2011/02/20

リアルタイムウェブとチェックインの可能性を考える

「チェックイン」と言えば、数年くらい前であればホテルへの入館手続きであったり、飛行機への搭乗手続きを表す言葉でした。ところが、ここ最近は、Foursquareなどの位置情報サービスを使って、その場所に訪れたことを指すようにもなってきました。位置情報サービスでは、チェックインをすることでGPSからその場所を特定します。同サービスの特徴は、その情報をツイッターなどのソーシャルメディアを通じて友人に知らせることができたり、訪れたお店にチェックインをすればお店によっては割引クーポンをもらえたりする点、あるいはゲームの要素が取り入れられている点にあります。

■様々なチェックインとその本質

チェックインをするのは場所だけにはとどまりません。チェックインの考え方を応用すれば、例えば自分が買ったものなどにも適用できます。これはすでにSwipelyBlipplyなどのサービスで実現されています。ユニークな存在としては、今飲んでいるビールにチェックインをするというUntappdなんていうのもあります。目の前にあるビールをリストの中から選びチェックインすることで、自分が今ビールを飲んでいることを友人に伝えることができるサービス。実際にUntappdのページを見てみると、たくさんの飲んでいる発信がフィード上を流れています。

では、チェックインという概念の本質はどこにあるのでしょうか。それは、○○に訪れた・△△を買ったという「今自分がしている行為の可視化」だと思います。あるいは趣味嗜好の可視化と言ってもいいかもしれません。

■リアルタイムウェブが成立する3つの要素

それでは、なぜ人はこのようにリアルタイムで情報を発信するようになったのでしょうか。これに関しては、「リアルタイムウェブ-「なう」の時代」(小林啓倫 マイコミ新書)という本で書かれていることが参考になります。この本では情報がリアルタイムに伝わるウェブを「リアルタイムウェブ」とし、リアルタイムウェブが登場した背景には3つの要素があるとしています。3つの要素とは、ウェブ技術の進化、モバイル技術の進化、社会環境の進化(図1)。
出所:書籍「リアルタイムウェブ-「なう」の時代」

ウェブ技術の進化とは、例えば上記のようなFoursquareやSwipelyであったり、あるいはツイッターやフェイスブックもそうです。これらのウェブ技術の進化により、情報発信の速報性は既存のウェブサービスにはないレベルでのリアルタイム性が実現されました。

モバイル技術の進化も大きく寄与しています。いくらリアルタイムで発信できるようなサービスが出てきても、それをリアルタイムで利用できなければ宝の持ち腐れになってしまいます。モバイル技術の進化は、私たちがいつでもどこでもウェブにつながる環境を与えてくれました。位置情報サービスで言えば、その場所でその時に情報を発信することに価値があり、これが家に帰ってからパソコンを立ち上げて「○○へ行ってきた」では遅いのです。モバイルにおいては、スマートフォンによるスムーズな操作性は各種アプリの登場も、リアルタイムの発信を促進したのではないでしょうか。

3点目の社会環境の進化とはなんでしょうか。同書によれば、ポイントは「情報にスピードを求める人々の登場」と「プライバシー意識の変化」。スピードを求めるとはいきつくのはリアルタイムでの情報の送受信です。プライバシーへの意識については、日本でもツイッターやフェイスブックの登場で、それまでなら公にすることはなかった情報まで公開されています。本名、顔写真、経歴、趣味などであり、または自分が訪れた場所、買ったものも然りです。

3つの要素の詳細は本書に書かれていますが、以上のようなリアルタイムでの情報発信・共有ができるウェブサービスの登場、いつでもどこでもウェブにアクセスできるモバイル端末、リアルタイムでの情報共有に価値を見出した人々の増加。こうした条件により、リアルタイムウェブが成立すると、著者である小林啓倫氏は言います。

■メディアチェックイン

チェックインの概念は、まだまだいろんな可能性があると感じます。個人的に興味深いのは「メディアチェックイン」。いずれも海外のサービスですが、テレビ番組へチェックインするというコンセプトのものはいくつか存在します。具体的には、MisoPhiloComcast’s Tunerfishなど。そして最近知ったサービスの「IntoNow」(図2)。これはIntoNowというiPhoneアプリで、テレビを見ている時にアプリ上のボタンを押すことで、音声からアプリが番組を認識し、ツイッターやフェイスブックで共有も可能です。

IntoNowの画面

引用:TechCrunch

■IntoNowの番組認識

IntoNowは、音声からの番組認識がすごいです。同社独自のSoundPrintという技術を使っているようで、簡単に書くとアプリが収集した音声とIntoNow社が独自に構築した番組情報のデータベースと照合し、数秒内に認識させるというもの。このデータベースはリアルタイムで更新され続けており、TechCrunchの記事(IntoNow Can Hear What You’re Watching On TV. The Media Check-In Game Just Changed.)によれば、同社では全米の130チャンネルの番組を24時間365日収集し、そのデータ量は1億4000万分、年に換算すると約266年相当の時間です。このような膨大な量の番組がインデックス化されデータベースに保管されているとのこと。

実名Q&AサイトのQuoraでは、IntoNow社の技術者であるRob Johnson氏が「How does IntoNow recognize shows that are airing live?」(IntoNowは生放送の番組をどのように認識するのか?)という質問トピックに回答しており、その中で、この技術について魔法のようだ(as a little bit of a magic)と表現しています。権利上の問題で新しいDVDの対応はまだのようですが、今後はあらゆる映像コンテンツをその対象としていくはずです。

■メディアチェックインとテレビ

実はテレビとツイッターなどのソーシャルメディアは相性は悪くないと思えるところがあり、というのも、時節ツイッターのタイムラインを見ていると、複数の人がテレビを見ていることや番組内容について、リアルタイムでツイートしている時があります。確かにネットによってテレビ視聴時間は奪われている側面もあると思いますが、一方で、それでも人々がテレビを見る時間は一日あたりでは3時間弱もあります(図3)。
出所:「メディア定点調査 2010」(メディア環境研究所)

また、テレビ広告のマーケットは2009年は1兆7,139億円であり(電通調べ)、減少傾向とはいえ依然として広告費全体の5兆9,222億円の3割弱を占めています。IntoNowは現在のところアメリカだけのiPhone限定アプリですが、メディアチェックインというソーシャル性を活かしTV番組あるいは広告と連動すれば、これまでとは違ったテレビの価値が出てくるかもしれません。もちろん、良質なテレビ番組というコンテンツの提供が大前提ですが。


※参考情報

○ローカルチェックイン
Foursquare

○買ったものへのチェックイン
Swipely
Blipply

○ビールへのチェックイン
Untappd

○メディアチェックイン
Miso
Philo
Comcast’s Tunerfish
IntoNow

○その他
IntoNow Can Hear What You’re Watching On TV. The Media Check-In Game Just Changed.|TechCrunch
How does IntoNow recognize shows that are airing live?|Quora
メディア定点調査 2010|メディア環境研究所
た2009 年(平成 21 年)日本の広告費|電通


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多田 翼 (書いた人)


外資系 IT 会社にて 「シニア マーケティングリサーチ マネージャー」 (LinkedIn) 。

1981年 (昭和56年) 生まれ。名古屋出身。学生時代は京都。家族4人で東京23区内に在住、2人の子どもの父親。気分転換は毎朝1時間のランニング。

書いている内容は、所属組織や会社の正式見解ではなく個人の見解です。