2011/10/22

Amazon に期待したい 「書籍 + iTunes Match」 という読書体験

ようやくという感じですが、わくわくするニュースです。日経新聞の報道によると、アマゾンが年内にも日本での電子書籍事業に参入するとのことです。

参考:アマゾン、年内にも日本で電子書籍 出版社と価格詰め|日本経済新聞


日経が単独でスクープをするようなニュースはやや不安になることもあるのですが、記事を見ると PHP 研究所とは契約に合意し、小学館、集英社、講談社、新潮社などととも現在交渉中とわりと具体的に書かれています。アマゾンの電子書籍での日本進出が今度こそはと期待できる内容です。


3層で強みを持つ Amazon


すでに日本国内では電子書籍の市場は存在し、少なくない企業が参入を果たしている状況で、具体的には下の表のような状況です(引用:上記日経記事)。

市場規模は650億円程度(10年度)で、書籍・雑誌全体での約2兆円規模に比べるとまだまだ小さい印象です(数字は同じく日経記事から)。




ニーズがあると思われるににもかかわらず普及が進まないと思うは、以下の3層それぞれでユーザーにとって魅力を感じないからではないです。

  • そもそも電子書籍というコンテンツが少ない
  • 電子書籍端末の互換性も十分ではない
  • 購入するマーケットも乱立している

コンテンツ、端末、マーケットプラットフォームの3つで十分とは言えません。紙の本を買う方が総合的には良く、それに比べて電子書籍で読むということにメリットが感じられないのです。

アマゾンであれば違います。もちろん、前述のような幅広い出版社との契約合意が前提ですが、電子書籍は自社サイトを通じて提供されます。

パソコンだけではなく、タプレットやモバイルからブラウザかアプリのどちらからでも買えます。端末についても、専用のキンドルがあり、キンドルを持っていなくても iPhone や iPad 、Android 用のアプリも提供しているので、幅広い端末から読むことができます。

アマゾンのジェフ・ベゾス CEO は端末やサービスを普及させることを重視し、利益の回収は普及後でいいという経営戦略の持ち主です。

アマゾンから販売されるタブレットである Kindle Fire の定価は199ドルです。製造コストはそれ以上の209ドルではないかという情報もあります。これは1台売るごとに10ドルの赤字が発生します。

参考:Amazon’s $199 Kindle Fire Costs $209.63 to Make [STUDY]|Mashable


これは1例ですが、日本においても参入すると決めた以上は、コンテンツ、端末、マーケットというアマゾンの電子書籍サービスをまずは普及させるような展開をしてくるはずです。アマゾンの国内参入は、ようやく本命がきたかと期待したくなります。


Apple が提供する iTunes Match の意味


これは現在はアメリカのみ利用可能なのですが、「iTunes Match」 というアップルのサービスがあります。

iTunes Match は、自分が持っている CD から iTunes に取り込んだ音楽を、iTunes ミュージックストアで提供している楽曲と照合させ、マッチすればその曲は iPhone・iPad・iPod などの全端末でダウンロードできるようになるというものです。iTunes に入っている自分で CD から取り込んだ曲でも、全てミュージックストアから買ったものとして扱われることになります。

iTunes Match が興味深いのはその考え方にあります。

iTunes マッチがなければ、すでに CD で取り込んだ曲でも同じ曲を iTunes ミュージックストアから買ってダウンロードする場合、1曲150円等のコンテンツ料金が発生します。CD もダウンロードも同じ曲にもかかわらずです。

ところが iTunes マッチでは、「すでに CD で買っているから、同じ曲をミュージックストアからも別途金額は発生せずにダウンロードできます」 という考え方です。同じ曲に CD とダウンロードとに二重でお金を払うのではなく、「その曲を聴く権利を買う」 というものです。


 「書籍 + iTunes Match」 という読書体験


電子書籍に話を戻します。

もし iTunes Match のような考え方が電子書籍に適用できればどうなるでしょうか。

考え方は 「その本を読む権利を買う」 です。今手元にある書籍を紙の本を買っていれば、電子書籍版でも同じ本が手に入るというイメージです。

この本を読む権利を買ったということなので、一度紙で買えば電子版を別途料金で払う必要がなくなります。逆のパターンもあり得るので、電子版を先に買って紙の本を後から無料で入手することもできます。仕組みは、アマゾンの個人 ID で紐付し、どの本を買っているかの管理することになります。

電子書籍を読んでいての印象ですが、電子書籍には紙の本と比べたメリットとデメリットがそれぞれあり、どちらの形式が絶対的に良いという感じではありません。

紙は持ち運びや本の中から必要な情報を取り出すのに難がありますが、速読性や全体像の把握は紙が勝ります。電子書籍コンテンツや媒体はまだまだこれから仕組みも技術も進化するのでしょうが、それでも紙の本は一定程度は存続するでしょう。

書籍でも iTunes Match のような仕組みがあれば、魅力的です。読書をするシーンや目的に合った読書体験が用意され、各個人それぞれがストレスなく享受できます。アマゾンには、読みたい時に読みたい環境で読めるという読書体験の実現を期待したいです。

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書いている人 (多田 翼)

複数のスタートアップ支援に従事。経営や事業戦略のコンサルティング・アドバイザー・メンター、プロダクトマネージャー、マーケター。前職は Google でシニアマーケティングリサーチマネージャー、現在は独立 (詳細は LinkedIn または Facebook をご覧ください) 。

1981年 (昭和56年) 生まれ。名古屋出身、学生時代は京都。現在は東京23区内に在住。気分転換は毎朝の1時間のランニング。note も更新しています。

内容は個人の見解です。