2012/10/13

沈黙を破り、今すべてを語る:本田圭佑への独占インタビューがおもしろい


引用:SOCCER KING


サッカー日本代表 (2012年現在) の本田圭祐選手へのインタビュー記事をご紹介します。

『沈黙を破り、今すべてを語る』 本田圭佑 独占2万字インタビュー全公開|SOCCER KING (2012年10月11日)

2万字インタビューとあるように掲載量は多いのですが、読んでいて長いとは感じなく、読み応えのあるインタビュー記事でした。


「問い」 がインタビューをおもしろくする


インタビューは、本田選手の具体的なプレーの話から始まります。

テーマは、ボールをもらう前の動きの質です。ボールを持っていない時に、いかに相手選手のマークをかわしてフリーになるかです。本田選手のプレーの以前と現在との変化に迫ります。

本田選手がどう考え、何を目指しているかがよくわかる内容でした。インタビュアーの質問が非常によかったからです。

この記事でのインタビュアーは、(株) フロムワン代表取締役で SAMURAI SOCCER KING 編集長や WORLD SOCCER KING 編集局長も務める岩本義弘氏 (@ganpapar) でした。

インタビュアーが本田選手の試合を実際に観戦してインタビューに臨んでおり、「ボールを持っていない時にいかに質の高い動きをするか」 について、ここ最近の本田選手の変化に触れ、本田選手から話をうまく引き出しています。


縦の比較・横の比較


本田選手のボールをもらう時の動きについて、縦と横のそれぞれの比較から質問により深みが出ています。

  • 縦の比較:以前の本田 vs 最近の本田選手
  • 横の比較:CSKA モスクワの他の選手 vs 本田選手

比較から本田選手のプレーの何が変わり、その背景にはどんな考え方の変化があったのか、プレーやサッカーに対する思いも含めて本田から引き出しているのです。

読者にとっても、最近のサッカーで重視されているプレー、ボールを持っていない時にフリーになることの重要性、それらで何が難しいのかもわかるようなインタビューになっています。


ビジネスへの示唆


「ボールを持っていない時にいかに質の高い動きをするか」 という本田選手の話は、ビジネスにも示唆があります。

本田選手が強調していたのは、ボールをもらう前にフリーになっておくか、パスを受けてボールをもらった時にどれだけイメージ通りにプレーできるかでした。これはサッカーだけではなく、ビジネスにも通じます。

サッカーでフリーになっておくことをビジネスに当てはめると、仕事を振ってもらう前に、その仕事に取り掛かれるだけの余裕を持っておくことです。具体的には、今のキャパシティに余裕をもっておくこと、時間配分や関係各所との事前調整です。

相手 DF のマークを外しフリーになってからボールをもらい、自分の得意なプレーをするのと同様、いかに新しい仕事のパフォーマンスを上げるかを仕事をもらってからではなく、仕事が依頼される前にいかに準備しておくかです。


スティーブ・ジョブズと本田圭祐


本田選手が以前よりもボールをもらう前の動きを意識するようになったきっかけは、膝のケガだったとインタビューで語っています。インタビュー記事から引用です。

そこに着手し始めたのは、膝のケガがきっかけですね。

リハビリを終えて全体練習に復帰した頃、しばらくは膝の調子がしっくりこなかったので、極力、接触プレーを避けていました。というか、避けていたというより、相手と接触しないためにはどういうふうにプレーすればいいのかということを考えるようになったんです。

膝のケガは後から振り返ると、ネガティブではなくポジティブだったそうです。

以前であれば相手プレイヤーにマークされている状態でボールを受けても問題なかったが、相手選手のレベルが上がると、以前と同じようには自分のプレーができなくなります。ケガがきっかけで、新しいプレーを考えるきっかけになったとのことでした。

ケガをしたことも後から振り返ると良かったと言える話は、インタビューが進み 「人生と挫折」 というテーマにつながっていきます。これまでの人生の中で挫折の経験はあるか?という質問に対して、本田選手は次のように答えています。再び引用です。

これまでは、メディアに挫折について聞かれた時は、「挫折の連続でした」 と答えてきたんですが、最近、ちょっと考え方が変わってきて。

よくよく考えたら、一度も挫折したことないんじゃないかと。それこそ、さっき話したケガの話で、ケガしたことを挫折と捉えるならそうですけど、言ったとおり、いいものやと思ってるわけですよ。ネガティブじゃないんですよ。

