投稿日 2011/04/09

思いを乗せたゴールとカズダンス


Free Image on Pixabay


2011年3月29日、東日本大震災への復興支援の一環として、日本代表 × J リーグ選抜のチャリティマッチが開催されました。


思いを乗せたゴール


日本代表の遠藤選手のフリーキック、岡崎選手のゴールもよかったですが、なんといってもドラマは後半36分のゴールでしょう。カズこと三浦知良選手のゴールです。





日経新聞のカズのコラム


日本経済新聞のスポーツ面に、三浦選手は 「サッカー人として」 というコラムを連載しています。このコラムは毎回楽しみにしている記事の1つです (スポーツ面では他に野球評論家の豊田泰光氏の 「チェンジアップ」 もおもしろいです) 。
投稿日 2011/04/03

Googleは「+1」でソーシャル検索を実現できるのか?

グーグルがアメリカ時間の3月30日に、グーグル検索結果のページで「+1」(プラスワン)ボタンの表示を開始したと発表しました。
+1’s: the right recommendations right when you want them—in your search results | Official Google Blog

+1の表示イメージ

出所:Official Google Blogから引用

今回のエントリーでは、グーグルの「+1」の仕組みと、自分は+1をどう思っているかを中心に書いています。

■「+1」の仕組み

ユーザーが気に入ったページや良いと思った広告を「+1」ボタンで推薦し、友人に対してより良い検索結果、検索連動広告(AdWords)を提供できるというものです。+1の使用イメージは「Google Inside AdWords」ブログでの掲載記事にあった説明イメージがわかりやすいです。(引用:The +1 button & AdWords | Google Inside AdWords

1.グーグルの検索結果に表示される「+1」ボタン


 2.「+1」クリック後 (青くなる)


3.友人の検索結果 (友人Brianが「+1」をクリックしたことがわかる)


ボタンのイメージとしてはFacebookの「いいね!」ボタン、mixiの「mixiチェック」と同じような印象です。グーグルは「+1」ボタンにより、これまでの独自アルゴリズムに基づく検索結果表示とは異なった、自分の友人のおすすめが反映されるというソーシャル検索をリリースしたのです。

今のところ(11年4月3日時点)ではアメリカのみのリリースですが、+1を使用するためにはグーグルアカウントでログインをした状態で検索を行う必要があります。現時点でグーグルが認識するユーザーの友人というのは、グーグルアカウントに関連付けられている友人・知人のようで、GmailあるいはGoogle Talkのチャットリストに登録されている人々、Googleコンタクトに登録されている人々、Google ReaderとGoogle Buzzでフォローしている人々に限定されているとのこと。(参考:Googleが「+1」ボタン発表、Facebookの「いいね!」に似たソーシャル検索|INTERNET Watch

それでは、グーグルの+1は、ソーシャル検索として普及するのでしょうか。個人的には様子見か、やや少し懐疑的に見ています。以下、その理由を3つ書いています。

■理由1:ソーシャルグラフ

ソーシャル検索で重要な要素は自分が持っているソーシャルグラフ、つまり、(ネット上での)人間関係です。既存のグーグルの検索アルゴリズムであれば、誰が検索をしても返ってくる結果は変わりません。自分が知りたい情報が見つかるかは、検索するキーワードの選び方がポイントになります(もちろん、これだけではないですが)。一方のソーシャル検索では、検索キーワードに加え、自分の友人がどういったサイトをおすすめしているかによって、検索結果が異なります。

現在のところ、+1に反映されるソーシャルグラフはGoogleアカウントに限定されています。個人的には、SNSやツイッターのほうが充実しており、今のGoogleアカウントに紐づくソーシャルグラフでは少し物足りないように感じます。ただ、この点はグーグルも取り組んでいくとしており、公式ブログではツイッターなどとも連携を目指すと言っています。ツイッターのソーシャルグラフがグーグルの検索結果に加われば、ソーシャル検索の精度は高まるかもしれません。

■理由2:ユーザーインターフェイス

2つ目の理由は、ユーザーが「+1」ボタンをクリックする時の使いやすさ(ユーザーインターフェイス)に関するものです。+1を自分が使うイメージを具体的に想像してみると、(1)グーグルで何かを検索する ⇒(2)知りたかった情報が掲載されたサイトが見つかる ⇒(3)そのサイトからグーグル検索結果に戻って「+1」ボタンをクリック、となります。

フェイスブックの「いいね!」ボタン(あるいはmixiチェック)と比較すると違いが明らかになりますが、「いいね!」はニュースサイトやHP上に設置されているのに対し、+1は現時点ではグーグルの検索結果ページに設置してあります。故に、上記(3)のように、一回戻って「+1」をクリックする必要があり、これは自分であれば、一回戻るだけとはいえちょっと面倒な流れです。

もっとも、同じくグーグル公式ブログによれば、グーグル検索結果ページ以外にも「+1」ボタンを展開していく姿勢を出しているので、「+1」ボタン設置のブラグインが提供されるのは時間の問題だとは思います。ただ気になるのは、今でも多くのページですでに「つぶやく」「いいね!」「はてブ」・・・などのソーシャル系のボタンが複数設置されていて、さらに「+1」も増えることになる点です。

