2017/09/21

書評: ブロックチェーン・レボリューション - ビットコインを支える技術はどのようにビジネスと経済、そして世界を変えるのか (ドン・タプスコット / アレックス・タプスコット)


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ブロックチェーン・レボリューション - ビットコインを支える技術はどのようにビジネスと経済、そして世界を変えるのか という本をご紹介します。



本書の内容


以下は本書の内容紹介からの引用です。

世界経済に将来、最も大きなインパクトを与える技術が誕生した。
人工知能でも、自動運転車でもない。
IoT でも、太陽エネルギーでもない。
それは、「ブロックチェーン」 と呼ばれている。

インターネットに比肩する発明によって引き起こされる革命の全貌が、多数のキーマンや企業への取材によって明かされる必読の1冊。

この本では、ブロックチェーンとは何かが最初に説明され、ブロックチェーンが社会をどう変えるかを様々な業界や分野で考察しています。

具体的には、金融、企業やビジネスモデル (例として Airbnb や Uber にブロックチェーンを組み合わせるとどうなるか) 、IoT 、選挙・法律・政治、音楽やアートの著作権、教育です。

ブロックチェーンの可能性や将来をポジティブに捉えるだけではなく、現時点やこの先に起こるであろう問題点も様々な角度から指摘されています。ブロックチェーンには光と闇の両方があり、ブロックチェーンの理解を助けてくれます。


ブロックチェーンは 「価値とお金のインターネット」


本書の冒頭に、従来のインターネットは 「情報のインターネット」 に対して、ブロックチェーンは 「価値とお金のインターネット」 だと説明されています。

インターネットでやりとりをされているのは情報で、基本的にはコピーされた情報でしかないという見方です。ネット上でコピーされては困るもの、端的にはお金や資産をネットを介してやりとりする場合は、本人確認の徹底やコピーされないような仕組みを用意する必要があります。

ブロックチェーンが 「価値とお金のインターネット」 と言われるのは、ブロックチェーンはこれを解決してくれると期待されているからです。本書の最後の解説では、 「インターネットのポテンシャルは、むしろブロックチェーンという技術・コンセプトによって飛躍的に拡大・拡張することができる」 と書かれています。


取引情報と本人確認が分離される意味


本書に書かれていたことで興味深いと思ったのは、ブロックチェーンを使えば、取引相手そのものを信用しなくても、取引に関する記録やデータだけを信用して取引を行える仕組みができることです。

ここで言う取引とは、情報と情報のやりとりや価値 (例: お金) のやりとりです。例えば、A さんから B さんへ100万円の価値を渡す (支払う) などの取引です。

ブロックチェーンがないと、取引情報の正しさを本人確認によって正しいと判断します。氏名・性別・年齢・住所・公的な存在証明などによって本人確認をします。

ブロックチェーンは取引情報と本人確認を切り離します。これが意味するのは、個人情報を必要以上に提供したり使われることなく、取引が成立するということです。

取引情報のみブロックチェーン内に記録されパブリックに公開されますが、誰と誰がその取引をしたかについて、取引に必要な情報以上の個人情報は公開されません。


ブロックチェーンは IoT に不可欠


上記で見たように、ブロックチェーンは、お金や情報の取引が成立するための本人確認を不要にします。

本書に書かれていたことで印象的だったのは、「ブロックチェーンはモノのインターネット (IoT) に命を吹き込む」 でした。

モノ同士がネットワークにつながりブロックチェーンが組み込まれていれば、モノとモノの取引 (情報や価値のやりとり) は、お互いが取引の相手を知らなくても取引情報さえ正しいと判断できれば取引は成立します。

これが意味することは、モノ同士が人間の介入なしに取引ができるということです。

そして、モノ同士で直接、情報やお金などの価値をやりとりできると、あらゆる取引はモノが勝手に実行するという自動化ができます。

本書には、IoT とブロックチェーンが組み合わさればどうなるかの例が掲載されています。以下で2つご紹介します。


自動車 × ブロックチェーン


交通は、自動運転車にブロックチェーンが実装されネットワーク化されていれば、自動車同士が情報をやりとりし、交通の全体最適をします。

交通量や工事状況なども含めた道路情報と、自動車間の情報のやりとりによって、自動的に目的地への最短経路を判断し、安全に運行してくれます。

物流も自動化されます。税関などの手続きもモノ同士で自動処理し、人が処理するよりも短時間で済みます。


書類 × ブロックチェーン


書類を電子化しブロックチェーンに記録されていれば、従来は人がやっていた書類内容の確認が不要になります。人の確認スピードというボトルネックがなくなります。

書類とモノがつながれば、例えば、契約内容が履行されていない、条件を満たしていない場合は利用を自動で停止することができます。具体的には、免許証や車検の有効期限が切れている情報がモノ同士でのやりとりから発見されれば、自動車はエンジンがかからないよう自動で制御されます。


最後に


本書の最後に、次のように書かれています。該当箇所を引用します。

インターネット初期と同じように、ブロックチェーン革命は既存のビジネスモデルをひっくり返し、業界を変革するという使命を負っている。

でも、革命はそこで終わらない。ブロックチェーン技術はすごい速さで、僕たちを新たな時代へと運んでいく。世界はオープンで、豊かで、分散的で、真にグローバルな時代へと突入するのだ。

2017年現在は、日本ではブロックチェーンそのものよりも、ビットコインが話題になり、ブロックチェーンはビットコインの文脈で取り上げられることが多い状況です。しかし、ブロックチェーンを単にビットコインのための要素としか見ないと、ブロックチェーンの本質や可能性を過小評価してしまいます。

この本を読んでわかるのは、ブロックチェーンが社会をどう変えるのかというポジティブな可能性と、ブロックチェーンの課題やネガティブに利用されるマイナス面です。

ブロックチェーンとは要するに何かを理解するためにおすすめの1冊です。

なお、本書の原題は 「Blockchain Revolution: How the Technology Behind Bitcoin Is Changing Money, Business, and the World」 です。日本語版の本は 「ブロックチェーン・レボリューション - ビットコインを支える技術はどのようにビジネスと経済、そして世界を変えるのか」 で、忠実に訳されています。



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多田 翼 (書いた人)


外資系 IT 会社にてマーケティングリサーチ マネージャー (LinkedIn) 。

1981年 (昭和56年) 生まれ。名古屋出身。学生時代は京都。家族4人で東京23区内に在住、2人の子どもの父親。気分転換は毎朝 8km のランニングとピアノ。

書いている内容は、所属組織や会社の正式見解ではなく個人の見解です。