2011/11/06

失敗を評価する四つの視点

回復力~失敗からの復活 (講談社現代新書) 「回復力 失敗からの復活」(講談社現代新書)という本は、失敗学を提唱する畑村洋太郎氏の著書です。この本では、人は誰でも失敗をしてしまうこと、だからこそ大切なのはそこからどう失敗を捉え、考え、行動するかを中心に書かれています。

■失敗を評価する四つの視点

本書で印象的だったのは、著者が紹介する失敗を正しく評価するための4つの視点でした。1.物理的視点、2.経済的視点、3.社会的視点、4.倫理的視点。まずは以下で、それぞれの説明を引用します(「回復力 失敗からの復活」p.80-82)。なお、エントリータイトルは本書の目次からそのまま使っています。

1.物理的視点
失敗をまず物理的現象としてとらえる視点です。これは要するに、目の前でどのようなことが起こっているのかをありのままに見ることです。ものの見方は、その人の立場や関わり方などによって大きく左右されますが、そうした影響を上手に排除していかないと、目の前で起こっていることを正しく認識することはできません。

2.経済的視点
いわば損得勘定で失敗を見る視点です。社会のことはほぼすべて、経済的なメカニズムの中で動いています。(中略)失敗でも同じで必ず経済的な影響がついてまわります。そのことを考慮し、経済的な指標によって評価するのが経済的視点による失敗の評価です。

3.社会的視点
経済的視点よりさらに広範な見方です。一番目の物理的視点とは逆の視点とも言えますが、失敗の影響は経済的なもの以外にも広く及ぶので、これらをすべて見る視点が必要になります。これはいわば、その失敗と社会の関係を評価するためのものですが、具体的には「社会の中でその失敗がどう見られているか」とか「社会がその失敗にそう反応して動いているか」などを見ることををいいます。

4.倫理的視点
生身の人間の立場から失敗をみる視点です。これは人としてやらなければならないことがきちんとできているかどうかを判断するためのものです。(中略)この視点がないと、「こうあるべき」とか「こうなるはず」という形式的な評価に振り回されて、失敗の取り扱いを間違える危惧があります。

■四つの失敗評価視点を自分事化してみる

この4つの失敗評価視点はなるほどという感じです。ただ、表現や説明が一般的なものになっており、自分ごととして捉えるためにはもう少し落とし込んで理解したほうがいいように思いました。

実は以前にあるプロジェクトに参加していた時に、1つの失敗がプロジェクト全体に大きく影響を与えたことがありました。プロジェクト工程のクリティカルパスだったため、スケジュール全体の遅れ、リカバリーのための対応工数増加、販売への機会損失、顧客からの信頼・ブランドイメージ低下など、合計の損失額はプロジェクトへの投資と比較しても発生したダメージは小さくありませんでした。その時に学んだことや考えさせられたことも踏まえて、以下、4つの評価について私自身の解釈を書いておきます。(書いてみて思いましたが、どちらかと言うと仕事における失敗評価の内容になっています)

1.物理的視点
起こった失敗に対して、「事実」を正しくつかむことが失敗評価の第一歩ではないでしょうか。畑村氏が「目の前でどのようなことが起こっているのかをありのままに見ること」と言っているように、いかに客観的に何が起こったかを理解できるかが重要だと思います。この時に原因究明も行なうことになりますが、重要なのは原因究明と責任追及を分けることだと考えます。すなわち、ここで言う物理的視点では失敗という発生事象とその原因究明に注力し、責任の所在や追求は失敗評価が終わってからが望ましいと思います。原因究明と責任追及を同時にやってしまうと、責任を逃れたいというインセンティブから、正しく原因がわからないという事態になりかねないからです。

2.経済的視点
「損得勘定で失敗を見る視点」とありましたが、失敗による金銭面での影響や、あるいは時間のロスなど、失敗を数字で見る視点です。失敗をしてしまうと、やり直しのために余分な時間が必要になりますし、仕事であればそのための追加コストと時間が発生します。また、仕事と関係のないプライベートな失敗でも(例えば予定していた時間の電車に乗り遅れたなど)、直接お金への影響がない場合でも、少なくとも時間に影響してきます。起きてしまった失敗を評価する上で、影響や被害を数字で見る視点があれば、他者とも共有しやすいでしょう。「物理的視点」と同様に数字で評価することで、失敗を客観的に捉えることができます。

3.社会的視点
社会的視点とは、失敗を1つか2つ上の立場から評価することだと思いました。失敗をした・起こした時には、とかく視野が狭くなりがちです。失敗に注力し失敗のことを考える必要はあるのですが、視野が狭くなってしまうと二次災害の可能性もでてきます。よって、今の自分よりも1つ上の視点、例えば仕事であれば上司の立場では失敗はどう位置づけられるのか、あるいは○○課に所属していれば、その上の△△部には失敗がどう影響するのか、そこから少しずつ視野を広げていって、自分の会社やクライアント、その先にようやく社会に対してどう影響するかを考えるといいのではないでしょうか。失敗の当事者としてだけで捉えていると、必要以上に一大事だと感じることもありますが、1つ1つ視野を広げることで、失敗がそれぞれどう位置づけられるかが評価できます。

4.倫理的視点
1~3はいかに客観的に失敗を評価するかという視点でしたが、倫理的視点では、その失敗に対して「自分はどう考えるか」というものだと思います。失敗をした時に真っ先に頭に浮かんでくるのは、失敗に対しての後悔や惨めさ・恥ずかしさなどの感情だと思います。これは自分の経験からもそうです。ただ、失敗を評価する時に大切なのは、事象の確認、原因究明、そして何よりも、失敗を次への糧にすること。であれば、倫理的視点においては、自分の行動や意思決定に何か落ち度はなかったか、準備不足だった可能性、などなどを一度評価しておいたほうがいいと思います。よく失敗談が語られることがありますが、失敗について自分で考え、自らの言葉で評価できるかどうかが、失敗を次に活かすかそうではないかに大きく影響するように思います。

失敗というのはやっかいなものです。誰も失敗しようとは望んでいないのに、それでも私たちは失敗します。私自身もこれまで数多くの失敗があり学びもしましたが、だからと言って失敗はこれからもゼロにできるかというと、これからも失敗するのでしょう。人は誰でも失敗をします。その失敗を生かすも殺すも、失敗をどう評価し、次へのチャレンジにつなげられるかどうかだと思います。畑村氏が提案する失敗を評価する4つの視点は失敗が起こってからではなく、日頃から意識をしておきたいものです。



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