2012/12/24

書籍「MEDIA MAKERS」に書かれていた「メディア変化がコンテンツをも変える」論点がおもしろい

話題の本『MEDIA MAKERS―社会が動く「影響力」の正体』(Kindle版はこちら)を読みました。メディアに関するいろんな論点が提示され、それでいて随所に示される豊富な具体例(抽象的な内容で終わらない)。読み応えのある本でした。

■CDの普及で音楽も変わった

書かれている内容の中でも印象に残っている話として、音楽でのメディア変化であるアナログ盤(レコード)⇒CDに関する考察がおもしろかったです。

まずはその前に、そもそもメディアとは何か?ですが、簡単に言うと
  • メディアとは、発信者の思いが受信者に伝達する媒体・媒質となるもの
  • 送り手側の何かを伝えたいという思いがあり、それを受け手に伝達する「媒体・媒質」


本書で強調されていることとして、「メディアは必ず受け手を必要とする」「コミュニケーションにおいては受け手こそが王様」であり、単に情報を発信して終わり、ではないことを意味しています。

こう考えると、音楽におけるレコードやCDもメディアに属することが理解できます。曲をつくりファンやリスナーに自分たちの音楽を届けたいという思いがあり、送り手と受け手の間に存在する音楽というコンテンツを載せた媒体がCDやレコードなのです。

レコード盤からCDへの変化が何をもたらしたかに話を戻します。CDの登場・普及で起こったことは、曲の構成やタイトルの変化でした。曲の構成変化とは、サビ頭の曲の増加。CD以前の定番パターンは、Aメロ⇒Bメロ⇒サビだったのが、サビ⇒Aメロ⇒Bメロ⇒サビ。曲の最初にいきなりサビという一番盛り上がる部分をもってくる構成です。

なぜか。ここにレコード⇒CD、つまりアナログからデジタルのメディア変化が大きく影響しました。CDで音楽を聞くことで、曲単位のスキップや頭出しが簡単にできるように。その結果、サビが最初に来ないと「この曲なんだっけ?」となり、下手をするとサビに行く前に次の曲にスキップされてしまう。いわゆる結論を先に言えと同じで、リスナーはAメロ⇒Bメロ⇒サビと、気長には待ってくれなくなったのです。他にも、サビの歌詞の言葉を曲のタイトルにそのまま使う、なんてことも起こりました。

■手段(メディア)の変化が目的(コンテンツ)も変化させる

アナログからCDへの変化を一般化してみます。それは、メディアの変化がコンテンツそのものに変化を及ぼした、ということ。コンテンツを受け手に届ける役目にすぎなかったメディア(レコードやCDなどの媒体)がその中身であるコンテンツ(曲)の作り方にまで影響を与えました。

背景には、CDというデジタルが普及したことで、受け手であるリスナーが曲ごとに気軽にスキップ・頭出で自由に移動するようになった点があります。ポイントは曲を提供する送り手側の意図ではなく、あくまでユーザーが主導した変化だということ。そして、この変化は今のあらゆるメディア消費の変化の底流にあると著者の田端氏は言います。例えばネットビジネスでは、検索エンジンの進化、スマホやソーシャルメディアの普及により、コンテンツは作り手側の想定した文脈に関係なく、ユーザーは好き勝手につまみ食いをする。

メディアは、本来はコンテンツを送り手から受け手に届ける媒体にすぎなかったもの。重要なのはメディアに乗っているコンテンツ。しかし、ここまで見てきたのは、「手段(メディア)の変化が目的(コンテンツ)にも影響を及ぼし変化させる」、という現象です。

■本とTVのメディア変化はコンテンツを変えるのか

音楽では、メディアのデジタル化がコンテンツを変化させました。CDになり、iTunesでの1曲単位でダウンロードする環境が普通になったことで、この流れはより加速したように感じます。

ここ最近興味があるのが、同じことが本の世界でも起こっていくのかという点。ようやく日本でも電子書籍が本格普及してきている実感があり、これは楽天のkoboや何よりアマゾンのキンドルの日本版がついに発売されたことが大きいと思います。キンドルが出たことで、Kindle版も次々に発売されている印象でコンテンツが充実してきました。

私自身もキンドルを注文しましたが、このタイミングで購入ボタンをポチっと押したのは、読みたい本が少しずつキンドル対応がされてきたのが大きいです。電子書籍って、①ハード、②探す/買える仕組みが整ったプラットフォーム、③コンテンツの3層がどれだけ一体となっているかが重要で、③コンテンツの充実でようやく「買いたい」と思うようになりました。

で、間違いなく起こってくるであろうことは電子書籍端末というメディアが普及することで、コンテンツ自体の変化です。今はまだ紙の本をデジタル画面で表示させているにすぎません。単なる置き換え程度です。プラスアルファで辞書機能、ハイライト、検索はありますが、本質的には大きな変化は起こっていないと理解しています。アナログ⇒CDで起こったことが電子書籍においても起こるかもしれないですよね。期待したいのは電子書籍ならではの読書体験。コンテンツの変化です。

もう1つ、メディアのデジタル変化で期待したい領域はテレビ。今のところは地上波デジタルに切り替わるという、日本のTV史上では歴史的な転換があったわけですが、そのメリットは少なくとも視聴者であるユーザー側には十分に享受されていません。このへんの話は書き出すと止まらない感じになりそうなのであまり触れませんが、結局はユーザー視点に欠けた官民主導の政策でしかなかったのではないでしょうか。日本中で地デジ対応TVの総切替が半強制的に起こったわりに、TV番組やCMというコンテンツは従来のアナログの時とほぼ変わらないのはもったいなすぎる結果です。

メディアという手段の変化が目的であるコンテンツをも変化させる。そして、メディア環境変化が自分の思いを受け取ってほしいユーザーにどんな影響を与えるか、忘れずに持っておきたい視点です。


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多田 翼 (書いた人)