2017/09/09

書評: 米中もし戦わば - 戦争の地政学 (ピーター・ナヴァロ)


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米中もし戦わば - 戦争の地政学 という本をご紹介します。



本書の内容


本書を一言で表現すれば、アメリカの視点での 「現実的中国脅威論」 です。

アメリカの立場で、そもそも米中戦争は起こり得るのか、中国はどの程度の軍事力を持つのか、米中戦争があるとすればどのような戦争になるか等、様々な分析がされています。

読者に米中戦争が起こると感情的に煽るのではなく、データや情報をもとに冷静に論理的に書かれています。

本書が書かれた目的は、どうすればアメリカと中国の戦争を避けられるかを考えるためです。


本書の論点


本書に書かれた論点は、次の通りです。

  • 米中戦争が起きる可能性はどの程度か
  • 中国は何を狙っているのか (歴史的な背景も含めて)
  • 中国の保有する軍事力
  • 米中戦争が起こるとしたらきっかけは何か
  • どんな戦争になるか
  • 戦争はどのような終わり方をするか
  • 戦争を回避する余地、方法はあるのか


米中戦争が起こる可能性


最初の問いは、米中戦争は近い将来に起こるかどうかです。本書の見解は、起こる可能性は一定程度あるとします。

アメリカと中国のそれぞれの歴史を振り返ると、国として暴力的であり、アメリカも中国も現在は核武装をした軍事大国です。米中での経済交流は拡大しているものの、軍事的にはにらみ合いをしている状態です。

本書は、米中戦争は現実的に起こり得るという認識を前提で進んでいきます。


台頭する中国が安全保障の脅威に


中国はアメリカとだけではなく、周辺国との軍事的なあつれきを強めています。

陸だけではなく海と空の領有権、海洋権益の拡大を目指しています。これまでの周辺国とのバランスが崩れ、中国は隣国との顕在的・潜在的な紛争を抱えています。

本書では中国の軍事力の拡大状況も指摘されています。弾道ミサイル・巡航ミサイルの保有数が増加しているなどです。一方で、アメリカの軍事力は相対的に弱まっています。

急速に台頭する中国は、アメリカだけではなく日本も含めたアジアにとって、深刻な自国の安全保障の脅威になっているのです。


米中戦争を避けるために


本書は、いたずらに中国の脅威を煽るものではありません。そもそもの書かれた目的である、アメリカと中国との戦争をどうすれば回避できるかを読者に問いかける内容です。米中間には問題があり、問題を解決するためには、戦争よりもましな方法があることを提示します。

米中戦争を避けるために、アメリカと中国がお互いに理解することの重要性が指摘されています。真実は何か、米中戦争が発生する可能性、きっかけや戦争までのプロセス、戦争が起こってしまった後の両国での壊滅的な被害規模への正しいです。


日本にとって何を意味するのか


本書には、米中戦争が現実的に起こる可能性、中国の野心的な拡大志向、現時点で保有する軍事力などが、詳細な分析に基づいて書かれています。

いずれもアメリカにとって、見て見ぬふりをしてはいけない中国の不都合な真実です。アメリカだけではなく、周辺アジア国や私たち日本にとっても蓋をしてはいけない中国の姿です。

アメリカから見た現実的な中国脅威論は、私たち日本人にとって、何を意味するのでしょうか。

この本から教訓として得られることは、「もしそうならば」 という what if を常に考えておくことです。そして、if を起こさないようにするには何ができるかを自問し、対策を講じることの重要性です。

不都合な真実を見て見ぬふりをし無いものとするのではなく、正面から見据え、対策や解決策を考えることです。想定外のままにしておくのではなく、想定しておくことです。

本書は、目の前の兆候や情報が自分たちにとって何を意味しているか、どのように活かすかの視点で興味深く読めます。

この本の原題は、What China’s militarism means for the world です。



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多田 翼 (書いた人)