商品やサービスの 「安さ」 だけで勝負していないでしょうか?
低価格戦略は、単に値下げするのではなく仕組みが必要になります。
今回は、ユニークなファーストステーキ店 「感動の肉と米」 を取り上げ、低価格を実現する背後にある低コストの仕組みと、それがどのようにお客さんの満足につながるかを紐解いていきます。
ファーストステーキ店
焼き肉チェーンを展開する株式会社あみやき亭が、ファーストステーキ店に力を入れています。
出典: 名古屋情報通
たとえば、1000円でステーキセットを楽しめるお店の 「感動の肉と米」 では、ボリュームのあるステーキが低価格で提供されます。
「肉は臭みがなくておいしい。とても安いので近くの職場から通っている」 。2023年12月12日の昼、格安ステーキ店 「感動の肉と米 金山店」 (名古屋市) で1000円のハラミステーキセットを平らげた30代男性は満足げに話した。店内は会社員の一人客や学生のグループなどでにぎわっていた。
感動の肉と米では160グラムのロースやハラミステーキと、ごはんや味噌汁、付け合わせのセットを1000円で提供する。ごはんや味噌汁はおかわり自由で、塩辛などの付け合わせは取り放題だ。20代女性は 「毎回キムチと牛しぐれをのせたたまごかけごはんで締める」 と話すように、肉以外の満足度も高い。
学べること
ではあみやき亭の 「感動の肉と米」 から、学べることを掘り下げていきましょう。
今回の事例からは、「低価格を実現する仕組みづくりと価値提供」 に学びがあります。
低コストを実現する仕組み
あみやき亭は、高いコスパのステーキセットを提供することで人気を呼んでいますが、この低価格を支えるのは、全社的に取り組んだ 「低コストの仕組み」 です。
あみやき亭が低コストにできる要因を整理すると、
- 店舗の徹底した省人化 (セルフサービスを導入し店員は厨房に集中)
- 肉の仕入れ (トヨタのジャストインタイム方式を応用)
- 肉の加工ノウハウ
- 余った肉は飲食店とは別の直売所で販売
順番に補足をすると、まず店舗の運営において、徹底した省人化を実施しています。セルフサービスの導入により、店員スタッフは厨房業務に集中することができ、効率的な運営になっています。
肉などの食材の仕入れでは、トヨタのジャストインタイム方式を応用しています。必要な分だけを必要なタイミングで仕入れることで、在庫コストが抑えられます。
また、肉の加工に関するノウハウもコスト削減に貢献します。そして、飲食店でのメニューで使いきれず余った肉は別の直売所で販売し、廃棄コストを減らす工夫を徹底しています。
では低コストについて、もう少し掘り下げて考察を続けます。
低コストと低価格
ただ値段を下げるのは利益を圧迫するだけであり、赤字覚悟なら誰でもできることです。
低価格が健全にできるのは 「低コストの仕組み」 があってこそです。本当に知恵がいるのは低コストを実現する全社的な仕組みを構築するところです。
重要なのは、低価格と低コストを意識して分けて考えることにあります。先に低コストへの組織的な仕組み化があって、そうしてはじめて低価格でもビジネスが持続的に存続できる状況にできます。
価値の源泉
マーケティングの視点でもう1つ大事なのは、低コストの仕組みとは、お客さんの見えないところでの 「価値の源泉」 だということです。
お客さんにとっての価値は、低コストの仕組みそのものではなく、直接的な恩恵として得られる 「低価格でお財布に優しいメニューになっていること」 です。商品やサービスをお買い得の値段で手に入るところにお客さんにとってのうれしさがあるわけです。
お客さんから見えないところで仕組みをつくって価値の源を磨き、お客さんへの価値提供につなげる。ここにビジネスの勘所があります。
まとめ
今回は、あみやき亭のファーストステーキ店 「感動の肉と米」 から学べることを見てきました。
最後にポイントをまとめておきます。
- ただ値段を下げるのは利益を圧迫するだけになる。低価格が実現できるのは、低コストの仕組みがあってこそ
- 低コストを組織的な仕組みにすることで、はじめて低価格でもビジネスが持続的に存続できる
- 低コストの仕組みとはお客さんからは見えない 「価値の源泉」 。直接的な恩恵は低価格であり、お客さんにとっての価値になり満足につながる
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