投稿日 2024/02/29

USJ が従業員向け社食を充実。インターナルマーケティングで社内から生まれるお客さんへの価値

#マーケティング #インターナルマーケティング #顧客理解

今回のキーワードは 「インターナルマーケティング」 です。

テーマパークのユニバーサル・スタジオ・ジャパン (USJ) の事例から、従業員を 「お客さん」 として捉え、満足度を高めることが、どのように外部のお客さんの体験に影響を与えるのかを掘り下げます。

そして、マーケティングの本質とは何か、マーケターの役割とは何かを考察します。

USJ が社員食堂を充実化


大阪のテーマパークの USJ が、従業員の福利厚生の充実に力を入れています。社員食堂を自社運営に切り替えました。

社食で提供する安くて量の多いメニューを、季節ごとに40 ~ 50種類ほど用意するようです。

パークの営業終了後にアトラクションのメンテナンスや警備を担当する従業員もいるので、一部では午前1 ~ 4時の深夜にも営業します。

9月上旬、USJ のパーク内にある社員食堂はパークで働く若い従業員でにぎわっていた。アトラクションやパレードの運営スタッフの原田夢実さん (22) は 「勤務の休憩の度に訪れている。おいしくて量の多い食事を安く注文できるのはありがたい」 と話す。

 (中略) 

社食のメニューも充実させた。実際にパークで提供する食事にちなんだ献立を用意するなど、パークの元料理長がメニューを開発する。若い従業員が多いことから、定食は1食あたり360円と低価格に設定した。

パークのレストランでの勤務経験がある従業員などが調理・接客し、以前の倍近くの約120人を投入する。同社は 「相当な金額をかけてスタートした。自社で運営する方が費用はかかるが、働き手に選ばれる企業を目指すために必要なコストだ」 と説明する。

学べること


では USJ の社食の事例から、学べることを掘り下げていきましょう。

マーケティングとは


あらためてマーケティングとは何でしょうか?

結論から言うと、マーケティングとは 「お客さんから選ばれる理由をつくる活動全般」 です。

ここで言う選ばれるとは、買ってもらえる、使ってもらう、お店の来店や Web ページへの訪問、指名してくれることです。

自分たちが選ばれ続けるから、つまりお客さんにそれだけ支持されているから、ビジネスとして存続していけます。マーケティングの役割は、お客さんから選ばれるのを偶然に頼るのではなく、マーケティングによって意図的に選ばれる確率を高めることです。

インターナルマーケティング


USJ の事例には、 "インターナル" マーケティングとして汎用化できる学びが得られます。

インターナルマーケティングでは組織内の関係者を 「お客さん」 と捉え、彼ら・彼女らに対してマーケティング活動を行います。

通常のマーケティングをエクスターナルマーケティングとすれば、エクスターナルマーケティングではお金を払って製品やサービスを購入する外部のお客さんに焦点を当てます。一方のインターナルマーケティングは、社内メンバーという身内を 「お客さん」 と見立てるわけです。

USJ の事例に当てはめると、社食の充実というのは運営スタッフというお客さんから求められていたことでした。

USJ のコメントには、「相当な金額をかけたが、働き手に選ばれる企業を目指すために必要なコストだ」 とあったように、従業員というお客さんに選ばれる会社を目指していることが見てとれます。

選ばれるための顧客理解


マーケティングとは、先ほど一言で 「お客さんから選ばれる理由をつくる活動全般」 と表現しました。

選ぶという行為の主体者はお客さんです。自分たちがお客さんから選ばれるためには、どれだけ深くお客さんを理解しているかです。

お客さんから選ばれる理由をつくるためには、なぜお客さんが選んでくれるのか、どういう基準や価値観、心理状態でものごとを選ぶのかというお客さんへの深い理解が大事です。

もう1つ大切なことは、商品やサービスに価値があるかを決めるのはお客さんです。

売り手や提供者側がどれだけ自分たちの商品・サービスに価値があると信じていても、お客さんがそれを価値だと思わなければ、ビジネスでは価値はないのと同じことです。

お客さんの成功や幸せに貢献する


マーケターの原動力は、お客さんに貢献したい気持ちからです。相手の成功や幸せに少しでも貢献したい想いです。

お客さんのことを時には本人以上に理解し、成功し幸せになってほしい気持ちが嘘偽りなくあるかどうかがマーケターには問われます。

お客さんは会社や組織の外だけにいるのではありません。従業員や関係スタッフも実は大切な 「お客さん」 です。

従業員が満足し、働く環境を魅力に感じれば、それが顧客体験にも良い影響を与えます。このようなインターナルマーケティングの取り組みは重要です。

USJ の事例は、社食の充実化によって従業員の満足度を高めることで、最終的に来場者というお客さんにも良いサービスを提供できるようにするという、インターナルマーケティングからエクスターナルマーケティングにつなげる良い例です。


まとめ


今回は USJ の社食の充実の事例から、学べることを見てきました。

最後に学びのポイントをまとめておきます。

  • マーケティングは 「お客さんから選ばれる理由をつくる活動全般」 。お客さんから選ばれるためには、お客さんの状況、行動、心理、奥にある望みや不満、何に価値を見出しているかの価値観などまで深く理解することが大事

  • 従業員を 「お客さん」 と見立て、満足度を高めるインターナルマーケティングは、結果として外部のお客さんへの商品・サービス体験や満足度向上につながる

  • マーケターはお客さんのことを本人以上に理解し、お客さんの成功や幸せに貢献することを目指す役割を担う


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多田 翼 (運営者)

書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。マーケティングおよびマーケティングリサーチのプロフェッショナル。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

前職の Google ではシニアマネージャーとしてユーザーインサイトや広告効果測定、リサーチ開発に注力し、複数のグローバルのプロジェクトに参画。Google 以前はマーケティングリサーチ会社にて、クライアントのマーケティング支援に取り組むとともに、新規事業の立ち上げや消費者パネルの刷新をリードした。独立後も培った経験と洞察力で、クライアントにソリューションを提供している。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。