投稿日 2011/11/19

Google+でプロダクト全体最適を進めるグーグル

Googleと言えばネットで何かを検索する時には当たり前のように使いますが、それ以外のサービスも色々と利用していることに気づきます。仕事とプライベートのスケジュール管理にはGoogleカレンダーは外せないですし、他にもGmail、Google Reader、Googleドキュメント、などと挙げていくと1つのアカウントで様々なグーグルサービスを活用しています。

■ここ最近のGoogleの動き

ちょっと前になりますが、これら多くのグーグルサービスがデザイン変更をしました。デザインだけの変更であれば新しいデザインも使っていればそのうちに慣れるものの、機能が変わってしまいそれが自分にとって使いづらくなってしまうと前のデザイン(機能)のほうがよかったのに、なんて思ってしまいます。ここは無料で使っているので文句はあまり言えず、一定のデザイン変更期間(新旧両方が使える)が終われば、強制的に新デザインに移行されます。

もう1つ、最近のグーグル関連の大きなニュースとしては、Google Musicのリリースがあります。

Google Music is open for business|Official Google Blog

これまではβ版だった音楽サービスの正式リリースで、主な特徴は、所有している曲は2万曲まではクラウド上に無料保存可能、Android MarketというiTunes Storeのようなマーケットから購入でき、1曲は0.99~1.29ドルで100円以内で買えるイメージです。購入対象曲は現在は800万曲、近々1300万曲まで増えるとのこと。曲のファイルはMP3の320kbps。

印象的だったのは、大手レーベル3社とインディーズレーベル1000社がパートナーになっている、Google+との連携で共有しやすい仕組み、それとオフライン状況でもデバイス保存分は聞くことができること。あとはアーティストとの連携強化も。日本への展開時期は未定のようです。Google Musicにより、グーグルは音楽サービスでもiTunesやAmazon Cloud Playerとぶつかることになります。

他に話題になっていたのは、Google+で企業ページの「Google+ Page」のリリースもありました。

Google+ Pages: connect with all the things you care about|Official Google Blog

リリース段階の時点で、トヨタやユニクロ、ペプシなど、20以上の企業ページが開設されたようです。これはFacebookページと似ていますが、Google+ Pageの特徴はグーグルの強みである検索と強力な連動させている点にあります。Direct Connectという機能の追加がそれで、グーグルで検索でをする際に、企業名やブランド名の前に「+」を付けて検索すると、その企業のGoogle+ Pageをサークルに入れることを推奨するページが表示できるようになりました。

■Google+統合という全体最適化

ここまで、最近のグーグルの動きとして、各種サービスのデザイン変更、Google Music、Google+ Pageを見てきましたが、これら共通していることがあります。それは、全てでGoogle+との連携がされていること。

デザイン変更ではGoogle+のそれと同じイメージになり、Google MusicではGoogle+への共有機能も追加されています。これらの意味することは様々なグーグル提供サービスがGoogle+が軸となる統合で、この動きがGoogle+がリリースされてから一気に動き出していると感じます。

Google+に関して、グーグル幹部のNikesh Arora氏(chief business officer)がある公聴会で印象的な発言をしていました。

Google+, for us, is not a social network, It is a platform which allows us to bring social elements into all the services and products that we offer. So you have seen YouTube come into Google+; you’ve seen Google+ with ‘direct connect’ go into our search business. We are trying to make sure we use social signals across all of our products... It’s not just about getting people together on one site and calling it a social network.”

我々はGoogle+は「ソーシャルネットワーク」とは位置づけていない。Googleが提供する全サービスにソーシャルの要素をもたらすプラットフォームである(YouTubeとGoogle+の連携や、グーグル検索におけるGoogle+のDirect Connectなど)。我々は、人々を一つの場所に集めそれをソーシャルネットワークと呼ぶのではなく、ソーシャルの信号をGoogleの全製品にわたって使えるようにしようとしている。

Google+ 'is not a social network'|Telegraph

すなわち、Google+を使ったあらゆるサービスの連携・統合であり、要するにグーグルは何をしているかというと、Google+をベースにしたグーグルのあらゆるサービスの全体最適化だと思いました。実はこれまでのグーグルの各サービスは、それぞれがバラバラにつくられ提供されていたと思います。これまでのグーグルの特徴をよく表していて、ほんと自由にやっている印象でした。そういう意味では各サービスごとの部分最適がされていて、Googleラボを覗けば新しいサービスが次々にベータリリースされていました。実はこのGoogleラボもGoogle+のリリース後にクローズされています。

More wood behind fewer arrows|Official Google Blog
やっぱり気になる「Google Labs」の閉鎖|ZDNet Japan

Google+への統合と合わせてと考えると、これまでのグーグルが発散型でサービス開発・リリースをしてきたのに対し、Google+のリリースを境に「選択と集中」に舵を切っているのです。

■Googleの方針転換でどう変わるのか

グーグルのこうした動きはとても興味深いものです。Googleが生まれ変わろうとしていると言っても過言ではないように感じます。とはいえ、現時点ではこの方針転換は始まったばかりで、Google+への統合と言ってもユーザーにとっての目に見える変化はGoogle+に簡単に共有できるような仕組みがあることや、デザインがGoogle+のように次々に変わっていることくらいです。

ただ、ユーザーの見えないところではおそらく確実に動き出しているのでしょう。例えばデザインの変更を見ても、ただ単に見た目だけをGoogle+にしただけでは当然ないでしょうし、その裏にある設計思想というか、どうすればGoogle+と連携し統合できるか、それはグーグルにとって、またユーザーにとってどういうメリットがあるのか、等々がGoogle+を軸にした横断的な検討・開発がされているのではないでしょうか。

グーグルというのは、図のような無料でサービスを提供する代わりに、膨大なユーザーデータを取得し、それをさらなるサービスの利便性向上や、ユーザーデータをグーグルの主要ビジネスモデルであるネット広告事業に活かしている。この集まってくる膨大なデータ活用がグーグルの本質的な部分であり、であればここ最近のGoogle+への統合もより一層のユーザーデータ取得のためだと思います。それがひいては広告事業での売上および利益増加につなげたいということ。



あるいは、もしかしたらネット広告事業への収益依存を変えていくのかもしれません。これはちょっと考えてみたのですが、まだ自分の中でどういう具体的な戦略が考えられるかが見えていなくて、広告収入ではなくユーザーから直接課金するのか、ユーザーは個人なのか企業なのか。課金モデルは具体的には何かなど、もう少しグーグルの動きを見ていけばわかってくるかもしれません。

いずれにせよ、方向転換をしつつあるグーグルは気になりますし、その中心に位置しているGoogle+がどうなっていくのかにも興味があります。


※参考情報

Google Music is open for business|Official Google Blog
More wood behind fewer arrows|Official Google Blog
Google+ 'is not a social network'|Telegraph
Google+ Pages: connect with all the things you care about|Official Google Blog
やっぱり気になる「Google Labs」の閉鎖|ZDNet Japan
Google Labsの閉鎖は、Googleによるイノベーションの歩みを止めるのか?|TechCrunch Japan


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。