2012/09/29

Google が 「自動運転車は5年以内に一般の人が利用できる」 との見通し (2012年9月) 。自動運転車は普及するのか?


グーグルの自動運転車


グーグルは2012年9月25日、研究を進めている自動運転車について 「5年以内に一般の人が利用できるようになる」 との見通しを示しました。


グーグルの見通し


以下は、日経産業新聞の記事からの引用です (2012年9月27日) 。

グーグルは2010年に自動走行車の開発に着手。これまでに30万マイル (約48万キロメートル) の走行試験を実施した。

この計画を担当するブリン氏は 「視覚障害者など自動車の恩恵に浴していない人の生活を改善できる」 と指摘。交通事故の減少や渋滞緩和にも効果があると説明した。

実用化に関連しては 「センサーの性能向上などが課題となる」 という。自社製造ではなく、自動車メーカーへの技術供与を検討している。

2012年現在から5年以内というと、2017年までで実現するというグーグルの見通しです。

ブリン氏の 「5年以内に一般の人が利用できるようになる」 というコメントは、記者会見でのものです。アメリカ・カリフォルニア州知事がグーグル本社を訪れ、自動走行車の公道走行試験を後押しする法案に署名した時の式典後でした。

参考:グーグルの自動運転車、5年以内に一般利用を可能に--ブリン氏発言|CNET Japan


自動運転車が普及するためのハードル


技術的に自動運転車が実現しても、実際に普及するには様々なハードルがあります。考えられるのは次の通りです。


1. 安全性

技術的な安全性の確立と、心理的に安心されるかどうか。技術的な安全が実現しても、自動運転車は安心という認識が人々の中に定着するかが普及へのハードル。

グーグルはすでに48万kmをテストしていること、他には飛行機は自動運転とパイロットとの手動運転を組み合わせていることも考えると、自動走行は人の手で運転されるよりも安全性は高いとも言える。普通の人々が、人間が運転しない自動走行を心理的に受け入れるかどうか。


2. 利便性

自動運転車は、人が運転するよりも便利であることが実感できること。例えば以下の利便性を感じられるか。

  • 渋滞や交通事故が減少する
  • 予定時間通りに目的地に到着する
  • 人のドライブよりも自動走行のほうが早く目的地に到着
  • 自動運転により省エネドライブができガソリン消費が抑えられる
  • 車を運転できない人も自動車の恩恵を受けられるようになる


3. 価格

グーグルの自動運転車のビジネスモデルは技術・ライセンス提供と読み取れるが、自動運転車の価格は現行の車と同程度か、高くなったとしても許容範囲内なのか。


4. 法律

自動運転車が公道を走ることを可能とするように、法律も見直すことになる。自動運転車とそうではない車をどう識別するか。例えばナンバーやステッカー、あるいは初心者マークのような目印から、自動運転車と認識できるようにするのか。


5. 使用条件

自動運転車を使う時の使用条件も詰める必要がある。

例えば、誰も人が乗らない完全無人走行を許すのか、(運転はしなくても) 同乗者は最低1人以上とするのか。同乗者は免許を持っている人とするのか。同乗者が居眠りしていると居眠り運転、同乗者がお酒を飲んでいると酒気帯び運転と見なすのか。

法律とも関連する。同乗者は免許保有者のみとする条件になってしまうと、車を運転しない人やできない人への恩恵は限定的になる。


6. 違反や事故の責任

自動運転車が万が一、事故を起こした場合は誰が責任を取るのか。技術提供をしたグーグルなのか、自動運転車を販売した車メーカーなのか、自動運転車の保有者なのか、同乗者なのか。


7. 保険や車検

自動車保険の仕組みも新たに設計することになる。車検も検査項目にも影響する。


8. 国ごとで統一できるか

ヨーロッパなど、国境をまたいでの走行がある場合、各国で法律や使用条件などを統一しておく必要があるのではないか。


自動運転車はどの業界で普及するのか


次に考えたいのは、自動運転車はどこで普及するのかです。

業界は、大きくは個人利用と業務利用に分けられます (他にはレースなどの特殊利用もありますが割愛) 。

個人利用を考えてみると、移動や運搬としての 「手段」 か、走ること自体が楽しいなどの 「目的」 か、どちらの要素がより強いかで利用シーン分けられます。ドライブ自体が目的という運転には自動運転車へのニーズは小さいでしょう。手段としての車利用に自動運転車は使えそうです。

しかし、自動運転車が普及するのは、個人利用向けよりは業務用のほうだと思います。具体的には、次のような業務用での利用です。

  • 配達やコンビニ配送車・工場出荷物などのモノを運ぶ物流
  • バス・タクシーや救急車などの人を運ぶ
  • 警察車両・消防車や清掃車などの治安維持系

これらの業務用のうち、定型的な使われ方をする利用に自動運転車が向いているでしょう。定型的とは、毎日決まったコースで物を運ぶことです。工場と販売先などの物流や定時で各駅を回るバス、清掃車も掃除する道は決まいるので、自動運転車と相性が良いでしょう。

普及シナリオは、業務用で自動運転車が浸透し、価格も下がっていくことです。人々の中にも自動運転車への心理的な抵抗が薄れていき、個人でも自動運転車を使う人が出てくるでしょう。

有人走行車がゼロになることはないでしょうが、純粋に車の操縦を楽しみたいというドライブニーズ以外は自動運転車に取って代わる未来もあり得ます。


普及した時の自動運転車の恩恵


では、自動運転車が普通に走る社会は、良い未来なのでしょうか。自動運転車が普及した場合、私たちへの恩恵は以下が考えられます。


1. 運転からの解放

自動車を移動や運搬の 「手段」 と捉えている人にとっては、車を運転する時間を他に使えるメリット。


2. 交通事故や環境負荷の減少

自動走行になり、自動車による死亡や怪我の被害、物品破損等の社会的損失が減ることを期待したい。また、ガソリンや電気等の消費エネルギー量を抑えられれば、環境への負荷は小さくなる。ただし、これまで電車などの公共交通機関を使っていた人が新たに自動運転車を使うようになると、環境への影響減少と単純には言えなさそう。


3. 移動手段の獲得

車の運転をしない、あるいはできないような人、例えば高齢者や体に不自由な方などへの恩恵。


実際に自動運転車が普及するには、技術的な進化よりも社会的に、そして人々が受け入れるかが一番のハードルです。自動運転車によって、よりり良い社会が形成される未来を期待しています。


※参考情報
グーグルの自動運転車、5年以内に一般利用を可能に--ブリン氏発言|CNET Japan
米グーグルの自律走行車、カリフォルニアでも公道走行が可能に|AFPBB News

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多田 翼 (書いた人)