2012/09/15

「仕組み」から考える雑誌のビジネスモデルいろいろ




ニッセンという通販サービスがあります。定期的にカタログが送られてきます。送付頻度は季節ごとなので、約3ヵ月に1度のペースです。

カタログは男性用(メンズニッセン)、女性用は細かくカテゴリーが分かれており、衣服以外にも便利グッズのカタログもあり、充実した内容です。

カタログは基本的に無料です。カタログとともに例えば化粧品や健康食品の広告も入っています。一部には広告による収益も入っているかもしれませんが、ニッセン会員になれば「秋号」「冬号」とタダで送られてくる仕組みです。

私の家に送られてくるカタログはざっと目を通して捨ててしまうのですが、ファッションの流行りや傾向もわかります。グッズは「おもしろいアイデアだな」と思うものもあり、見ているだけでもおもしろいです。

■ ニッセンのビジネスモデル

カタログだけを見ると、いつも複数冊で送られ、掲載量と全てカラー印刷であることを考えると、カタログ製造/編集、送付、モデル人の件費も含めるとコストがかかっています。会員に無料で配るということは、カタログだけに関しては赤字ということになります。

赤字をどこで補っているかというと、通販サービスです。細かい損益分布はわかりませんが、カタログ配布者(会員数)を100とすると、そのうち通販購入者が ○% 、うち ○% がよく買ってくれる優良顧客(季節ごとに買ってくれるリピーターとか)、という構図で、カタログや通販など事業全体で見ると収益が出せるビジネスモデルになっています。

このニッセンのビジネスモデルを一般化すると、コンテンツ/サービスを無料で配布し、一部のユーザーや会員から売上を稼ぐフリーミアムモデルです。

このモデルは身の回りでも多くあります。例えば無料アプリです。機能がグレードアップすると有料になります。試供品をタダで配り気に入ってもらえれば、あらためて商品を買ってもらう化粧品もそうです。ソーシャルゲームも基本無料で、(有料アイテムを買ってでも遊びたい)一部ユーザーからの課金モデルで成り立っています。他には iTunes というプラットフォームサービスを無料で配り、音楽や映像コンテンツを有料、iPod などのデバイスを売るアップルの例も同じです。

■ 週刊少年ジャンプのビジネスモデル

雑誌のビジネスモデルは他にもいくつかあります。

週刊少年ジャンプとかマガジンです。ジャンプは月曜、マガジンは水曜に発売されます。250円程度で複数の連載が掲載されており、ボリュームのわりに価格は安いです。必ずしも全ての連載が好きなマンガではなく、漫画の単行本が1冊500円前後くらいを考えると安いです。

なぜ安いのかを考えると、あえてこの価格にしているはずで、考え方としてはニッセンの無料カタログモデルに近いです。週刊誌を安く提供する代わりに、他で収益を得ています。

他とは何でしょうか。マンガの単行本です。単行本の利益率はそれなりにあるのではないでしょうか。なぜなら、単行本の内容は基本的にすでにジャンプとかマガジンで掲載されたものを10話分とか集めたものだからです。

このように考えると、ジャンプやマガジンの週刊誌は単行本を売るための「試供品」に近い位置づけとなります。別の言い方をすると、テストマーケティングとも表現できます。

子供のころ、ジャンプとかマガジンを毎週読んでいて不思議だったのが、自分がおもしろいと思っていて楽しみにしていた連載がだんだんと掲載が後ろの方になっていき、連載終了になる一方で、そこまでとおもしろいと思わない連載がずっと続く、ということでした。

マンガにより連載期間が違うのは単純には人気の違いで、読者全体の人気と自分の好き嫌いがちょっとずれていたわけですが、出版社側からすると人気のマンガを残し、そうではないものは早めに打ち切りというやり方です。

収益はジャンプではなくジャンプコミックスという単行本で上げたいので、人気のあるマンガを長期で単行本化できればそだけ売上が見込めます。つまり、週刊誌である程度の単行本の売れ行きを予想できるのです。もっとも週刊誌の各マンガの人気バロメーターは読者アンケートによるところが大きいのではないかとも思え、アンケート送る読者の人気だけで連載を続けるかどうかが決まるとすると、それはそれでどうかなとも思います。

■ 期待したいこれからの雑誌のビジネスモデル

ジャンプとかマガジンを電車内のサラリーマンが読んでいる光景を見かけます。子どもの頃からずっと毎週読んでいると思うので、顧客としては貴重です。ライフタイムバリュー(顧客生涯価値)をもたらしてます。

ジャンプやマガジンなどの週刊誌は定期購読させる仕組みがビジネス誌と比べると弱いように見えます。

確かにビジネス雑誌と比較するとボリュームがあるので、配送コストはかかるのかもしれません。であれば電子版を有料モデルとして毎回自動課金にするとか、専用アプリを作って配信の仕組みを構築できればいいのにと思います。

今のスマホのアプリだと、有料アプリでもダウンロード時に1回課金されるだけなのが主流なので、アプリそのものというよりもアプリは無料にして、毎回配信されるコンテンツのほうに課金したいところです。考え方はアップルの iTunes と同じ仕組みです。

電子書籍は、活字の本だけではなく、漫画だったり雑誌など、幅広いところでビジネスモデルとして成り立ち、デバイス、プラットフォーム、コンテンツの各レイヤーがうまく連携し、かつ読者にとって楽しむ可能性が広がることを期待しています。


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多田 翼 (書いた人)