■理由3:「+1」のユーザーメリット

3つ目の理由は、+1をクリックするユーザーのメリットに関してです。3つの理由のうち、この3つ目が最も気になる点です。では、+1とフェイスブックの「いいね!」とで比較してみます。

「いいね!」ボタンを押すと、フェイスブック上の友人のニュースフィードや自分のウォールに『○○さんがリンクについて「いいね!」と言っています。』と表示されます。自分の「いいね!」情報が友人にリアルタイムで共有ができます。

翻ってグーグルの「+1」ボタン。+1をクリックすると、その結果が反映されるのはグーグルの検索結果ページです。逆に言えば、自分の友人がそのページに含まれるキーワードをグーグルで検索するまでは、自分の「+1」の情報は共有できないのです。

フェイスブックの「いいね!」やツイッターのRTと、グーグルの+1では、そもそもの設計思想が違うように思います。つまり、いいね!やRTは友人同士で共有するためのツール、+1は検索精度を向上させる・検索連動型広告の品質を高めるためのツールです。

フェイスブックの「いいね!」、あるいはツイッターのRTもそうですが、なぜわざわざ自分がこの手間を1つ行うかというと、自分が共感したモノ・コトを簡単に発信して共有したい気持ちからだと思います。これがインセンティブ。しかし、グーグルの「+1」では、共有されるのは友達がグーグルで検索をしたタイミングに限定されるという条件が付きます。なので、今の時点での+1には、「いいね!」やRTほどのユーザーメリットが直観的にはないような気がしました。(長い目で見れば、多くの人が+1を使用すればグーグルの検索精度は全体的に向上するユーザーメリットはあるのですが)

■最強はGoogle+Facebook?

検索にソーシャル性を組み合わせるのは、グーグルにとっては一大プロジェクトだと思います。グーグルの検索結果はアルゴリズムによる機械的なものでしたが、ここにソーシャルというこれまでとは異なる概念が入り込むからです。グーグルという巨人がその歩む方向を変えつつあるようにも感じます。その意味では今後が楽しみです。

自分が信頼のおける人からの情報は有益だと感じてしまうことからも、ソーシャル検索は今後の有望な領域だと思います。実際に、すでにマイクロソフトとフェイスブックはタッグを組み、マイクロソフトの検索サービスBingにフェイスブックの「いいね!」情報を反映させる取り組みを進めています。個人的には、この記事が指摘するように、Google+Facebookと組んでくれるのが、ユーザー側からするとありがたいのですが。
ブラウザー拡張機能「+Like」があればGoogle +1は不要?|Tech Crunch

いずれにせよ、グーグルの+1についてはもう少し様子を見るとともに、今後も注目しておきたいです。


※参考情報

「+1」(プラスワン)|Google
+1’s: the right recommendations right when you want them—in your search results | Official Google Blog
The +1 button & AdWords | Google Inside AdWords
Googleが「+1」ボタン発表、Facebookの「いいね!」に似たソーシャル検索|INTERNET Watch
ブラウザー拡張機能「+Like」があればGoogle +1は不要?|Tech Crunch


投稿日 2011/03/31

「商売の日本史」から考えるヤマヒコの復興とウミヒコの復興

歴史を学ぶ意義はどこにあるのでしょうか。このことをあらためて考えさせてくれた本が『ビジネスに役立つ「商売の日本史」講義 (PHPビジネス新書)』でした。本書にはこのように書いてあります。「歴史を学ぶ意味は、過去の人々の営みから今に役立つさまざまな教訓を引き出すこと」(p.102)。あらためて思ったのは、歴史をただ単に過去の出来事で終わらせてしまうのは、歴史の価値を半分も享受できていないのではないかということです。

■経済から見る新しい歴史観

この本は、書かれている視点がとてもユニークです。だからおもしろかった。どうユニークかと言うと、日本史をお金の動き、すなわち経済という切り口で書かれています。

思い返してみると、小学校から歴史の授業が始まり、中学、高校と日本史を学びましたが、教科書や授業で習ったのは、ほぼ政治史という観点での歴史だったことに気づきます。例えば、鎌倉幕府から室町幕府への流れは、歴史で教わったのは、足利尊氏らが反乱を起こし、鎌倉幕府と時の政権を握っていた北条氏を滅ぼして室町幕府を開いたということでした。武力と選挙という手段は違えど、これは現代で言う「政権交代」です。実際はここに経済も関連していたはずですが、そんな話は習った記憶があまりなく、少なくとも印象に残っていません。

だからこの本を読むと、色々と新しい歴史の見方を与えてくれます。詳しくは本書に譲りますが、印象深かったものを1つだけ紹介しておきます。武士として初めて律令の最高位である太政大臣となった平清盛の話です。

