  ★  ★

「多様性の重視」 と 「選択と集中」 の循環は、企業組織だけではなく個人にも当てはまります。例えば、自分のキャリアを考え、今までの専門領域以外の仕事に挑戦することが 「多様性の重視」 です。

これだと思うものが見つかった時、あるいは転職直後などの環境が変わり自分の専門分野に特に集中し、成果を出していく状況が 「選択と集中」 です。

今の自分は多様性重視なのか、選択と集中なのかを意識するとよいでしょう。

その時その時で見ると 「多様性の重視」 と 「選択と集中」 はどちらかに偏ります。しかし時間軸を長くとった時に、バランスよく循環できているかです。




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