2014/05/18

書評「ツカむ!話術」

お笑いコンビのパックンマックンのパックンによる、コミュニケーション術について書かれた「ツカむ!話術」

お笑いタレントの書いた本ということで、もっと軽い本かと思っていましたが、どうしてどうして。すごく論理的で、かつわかりやすい本でした。

コミュニケーションや人と話す上で説得力のある伝え方をするにはどうするか。普段の会話、会議、プレゼン、スピーチなどなど、様々なコミュニケーションについて書かれています。



この本は「なるほど」と思わせてくれる話が多かったです。コミュニケーションって奥が深い。

日常で色々な話を聞いたりしたりしていますが、そのほとんどは「話術」を意識することなく、コミュニケーションは成立しています。そんなコミュニケーションにも、奥にはいろんな理論があることが本書を読むとわかります。

自分の経験や体験を振り返って見た時に、わかりやすい話とそうではないもの、伝わる/伝わらないの違いは、何が要因だったのかが、この本の説明を読むことで「そういうことだったのか」と。

その中でも特におもしろかったのは、コミュニケーションにおける説得の要素は3つあるというもの。エトス、パトス、ロゴスと言われるもので、
  • エトス:人格による説得要素。話している人を信用しようという気にさせるような表現を指す。人格が優れている、品格がある、人柄がよい、センスが良い、面白そう、価値観が自分と一緒などの、その人自身の信頼性
  • パトス:感情に働きかける説得要素。共感、怒り、喜び、所属愛/愛国心など、聞いている人に特定の感情を抱かせるような表現
  • ロゴス:知性に働きかける説得要素。その人の言うことが頭で考えて理解し、納得できること。話に論理性がある、理論的である表現

この3つをもう少し噛み砕いて書くと、説得力があるのは、①信頼のできる人物が話し、②話の内容に共感できたり感情移入でき、③話の論理や言葉がわかりやすい。

さらに、この3つは同等の力を持っているわけではないとのこと。エトス > パトス > ロゴスの順。

つまり、いくら言葉巧みに話されても、話に共感できなかったり、その人自体が信用できない人であれば、人は動かないということです。逆に言うと、信頼している人の話は、多少の論理性がなくても、信用してしまいがちということ。

話す人によって相手が動くかどうか(説得されるかどうか)が変わるのは、例えば、クライアントを説得するために、ここぞという時は自分の上司である部長に同行してもらう、なんてことが当てはまります。

話す内容自体は部長も自分も変わらなくても、むしろ技術的な詳細とかは自分のほうが知っているとしても、説得力があるのは部長なわけです(くやしいけど)。これは、部長と自分のステータス/社会的地位の差から生まれるもので、本書で言うところのエトス度が違うのです。

同じ例で言うと、エトス度の高い部長が、さらに、クライアントが抱える課題や悩みに寄り添うような、相手の感情も汲み取った話し方(パトス)をすればさらに効果があるでしょう。エトス+パトス度の高い説得方法です。

コミュニケーションをして相手を動かすために、自分は今、エトス(人格)、パトス(感情)、ロゴス(論理)のうち、何を使っているのか。これだけでも意識するのと、漠然とコミュニケーションをするのでは、話し方のセンスは違ってくるのではないでしょうか。

ちなみにこの本の帯には、「東京工業大学で大人気の白熱講義、ついに書籍化!」「名門大卒芸人パックンが教えるハーバード流トーク術!!」とあります。ここでもうまくエトスが使われていますね。




最新エントリー

多田 翼 (書いた人)