2011/02/04

facebookで国民の声を聞くデジタル民主主義なインド

フェイスブック情報に特化したブログ「All Facebook」に、次のような記事がアップされていました。
Indian Government Asks For Budget Input On Facebook|All Facebook
(インド政府はFacebookで国家予算への意見を募る)

■フェイスブックから国民の声を聞くインド政府

同記事によれば、インド政府はフェイスブック上に専用の「フェイスブックページ」(ファンページから名称を変更)を設定し、2012~2017年の5ヶ年の国の予算について国民の意見を広く募るそうです。この取り組みに関して、インドのビジネスブログ「Trak.in」には、もう少し詳しく書かれています。国家予算について国民の意見を集める場としては、専用サイトとフェイスブックが用意されているようです。

この専用サイトには、Strategy Challengesとして次のような12項目が明記されています。今後インド政府が重点的に取り組む分野なのでしょう。

<12 Key Strategy Challenges>
1. Enhancing the Capacity for Growth (成長)
2. Enhancing Skills and Faster Generation of Employment (雇用)
3. Managing the Environment (環境)
4. Markets for Efficiency and Inclusion (市場の効率化)
5. Decentralisation, Empowerment and Information (地方分権)
6. Technology and Innovation(技術革新)
7. Securing the Energy Future for India (エネルギー)
8. Accelerated Development of Transport Infrastructure (交通インフラ)
9. Rural Transformation and Sustained Growth of Agriculture (農業)
10.Managing Urbanization (都市開発)
11.Improved Access to Quality Education (教育)
12.Better Preventive and Curative Health Care (ヘルスケア)
出所:12TH five year plan (Government of India Planning Commission)

インド政府の今回の取り組み、とりわけフェイスブックを使って国民の声を聞くことは、かなり驚かされました。企業レベルであれば、ここ最近は日本でも複数の企業が自社のフェイスブックページを開設し、そこでは商品説明や、画像、動画があったり、キャンペーンの告知や、担当者とユーザーの双方向からの発信がウォール上に流れているのを見かけます。これと同じことを、インドでは政府が、しかも5ヶ年の国家予算という大きなテーマでやろうとしているのです。もちろん、専用のサイトがありフェイスブックの位置づけは、あくまでそれを補足するものだとは思います。同時に、実験的な意味合いもありそうです。(これを考慮しても、個人的には驚きですが)

■フェイスブックユーザーの偏り

インド政府の意欲的な取り組みだと評価する一方で、フェイスブックで本当に国民の意見が集めらるのかという疑問も生まれます。フェイスブックを使うということは、そこでの議論や自分が書き込むためにはフェイスブックユーザーでなければいけません。あるいは、PCにしろモバイルにしろネットに接続できる環境が必要です。逆に言うと、そのような条件にない人々は排除されてしまいます。

フェイスブックのユーザー数などのデータを公表しているsocialbakersでは、11年2月4日時点でのインドのユーザー数は約2,000万人となっています(図1)。国別では第7位とはいえ、それでもインド全人口(約12億人弱)に占めるフェイスブックユーザーは2%にも満たない状況です。


出所:socialbakers


以下(図2)はインドの人口構成を男女×年代で表したものです(きれいなピラミッドを構成しています)。

出所:国連による人口推計から作成

同じくsocialbakerにはインドでのフェイスブックユーザーの男女別の構成比が提示されています(図3)。なんとユーザーの7割が男性で、明らかにインド人口のそれと異なります。これから予想されることとして、フェイスブック上での意見は男性の声がより多くなることが考えられます。

Male/Female User Ratio on Facebook in India

出所:socialbakers


以上のような状況から、フェイスブックに集まる声にはユーザーのバイアス(偏り)が発生していることから、一般の人々の意見とのかい離が発生する可能性もあります。

■フェイスブックが目指す「オープンで透明な世界」

もっとも、インド政府はそんなことは十分に承知でしょう。その上でフェイスブックを民主主義のインフラとしての可能性を試しているのだと思います。そういえば、冒頭で紹介したAll Facebookにはこんな記事が紹介されていました。ニューヨークのブルームバーグ市長がフェイスブックCEOのザッカバーグと会談し、ニューヨーク市民のためにフェイスブックページをつくることについて意見交換をしたとのこと。同市長はソーシャルメディアの大きな可能性に言及したようです(一方、これに関してフェイスブックの正式コメントはない模様)。

話をインドに戻すと、気になるのは、本日時点(2/4)でインド政府によるフェイスブックページ「Twelfth Plan」に登録しているユーザー数は1,000人を超えた程度にすぎない点です。まだ人々に認知されていないだけなのか、あるいは興味がないのかなどはわかりませんが、今後の状況はどうなっていくのでしょうか。

フェイスブックは原則として実名主義であることから、フェイスブックページへの書き込みも身元がわかる実名とともに意見が反映されます。また、その様子はフェイスブックユーザーであれば誰でも見ることができます。これは、まさにフェイスブックが目指す「オープンで透明な世界」です。今回のインド政府がフェイスブック上で国民に意見を問う試みは、今後のデジタル民主主義のパイロットケースになるのかもしれせん。


※参考情報

Indian Government Asks For Budget Input On Facebook|All Facebook
http://www.allfacebook.com/indian-government-asks-for-budget-input-on-facebook-2011-02

Twelfth Plan|facebook
http://www.facebook.com/TwelfthPlan

wow…Govt goes hi-tech! 12th Five Year Plan uses Web & Facebook for citizen Feedback|Trak.in
http://trak.in/tags/business/2011/02/03/indian-government-planning-commission-12th-five-year-plan/

12TH five year plan|Government of India Planning Commission
http://12thplan.gov.in/

India Facebook Statistics|socialbakers
http://www.socialbakers.com/facebook-statistics/india

NYC Mayor Wants Municipal Page On Facebook Site|All Facebook
http://www.allfacebook.com/nyc-mayor-wants-municipal-page-on-facebook-site-2011-02


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多田 翼 (書いた人)


外資系 IT 会社にて 「シニア マーケティングリサーチ マネージャー」 (LinkedIn) 。

1981年 (昭和56年) 生まれ。名古屋出身。学生時代は京都。家族4人で東京23区内に在住、2人の子どもの父親。気分転換は毎朝1時間のランニング。

書いている内容は、所属組織や会社の正式見解ではなく個人の見解です。