(中略)

考えようやなって思います。だから、あんまり失敗したことはないのかなと、今は感じてますね。

本田選手の挫折についての話に共通するのは、スティーブ・ジョブズです。スタンフォード大学卒業式の祝賀式で卒業生に向けて行われたスピーチです。

ジョブズはスピーチで、「3つの伝えたいことがある」 と冒頭で語ります。

  • 点と点をつなぐ (バラバラの経験であっても、将来それが何らかのかたちで繋がる)
  • 好きなことを仕事にする
  • ジョブズの死生観

そして、スピーチの最後に卒業生へのメッセージとして 「Stay hungry, stay foolish.」 で締めくくります。

1つ目の点と点をつなぐというエピソードは、ジョブズが大学を中退した後も自分が興味のあったカリグラフィ (飾り文字) のクラスに出て学んだことが、Mac の美しい書体に活かされたというものです。退学というネガティブな要素が、後から振り返るとポジティブになったのです。


「飢え」 を持ち続けること


本田選手の試合後のインタビューや W 杯でのコメントを聞くと、とても強い向上心が言葉に表れます。自分を高めたいという姿勢が伝わってきます。

強い意志についてもインタビューで触れています。本田選手は 「飢え」 と表現します。回答が印象深かったので、引用します。

飢えですよね。やっぱり飢えというのはすごく重要なものだと思っています。

「飢え」 というと、これもネガティブなイメージがあるかもしれませんが、僕はすごく重要なものだと感じていて、飢えによって、人はパワーを発揮すると思うんですね。きっと、飢えがなければ、人間はここまで世の中を発展させることもできなかったでしょうし、そのハングリーさが、結果的には現代の社会を築いていると思うし。

時にね、それがセルフィッシュなものと紙一重になってしまうかもしれませんが、そこをね、うまいことコントロールできるようになりさえすれば、飢えというのは素晴らしい人間の要素やと僕は思っているんですよね。

では、本田選手は 「飢え」 をどうやって持ち続けているのでしょうか。半分は自然と、残り半分は意識的に飢えを持つよう心掛けていると言います。再び引用です。

満足してしまっているもう一人の自分を、客観的に見ている自分もいるわけですよ。つまり、自分の中にもう一人の自分がいるわけですよね。

で、「お前、満足すんなよ」 みたいな感じで、しっかりとお互いをコントロールしつつ、何が必要かを考えながら融合するんですね。それで一つにまとまる。その結果、「満足しちゃダメだ」 ということにまとまるわけですよ。

だから、一喜一憂する時間は、基本的には数秒しかしない。すぐに強い自分が弱い自分をかき消してしまうんです。甘い自分を。

自分の中に2つの視点があり、客観視しています。もう1人の自分が満足してしまいそうになる弱い自分をリードしています。2人の自分が 「しっかりとお互いがコントロールしつつ」 と言うように、うまくバランスが取れているのでしょう。

最初に触れた 「ボールを持っていない時にいかに質の高い動きをするか」 という話にもつながります。

現状に満足せずどうすれば自分をもっと高められるかを考え、結果的に膝のケガの手術、リハビリのハンデをも客観的に捉えて、ポジティブなものに変えています。

何かに飢えている状態をあえてつくり、それを持ち続けられるかです。今の自分にそれができているか、考えさせられる生き方です。


※ 参考情報

『沈黙を破り、今すべてを語る』 本田圭佑 独占2万字インタビュー全公開|SOCCER KING
岩本義弘|Twitter
Text of Steve Jobs' Commencement address (2005) |STANFORD UNIVERSITY
Apple創始者・スティーヴ・ジョブスの伝説のスピーチ (1) |YouTube (日本語字幕付き動画1)
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多田 翼 (書いた人)


外資系 IT 会社にてマーケティングリサーチ マネージャー (LinkedIn) 。

1981年 (昭和56年) 生まれ。名古屋出身。学生時代は京都。家族4人で東京23区内に在住、2人の子どもの父親。気分転換は毎朝 8km のランニングとピアノ。

書いている内容は、所属組織や会社の正式見解ではなく個人の見解です。