平清盛は現代にも通じることを先駆的に行ないました。瀬戸内海を支配し、物流とそこでのマネーサプライを握ったのです。貿易のための港を整備し、当時の中国・宋との日宋貿易から多額の富を生み出します。今っぽく言えば、瀬戸内海というプラットフォームを構築したのが平清盛でした。平家は、貿易から様々なものを輸入しました。宋銭、陶磁器、薬品、香料、書籍など。これらが日本の文化に与えた影響は大きかったはずです。

中世に琵琶法師が語り継いだ「平家物語」で、その中の源平の戦いでは平清盛は悪役として語られています。多くの人の印象も実際にそうでしょう。しかし、このように「経済」という視点で見ると、平清盛の印象はがらりと変わりました。

■ヤマヒコとウミヒコ

さて、本書のキーワードに、「ヤマヒコ」と「ウミヒコ」があります。古事記や日本書紀に登場する兄弟の神さまの名前で、2人は対照的な性格をしています。本書では、ヤマヒコを内向きのエネルギーの総称、ウミヒコを外向きのエネルギーの総称とし、日本史を大きな流れで見ると、時代時代でヤマヒコの性格が強い日本、ウミヒコの性格が強い日本と、それぞれの特徴が交互にスイングするかのように現代に至るまで歴史を重ねてきたことが書かれています。

ヤマヒコとウミヒコの時代・特徴を本書から引用すると、以下のようになります。

出所:ビジネスに役立つ「商売の日本史」講義 (PHPビジネス新書)から引用

日本人は、その時代ごとにヤマヒコとウミヒコそれぞれの特徴を持ちながら、時に内向きを志向し日本独自の文化や内需を盛り上げ、またある時は外向きな志向から自らの命の危険を顧みず海を越え異国の地を目指し、様々な文化・知見を持ち帰ったのです。

■著者はヤマヒコからウミヒコに変わると予想しているが

それでは、現在はヤマヒコとウミヒコのどちらの要素が強いのでしょうか。本書で述べられていたのは、昭和から平成になった現在の特徴はヤマヒコが強いということでしたが、著者の主張として、今後はウミヒコの側面がもっと出てくる・出てきてほしいというものでした。ウミヒコが強くなる時代は中国の影響が強いと述べられていましたが、確かに、昨年はGDPで中国が日本を抜いたことがほぼ確実視されるなど、以前にも増して政治・経済の両方で中国の影響を感じます。

ところが、です。2011年3月11日、マグニチュード9.0という日本観測史上最大の地震が発生しました。地震だけではなく、津波、福島原発、電力エネルギー不足と、日本だけでなく世界中に大きな影響を与えています。

そして今後の課題ですが、短期的な課題は被災地での救援活動や原発からの放射線・放射線物質漏れを封じ込めること、中期的には計画停電や節電による電力供給不足をどうしのぐか(特に今年の夏や冬)、あるいは復興への財源をいかに確保するか(補正予算、国債?復興税?寄付への税額控除?)、長期的には抜本的なエネルギー供給の検討(原発・新エネルギー・周波数の問題など)と被災地の復興です。

■ヤマヒコの復興とウミヒコの復興

報道などで震災後の現地の状況を見ると、家などの建築物、道路や堤防、水道、電気・ガスなどの社会基盤から破壊されてしまっています。ということは、復興はインフラレベルでの整備が必要になり、これはつまりは内需のエネルギーが強いヤマヒコの要素です。

一方の関東より西の西日本はどうでしょうか。これまで政治・経済の中心は東京が担ってきましたが、最近では一部でこの一極集中の是非を問うような議論も見られます。それはともかく、企業によってはすでに本社機能の一部を西日本に移転させているところもあるようです。また、震災前の状況を思い返してみると、名古屋では減税を掲げる河村市長が再選、大村知事が当選し、大阪でも橋下知事が大阪都構想を提唱しています。関西などの西日本が元気になり、そして、中国が今後少なくとも数年は2桁に近い経済成長を続けることを考えると、中国の影響をこれまで以上に強く受けるようになります。これはまさに、ウミヒコの要素です。

日本の現状を見れば、大変な状況です。復興にはそれなりの時間がかかるはずで、今後は上記のように、関東や東北地方ではインフラ整備というヤマヒコ的な復興が、中部や西日本ではそれぞれが発展し、外需も積極的に取り込むようなウミヒコ的な活動が必要です。特に、関東や東北が大変な時だからこそ、中部・関西・九州などではこれまで以上の経済活動から日本を盛り上げることが重要です。

まとめると、これからの日本ではヤマヒコの復興とウミヒコの復興の両方が必要になり、それこそ私たち日本人の1人1人が日本を引っ張っていく気持ちが大切になってくるのではないでしょうか。

海の向こうの歴史的な大統領が、当時こんなフレーズで国民と自らをも鼓舞していました。ちょっと今さらな感じもしますが、今こそ私たち自身に対しても使ってもいいのかもしれません。

Yes We Can.



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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

ブログ以外にマーケティングレターを毎週1万字で配信しています。音声配信は Podcast, Spotify, Amazon music, stand.fm からどうぞ。

名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。